07/09/04 15:37:32 j5Yik8OQ0
山内中学校の正門より右斜め向かい、三階建ての近代的な住宅が三棟建っている。
二十年前、そこには新興住宅地には似つかわしくない長屋が三棟並んでいた。
星飛雄馬が泣きながら飛び出してきそうな（マンガ「巨人の星」を知らない人はごめんなさい）
その平屋の集合住宅を見たとき、遠い少年時代を思い出してノスタルジックな気持ちになったものである。
第二次世界大戦の際、川崎市高津区から稗田原に続く多摩丘陵の各地は陸軍の演習場であった。
この広大な土地は民家も少なく、起伏に富んだ地形が中国の地に似ていることから演習地に選ばれたと言う。
山内地区には射撃場（現在の國學院大學のグランド）と廠舎（しょうしゃ＝演習兵の宿泊施設）が建設された。
稗田原はこの廠舎があったことから、地元ではこの地を「ショウシャ」と呼ぶこともあったと言う。
山内中学校の敷地と先ほどの長屋はこの廠舎の跡地である。
戦局がおしつまった昭和十九年には演習兵も東京の部隊に食料を供給する「農耕隊」として駐屯するようになる。
戦後、この「農耕隊」と一般の周辺住民とで帰農団が生まれ、廠舎は住宅となり、稗田原一帯は集団農場となった。
昭和四十七年、稗田原は美しが丘五丁目となり、続々と新しい住民が移り住むようになると、
廠舎と農地は瀟洒な住宅とマンションが建ち並ぶ閑静な住宅街に姿を変えた。