08/12/27 06:51:49.05 QvEZH9gX0
まずはお題をもらいましょう。基本的に過疎スレなので↓でもらうと良いです
→人のお題を使って書くのもありです。作品がたくさん投下されればスレも盛り上がります
▽投下の際の注意点
・投下宣言は「投下してもいいですか?」ではなく「投下します」。投下宣言が被らない限り、許可はいりません
・投下する人は最後に「終」「完」「了」など、投下完了の合図をお願いします
・名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』 (例:『BNSK(お題:文才) 1/5』)を書いて下さい
・まとめる際にコピペがしづらいので、メール欄は空にして投下してください。
・作品を投下する際は、テキストエディタで仕上げてから、完成品をまとめて投下して下さい
▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい
▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・落ちた場合は立てられる人が新スレを立てて下さい。人がいる時間を目安に
▽その他
・通常作品でもトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 06:52:05.69 QvEZH9gX0
▲週末品評会
毎週木曜日の夜~土曜日の午前中に、お題が出されます
作品は土曜日の0:00から日曜日の23:30までの間に投稿してください
その後それぞれに評価をして頂き、月曜日の0:00から火曜日の24:00まで投票を受け付けます
▽作品投稿
・ジャンルは自由、時間を過ぎての投稿も選考外ではありますがまとめサイトに掲載します
・スムーズな流れを保つため、メモ帳等の機能を使って全部書き終わってから投下するようにお願いします
・優勝時の本人確認のため、週末品評会参加者は出来れば酉を付けて下さい(酉は名前欄に#と自由な文字列)
→毎回同じ酉で出続けると周囲にわかりやすいです
・作品のタイトルは現在レス数/総レス数、酉を除いて、全角二十文字以内にしてください。
▽締め切り間際の作品投稿について
週末品評会では、投下締切時間の間際に集中的に投下が起こります。
それを無管理で放っておくと大変な事になるので、23時から「予約」という形を取り、運営の指示に従って順番に投下してもらいます。
予約締切は23:30で、以降は時間外の扱いになります
▽投票
・本スレへの書き込みでお願いします(複数選択可)
・ぜひ書き手の方も他の人への感想や投票を行って下さい
・簡単でよいので、感想、批評等書いて下さい。書き手の次への糧になります!
・投票は投票用テンプレを使うか、【投票】と書いて書き込んで下さい
▽優勝者特権
・投票で一番支持を得た作品の作者の方には、次回品評会のお題決定権が与えられます
・投票数が同数の場合は、気になった作品の投票数の差で決定します
・お題の発表時間は優勝者に一任されますが、遅くても土曜日の午前中には提示して下さい
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 06:52:25.34 QvEZH9gX0
411 名前: ◆/ks5Y92PHE [] 投稿日:08/12/24(水) 23:40:57 ID:oL3UHmfS
いつ規制がとかれるか分からないので…クリプレです。
宇宙、森ときたらやっぱり…
第143回週末品評会 『年末年始』
規制事項:6レス以内
投稿期間: 2008/12/27(土) 00:00~2008/12/28(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※
投票期間: 2008/12/29(月) 00:00~2008/12/30(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 06:53:15.28 QvEZH9gX0
人いないだろうけど、品評会中だしまあいいか
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 06:58:04.07 Zq8QJWZSO
お題くれ
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 06:58:17.49 MwVe37Ho0
>>1おつ。
俺が来てから連続でスレが落ちるなんて……こんなに悲しいものはない
8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 06:59:53.11 QvEZH9gX0
>>6
禁止事項
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 07:18:23.08 MwVe37Ho0
>>6
プレゼント
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 07:18:40.94 MwVe37Ho0
また下げてしまった
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 08:22:12.66 Tv9gN/Sr0
保守なんかくだらねえぜ
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 09:03:37.53 MwVe37Ho0
だけど保守する。
初めて作品を執筆しているんだけど泥沼に嵌ってしまった。
0から積み重ねて完成を1とする。
どんなに積み重ねても0.99999……って感じで完成には届かない。
この地獄ループからは抜け出せるきがしねぇー
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 09:59:57.22 QvEZH9gX0
ほ
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 10:34:59.55 MwVe37Ho0
ほ
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 11:11:27.98 Dz5znlTdO
ぬ保守
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 11:12:56.08 MwVe37Ho0
まとめみたら結構DAT行きが多いのな。少し安心した
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 12:08:10.54 MwVe37Ho0
ほ
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 12:39:21.95 Dz5znlTdO
まだ品評会0作?
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 12:50:27.45 MwVe37Ho0
まだみてないよ。
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 13:25:25.43 PXmvTc5m0
おだいください
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 13:26:01.89 QvEZH9gX0
>>20
亡霊
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 13:34:33.58 PXmvTc5m0
はっく
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 13:45:29.24 5K5WMT3v0
保守
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 13:47:13.28 Iu0FLpYhO
年末年始も休みなしで仕事だけど今日からまた書くぞ
25:お題「早足」(0/5)
08/12/27 14:08:20.12 mxZGBtfS0
投下します。
26:お題「早足」(1/5)
08/12/27 14:08:52.36 mxZGBtfS0
四月。
少し強めの風が吹き抜けてゆく。
眩しさに満ちた青い空は何処までも高く、透通っていた。
そして、止め処も無く舞い散る桜の花びら。
数え切れないほどの細かな薄紅色が、アスファルトの黒を埋め尽くそうとしている。
街を見下ろす事の出来る山沿いの登り道は、見事な桜並木になっていた。
この道を真っ直ぐ辿れば、この春から私が通う事になった女子大の正門が見えてくる。
そんな道の途中。
「デスペラード・ワインダー」
アカネは掠れた声でそう言うと、小さく笑みを浮かべて、大きなバイクのハンドルに手のひらを乗せた。
それは、とても大きな漆黒のバイクだった。
丸みを帯びた部分はガソリンタンクだろうか、私とアカネの顔が映り込むほどに磨き抜かれていた。
「高校の時、私、学校に内緒でずっとバイトしてただろ?そのお金で買ったんだ、中古だけどね」
そう言いながらアカネは、ハンドルをポンポンと軽く叩いた。
「うん、カッコいいね。アカネに似合うと思うよ」
そう言って私はアカネを見上げた。
アカネは相変らず背が高くて、アッシュブラウンに染めた髪を、男の子みたいに短くカットしていた。
バイクと同じ、黒のライダースジャケットにスキニーデニム、そしてブーツという格好もアカネらしかった。
「あはは、ありがと」
照れたように笑って、鼻の頭を指先でこするアカネは、やっぱり男の子に見える。
そんなアカネに、この大きくて黒いバイクは本当に良く似合っていた。
「アカネの引越しって、来月だったよね?」
山間を吹きぬける風が、また少し強くなった、私は額にかかる髪を指先で払いながらアカネに尋ねる。
するとアカネは、少しバツの悪そうな表情を浮かべて、小さな声で答えた。
「いや……ちょっと予定、早めちゃった。今日、出発しようと思うんだ」
アスファルトの上に落ちていた桜の花びらが、風にあおられて渦巻くように高く舞い上がった。
27:お題「早足」(2/5)
08/12/27 14:09:31.93 mxZGBtfS0
私とアカネは同じ高校の同級生だった。もちろん今でも友達だ。
でも、出会った頃はただの知り合いで……
いや、私が一方的にアカネの事を知っているだけという間柄だった。
アカネは女子陸上部に所属していた。
中学の頃からスプリンターとして記録を残していたアカネは、高校生になってからも、一年生にして
インターハイへの出場が認められるほどの選手だった。
そして私は写真部に所属しており、アカネを被写体に撮影を行ったりしていたのだ。
それ程アカネには華があったし、何より我が校期待のエースだったのだ、パパラッチは私だけじゃない、
写真部全体がアカネのおっかけと成り果てていた。
簡単に言えば、アカネのネームバリューと見た目の良さを利用して、高校写真展で入賞しようという…、
弱小文化部の涙ぐましい活動だったわけだ。
だけどアカネは、二年になったばかりの六月、インターハイの地区予選大会で膝の関節を壊してしまい、
その故障がもとで、二度と走れなくなってしまった。
アカネと私が友達になったのは、そんな事のあった後だった。
「急な話だね。アカネを見送りたいって子、他にも大勢いるんだよ?」
少し口を尖らせて、私はアカネの顔を下から覗き込み、キッと睨んでみせた。
「ごめん……」
短く謝ったアカネは、私の視線を避けるように横を向くと、そのまま黙り込んでしまった。
困った奴だ。
私は腕を伸ばし、人差し指の先でアカネの額を軽く突っついた。
「はいはい、黙り込まないの。アカネの悪い癖だよ、黙っちゃうのって」
「ごめん……」
「良いから。それで?あと一ヶ月、待てなくなったの?師匠だっけ?良いって言ってるの?」
アカネは小さく肯いた、そして口を開く。
「うん。連絡してある、荷物は混載便で届けてるし、あとは私が行くだけ」
なんとなくため息をついてしまった。アカネはいつだって性急すぎる。
28:お題「早足」(3/5)
08/12/27 14:10:11.89 mxZGBtfS0
私は、アカネから視線を外して、眼下に広がる精巧なミニチュアの様な住宅街を見下ろした。
「いつも急ぎ過ぎだよ。どうして待てなくなるかな。それにいきなりカメラマンに弟子入りだなんて……
専門学校に行ってからだとか、大学を出てからだとか、下準備するための選択肢は色々あったのに」
非難する様な私の言葉にアカネは、また少し黙った後、はっきりとした声で答えた。
「目標が見えたなら、最短でそこに行きたいんだ。早く行きたいんだ。遠回りはしたくない」
アカネも街を見下ろしていた、髪が風にあおられて後ろになびいている、白い額が見えた。
故障の為、陸上部を辞めざるを得なくなったアカネは、その日から学校を休みがちになった。
たまに学校内でアカネを見かけても、かつての華が感じられなくなっていた、少なくとも彼女の事を、
いつもファインダー越しに追掛けていた私には、そんな風に映った。
それは凄く寂しくて、悔しくて、私はアカネの為になにか出来る事はないかと考えた。
そして私はアカネに、私の撮った写真を贈った。
それはアカネが被写体のモノクロプリントだった。
「ごめんね、我侭で。でも私にはそれしか出来ないし、それが私にあったやり方だから」
アカネは澄み切った瞳に、街の景色を映している。
綺麗な瞳だった。
その瞳は、かつて私が撮影した、アカネの写真と同じ色をしていた。
インターハイ出場を賭けた女子100メートル決勝直前の写真だった。
コースの端に片膝を立てて座っているアカネは、首に白いタオルを掛けていた、少し俯き加減で、
だけど力に満ちた眼差しは遥か前方を見据え、表情は美しく張り詰めていた。
写真部に在籍中、私が撮影した有象無象の写真の中で、この一枚だけは別格だった。
なにがどう別格なのか説明は出来ないけれど、でも、私にとって特別な写真だった事は確かだ。
その写真をアカネに贈った。
どうしてそれがアカネの為になると思ったのかは解からない。
今にして思えば、かなり出すぎた真似をした様な気がする。
そんなものを贈って、アカネの為になると思っていた自分は、酷く幼かったのかも知れない。
でも、その写真を機に、私とアカネは友達になった。
そしてアカネは、カメラマンになる為の勉強を始めたのだった。
29:お題「早足」(4/5)
08/12/27 14:10:39.08 mxZGBtfS0
「解かった、みんなには私から伝えておく。アカネは相変らず、前しか見えてないんだから」
そう言って私は肩を竦めてみせる、そんな私の様子を見て、アカネは口許を綻ばせた。
「ありがと。うん、みんなには悪い事しちゃったね。代わりに謝っておいて」
「はいはい、アカネはバカな子でしたごめんなさい、って言ってたって伝えとく」
「あはは、なんだそれ」
私の肩をポンッとひとつ打ち、アカネは停めてあるバイクに向き直ると、シートの上に置いてある
ヘルメットを手に取った。
黒い宝石の様に輝くバイクを見つめて、アカネは呟く。
「……これが、私の新しい足。どこまでも行ける。誰よりも速く走れる」
それからアカネは、私を真っ直ぐ見て言った。
「そして、私の新しい夢は、おまえに貰ったから。早く叶えたいんだ」
アカネは、100m決勝スタート直前にみせた、あの時の眼差しで私を見ていた。
「泣かせる様な事、言わないでよ……」
私は俯いて笑うフリをした。
まっすぐなアカネの眼差しが、少し悔しかった。アカネの今いる場所が、羨ましかった。
本当なら、私が選ぶべき……私にも選ぶ事が出来た道だったのかも知れない。でも恐かった。
そこに立つ事が恐かった。自信が無かった。
なのにアカネは、何の迷いもない眼差しで、その場所に立っている。スタート地点に立っている。
私はまだ、そこに立てないのに。そこに立つことが恐いのに。
誰とも別れたくないし、一人は恐いのに。アカネとだって別れたくないのに。
「……また逢えるよね?アカネ」
俯いたまま、私は言った。
そんな私の頭に、アカネはバイクのヘルメットをコツンとぶつけて笑った。
「当たり前だろ。次逢う時には、お前を隠し撮りした写真、プレゼントしてあげるよ」
「バカ、いらないわよ、そんなの」
私が振り回したコブシをアカネは器用にかわすと、笑顔のままヘルメットをかぶった。
そしてバイクに跨ると、キーを回してエンジンに火を入れた。
低い音が桜並木の道に響いた。
30:お題「早足」(5/5)
08/12/27 14:11:28.43 mxZGBtfS0
軽く手を上げたアカネは、叫ぶように言った。
「じゃあ、また!」
私も、エンジンの音にかき消されない様、大きな声で返した。
「またね!アカネ!」
ヘルメットの奥に見えるアカネの目は、楽しそうに輝いていた。
アカネの両手がバイクのハンドルを握った。
一際エンジン音が大きくなり、そして次の瞬間、アカネを乗せたバイクは走り出した。
