07/08/22 05:39:33 fkg5leha
[NHK 視点・論点] 4時20分放送
国際通貨研究所理事長 行天豊雄 『人民元と中国経済の行方』から抜粋
中国の人民元に対する国際的関心がまた高まっている。
最大の原因は中国の通貨当局が大規模な市場介入をして人民元相場の上昇を抑えている中で、中国の貿易黒字が急増していることにある。
ここ数年、中国の貿易黒字の急増は異常ともいえるスピードである。
2003年には450億ドルだったのが、2007年には2500億ドルに達すると思われ、世界最大の黒字国である。
ところが、人民元の為替相場は貿易黒字にも関わらずあまり切り上がっていない。
その原因は通貨当局が大規模な元売りドル買いの市場介入を行っているからである。
その結果中国の外貨準備は急増し、現在1兆3000億ドルを超える、世界最大の準備保有国となっている。
介入により元の流動性が供給され、それが株式・不動産ブームを支え、海外資産の獲得を活発にし、少数の大金持ちが生まれる構図を作っている。
輸出と投資に指導され、毎年11%を超える成長を続ける中国経済については”過熱状態ではないか”という危惧が内外で高まっている。
拡大する貿易黒字に対しては当然のことながら国際的批判が強まっている。
にもかかわらず中国当局が人民元の大幅な切り上げに依然として極めて慎重なのはなぜだろうか。
それは一言で言えば、雇用への悪影響を恐れているからである。
中国では経済の発展に伴って地方から都市への人口移動が続いており、今後数十年間で約4億人が都市化すると予想されている。
これだけの数の人間に都市部で新たな職を提供するには、毎年少なくとも8%の経済成長が必要といわれ、輸出部門の拡大は大きな役割を担う。
人民元相場の切り上げはたとえ数%の規模であっても、一部の輸出企業に大きな打撃を与える恐れがあり、企業倒産失業増大をもたらす可能性がある。
都市失業の増加による社会不安の悪化を最も恐れる政権指導者層としては、
米国の議員が要求しているような人民元の一挙大幅な切り上げは絶対に取りえない選択である。
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