04/07/18 14:36 ehTbIlJR
『………と、言うわけさ。
「えっと……よく分かりませんが。
《とあるレストラン》と《人気メニューのナポリタン》
それのどこが不審だったんですか?
『いやいや、それこそが推理の糸口になったんだ。
その店には看板が無かったし、メニュー表にも店名は記されていなかった。
実に不親切だが、自意識過剰な店にはままある事さ。
仕方ないので、私は何気なく店長氏に店名を訊ねた。
そうして返ってきた答えが《とあるレストラン》だったのさ。不思議だろう?
「は?
『いいかい、例えば君、
知悉していない事柄について答えなければならない場合、君ならどう切り抜ける?
「はあ、そりゃ、曖昧な表現で誤魔化しますが。
……あ、まさか。
『そう、店長氏は間抜けにも自分の店の名前を御存じなかったんだ。
しかも、誉め手のないギャグでお茶を濁した。
伝票類をちょっと覗いてくれば、すぐに解決する問題であるにも拘らず、だ。
これが第一の不審点さ。
「では、ナポリタンの不審な点は?
『私の次なる質問、
お薦めは何か? という問いに、店長氏はナポリタンが人気ですと答えた。
いわゆるお薦め・人気メニューというものは店側の都合で提示されるものが多い。
コスト重視なら、材料費が安く且つ長持ちする煮込み料理、といった具合にね。
それを顧みるに、森の奥という立地の夜間営業で、
麺料理、しかもナポリタン―回転率重視の料理―を人気メニューと言って憚らない
店長氏に対して、僕はその経営手腕を疑わざるを得ない。
これが第二の不審点。