艶やかな桜の花びらを後方に巻き上げ、路面を滑る様な勢いで、山沿いの道を下ってゆく。
あっという間にアカネの背中は小さくなる。
やがて大きなカーブに差し掛かり、アカネの姿はその向こう側に消え、完全に見えなくなった。
私は再び歩き始めた。
また強い風が吹きつけて、桜の花びらが盛大に舞い踊る。
視界が薄紅色に染まりそうなほどだ。
アカネは、この桜吹雪の中を一気に駆け抜けて行った。
アカネは、何時だって駆け抜けてゆく、最速で駆け抜けてゆく。
恐いものなんて、なにも無いかのように。
私にはそんな事、出来ないのかも知れない。
だけど。
ほんの少し早足で、私はこの山沿いの道を登って行く。
これが私の速度だ。
アカネの様にはなれないけれど、アカネのいる場所に辿り着くのには時間が掛かるけれど。
一歩一歩前に進もう。
そしてまた、アカネに逢おう。
アカネ。
その場所に、私も行くからね。【おわり】
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 14:12:24.65 mxZGBtfS0
以上です。
お目汚し失礼致しました。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 14:42:06.77 MwVe37Ho0
>>早足
読みました。
アカネの登場が唐突では?と感じました。
後ろからバイクが近づいてきた。→誰だろう?→ヘルメットを取ったら高校の頃の友達のアカネでした。「よぉ、○○。久しぶり」
こんなのが欲しかったです。
>>私とアカネは同じ高校の同級生だった。もちろん今でも友達だ。
でも、出会った頃はただの知り合いで……
いや、私が一方的にアカネの事を知っているだけという間柄だった。
アカネは女子陸上部に所属していた。
ここは、少し違和感があります。<高校時代の友達>という情報は最初の方で持っていき、ここは
私とアカネが……
うーん、どうもっけばいいのか……。
文才ないなー。
とりあえず文才のない俺には参考になりました。
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 15:27:29.52 vHCoBuoE0
ほふり
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 15:36:57.74 A872bve50
チョモランマグレートホルスタインギガンテタイフーンメガフィストドメスティックワロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 15:55:56.96 HJx3GijL0
test
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 16:16:31.67 MwVe37Ho0
ちょっと離れる。
保守は頼んだ
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 16:22:46.19 Dz5znlTdO
しゃあないな
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 16:52:13.81 QvEZH9gX0
ほ
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 17:23:00.50 5K5WMT3v0
年末でも年始でもなんとかなるけど、年末年始ってなると何も思いつかない。
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 17:23:04.52 Dz5znlTdO
ほ
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 17:56:11.17 QvEZH9gX0
ほ
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 18:15:15.60 QvEZH9gX0
ほ
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 18:26:26.87 mxZGBtfS0
>>32
ご指摘感謝いたします。
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 18:49:58.97 szULtHg00
お題ください
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 19:03:31.08 Dz5znlTdO
>>44
女優
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 19:28:01.32 Tv9gN/Sr0
保守
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 19:57:53.76 QvEZH9gX0
ほ
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 20:20:40.87 QvEZH9gX0
ねるほ
49:お題「にんじん」(0/5)
08/12/27 20:27:03.03 jV15Jiym0
投下します。
まともな文章を書くのはこれが初めてなので、
色々と指摘して貰えたら幸いです^^
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 20:35:28.95 Dz5znlTdO
投下マダー?
51:お題「にんじん」(1/5)
08/12/27 20:36:19.47 jV15Jiym0
「貴ちゃん、この前送った人参届いた?」
電話越しの嬉しそうな母の声。
「うん、届いたよ。」
「そう、良かった。今年のはいつもより育ちが良かったのよ。」
年に一度、冬が来ると母はきまって東京にいる私に人参を送りつけてくる。
私が人参嫌いだとも知らずに。
「今年で貴ちゃんが上京してから6年目になるでしょう。だから今年は6本送ったのよ。」
「うん、いつもありがとね。じゃあ、私仕事忙しいし、切るね。」
「そう、お仕事頑張って。あと、体に気をつけなさいね。」
「分かってるよ。じゃあ。」
「はあ」
母からの電話の後はいつもため息が出る。
別に母が悪いわけでは無いのだけれども。
傍らのダンボールからは土まみれの人参が顔を覗かせている。
少し形が不格好だが、見るからにずっしりと重そうで、ふさも負けじと自己主張をしている。
ダンボールは人参の生命で溢れていた。
それなのに私は今年も母の人参を食べる気にはなれなかった。
「はあ」
ため息ばかりが、でる。
52:お題「にんじん」(2/5)
08/12/27 20:43:09.51 jV15Jiym0
私が人参を嫌いになった理由は簡単である。
あなたは笑ってしまう理由かもしれないけど、私にとってはとても深刻な問題だ。
私の顔は人参そっくりなのである。
元々面長の顔は歳を重ねるにつれ頬がこけてきたことで一層その長さが強調され、あごは鋭い上にしゃくれている。
おまけに赤ら顔ときている。
これを人参顔と呼ばずに何と呼べるのか。
どうやら、他人もそう思ってるらしく、
私は何度か陰で異性に「人参女」と呼ばれていたのを耳にしたこともあるし、
軽いいじめのようなものを受けたこともある。
やっぱり、自覚しているとはいえ、他人にそう言われるのは正直辛い。
だから、母が送ってきた土まみれで不格好な人参を見ると、何だか不甲斐ない気持ちになる。
その姿が自分と重なってしまうから。
人参には何も罪はないのだけれども。
53:お題「にんじん」(3/5)
08/12/27 20:55:26.29 Be0+S0tL0
結局、今年も私は人参を食べることが出来ずに腐らせてしまった。
腐った人参はどす黒くて、やっぱり私そっくりだった。
そして、その年が母から人参が送られてきた最後の年だった。
母は次の年の春に亡くなった。
畑作業中に心筋梗塞で倒れ、それっきりだったという。
私は母の葬式に出る為6年ぶりに帰郷した。
実家に着く父が疲れた表情で出てきた。
「久しぶりだな、お前なかなか帰って来ないからな。」
「仕事が忙しかったのよ。」
「とりあえず、まああがれよ。」
私達はそれっきり無言で家に入った。
久しぶりに見た父の背中はやはり疲れているように見えた。
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 21:06:51.68 Dz5znlTdO
もしかして書きながら投下してんのか?
55:お題「にんじん」(4/5)
08/12/27 21:26:09.11 Be0+S0tL0
居間に着くと父がお茶を入れてくれた。
お茶はいつも母が出していたから、それはおかしな光景のように思えた。
父は私にお茶を出し、湯飲みに口をつけながら椅子に腰掛けた。
そして暫く沈黙が続いた。
私は何をするわけでもなく、ただ机の上に出来た日溜まりを見つめていた。
どの位時間が経ったのだろうか。
いつの間にか机の上の日溜まりは消えていた。
父は急に口を開いた。
「お前さ、母さんの人参食べていなかったんだって?」
父の思ってもみない言葉に私は目を向いた。
何で……父さんが知ってるの……
私に構わず父は言葉を続ける。
「母さんがさ、言ってたんだ死ぬ少し前に。
“あの子私の人参食べてないのよ”って
私は驚いたけど、母さんはずっと前から気付いてたみたいだな。
」
母さん、知ってたんだ。
そんなこと今まで何も言わなかったのに。
父はまた湯飲みに口に付け、はあと息をはいた。
そしてまた言葉を続けた。
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 21:27:55.11 WcM3fyjt0
保守
57:お題「にんじん」(4/6)
08/12/27 21:28:01.99 Be0+S0tL0
「その時の母さん、少し寂しそうだったよ。
“昔は人参あんなに好きだったのに、あの子は私の知らない間に人参を食べなくなってしまったのね。
それが親離れっていうことなのかしら。だとしたら受け入れなきゃいけないのかもね。
でも、いつかまた私の作った人参を食べてくれる気もするのよ。
だから、私、お節介だとしてもあの子に人参を送り続けようと思うわ。”
そう言って寂しそうに笑ってたよ。」
私は何も答えず、窓の外に目を向けた。
父はもはや、私ではない誰かに話しているようだった。
「まあ、お前は忘れたのかもしれないが、お前は本当に母さんの作った人参が好きだったんだ。
だから、お前が人参を嫌いになろうと、母さんはずっと覚えていたんだ。
いや、むしろ信じたかったのかもしれない。」
父はそこで言葉を切ってお茶をすすった。それっきり何も言わなかった。
忘れてなんかいなかった。
ずっとむかし、確かに私は母の人参が好きだった 。
「おかあさんのにんじんだいすき!」
そう言うと微笑む母のことも好きだった。
58:お題「にんじん」(5/6)
08/12/27 21:28:27.53 Be0+S0tL0
「その時の母さん、少し寂しそうだったよ。
“昔は人参あんなに好きだったのに、あの子は私の知らない間に人参を食べなくなってしまったのね。
それが親離れっていうことなのかしら。だとしたら受け入れなきゃいけないのかもね。
でも、いつかまた私の作った人参を食べてくれる気もするのよ。
だから、私、お節介だとしてもあの子に人参を送り続けようと思うわ。”
そう言って寂しそうに笑ってたよ。」
私は何も答えず、窓の外に目を向けた。
父はもはや、私ではない誰かに話しているようだった。
「まあ、お前は忘れたのかもしれないが、お前は本当に母さんの作った人参が好きだったんだ。
だから、お前が人参を嫌いになろうと、母さんはずっと覚えていたんだ。
いや、むしろ信じたかったのかもしれない。」
父はそこで言葉を切ってお茶をすすった。それっきり何も言わなかった。
忘れてなんかいなかった。
ずっとむかし、確かに私は母の人参が好きだった 。
「おかあさんのにんじんだいすき!」
そう言うと微笑む母のことも好きだった。
59:お題「にんじん」(6/6)
08/12/27 21:36:35.92 Be0+S0tL0
気が付くと私は母の畑の中にいた。
懐かしい土のにおい。
ふと地面に目をやると収穫し損ねたのだろうか、人参が1本埋まっていた。
手で掘り返し、土を軽く払って暫くその人参を見つめた。
暫く見つめたのち、かじってみた。
それは紛れもなく母の人参だった。
ああ、どうして私は今までこの人参を食べることができなかったのだろう。
どうしてあんな些細なことにこだわってたんだろう。
こんなに、簡単なことだったのに。
一口食べて、美味しいって言うだけで良かったのに。
久しぶりに食べる人参は
とても甘くて、どうしようもなくしょっぱかった。
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 21:40:55.61 Be0+S0tL0
終了です。
紙に書いたものを移していたので時間がかかってしまいました;;
要領悪くてすいません、以後気を付けますね;;;
それから当初5のつもりが
思ったより改行が多かったみたいで
途中から6に変えました;;;
色々とすいません
お目汚し失礼しました
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 21:59:36.31 Tv9gN/Sr0
保守しつつテンプレ読む
62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 22:17:10.78 Dz5znlTdO
ほ
63: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 22:46:10.45 yN9z6RDE0
品評会投下、2レスいただきます
64: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 22:47:56.08 yN9z6RDE0
朝は必ず訪れるものだと、人々は信じている。否、当然のことであると無意識に断じているのだ。
それは太陽が沈みまた昇る恩恵を常にうけているが所以の傲慢さであろう。そのことに文句をつける気はない。
太陽もしくはこの地球になにかが起きない限り、やはり朝は人々の目覚めのためにやってくるのだから。
普遍となった朝。しかし、年に一度、この日は人々にとって特別な朝である。元旦の初日の出。人々はこの光になんらかの特別な価値を見出している。
実質的にはいつもの朝とかわりがないと言うのに、その美しさに見とれてしまう。
「あつし、東はどっち?」
なつみが甘えるように語尾をのばしながら尋ねてきた。指差してやると、「ふぅん」と頷く。こちらとしてはもう少し反応が欲しいところである。
だがそんなこちらの思いなど気にもしていない様子のなつみは、ぱたぱたとありさに駆け寄って、東を教えてやっているようだった。
そんなことをしなくても、ありさは方角くらいわかっているだろうに。ありさはだが黙ってなつみの話を聞いている。いつものように抱えたプー子を時々指でいじりながら。
プー子はクマのぬいぐるみで、耳にはリボンがついている。ありさが幼い頃に母親に買ってもらったものらしい。
その母親を亡くし、ありさが口を閉ざしたのはプー子を買ってもらった翌日のことで、以来、ありさの一番の友達だということだ。
一時も離れたくないのだろう、ありさはプー子をこっそり学校に連れてきていた。修学旅行だとか、研修だとか。それは大学生になった今も続いていることで、今日も当然いるというわけだ。
プー子のリボンがついた方の耳は、ありさに一番触れられるところだから、他の部分よりもずっと毛の色の変わり具合が激しい。
今もありさはその耳をいじっている。なつみの話は昨年の思い出に移ったようで、まだまだ終わる様子はない。
なつみが話し続け、ありさは頷きながら聞く。これもまた小学校のときから変わらない光景だ。
車からはギリギリまで降りないと宣言し、その通り車の中にいる寒がりのゆうきを合わせて四人、ずっと一緒だった。
クラスが離れることもあれば、他に恋人ができたこともあったから、なにもかもを一緒にしてきたわけではない。だがこの四人で過ごした時間が一番長いことは確かだった。
ゆうきに向かって、時計を見せる。高松の日の出は七時十分。そろそろだ。のっそりと車から出てきたゆうきは盛大に欠伸をしながらこちらへ歩いてくる。
渋滞の中、運転手だったゆうきは一人寝れていない。なんとも不憫な話だ。帰りは自分の番かと思うと、げんなりする。
免許を持っていないから、と軽々運転手役から逃れた女の子たち―主になつみだ―は本当になにも心配ごとのない様子で楽しんでいるから、結局はよかったのかもしれないが。
