09/04/14 21:08:31.56 9NVh1JPw0
タ「雨、止まねーな・・・」
ち「タカシが雨男だから・・・・本当に困る・・・」
いつの間にか、ちなみはまた顔を上げ、いつもの毒舌に戻っていた。
タ「なあちな、折り畳み傘とか持ってないの？」
ち「・・・あ、あった」
ちなみの手には、小さめの折り畳み傘が握られていた。というか、なんでこのタイミングで出すんだよ。
タ「・・・なあ、なんで最初に出さなかったんだ？」
ち「・・・忘れてた・・・」
忘れてたってどういうことだよ。
タ「・・・どのみち、助かった。ちな、それで一緒に帰ろうぜ」
ち「・・・ぇ！？あ・・・い、いや、えっと」
概ね予想道理の答えだ。まあ、そうだよな。好きでもない男に言われても、うんとは言わねえよな、普通。
試しに言っただけのつもりだったけど、やっぱちょっと傷つくなあ・・・。
タ「なんてな。冗談だよ、ちなはそれで帰りな。俺はこのまま帰るから」
ち「え、あ、え、えっと、・・・・ぅん、ま、待ってっ！」
ちなみにしては大きなその声に、俺は思わず振り返った。
そのときのちなみは、なぜか少し小さく見えた。
ち「・・・ん。・・・は、入れ・・・」
タ「・・・・・」
ちなみはそっと、俺に傘を差し出した。ちょうどさっきのように、深く俯いて。
タ「・・・いいの？」
ち「い、いいから・・・・」
俯いてその腕をいっぱいに伸ばして両手もちで傘を差し出すその光景は、
恋する恥ずかしがりの女の子が、男を相合傘に誘っている・・・そんなものにしか見えなかった。少なくとも、その時の俺には。
タ「・・・ちな・・・・。・・・わ、わかったよ・・・」
ち「・・・・うん・・・」
・・・ってことは、こいつはまさか、俺が・・・・！？
タ「・・・・・」
ち「・・・・・」
その日の帰り道、俺たちはお互い俯きあって、なにも話すことができなかった・・・。