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大学生の就職がかつてなく厳しい現状にあることを伝えた今回の番組で、
私は「就職留年」を決めた大学4年生を取材した。彼と初めて会ったのは、
異様な暑さがまだ残っていた9月。「就活の長期化、早期化に反対」など、ツイッターの呼びかけに応じ、
約300人の学生が駆けつけた集会の場に彼はいた。
私は数多くの学生に話を聞いたが、彼とのやりとりが頭から離れずにいた。
早稲田大学政経学部に現役合格していた彼は「人生初めてのつまずき。挫折」と言っていた。
大手中心の就活を貫いたとはいえ、いわゆる一流大学の学生がことごとく企業の採用試験にはじかれ、
落ち込んでいる数多くの姿を目の当たりにして正直、驚いた。
だからこそ、いつか彼に取材を申し入れ、今の学生たちが直面している就活に対する思い、葛藤する姿を是非、伝えたいと思っていた。
今回の番組で私は彼にこだわり、取材に応じてほしいと、繰り返しお願いした。
彼にとって取材に協力することは、決して名誉なことではない。
しかし彼は、洗いざらいの質問に真摯に応じてくれた。
「就職試験でつまずくと思ったか?」「両親に留年の話を切り出した時はどうだった?」など、
他人に聞かれることは、彼にとって屈辱的だったに違いない。インタビューを繰り返しながら、
彼が自然と唇をかんでいるのに気づいた。苦しい胸の内を思うと辛かったが、
「彼の正直な気持ちを伝えることで、厳しい就職活動の実情を訴えるしかない」と一切、妥協せずに質問を続けた。
「新・就職氷河期」の今、就職未定の大学生が17万人もいる。
私たちの報道に何かしらの手がかりを求めている学生は、彼だけではない。
私は労働分野の取材経験はまだ浅いが、非常に大事な取材と実感している。
「とにかく働きたい」と彼は繰り返していた。就職先が決まらないことで、大学生たちは将来を全く描けないでいる。
労働取材は、人生そのものの取材であり、大きなやりがいを感じる。
彼の思いに報いるため、今後も様々な声を拾い集め、伝え続けていきたいという思いを新たにしている。
URLリンク(www.nhk.or.jp)