ゆうきも同じようなことを思っていたのかもしれない。二人で苦笑いを交わす。女の子にはいつだって敵わないものだ。
なつみが突然声をあげた。振り向いてみれば山の端から眩しいほどの光が覗いている。思わず声が漏れた。
それは昨日も同じ光景だったのかもしれない。だがやはり、特別な光に見える。
皆も動かないまま見つめている。
65: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 22:50:54.04 yN9z6RDE0
タイトルいれてやり直しますごめんなさい
以下2レス
66:『A happy new yearは頭にあるの』1/2 ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 22:52:52.17 yN9z6RDE0
朝は必ず訪れるものだと、人々は信じている。否、当然のことであると無意識に断じているのだ。
それは太陽が沈みまた昇る恩恵を常にうけているが所以の傲慢さであろう。そのことに文句をつける気はない。
太陽もしくはこの地球になにかが起きない限り、やはり朝は人々の目覚めのためにやってくるのだから。
普遍となった朝。しかし、年に一度、この日は人々にとって特別な朝である。元旦の初日の出。人々はこの光になんらかの特別な価値を見出している。
実質的にはいつもの朝とかわりがないと言うのに、その美しさに見とれてしまう。
「あつし、東はどっち?」
なつみが甘えるように語尾をのばしながら尋ねてきた。指差してやると、「ふぅん」と頷く。こちらとしてはもう少し反応が欲しいところである。
だがそんなこちらの思いなど気にもしていない様子のなつみは、ぱたぱたとありさに駆け寄って、東を教えてやっているようだった。
そんなことをしなくても、ありさは方角くらいわかっているだろうに。ありさはだが黙ってなつみの話を聞いている。いつものように抱えたプー子を時々指でいじりながら。
プー子はクマのぬいぐるみで、耳にはリボンがついている。ありさが幼い頃に母親に買ってもらったものらしい。
その母親を亡くし、ありさが口を閉ざしたのはプー子を買ってもらった翌日のことで、以来、ありさの一番の友達だということだ。
一時も離れたくないのだろう、ありさはプー子をこっそり学校に連れてきていた。修学旅行だとか、研修だとか。それは大学生になった今も続いていることで、今日も当然いるというわけだ。
プー子のリボンがついた方の耳は、ありさに一番触れられるところだから、他の部分よりもずっと毛の色の変わり具合が激しい。
今もありさはその耳をいじっている。なつみの話は昨年の思い出に移ったようで、まだまだ終わる様子はない。
なつみが話し続け、ありさは頷きながら聞く。これもまた小学校のときから変わらない光景だ。
車からはギリギリまで降りないと宣言し、その通り車の中にいる寒がりのゆうきを合わせて四人、ずっと一緒だった。
クラスが離れることもあれば、他に恋人ができたこともあったから、なにもかもを一緒にしてきたわけではない。だがこの四人で過ごした時間が一番長いことは確かだった。
ゆうきに向かって、時計を見せる。高松の日の出は七時十分。そろそろだ。のっそりと車から出てきたゆうきは盛大に欠伸をしながらこちらへ歩いてくる。
渋滞の中、運転手だったゆうきは一人寝れていない。なんとも不憫な話だ。帰りは自分の番かと思うと、げんなりする。
免許を持っていないから、と軽々運転手役から逃れた女の子たち―主になつみだ―は本当になにも心配ごとのない様子で楽しんでいるから、結局はよかったのかもしれないが。
ゆうきも同じようなことを思っていたのかもしれない。二人で苦笑いを交わす。女の子にはいつだって敵わないものだ。
なつみが突然声をあげた。振り向いてみれば山の端から眩しいほどの光が覗いている。思わず声が漏れた。
それは昨日も同じ光景だったのかもしれない。だがやはり、特別な光に見える。
皆も動かないまま見つめている。
67:『A happy new yearは頭にあるの』2/2 ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 22:54:16.15 yN9z6RDE0
映画かなにかを見ているかのようだった。
だが、美しいこの光景を、どのフィルムでも完璧に写し取れはしないだろう。
わずかだった光が段々と大きくなり、もう太陽は三分の一も姿を見せたろうか。
やっと皆が動き始め、それぞれに感想を述べた。
まぁ、述べたと言えるほど堅くもなく、なつみなど「すごい」を連呼していただけだが。
ゆうきも頬を紅潮させて話している。
勿論興奮しているのは自分も同じだから、人のことは言えないのだが。
遠景が、こうも人に感動を与える。それはすごいことだと思う。
一人でしみじみしていると、またなつみが声をあげた。そうして眼下に広がる街に向かって、大きく息を吸った。
「A happy new year!」
とても気持ちよさそうで、楽しそうで、すぐに男二人も乗って、思い思いの言葉で叫んだ。それはすごく気持ちのいいことだった。
ありさは楽しげにこちらを見ている。そして一騒ぎしてから、急に真面目ぶったゆうきが今年もよろしく、と言った。三人も揃って礼をして、笑う。
来年もまた来よう、そう約束して、車に乗り込んだ。
ゆっくりしている暇などない。初詣におせちにと、することはまだまだあるのだから。
68: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 22:55:57.32 yN9z6RDE0
以上…なんだけど、段落はじめのスペースが表示されてないな…いれたのに…
申し訳ない。既に一回ミスってるし今回は諦めます
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 22:57:44.97 oEDRoaOL0
ワードで書いてる?
70: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 23:01:37.97 yN9z6RDE0
や、今回は携帯で打って、PCにメールで送って、メモ帳で編集した。
でもスペースは携帯でいれたまんまのやつ。
何が悪かったんだろ?
携帯かな?
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 23:03:01.29 WcM3fyjt0
>>70
締め切りまでは時間あるんだから、パソコンにしっかりと書き起こせばいいのに。
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 23:04:33.84 qBDsGhS30
>>60
とりあえずテンプレを読む。
作品を完成させて速やかに投下できる状態にしてから、投下宣言をすること。
無駄な空行があるせいで話が間延びしている。
空行は読み手に一息つかせる効果がある。
話としてはありがちで、文章力があるわけでもない。
けれども最初は誰もがそんなもんなので、めげずに頑張って欲しい。
書き続けていれば面白いアイディアも浮かぶし、それを生かせる文章力もついてくる。
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 23:05:38.09 qBDsGhS30
行頭の空白は半角だと反映されない。
携帯で打った空白が半角だったんじゃない?
74: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 23:05:47.03 yN9z6RDE0
ちょい言い訳。
今日一日バイトで拘束されてて、でも携帯は自由だからぽちぽち打ってた。
明日は日帰り旅行。
ってわけでなんか焦ってた。
75: ◆rEGWXIt34Y
08/12/27 23:06:53.14 yN9z6RDE0
あーなるほど…半角にしてたわ…
次回から気をつける。皆ありがとう
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 23:20:18.27 Dz5znlTdO
保守
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 23:32:07.93 Q56hskNV0
>>72
ご指摘ありがとうございます。
テンプレ細部まで見ていませんでした;;
以後気を付けますね
空行は多用し過ぎてはいけないのですね;;
確かに読み直してみると話が間延びしている感はありました
これからもめげずに書き続けたいと思います
為になる言葉、ありがとうございます
78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/27 23:43:16.81 PsY5PEbOi
別スレの話だが年末に発表する作品を書いてるやついるか
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 00:19:34.92 ClWf9NS40
今回は品評会やめたー
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 00:55:01.14 +jL7MCi3O
ほ
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:22:00.50 QMYWLXaO0
国語の成績が常々2だったこのあっぱっぱーな俺も書いてみたいと思う。
てなわけでお題ください。
82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:23:09.22 8TTNKgZt0
右手の薬指
83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:24:09.35 QMYWLXaO0
右手の薬指把握しまんた。
さあ、メモ帳を起動してがんばるぞー
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:39:02.64 kWQJqQ5sO
よーし
お題
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:40:50.54 a6HBAE0v0
>>84
山小屋
86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:41:00.23 8TTNKgZt0
カプチーノは忘れられた
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 01:58:44.29 8TTNKgZt0
じゃあ俺も短いのを短時間で書く。お題くれ。
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 02:04:20.57 eSpM0bOrO
サックス
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 02:05:01.28 8TTNKgZt0
サンクス
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 02:22:16.32 JS5fNw0pO
保守する
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 02:41:37.61 4Goeu7pyi
>>90
リンクス(ゲーム機的な意味で。)
92:お題:サックス(1/2)
08/12/28 03:02:15.91 8TTNKgZt0
「あら? あなた、もしかして未経験な方?」
見学だけでも歓迎、そう書かれたチラシを手に、私は女性と対峙していた。
いや、お恥ずかしながら、言いながら頭を掻く。
「いいえ、そういう方こそ大歓迎よ! 逆に上級者の方なんかがたまにいらっしゃると、
こっちこそたじたじになってしまって」
年のころは三十路に届くか否か。弱ったように笑う目じりにやわらかい印象がある。
「あ、ごめんなさいね、立ち話もなんでしょうし、どうぞ、入って入って」
はぁ、失礼します。
通された部屋は、驚くことに前後左右、四面鏡張りだった。
ただでさえ鏡で広々と見える空間に、三人ほどの中高年がしおれたように座っていた。
「ごめんなさいね、これ、落ち着かないでしょう?」
そんなことありませんよ。私もつられるように笑った。
ただ黙々と訓練するよりも、姿勢や格好、表情なんかもあわせて、なんというか、とに
かく自分に陶酔しながらやるのが上達の一助になるのでしょう。
「あらやだ、私、そんなこと考えてもみなかったわ。よし、それじゃ、次の方からはそれ
使わせてもらいましょう。実はね、ここ、ダンススクールから格安で借りている場所なの」
そうでしたか。褒められた少年のような気持ちになって、私はまた頭を掻いた。
「お、先生、今度は若いのを連れ込みましたね」
いつのまにか傍らにやってきた男性が口を挟んだ。
パンチパーマに固太りした腹、浅黒く日焼けした肌はいかにもそれらしい。
93:お題:サックス(2/2)
08/12/28 03:02:37.50 8TTNKgZt0
「もう、三村さん、連れ込んだだなんて」
「ガハハ、君、どうしてこのスクールに入ろうと思ったんだね。やっぱりアレか? 先生
の色香に魅せられて」
「三村さん!」
いえ、そういうわけではないのですが……実は不純な動機なのですが、上手だとモテる、
という話を聞きまして。でも、先生がこんなにお若くて美人な方だとは思いませんでした。
「あらまぁ、美人だなんて……」
「ガハハ! モテるためか! 結構結構。どれ、それじゃあ先生、ひとつわれわれのセッ
ションで歓迎といきますか」
「ええ、それじゃあ、是非楽しんで見ていってください」
こうして私のサックススクール見学は終わった。
さて、今度はどのサックススクールをセックススクールに脳内変換して遊ぼうか。
94:お題:サックス
08/12/28 03:06:40.17 8TTNKgZt0
うん。なんともコメントしにくいものを投下してすまないとは思ってる。
95:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 03:51:32.14 JS5fNw0pO
オチにワロタwwwww
保守
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 05:47:12.37 ZIuNKTy90
lhosyu
97:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 06:50:32.35 tfkqeJhQO
保守
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 08:13:17.09 ZIuNKTy90
ほ
99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 08:55:20.13 tfkqeJhQO
さすがに年末はみな忙しいか
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 09:40:19.74 tfkqeJhQO
保守
101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 09:44:48.85 ZIuNKTy90
はいはい保守保守
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 10:39:28.83 ZIuNKTy90
保守。
下手くそな俺が短時間で書くからなんかお題くれ
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 10:41:08.74 tfkqeJhQO
>>102
物好き
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 10:55:00.35 ZIuNKTy90
ぶ、ラジャー
105:物好き ◆ilM3Gg6oHc
08/12/28 12:02:09.68 ZIuNKTy90
投稿するよ
106:お題:物好き(1/2) ◆ilM3Gg6oHc
08/12/28 12:06:03.56 ZIuNKTy90
「俺、今年のクリスマスこそ寝ないでサンタクロースを捕まえてみせる。捕まえたらミノルにも見せてやるよ」
「浩太、去年も同じこと言ってなかった? どうせ今年も寝ちゃうんだろ」
「そんなことねーよ。今年はやるって言ったら、絶対にやる。そのために俺、授業中寝ておいたんだ。今年は準備万端よ」
今日はクリスマス。小学3年生の浩太とミノルは、集団下校中の列の間で、クリスマス談義に花を咲かせていた。
「それにしても、サンタクロースってのは物好きだよなぁ。なぁんで、見ず知らずの子供にプレゼントなんか渡すんだろう?
