04/11/02 19:34:07 tsybJvFe
私は岸権旅館の車寄せに車を乗りつけた。
旅館の入り口には篝火が焚かれていた。係に車の鍵を渡し、案内されたラウンジでチェックインを済ます。
熱いおしぼりが嬉しかった。彼女は、出された抹茶と羊羹が甚く気に入ったようだ。
来る途中、水沢観音に寄ってきた。
「たくさんあげるところがあって、お線香足りなくなっちゃった」と言いながら、一心に手を合わせ祈る彼女の横顔を、私は愛おしく見つめた。
自らが突いた梵鐘の大きな音に戸惑いながら「鐘を突くなんてはじめて」と無邪気に目を輝かせている。
おみくじを買い、「待ち人、まもなく現れる…。もう現れてしまったみたい。ご利益の先取りね」と悪戯っぽく私を見つめた…
参拝を終えて車に乗り込むと、「ちょっとお腹空いちゃった」と彼女が云った。
私は少し下ったところにある清水屋で水沢うどんを食べることにした。香ばしい胡麻のつゆに彼女は、
「胡麻つゆなんてはじめてよ。本当にこのおうどん美味しいわ。今日ははじめてのことばかり…あなたといると…いつも笑顔でいられそう」と微笑んだ…