11/08/27 10:44:14.21
『○月○日
演習場より爆発発生との緊急連絡。
空砲も含め演習での炸薬、可燃類の使用はなし。不発弾、もしくは何かの工作と推測。
直ちに演習を中止、学生を緊急待避させる。
完全武装の強襲・両用教官連を伴い、爆心地に向かい、調査。
爆心地は、電子部品類が散乱。地下は巧妙に隠蔽された空間が存在。
散乱する部品。破壊を免れた地下空間から、この空間は…』
教官待機室。通称「詰所」で、何度も手を止め、日誌にペンを走らせていた私の後ろから声がかかる。
「顛末の報告ですか…」
振り向くと、声の主、陸上自衛隊を定年退官し、非常勤講師として学生の指導にあたっている老教官が、大振りの湯飲みを持って笑みを浮かべていた。この陽気にもかかわらず、湯飲みからは盛大に湯気が上がっている。
見た目、細身の爺様(失礼しましたっ!)だが、人は見かけによらない。彼の指導に自衛官時代にどれだけ酷い目に遭ったか…。
日誌の続きを書くのが憂鬱になっていたところだ。彼との話で気分転換をはかるべきだろう。私がペンを置くと、彼は、近所にあった椅子の背を身体全面に向けて座り、軽く湯飲みに口を付た。目が輝いている…。オッサン…楽しんでるだろ…。
「水素爆発だとは、想像外でした。報告書も書かなければなりませんし…『そのあと』を考えているだけで気が滅入ります」
「あれだけバッテリーがあれば、発生する水素もハンパじゃないでしょう。C4に比べればショボイと思ってました。水素も馬鹿にはできませんね」
ここでは、私が『上官』だ。よって、彼の口調は丁寧になるのだが、身体にしみこんだ『指導』が自然、私にそれなりの礼を取るよう要求してくる。
「換気口らしきダクトに野鳥の巣がありましたから、水素が排気されず、何かの火花が引火したんでしょう。それに最近は日照が良好でしたから。それにしてもバッテリーとはね…」
「周囲に偽装された太陽電池パネルが多数見つかってるそうじゃないですか。一体何に使ってたんです?そこまで大電力が必要なものって…」
知りたいのはそこか…。まぁ、私も驚いたけどね…