俺なら全部自分のものにしちゃうのに」
浩太はそう言うと、歩きながら腕を組んでみせた。プレゼントを渡す理由? そんなこと考えたことなかった。ミノルは少し考えてから、
「子供が好きだからじゃないかな」
「甘いなミノル。それにしたって限度があるぜ。子供なんて世界にはたくさんいる。たくさんだ。それを一軒一軒ひとりで周るんだぜ?
きっと何か裏があるんだよ」
「裏って?」
浩太の思わせぶりな口調に、ミノルは身を乗りだして聞いてみた。
「俺が思うに……サンタやつ、世界征服をたくらんでるだよ。子供をオモチャで惑わせて、支配するんだ。可愛い顔して本当は悪い奴なんだよ、サンタは」
「世界征服って……、それなら子供よりも大人を支配しなくちゃダメじゃん」
「ちがうよー。サンタさんはいい人だよ。だって、桜が起きたらサンタさんのプレゼントがあるもん」
間髪いれず、後ろを歩いていた浩太の妹、桜ちゃんが口を挟む。今年小学校に上がったばかりの妹は、兄の言うことを真正面から異議を唱えてみせた。
どうやらサンタが悪者というのが気に食わないらしい。
「ややこしくなるから桜は黙ってろよ、兄ちゃん達はサンタクロースの秘密を暴いている最中なんだ」
「だってー、サンタさんはいい人だもん……絶対そうだもん……」
桜ちゃんは泣きそうな顔で食い下がる。
107::お題:物好き(2/2) ◆ilM3Gg6oHc
08/12/28 12:08:01.26 ZIuNKTy90
「あ、あそこ見てみろよ」
浩太が指差す方向をミノルと桜は振り向いた。そこには横断歩道を待っている一人の男性がいた。
「汚く長い髪の毛、パンパンのリュックサックからはみ出しているポスター。ありゃどうみてもオタクだな。
サンタクロースが子供たちにプレゼントを渡す本当の理由は、子供の頃にオモチャとかゲームで遊ばせておいて、
将来、あんなダラシナイ大人にさせる計画なんだよ。クリスマスってのはサンタクロースが将来、世界征服するための予備工作なんだ」
「ひぇぇぇ。こわい……」
オタクを実際に見たのがいけなかったのか、桜ちゃんは浩太のこと言うことを信じ、体を震わせていた。
それほど男のいでたちは、汚らしいもので、男を避けるように人々は通り過ぎていく。
突然、ミノルは道に落ちていた石を拾いあげると、その男へ目がけ投げつけた。
「あ、バカ、何やってんだミノル!」
投げられた石は男の頭に見事当たり、何事かと、男は振り向いた。
「やべー、何されるか分からねぇぞ。みんな逃げろ!」
浩太を先頭に、集団下校していた小学生が散り散りと逃げていく。しかし、ミノルは男に向かって一心不乱に走っていく。
「兄ちゃんのバカ」
「いてぇ」
男の膝に渾身を込めた蹴りを入れ、ミノルは浩太たちのほうへと走っていった。
終
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 12:31:47.00 kWQJqQ5sO
>>107
読んだ
最後の、渾身を込めたってやつ、渾身の力を込めたのほうが正しいのか?
でも面白かったっす
お題くれ
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 12:53:12.14 gZM0eei80
>>108
ラブリー
110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 12:56:38.83 ZIuNKTy90
>>108
粗の多い文章を読んでくれてサンクス。
今一度、自分で読んでみて、地の文の少なさ、文章のつなげ方の悪さ。
ミノルの三人称で書いているのだから、オタク男が登場したシーンで地の文では兄と言わなければいけないんじゃないのかな?
とか思いました。
オモシロイといってもらえたのは初めてだからうれしい。
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 13:44:57.03 ZIuNKTy90
ラスト保守
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 13:48:05.21 mfh4nr2K0
お題おくれ
113:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 14:33:52.44 gZM0eei80
>>112
一人旅
114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 14:51:15.14 eSpM0bOrO
看護師
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 15:22:11.62 RdDseeDAO
捕手
116:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 15:56:13.25 rLNJiTYn0
保守お題クレ
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 16:16:12.24 gZM0eei80
>>116
最後尾
118:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 16:17:31.60 gZM0eei80
412 名前:龍の背 0/5 ◆LBPyCcG946 [] 投稿日:08/12/28(日) 15:57:27 ID:wYTLc5PB
規制中なので転載お願いします
品評会作です
119:龍の背 1/5 ◇LBPyCcG946
08/12/28 16:18:01.74 gZM0eei80
大きな大きな龍の背中の上。そこには街があり、人々が暮らしている。私が居る所はちょうど尻尾の端っこ
で、そこは活気に溢れた街だった。寒いけどみんな笑顔で、赤と白の幕で家々を覆って、お酒を飲んだり歌を
歌ったり、とにかく楽しそうな街。
「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」
何も祝われるような事なんかしてないのに、とにかく皆にそう言われた。私も「おめでとう」と返すと、少
し気持ちが良かった。
私はこれから旅をする。龍の尻尾から頭に向かって、長い長い旅だ。
「ほ、ほ、ほ。これから頭に向かうんじゃな」
そう私に声をかけてきたのは、大きな鯛を両手に抱えた男だった。ひげを蓄え、かなり太っていて、目尻が
下がりに下がり幸せそうな顔をしている。
「はい」
と私が答えると、男はどこからか箱を取り出してきた。真っ黒に金の縁、三段に分かれている。
「開けてみなさい」
男が言うので開けてみると、中には豪華な食べ物が沢山入っていた。海老、黒豆、栗きんとん、伊達巻。ど
れもとてもおいしそうだった。
「それをあげよう。お腹がすいたら食べるといいじゃろ。とても幸せな気分になれるからのう」
私は男にお礼を言って、箱を両手に持ちながら先を急いだ。
龍の背中はとにかく広い。歩いていると、すぐに夜になって、夜が明けると朝になる。凄く寒く、雪が降る
事もあったが、とにかく私は前に進んだ。
すると、少し先に大きな男がしゃがんで肩を震わせているのが見えた。近づいてよく見てみると、真っ赤な
肌に黄色の角。それは人間ではなく赤鬼だった。
「どうしたんですか?」
私は尋ねた。鬼は涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげ、こちらを向いた。
「いじめられたんだべよ。何もしてないのに豆をぶつけられたんだ」
かわいそうに、と私は思った。次に何か出来る事はないか、と考えたら、手元に男からもらった箱を持って
いる事を思い出した。
「これでも食べて、元気出してください。幸せな気分になれるそうですよ」
「僕にくれるん?」
私は黙って鬼に箱を渡した。きっと鬼は、黒豆は食べないだろう。私はその箱の中身を食べてもいないのに
幸せな気分になって、もっと先へ進もうと思った。
120:龍の背 2/5 ◇LBPyCcG946
08/12/28 16:18:18.65 gZM0eei80
次の街につくと、みんなが泣いていた。鬼が泣いていた時よりもびっくりした。仲の良さそうな人達が集ま
って、筒を持って泣いていた。でもその表情は悲しくて泣いているというよりも、嬉しくて、寂しくて、楽し
くて、苦しくて、泣いているようだった。複雑な気持ちだと思う。私にはよく分からない。
そして泣いていた人達はやがて別々の方に去っていき、私はひたすら前へと歩いていく。
やがて桜の沢山咲いた大きな道へと差し掛かった。いつの間にか寒くなくなっている。桜の道はただただ気
持ちよく、私を歓迎しているようだった。後ろから、先ほど泣いていた人達が私に追いつき、追い越して行っ
た。
「もう部活決めた?」「今日は仕事早く終わらせて歓迎会だ」「あの人かっこいいかも」
そんな会話が街の色んな所から聞こえてきた。それを桜が優しく見守っていた。
そして私はまだまだ進む。段々と暖かくなってきた。ふいに龍の背中にある山の間から、空の景色を眺めて
みたら、鯉が空を飛んでいるのが見えた。それも3匹。1匹は黒くて大きく、もう1匹は赤くて細く、あとの
1匹は小さくて青く落ち着きが無い。
「ねえ、あっちに行こうよ」
「駄目よ、そっちの方は危ないって言ったでしょ」
「ははは、そう怒らないでもいいじゃないか」
そんな会話が聞こえてきそうな良い雰囲気のまま、鯉達はゆっくりと後ろの方へと下がっていった。鯉より
も龍の方が空を飛ぶのは速いようだ。
更に進むと暑くなってきた。空気は湿気が多く蒸している。しかし大きな広場に出ると、そんな陰気な気分
はふっとんだ。ちょうど結婚式をやっていたからだ。
真っ白なドレスを着た花嫁と、真っ黒なタキシードを着た花婿が、沢山の人に祝われながら私の目の前を横
切っていった。教会と神父の前、2人は誓い合って、爽やかな鐘が鳴った。
「ほ、ほ、ほ。幸せになるといいのう」
気付くと私の隣に、鯛を持った男が立っていた。とんでもなく屈託の無い笑顔で、式を眺めていた。
しばらくして、花嫁が手に持ったブーケを投げた。私は受け取るつもりなんて無かったが、目の前に飛んで
きたので反射的に手に取ってしまった。気付くと、鯛を持った男は幸福感だけを残してどこかへ消えていた。
それから私は、ブーケを手に持ったまま歩き出した。日差しが強くなってくる。影がやけにはっきりと見え
た時、狭い道に入った。そして私のすぐ隣を、麦わら帽子を被った子供達が駆け抜けて行った。
「空き地まで競争な!」
「宿題もうやった?」
「やる訳ねーじゃん!」
121:龍の背 3/5 ◇LBPyCcG946
08/12/28 16:18:34.24 gZM0eei80
子供達はあっという間に見えなくなった。私はあんな風に駆ける事はできないけど、それでも1歩づつ前へ
進んだ。
更に暑くなった。道に生えている木ではセミがうるさく鳴いている。視界の開けた通りに出ると、遠くに海
があった。海まであるなんて、なんて大きな龍なんだろうと思う。駆けて行った子供達が、肌を真っ黒にしな
がら海で泳いでいる。
それと、鯛を持った男が金色の船に乗って沖の方へと出て行ったのも見えた。他にも何人か乗っている。鯛
を持った男は釣り糸を船から垂らし、釣りをしているようだ。きっとあの箱の中身の材料を釣るのだろう。
朝も超え、昼も超え、夜も超え、私は歩く。そして次に私が見たのは、大きな大きな、満月だった。
真っ暗な夜に、ぽっかりと穴を開けたような円。ぼんやりと明かりを灯し、私を照らしている。私はもうす
ぐたどり着くであろう龍の頭に思いを馳せた。どんな顔をしているのだろう。この大きな大きな体に似合う、
大らかな性格なのだろうか。そんな事を思いながら、月を見上げて歩いた。
そして長い長い夜が明けた。それと同時に、今度は騒がしい通りへと出た。
左の通りでは皆が体操着を着て色々な競技をしている。その中に、あの麦わら帽子を被っっていた子供達の
顔が見えた。麦わら帽子から紅白帽子に変え、一心不乱に駆けっこをしている。それをビデオカメラで追って
いるのが、タキシードを着ていた花婿さんだ。もちろん隣には赤ん坊を背負った花嫁さんがいて、2人とも笑
い皺を作ってにこにこ。これも鯛を持った男のおかげなんだろうか。
一方、右の通りを見てみると、別のお祭りをやっていた。そこでは桜の道を通っていった、泣いたり笑った
り忙しい人達が、もっと忙しく仕事をしていた。何やら出店を沢山出したり、看板を首から下げて歩いたりし
ている。
どちらも楽しそうに騒がしく、側を歩いているだけで私は笑顔になった。しかしそれが過ぎると、木は枯れ
て、落ち葉が道を覆っていた。寂しくて、妙に息苦しい気持ちになった。きっとあの時泣いていた人達も、こ
んな気持ちだったのだろうと想像する。
またしばらく歩いていると、今度は寒くなってきた。まだ雪が降る程ではないが、暖かい物が食べたくなる。
そんな時私が出会ったのは、赤い服を着て赤い帽子を被った男だった。その男は、木に実った何かを、袋に詰
め込む作業を黙々とこなしている。私は興味本位で、声をかけてみた。
「何をされてるんですか?」
男は答えた。
「準備をしてるんじゃよ。子供達がワシを待っているからね。願いどおりの物を1日で配達しなきゃならん」
袋の中がちらりと見えると、中には素敵な物が沢山詰まっていた。
