10/01/29 21:13:42
>>62
新潮45編集部編
「殺ったのはおまえだ」
より
前述の古老は言う
「夏江と娘の環は、よう似とるな。
環の居酒屋の賄いは、天職やという者もおったがなあ。
母親の夏江も昵懇やった男が、この村だけでも何人もいたという者もおる」
仮にこの話が事実なら、家の中に閉じこもる誠人が
何も感じなかったはずはない。
いかに家族がバラバラでも、飾ることのない母と姉が折々に
みせる気配や昂揚くらいは察知できる。
村の風俗にドップリ漬かり、生々しく在り続ける母姉の存在は、
おそらく誠人にとって抑圧そのものだった。