04/11/11 00:40:47 1uqqkWmx
最上階の貸し切り風呂は陶器の湯槽だった。ふたりでゆっくり入れる大きさだ。
窓からは石段街を見下ろせる。
茶褐色のとろりとした湯につかる…
ぷはっと息を吐きながら入る私を見て彼女は笑った。
ゆったりと伊香保の湯を堪能し、浴室脇にある畳敷きの小あがりで涼む。
しつらえの庭では秋の虫が鳴いている。
湯上がりの身体に、麦茶が染み渡る。麦茶を飲む彼女の白い喉が眩しい。
さらに私は大浴場に行き、彼女は展望露天風呂に行った。
広い大浴場では四肢を思いっきり伸ばした。これぞ至福のとき…
湯上がり処で待っていた私に、「お待たせ。お味噌汁の具になってしまった気分だわ」と、
薄桃色に上気した顔で彼女がおどけてみせた。
茶褐色の湯に白い肌の彼女が入っている様は、そう、味噌汁に浮かぶ豆腐のようだ。
想像して私は思わず麦茶を吹き出した。