「だけど困ったのう。中にはどうしていいか分からない願いもあるんじゃ」
122:龍の背 4/5 ◇LBPyCcG946
08/12/28 16:18:49.73 gZM0eei80
「どんな願いですか?」
私は尋ねてみる。
「例えばそうじゃな。『お嫁さんになりたい』と願われても、ワシには何もできんのう」
私はふと、手に持ったブーケを思い出した。それをその男に差し出すと、男は飛びっきりの笑顔になった。
どこかで見た事のある、満面の笑みだ。
「おお、これをワシにくれるのか。ありがとう。これで女の子の願いも叶うじゃろう」
ブーケを中に放り入れて袋を縛ると、その男はソリに乗った。ソリを引っ張るのは、真っ赤な鼻のトナカイ
だ。
「ほ、ほ、ほ。それじゃ、いつかまたのう」
そして男は空の向こうへと飛んでいった。
私は進む、もうすぐ終わる龍の背を。やがて寒さは格段に増し、いよいよ雪が降ってきた。粉雪が頬を撫で、
私の道はキラキラと綺麗な灯りで飾り付けられる。ソリが飛びまわっているのが見えて、私は少し安心する。
随分と長い道を歩いてきたように思う。だけどあっという間だったようにも思える。色々な人が私の側を通
り過ぎたり、私が追い越したり。言葉を交わしたり、交わさなくても理解できたり。その時その時の気持ちが、
今も鮮明に心に残っている。ただひたすらに前へ前へと歩いただけだけど、私の足跡には疲労感以外の物がし
っかりと残されている。
やがて、龍の背が終わった。そして私を待っていたのは、思い描いた通りの大きな大きな龍の頭だった。
「ここまで来たか」
龍が私に気付いてそう呟いた。私は無性に悲しくなって、思わず涙を流してしまった。
「君と私はここでお別れだけど、どうか泣かないでくれ」
龍はその速度を更に上げ、空を飛んでいる。
「さあ、涙を拭いて私の鼻の上に乗るんだ」
言われるがまま、私は鼻をすすりながら龍の頭の先端、鼻の上へと乗っかった。
「ほら、見えてきたぞ」
龍がもっと速度を上げた。冷たい風が私の頬を叩き、視界が鮮明に見えた。そこにあったのは、別の龍の尻
尾だった。
「ここから君は次の龍に飛び移るんだ。もう少し近づいてあげるから」
龍が私を鼻の上に乗せたまま喋った。私は躊躇った。次の龍に飛び移ってしまったら、二度とこの龍とは会
えないという事に、気付いてしまったからだ。
123:龍の背 5/5 ◇LBPyCcG946
08/12/28 16:19:05.56 gZM0eei80
どんどん次の龍の尻尾が近づいてくる。この龍は無情にも決して速度を緩めず、追いつこうとする。私が何
を言っても待ってはくれないのだろう。
と、その時。後ろの方から大きな声がした。
「おーい。待ってくんろ!」
振り向くと、そこには鬼がいた。私が鯛を持った男にもらった、箱をあげた鬼だ。あの時泣いていた鬼だ。
すっかり大きく立派になって、私の方に走ってくる。
「はぁはぁ。どうにか間に合ったべ」
鬼は息を切らしながら、龍の鼻筋を伝って私の方にやってきた。
「オラ、お前さが行ってから、一生懸命走ってきたんだ。それでもなんでかどうやっても追いつかないからよ、
鯉さんの背中に乗せてもらっただ」
鬼の後ろを見ると、これまたすっかり大きくなった、子供の鯉がびゅんびゅんと空を飛びまわっていた。随
分と早く泳げるようになったものだと、私は感心した。
「どうして追いかけてきたの?」と私は鬼に問いかける。
「いやさ、ほら。まだお礼を言ってなかったべよ。なんていうかその、ありがとうよ。おいしかっただ」
真っ赤な顔を更に真っ赤にする鬼。私も思わず照れてしまう。
「それじゃ、オラはみんなの家さ回って、『悪い子はいねが~』って驚かしてくるからよ。みんな待ってんだ
から、これだけはやめられねえべ」
鬼は嬉しそうにそう言うと、背中を向けて去ろうとした。私は急に不安になって、鬼にこう声をかけた。
「また会える?」
鬼は振り向かず、大きな大きな声で笑った。空の向こうまで聞こえそうな大きな声で、鬼が笑った。
前を向くと、次の龍の尻尾がもうすぐそこまで迫ってきていた。龍が私に呼びかける。
「君、もうすぐつくぞ。それ、今だ。……飛べ!」
私は思い切ってジャンプした。龍の鼻を蹴って、大きな弧を描いて。龍の尻尾へと飛びつくと、その新しい
龍が、今まで乗っていた龍とは全然違う事にはっきりと気付かされた。
そして後ろを振り返っても、昔の龍はいなかった。
終
124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 16:22:12.15 gZM0eei80
品評会143rd作品まとめ『年末年始』
URLリンク(yy46.60.kg)
No.01 『A happy new yearは頭にあるの』 ◆rEGWXIt34Y氏
No.02 龍の背 ◆LBPyCcG946氏
以上2作品まとめ済み。
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 16:22:46.43 87IK2pqq0
あらそってる
スレリンク(news4vip板)
126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 17:23:34.24 a6HBAE0v0
ほ
127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 18:28:17.33 gZM0eei80
あらあら
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 18:56:29.17 G2pXmYbS0
保守
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 19:06:47.33 tL2aPSdHO
少ないなー
参加したいのに大掃除が終わらない
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 19:08:13.73 gZM0eei80
420 名前: ◆nJd7Z3zXjE [] 投稿日:08/12/28(日) 18:36:45 ID:uzXeEfOY
品評会作品投下しようと思います
131:温か暖か 1/4 ◇nJd7Z3zXjE
08/12/28 19:08:40.26 gZM0eei80
小学校4年生の、冬の頃。
年末だというのに、お父さんとお母さんは仕事だと言って、家から出て行ってしまった。帰ってくるのは1月2日の朝。
つまり年越しは私ひとりってことになる。年末にひとりってのは私にとっては初めてのことなので、何だか新鮮な気分に浸る。
お母さんは晩御飯用に年越しそばを用意しておいてくれた。
私は早速そばに箸を伸ばす。汁は冷たいめんつゆと温かい(みたいだけど、今はつめたい)汁がある。私は汁を温めなおして
いる間に、めんつゆでそばを食べることにした。
「いただきます」
両手を合わせて、食べ始める。手を合わせるなんてこと、普段はしないけど、年末だからってことで。
ズルズル、麺をすする音だけが部屋に響く。麺を取り、汁につけ、すするの繰り返し。何だか切ない。かなり切ない。
「ん」
ズルズルだけだった音にジュジュジュって音が混ざっていることに、私は気づいた。キッチンを見てみると、鍋から汁が吹き零れていた。
先ほど温めていた汁のことをすっかり忘れていた。私は大慌てで火を止める。
辺りには、景気よく汁が飛び散っていた。
お母さんがいたらこんなことにはならなかっただろう。お母さんは晩御飯時、いっつもキッチンにくっついていて、火を見張っている。
今みたいに鍋が火を噴かないように、炒め物とかだったら食材が焦げないようにと。
吹き零れた汁を拭いていたら、何だか少し胸が痛くなった。
私は鍋をリビングのテーブルまで運ぶ。蓋を開けると、汁の美味しそうなにおいが広がった。でも何だか、それほど美味しそうに見えない。
美味しそうなんだけど、何だかそうでもない。先ほど冷たいそばを食べたってのもあるんだろうけど。何だか美味しそうじゃない。
今度は、いただきますを言わずに、黙ってそばを口に運んだ。
「おいしいな……」
美味しい。美味しかった。汁の中の具も、よく味が染みていて、それだけでよく箸が進む。具のお肉だけ、鍋からつまんで口に運ぶ。美味しい。
でも、何だか何か足りない。
美味しかったんだけど、何だかすぐおなか一杯になってしまい、結局半分くらい残してしまった。
まぁ理由は大体分かってるもんだけど。
132:温か暖か 2/4 ◇nJd7Z3zXjE
08/12/28 19:09:01.87 gZM0eei80
食器を片付けて、私は居間のコタツに向かう。今時私の家はキッチン、ダイニング、リビングが別々だ。
何をするにもいちいち移動しなくちゃいけない。コタツに入ったら覚悟しないと出られないので、私は温かいホットミルクを忘れずに持っていった。
コタツの電源を入れて、素早く滑り込む。
「さむっ」
スイッチ入れたてなもんだから、中は冷えきっていた。外のほうがマシだけど、もう少しすれば暖まる。
暖まってきたところで、テレビの電源を入れる。別にこの手順に意味があるわけじゃないんだけれど。
「さぁ! 今年も残すところあと僅か! みなさん、一緒に年を越しましょう」
定番のカウントダウン番組がやっていた。綱で作った輪の中を人が潜り抜けている。サーカスのライオンみたいだ。生中継でこんなことをやれるなんて
すごいな、と見るたび感心する。
「今年とも、あと15分でお別れです」
との声に、私は時計に目を向ける。本当に残り15分だった。いやまぁ疑ったわけじゃないのだけれど。
「年末、今誰とお過ごしでしょうか! この記念すべき瞬間を! 」
「誰とも過ごしてねーよ」
と、テレビに投げやりに返して、テレビを消した。
ふと気づいた。自分の今座ってるコタツの位置。この位置はいつもお父さんが座っている位置だということを思いだした。
いつもいるお父さんがいない。いつもコタツの上に置いてある飲みかけと飲み干したビール缶がない。それが何だか、無性に寂しく感じた。
いやはや、一人でいるだけでこんなに弱ってしまうなんて、私は兎かい。
世の中には一人でいる人なんて、腐るほどいるというのに、両親失っている人なんていくらでもいるのに。
「私はこんなに弱かったのか」
仰向けに倒れこむと、私の目の端に時計が映る。気がついたらもう年を越していた。現時刻01分くらい。気づいたらカウントダウンとかも見てなかった。
「……、もう寝よう」
私はそのままコタツで寝ることにした。
次の日、携帯に留守電が入っていたので、聞いてみたら、お父さんとお母さんが各自あけましておめでとうメッセージを入れててくれた。何だか少しホッとした。
133:温か暖か 3/4 ◇nJd7Z3zXjE
08/12/28 19:09:23.35 gZM0eei80
それでも、朝起きて誰もいないっていうのは、なかなか辛いものだった。いつもなら、お母さんが雑煮を用意してくれていたり、
おせちがあったりするのだが、今日あるのは、昨日の残りのそばだけ。朝ごはんは用意しておいてくれなかったのだろうか。
冷蔵庫の中とか床下の収納とかを探してみる。床下収納からはインスタント麺がいくつか見つかったけど、それ以外は何もなかった。
「朝ごはんはカップ麺か」
私は、やかんでお湯を沸かす。それだけで何だかため息が出る。
あぁ、本当にみっともない。たった2日いないだけじゃないか。明日になれば帰ってくるんだ。
近所に挨拶にでもいって、気を紛らわせよう。私はカップ麺をかきこんで、支度を済ませて、知り合いの隣のおばさんの家に向かった。
「あけましておめでとうございます」
インターホン越しに、まず挨拶した。
「あらあら、あけましておめでとうございます。今日は一人? 」
「はい、今日お父さんとお母さんは仕事でいません」
おばさんの口調が驚いたふうに変わる。
「まぁ! 可哀想に。あがってあがって」
そういうと、玄関におばさんが飛んできて中に入れてくれた。
「せっかくの年末年始なのに、一人ぼっちにするなんてねぇ」
おばさんが慰めてくれる。一人ぼっちでずっといたので、何だかホッとする。
「でも仕事だから、仕方ないですよ」
と、よくありそうな返答をしてみる。
「まぁ、いい子ねぇ。そうだわ、いい子にはお年玉あげないと」
「いえ、いいんです。貰えません」
「まぁ、でも遠慮しなくていいのよ? お母さんたちいないんだし」
隠しとけばばれないわよ、とおばさんは付け足した。
でもここにきた目的は、お年玉ではないのだ。
134:温か暖か 4/4 ◇nJd7Z3zXjE
08/12/28 19:09:43.09 gZM0eei80
「お年玉が欲しくて挨拶に来たわけじゃないんです。ただ寂しかっただけなんです」
私がそう言うと、おばさんは「あらあら」と言って、私の頭を撫でてくれた。
「あなたまだ子供だものね。寂しくもなるわ」
おばさんに頭を撫でてもらったら、何だか安心した。
「今日は泊まっていきなさいな。一人じゃ寂しいでしょ? 」
おばさんのその言葉は、恥ずかしいけど、とても嬉しかった。
その夜食べたおばさんの御節は、昨日食べたそばより数倍美味しかった。
理由は分かっている。だから、2日に二人が帰ってきていっしょに食べたご飯もまた、すごい美味しかった。
135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 19:12:05.97 gZM0eei80
品評会143rd作品まとめ『年末年始』
URLリンク(yy46.60.kg)
No.03 温か暖か ◆nJd7Z3zXjE氏
まとめ済み。
136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 20:02:00.22 Qjp6C/le0
お題おくれ
137:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 20:15:47.16 a6HBAE0v0
>>136
拳銃
138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 20:31:45.15 kWQJqQ5sO
れくお題お
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 20:56:29.71 +p0gyYon0
>>138
逆風
140:キンバル山へゆく0/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:04:06.53 a6HBAE0v0
品評会作品投下します。
141:キンバル山へゆく1/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:05:03.47 a6HBAE0v0
「permai!」
ジャヤクが叫んだ声が耳に響く。
permai……英語で言うならワンダフル……日本語で素晴らしいに相当するその言葉を使うのは、
彼が本当に感動し我を忘れたときだけだった。
『日本の正月は本当に素晴らしいね』
興奮冷めやまぬといった感じで彼が話しかけてくる。
黒く大きい瞳が輝いて、少し眩しい。
『よかったわね』
私は少しあきれた風に言う。見慣れた初詣の景色だった。
ジャヤクが日本に来たのは桜が満開日を迎えた翌日だった。
マレーシアからの交換留学生としてやってきた彼の印象は少し肌の黒い日本人だ。
半袖のTシャツとジーパンという服装が季節はずれであったが、黙っていれば誰もが日本人だと思うだろう。
空港を出て初めてジャヤクが口にした言葉が「permai」だ。
東京の街は彼にとって刺激的だったらしい。
マレー語で質問攻めにあったことを今でも鮮明に覚えている。
『落ち着いてジャヤク。英語じゃないとわからないわ』
私がそういった後の彼の顔は印象的だった。
その後も事あるごとに彼は興奮し、マレー語で話しかけてきた。
『久しぶりにあなたのマレー語を聞いたわ。少し下手になったんじゃない?』
茶化して言う私にジャヤクは得意げに答える。
「かわりに日本語うまくなったヨ」
「そうね。でも、相変わらず私が言う日本語は聞き取れないんでしょ」
彼は笑って頷いた。聞き取れなかった時の動作だ。
ジャヤクは決して耳が悪いわけではないが、日本語とマレー語には大きな壁があるらしい。
ゆっくりと発音すれば聞き取れるだろうが速いと聞き取れない。
日本に来て半年以上たつが聞き取りは苦手だった。
『やっぱりね。それより早くお参りしましょ』
私は言って鳥居をくぐった。
彼は私が機嫌を損ねたと思ったらしい。申し訳なさそうに後ろをついてくる。
『礼子、もしかして怒ってる?』
142:キンバル山へゆく2/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:05:59.58 a6HBAE0v0
恐る恐る聞いてくるジャヤクに笑顔で振り返る。
『怒ってなんかいないわよ』
でも・・・と彼は言いよどみ、肩を落とした。
私はそんな彼の額にデコピンし、少し大きな声で言った。
『そんなしょげた姿に合わないわよ』
ジャヤクは小さく頷き、私の手を握ると歩き出した。
ゴツゴツしたその手は暖かかった。
社の前までたどり着くとジャヤクは不思議そうに賽銭箱を見つめていた。
『そんなに賽銭箱が珍しいの?』
そう言った私に対し彼は神妙に問いかけてきた。
『日本では神様にお金を渡して願いをかなえてもらうの?』
『よく知らないけど、たぶん・・・そうだと思う』
私の曖昧な返答を聞くとジャヤクは大きく頷き、お賽銭を入れると手を合わせ目を瞑った。
私もつられて拝んだ。
昔彼が言っていたことを思い出す。
彼はマレーシア人の前にキンバル族らしい。
キンバル族はキンバル山に住む部族で、山を守り、山と共に生きる部族だ。
キンバル族には独自の宗教があり、ジャヤクもそれを信仰している。
その教えの一つに【山の心、海の心】というのがある。
山には山の心があり、海には海の心がある。その心を踏みにじってはいけないという教えだそうだ。
日本なら【郷に入れば郷に従え】が近いかもしれない。
だからジャヤクは納豆も食べるし、クリスマスも正月も祝ってくれた。
そんな彼だからこそこれからも日本で一緒にいたいと思う。
彼のことが好きだから・・・。
目を開けるとジャヤクが嬉しそうにこちらを見ていた。
少し恥ずかしくなり、顔を背ける。
『何をお願いしたの?』
彼は語りかけるような口調で聞いてくる。
『内緒よ。そういうジャヤクのほうこそ何をお願いしたの?』
『それは秘密だよ。お願いは誰にも言ったらいけないって言ったのは礼子じゃないか』
143:キンバル山へゆく3/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:07:23.45 a6HBAE0v0
そうだっけと、とぼけた私に彼は非難の目を浴びせてきた。
『じゃあ、次はおみくじを引きに行きましょ』
そう言うと私は逃げるように歩き出した。
ジャヤクは1度だけおみくじを引いたことがある。
駄菓子についていた小さいなものだったが、彼にはとても物珍しかったらしい。
彼は今でも財布の中に大事にしまっている。
『ねえ、礼子。おみくじも誰にも言っちゃいけないのかな?』
ジャヤクはおみくじを引くと興味深そうにきいてきた。
『そんな話きいたことないなー。たぶん、大丈夫よ。』
私の返答に安心したのか、彼はおみくじを見せてきた。
どうも読めない漢字があったらしい。
指をさしてなんて読むのときいてきた。
『こっちは願望で、こっちは縁談ね』
それだけ聞くと彼は背を向けそそくさとおみくじを財布にしまった。
見られたくないことでも書かれていたのかもしれない。
『礼子はどうだった?』
ジャヤクは向き直り言った。
『そうね。まあまあかな。一応大吉だったし』
そう言いながら彼におみくじを見せ付けた。
彼はワオォ……と言って感嘆の声を上げてくれた。
もう一度おみくじを見る。
学問……安心して勉強せよ
恋愛……愛を捧げよ倖せあり
悪くないはずだ。彼に習い私も財布におみくじを入れた。
『どうだった日本の正月は?』
初詣からの帰り道、電車の中で私は少し気になって聞いた。
『最高だったよ。礼子と一緒だったからね』
雲一つない笑顔が返ってきて安心する。
『はいはい。それより明日は大丈夫なの?』
『大丈夫。もう準備はできているよ』
144:キンバル山へゆく4/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:08:45.24 a6HBAE0v0
明日はキンバル族の正月祝いを行う予定だ。
私が日本の正月を、ジャヤクがキンバル族の正月を教えあう約束だった。
だからここ1週間くらいはジャヤクのアパートに行っていない。
『手伝おうか?』と聞いたこともあったが断られた。
『秘密のほうが面白いと思わないかい?』
そう言っていたことを思い出す。
『そんなことより日本の正月料理はうまくいったのかい?』
ジャヤクは興味津々といった感じで聞いてきた。
「おせち料理ね」
私が日本語で正すと彼も日本語で再度聞いてくる。
「おせチはうまく作れましたカ?」
「ふつうかな」
「ふつう……ですカ」
彼は小さく唸った。私が料理下手なのを知っているからだ。
『別に嫌なら食べなくていいわよ』
ぶっきら棒に言う私にジャヤクは慌てて取り繕う。
『嫌じゃないよ。ただ、納豆が出てくるのかと思ってね』
『そんなに納豆が食べたかったの?せっかくだし買っていってあげるわ』
彼の顔から血の気が引いていくのが見えた。
きっと今夜は楽しい食卓になる。
電車に差し込む光は暖かかった。
おせち料理は概ね好評だったと思う。
普通だなんて言っていたけれど、私としては満足のいく出来栄えだった。
ジャヤクもおいしいって言ってくれたし、全部食べてくれた。
優しい彼のことだから我慢したところもあったかもしれないが、それでも100点中80点ぐらいは自分にあげてもいいと思う。
今度はマレー料理にでも挑戦して彼を喜ばせてあげたい。
そんなことを考えているうちに彼のアパートに着いた。
時刻はまだ4時過ぎだというのに太陽は雲に隠れ、あたりは薄暗かった。
彼の古ぼけたアパートはさながらホラー映画の舞台ようだ。
行き慣れた部屋なのになぜかちょっと入りづらかった。
145:キンバル山へゆく5/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:09:31.40 a6HBAE0v0
『わ!』
驚き振り向くと後ろにジャヤクが立っていた。
彼は驚いた私を見て笑いこけている。
『ちょっと脅かさないでよ。びっくりするじゃない。』
『ごめんよ。そんな驚くとは思わなくって』
謝っているのに顔が笑っているので少し不愉快だった。
「もういい。こんなところで立っていても寒いだけだし、早く行くわよ。」
わざと日本語で速く言い放ち、私は彼の部屋に向かって歩き出した。
ジャヤクも慌てて追いかけてくる。先ほどと違って申し訳なさそうな顔をしていた。
『ごめんよ。礼子、そんなに怒らないでよ』
『怒ってなんかないわよ』
最高の作り笑いで応じる。
『ホントごめんよ。すぐ準備するから機嫌治して』
そう言って彼は部屋に体を滑り込ませると、私を外に置いたままドアを閉めた。
置いてきぼりにされた私はさらに不愉快になる。
5分ほど待たされただろうか。ドアが開いた。
抗議をしようと待ちかめていた私は言葉を失った。
『お待たせ。さあ入って』
彼はきらびやかな衣装をまとっていた。黄色と赤で模様されたその服は彼を別人のように仕立て上げていた。
部屋の中に入るとさらに驚かされた。
黒いカーテンを部屋中にはり、真っ暗にした部屋の中心にはローソクが何本も置かれていた。
『本当は焚き火なんだけど……アパートでやると火事になっちゃうからね』
ジャヤクはそう言って、私をローソクの近くに座らせた。
『なんか……幻想的ね』
私の言葉に返事を返さずジャヤクはコップを渡してきた。
中身はお酒だろうか。アルコールの匂いがする。
彼は座らず、私の対面に立ちラジカセのスイッチを押した。
音楽が流れ、彼が踊りだした。
私にはダンスのことはわからなかったが、彼が一生懸命踊る姿は素敵だった。
音楽が終わり、ダンスが止まる。私は彼を拍手で迎えた。
146:キンバル山へゆく6/6 ◆aqB/RYenGA
08/12/28 21:10:21.91 a6HBAE0v0
彼は腰を下ろすと一度大きく深呼吸し、ゆっくりと語りかけてきた。
『今したことは……キンバル族の正月行事じゃないんだ。その……結婚を申し込みたい』
何を言ってるのかわからなかった。そんな私にジャヤクは畳み掛けるように言う。
『一緒にマレーシアに来てもらいたい』
私は驚き、なかなか言葉が出なかった。代わりに涙が溢れる。
そんな私をジャヤクは優しく見つめてくれた。私はゆっくり言葉を紡ぎだした。
「ごめん……その……私達まだ学生だし……その……日本も好きだし……ジャヤクのことは好きだけど……マレーシアにはちょっと……その…ごめんなさい」
小声で早口な私の声を彼は聞き取れたのかわからない。
彼はやさしく微笑むと、
『礼子にそんなしょげた顔は似合わないよ。正月なんだから思いっきり楽しもう!』
そう言ってお酒を飲みだした。
私もつられて飲む。お酒は苦手だったがこの日はいたたまれない気持ちで一杯で、浴びるように飲んだ。
彼の笑顔にうっすら涙が浮かんでいた。
目が覚めるとジャヤクの姿はなかった。
黒いカーテンも、ローソクもすべてなくなっていた。代わりに毛布がかけられ小さなテーブルが置かれていた。
テーブルを見ると手紙とおみくじがあった。
『昨日はごめんよ。突然あんなこと言い出して。礼子を悲しませるのは本意ではなかったんだけど、
時間がなかったんだ。父が体調を崩してしまってマレーシアに帰らなきゃいけない。
いつ日本に戻れるかわからない。だから昨日言うしかなかったんだ。
それにキンバル族の男は振られたら1年間山に篭り修行するんだ。せっかくだし修行もしてくるよ。
傷つけたことは謝る。でも愛してるよ礼子。今度会えたら最高の愛の言葉を送るよ。
P.S日本の神様は聡明だね。僕たちの事をちゃんと見ててくれたよ。』
そう声に出しながら読んだ手紙に涙が落ちた。嗚咽で息ぐるしかった。
おみくじを見ると願望と縁談に丸がつけられていた。
願望……心長く思うても叶わぬ あきらめよ
縁談……出来るところを短気のためにやぶれることあり
私は神様なんて信じたことはない。
だけど、信じたくなった。私は財布からおみくじを取り出し見やる。
恋愛は……私は駆け出した。
愛するあの人のために。 終
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 21:41:43.18 XNow8KY80
トキオが二人を抱いたまま!
148: ◆VrZsdeGa.U
08/12/28 21:47:23.03 m7zXVZkr0
品評会投下します。
149:【品評会】笠地蔵 1/4 ◆VrZsdeGa.U
08/12/28 21:49:00.10 m7zXVZkr0
「笠はいらんかね、笠はいらんかね」
降り注ぐ雪の中、私はとある家の軒先を借り、むしろに座って笠を売っていた。
しかし、売れるはずはない。何故なら、私の前をにべもなく通り過ぎていく人々の頭上には、
すべからく笠が乗っていたからだ。それも、むしろに並べられた笠などとは、比べ物にならないほど上質な笠ばかり。
そもそも、毎年雪に覆われるこの町で雪よけの笠を売ろうとしていたこと自体、間違っていたのかもしれない。
「笠はいらんかね、お安くお売りしますよ」
私が如何に声を張り上げようとも、人々は一瞥もくれない。雪の一粒が、禿げた頭に降りてきた。
頭のみならず、体のすみずみまで冷たい感触に包まれていくような気がした。
年の瀬も迫ったある日のことだった。今年は凶作に見舞われたため、その日その日を暮らすことも
ままならないほど、我が家の家計は逼迫していた。
「こんな調子じゃ正月準備はおろか、冬を越すこともできなさそうだねぇ」
「仕方がないじゃないか。豊穣に恵まれる時もあれば、その逆もまた然り、だ」
妻の愚痴はその日に限ったことではなかった。凶作を憂うことに限らず、妻はあらゆることに関して
不満を漏らす癖があった。それを聞くのが、私の役目だった。
「せめて、餅代にでも割り当てられる金が入ってくればいいんだけどねぇ」
「そうだなぁ」
いつも通り、ため息交じりに発せられる妻の文句を受け止めるともなく聞いてはいたが、
ふと、私の中で閃くものがあった。
「……そうだ、笠を売ってみようか。大きな実入りにはならないだろうが、正月をむかえる足しにはなるだろうて」
私の提案は、苦し紛れだったかもしれない。妻は気乗り薄ではあったが、なにもしないよりはいいだろうと、
私が強引に押し切る形で笠を作ることに決めた。その後、家にあったすげを用いて五蓋の笠が出来た。
それは、我が家の小さな希望ともいえるものだった。
150:【品評会】笠地蔵 2/4 ◆VrZsdeGa.U
08/12/28 21:49:36.76 m7zXVZkr0
不意に、陳列してあったいくつかの笠が吹き飛ばされるほど、強い風が吹き付けてきた。
辺りに散らばってしまった笠を拾いながら、私はもうすっかり町を行き来する人々の姿が
疎らになっていることに気づいた。それに、先程の風は、これから吹雪が訪れることを予告しているような
気がしてならない。一つ溜息をつき、私はむしろの上に風呂敷を広げ、笠を仕舞うことに決めた。
結局、笠は一つも売れることがなかった。
町を出でて家へと向かう道すがら、降りしきる雪が、強い風に乗って私に襲いかかるようになってきた。
目の前に広がる吹きさらしとなった道の有様は、さながら私の胸中をそっくり映し出しているようであった。
あまりにも寂しく、荒んでいる。そうした気の迷いを振り払うように、私は首を左右に振った。
雪がおおいに積もった地面をなんとか踏み分けながら歩いていると、先方に何やら佇んでいるものが見えた。
歩み寄ると、そこには六体の地蔵様が立っていたことがわかった。相当な時間吹雪にさらされていたのか、
どの石像もたくさんの雪に覆われていた。
「……こんな所に地蔵様など、立っていたかな……」
私は訝しい目をもって石像たちを見つめていたが、放っておくにも気が引けるので、背負っていた笠を
それらに乗せることに決めた。もしかしたら、石像たちにどこか私と相通ずるものを感じたのかもしれない。
私のような人間が冷たく扱われるのは構わないが、よりにもよって地蔵様を粗末に扱うわけにもいかない。
並べられた石像たちの頭に覆いかぶさった雪を取り払いながら、一体一体に笠を被せていく間、私は
そんなことを考えていた。
「あ、しまった……」
五体目の地蔵様に笠を乗せ終えると、そこで携えていた笠はすべて無くなってしまった。
私は、五蓋しか笠を持ってこなかったのだ。私はそこでしばらく考え込んでしまったが、
「致し方ない」
と、被っていた手拭いを六体目の地蔵様に献上することにした。頭の寒さは気になるものの、
被せないことで気が咎めるよりかは、いくらか良い気がする。手拭いを一通り石像に括りつけると、
広げてあった風呂敷を畳みながら、私はそこを後にした。
151:【品評会】笠地蔵 3/4 ◆VrZsdeGa.U
08/12/28 21:50:07.48 m7zXVZkr0
「おかえりなさい、それで、笠は売れたの?」
家の戸を開けると、妻が期待に満ちた目で私を迎えた。
「いや、やっぱり、笠を買う人などいなかったよ」
肩や頭に積もった雪を払いながら、私はそう答えることしかできなかった。その言葉を聞いて、
途端に妻の顔は落胆の色が強くなっていった。勿論、妻とて多くを期待していたわけではないのだろう。
しかし、家で笠を売ったことによる実入りを心待ちにしていたと思うと、申し訳ないような気がしてきた。
「……でも、持っていった笠はどうしたんだい」
「ああ、道の途中で地蔵様に出くわしてな、それに全部被せてきてしまった」
私の返答に、妻は呆れたような表情を見せた。それが当然の反応なのかもしれない。
「馬鹿だねぇ、もう一度町に繰り出せば、いくらか売れる分もあっただろうに」
「……あぁ、そうだったなぁ……」
少し考えればわかるような盲点を指摘され、私は思わず苦笑してしまった。
どうせ売れなかったんだから。そのような返答も出来たが、自分から提案した手前、
そうとも言いかねた。そんな私の様子に構わず、容赦なく妻は愚痴をぶつけてきた。
「これだから嫌だよ。そもそも今年の凶作だって、あんたがもっとうまくやりくりしてればよかったのに……」
いかにもその通りであった。目先のことにばかり捉われ、融通すら利かない。
自らの愚かさを恥じつつも、私は妻の追及から逃れるように足袋を脱いで、囲炉裏へと向かった。
「もしかしたら、その地蔵様から何か見返りが来るかもしれないじゃないか」
冗談めかして私はそういったが、妻は取りあう様子すら見せない。
「何を寝ぼけたこと言ってるんだい。年が明けたらもう一度町にでて笠を売りに行ってもらうからね」
その日、妻の愚痴が止むことはなかった。
152:【品評会】笠地蔵 4/4 ◆VrZsdeGa.U
08/12/28 21:51:32.47 m7zXVZkr0
夜もとっぷりと更け、妻は既に床に就いていた。
私はというと、ろうそくの明かりのもと、再びすげを手にとって笠の製作に精を出していた。
時折、戸口の方に目を向けるが、帰宅の際に言ったようなことが起きる様子は
まるで窺えない。そもそも、期待すること自体、おかしいことなのかもしれない。
三蓋目の笠を作り終えると、そこで作業の手を止め、日記を書くことにした。
「十二月、三十一日……」
私の日記は、他の人々が書くような、その日の出来事をそのままに記すだけのものではなかった。
現実をただ淡々と書き連ねるだけでは、なんの面白みもない。その日の出来事を基にして、
多少空想が過ぎようとも、極力幸福なことを記すよう心がけていた。
「正月準備の足しにしようと、私たち夫婦は菅笠を作ることにした。五蓋ほど作った笠は、
町の人には売れず、結果実入りを得ることは出来なかった。町から家へと帰る道中、私は
六体の地蔵様が寂しそうに佇んでいるのを見かけた。そこで私は売れ残った笠を、地蔵様に
被せて差し上げた。足りなかった分は、私の手拭いで補った。家に帰った時、妻は呆れたように
愚痴をこぼしていたが……」
そこまで記した所で、ふと、これではいけないと気付いた。妻に悪態を吐くようなことはしては、
方針から逸れることになってしまう。その部分を墨で塗りつぶした後、私はこう続けた。
「妻は、それは大変良い行いをなさいましたね、と、微笑んで我が愚行を褒めてくれた。
夜が更け、床に就いていると、何やら外から物音が聞こえてくる。戸を開けると、
なんと米俵やら餅やら、様々なものが戸口に積まれてあった。もしや、かの地蔵様がくださったものなのかもしれぬ」
ご利益を望んで善行を行うことなど、さもしいことかもしれない。だが、なにかしら報われることがあって
しかるべきだという願望は、否定できぬものである。私はそのことを率直に書き連ねることにした。
あり得ない出来事かもしれない。しかし、あり得ぬ、あり得ぬというだけで真実を尊重するのみでは、なんとも
面白味のないことだと思える。恥じることなく、私は空想を書き連ねよう。
この日記は誰の目にも触れられぬまま、消え去っていくだろう。しかし、この日記に記した精神だけは、
残ってもらいたい。あまりにも大仰な考えに、我ながら苦笑しそうになった。
「この授かりものによって、私たちは正月はおろか、冬を越すことにも事欠くことがなくなった。
善行を行うものは、必ず救われる。大層なものをお贈り下さっただけでなく、そのことを表して下さった
地蔵様にいたく感謝したい」
そこまで記したところで、私は筆を置き、床へと向かった。
了
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 22:17:42.78 KXmK6iYO0
h
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
08/12/28 22:24:07.08 Qjp6C/le0
>>137
ありがたや ありがたや
155: ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:26:43.25 j3r+T6Js0
品評会投下します
156:店売りには愛情が無い 1/6 ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:28:47.66 j3r+T6Js0
「お隣、よろしいですかな」
突然聞こえた声に、本から目を離す。こざっぱりとした髪と綺麗に整えられたあごひげ。手に持った紙コップ
がアンバランスな、しかし紳士然とした男性が居た。年の程は四十歳くらいに見えた。
「どうぞ、お構いなく」
そう言って机の上に広げてあったノートパソコンと書類を隅に寄せると、男性は軽く頭を下げ席につき手に持
った紙コップ、漂う匂いからするとコーヒーのようだ、を机の上に置いた。
他人が近くにいると、やっとこ旅になれてきた身には何となく落ち着かない心持で、手に持った本を読む気に
もならない。黒く染まった窓の外を見ながら自分も飲み物を取ってこようかと思っていると、机の隅に追いやら
れた書類らに視線を向けながら男性が口を開いた。
「お仕事で、ですかな?」
「ああ……いえ、帰郷です。ただ少しばかり仕事が長引いてしまって」
「なるほど。そちらの本は」
「仕事の専門書です。何かと技術の進歩が激しい職種でして」
そうですか。大変ですな。男性の声は低いながらも優しい響きと落ち着きがあり、そわそわしていた僕の心ま
で平穏を取り戻させた。仕事で故郷を離れてから初めての帰郷であり旅というものが解らず不安な所もあったが、
なるほど。旅は道づれ世は何とか、とはこの事か。
そうしてみると、あちらが話し掛けてくれたのに黙ってばかりいるわけにもいかない。
「貴方も帰郷ですか」
何と話し掛けようか。少しばかり迷った挙句、まず旅の目的を尋ねることから始めた。
「ええ。久しぶりの帰郷でしてね。ああ、すみません。本を読んでいた所、お邪魔でしたでしょうかな」
「いえ。実を言うと、今年就職したばかりで。初めての帰郷、初めての一人旅で何かと不安がありまして。話し
かけて頂けて助かりました」
入社しこちらへ来るときは新入社員全員での移動だった。全員が、まだ見ぬ土地へ行くことに緊張していた様
子だったが、一人ではなかった。それが今度は一人旅。不安にならない人などいないだろう。
「それはそれは。光栄です。まあ、距離がありますからな」
男性がそう言いながら窓の外を見る。そこには黒と、小さな光が広がっている。他には何も無い空間。
「宇宙というのは寂しいものですな」
「ええ、私はまだ二度目ですが、そう思います。宇宙を旅するのは一度だけで十分です」
男性が笑う。恐らく、同じ気持ちなのだろう。
「故郷は鹿児島なのですが、最初は東京勤務でしてね。ああ、そちらはどこから?」
157:店売りには愛情が無い 2/6 ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:29:14.79 j3r+T6Js0
「岩手です」
「となると、地球に着く頃はかなり寒いのでしょうな」
苦笑いを浮かべながら頷く。男性の言う通りで、僕の荷物の半分ほどは防寒具を含む衣類だった。
「それで、宇宙船に乗るといつも東京で働いていた時の事を思い出しましてな。あの頃はなんの感慨も持たなか
った窓から覗く光景、例えばせせらぐ川だとか、駅前を歩く人々、立ち並ぶ建造物。それらが、この暗い宇宙を
見ていると瞳の奥から湧き上がって来ましてね」
男性の言葉に、形だけ頷く。確かに新世界へ踏み出すときは大いなる不安と共にあったが、今では火星での暮
らしを気に入っているし、地球を思い出すこともない。確かに宇宙は黒ばかりでつまらないが、だからといって
故郷の街並みが思い浮かぶとか言う事はなく、どうにも理解出来ない感覚だった。
「二年ぶりの帰郷で家族恋しさが募っているのもあるのですがね。まあそんな事ばかり思い浮かんでしまうわけ
ですな」
「はあ、そうなんですか……」
曖昧な返事をすると、男性は少しばかり首を傾げて、その後微小を浮かべながらで僕に問うた。
「貴方はそういう事が無いと感じるようですな」
「ええ、まあ……」
歯切れの悪い言葉が口から出る。しかし、感ずかれたなら言うより他無いだろう。
「家族と疎遠、と言う訳ではないのですが。寧ろ仲は良いほうだと思います。ですがどうも会いに行きたいとも
思えないので。大学の時分からそうでした。私は宮城の大学へ通っていたのですが、四年間で帰郷したことは一
度しかありませんでした。その一度は就職が決まり火星へ出ることになった年の正月、親にどうしても、と言わ
れての帰郷でした」
豪勢なパーティーをしてくれた事を思い出す。それほど裕福ではなかったのに、特上の寿司に高い酒、それに
どう考えても場違いなのに僕が好きなラーメンまで食卓には並んでいた。家族が僕を祝ってくれている事は伝わ
ってきて嬉しかったと同時に、なんだそれくらいで、たかが火星に働きに行くだけじゃないか、と冷めた気持ち
になる自分がいた。今まで正月だからと言って御節を作るでもなく、正月らしい事といえば精々餅が出ることく
らいだったから冷めたというのもあるが、一番の理由は違う。
確かに片道二週間は長い。社会人ではとてもじゃないが簡単に戻ってくることも、訪れる事も出来ない。しか
しそうでもあっても、たかが二週間なのだ。今生の別れなどではない。それをさももう会えないと思わせるよう
なパーティーを開き、終わる頃には涙を流したりするのが言ってしまえばちゃんちゃら可笑しい気分だったのだ。
「今度の帰郷も、親がどうか帰ってこられるなら正月くらいは帰ってきてくれと言ったことと、有給休暇が余っ
ていた事があったからのようなものですし」
158:店売りには愛情が無い 3/6 ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:30:05.11 j3r+T6Js0
そういえば、帰ってくるのかという親からのメールに返事をしていなかったな、と思い出した。まあ、いい。
下手に豪勢に振舞われてもやり辛いだけだ。
僕の言葉に男性は、やはり微笑みながら頷き、口を開いた。
「こればかりは、年を取らないと、自分で気づかねば解らないでしょうな。実際私もそう思っていた頃はありま
した。もっとも、東京で働いていた頃ですから火星で働く貴方とはまた違うのですが、それでもそう思っていた
頃はありますな」
若い奴はみんなそうだ、年を取れば解る。そう言われたような気がして何となくウンザリとした気持ちになっ
たが、男性は続けた。
「年末年始というのは、一年でただ唯一めでたい日ですからな。親族一同みな平穏無事に一年すごすことが出来
た。来年も宜しくやろう。そういう日なわけですから、やはり皆で祝いたいわけです。それが自分の血を分けた
子ならば尚更でしょうな」
男性の眼は、君が考えていることは解る。しかしまあ聞きたまえ、とでも言っている様で、僕は仕方無しにお
となしくしていた。
「無論、いつも近くにいて欲しいとは思っているでしょう。実際私も、可愛い息子と娘と離れて暮らすのは辛い
ですし、子供が大きくなって遠くへ行くとなったらさらに辛いでしょう。しかしやはり子供がやりたいと言うな
らそれをさせない親にはなれませんから、止めることは出来ないでしょうな。ところで貴方はSFを読みますかな?」
暴投もかくやと思えるほどの話のとび具合に、一瞬言葉が詰まる。
「いえ、読みません」
「そうですか。では私から、旅で出会った縁という事でこの言葉をさしあげましょう。『結局、彼は知るしかな
かった。知ったのだ。彼は、昼も夜も愛に包まれて生きていた事を』」
男性が言った言葉は、地球へ帰る混雑した宇宙船の中で聞くには少しばかり異質で、また照れくさく僕は何も
考えずに頷いた。
男性を見たのはそれが最後だった。程なくして宇宙船は二週間の旅路を終え、佐渡シャトル基地へと着陸した。
シャトルから降りるさい男性の姿を探したが、見つけることは適わなかった。家族の話は少しばかり窮屈だった
が、話しやすい人だったからまた会いたいと思ったが、それも適わぬ事のようだ。
着陸してすぐ花巻空港行きの便に乗り込んだ。飛行機から見える風景は白、緑、青と多彩な色で飾られていた
が、生憎隣の席に人は座っておらず、読みかけだった本を読むことにした。
159:店売りには愛情が無い 4/6 ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:30:51.34 j3r+T6Js0
「さむ……」
花巻に着いたとき、時刻は既に九時を回っていた。視界にちらほらと振る雪が目に入る。外へ出ても車の通り
は少ない。元から人が少ない場所だったが、大晦日ともなれば家族団欒の時を過ごしているのだろう。いつも以
上に人通りが少ないように見えた。
タクシープールへ眼をやると、一台のタクシーの運転手がこちらを見ていた。別にどれに乗っても構わないの
だが、眼があってしまうと逸らし辛い。そのタクシーへ乗り込み、目的地を告げた。
「お客さんも帰郷ですか」
運転手の言葉に、適当な返事を返す。
「いや、実は私の息子も今日帰ってくるはずでね。お客さんと背格好が似ているもので、空港から出てきたのを
見たときに息子なんじゃないかと思ったんですが、どうも違ったようで」
ははは、と運転手が笑う。運転手の家庭の話などどうでも良かったが、紳士然とした男性と語った話が頭に浮
かび、ついつい言葉が出た。
「やはりお子さんが帰ってくるとなると、嬉しいですか」
「そりゃもう、嬉しいですね。愚息は京都の方へ行っているんですが、やはり目に見えない所へ行ってしまうと
心配でね。いつまでたっても子供は子供。ああ、勿論子供も大人になりますよ。私の息子は、二三です。一人で
やっていける年で、社会的にはもう大人です。私も大人だと認めています。しかしそれでも、親にとっては大切
な子供ですから」
一呼吸置いて、運転手は続ける。
「知らない土地で食えなくなっていたらどうしようか。犯罪に巻き込まれていやしないだろうか。いつも息子の
ことばかり考えています。その息子が、帰ってきて元気な姿を見せてくれると思うと、嬉しい以外なんの感情が
浮かびましょうかね」
「……息子さんは、愛されていますね」
嬉しそうな声に、何もいえなくなる。ぐるぐるとしたものが胸に浮かんでは消え、言葉を出そうとすると喉に
つっかえる。かろうじでひねり出した言葉はありきたりすぎた言葉だった。しかし運転手は、子供を誉められた
とでも思ったのだろう。さらに嬉しそうな声で続けた。
「ええ。家内も私も、誰よりも息子のことを愛していますから。昼も夜もずっと息子の事を想っていますよ」
運転手に親の姿が重なった。父さんは、母さんは。いつも僕の事を想っていてくれた。これは間違いないだろ
う。だが、親を省みず自らの道だけを行く子供を見てどう思ったか。子供はいつか親の側から離れる。しかしそ
れでも愛しつづける親の気持ちとは、そうであるのに手紙の一通も送らない子供を思いつづける気持ちとは、ど
れほど悲しく辛いものだろう。
160:店売りには愛情が無い 5/6 ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:31:16.01 j3r+T6Js0
車内に沈黙が広がった。運転手は突然黙った乗客に何か感じ取ったらしいが、幾ばくかたった後こう言って来た。
「お客さんの所では、御節を作ったりするんですかね」
「……いや、御節が出たことはありませんね。いつもお汁粉か、焼餅でした」
一瞬、運転手の動きが止まる。
「まあ……いいんですよ。確かに食べたいとは思いますけど、御節それ自体は親戚の家にいけば食べられますし」
とはいっても、火星に戻らなければならない今、親戚の家に行く暇など無いが。となれば御節は食べられないが、
うちでは普通のことだ。しょうがない。ここ数年家に戻らず親戚の家にも行かずでやってきたから、今年も食べら
れなくとも別段悲しむ必要はない。
何か言おうとして、結局何も言わず運転手は車の操作に専念したようだった。話が切れたので、車の外へ眼を向
ける。記憶が定かなら爛々と明かりがついているはずのレストランも、今日ばかりは白く染まって静まり返ってい
る。誰も彼も、一年でただ唯一手放しにめでたい日を家族と、愛する人と過ごすために家に帰っているようだった。
やがて風景は見慣れたものに変わる。寂れたスーパーマーケットに、煌びやかな明かりがまぶしいパチンコ屋。
いつもなら、大学時代一度だけ帰ってきた日でさえ何も感じなかった光景が、今では心に響いている。不思議な感
覚だった。
「ああ、ここです」
家の前で運転手に声をかけ、車を止めさせる。数ヶ月ぶりの我が家は何も変わっておらず、何故だか安堵の溜息
が出た。誰かを待つように明かりがついている玄関へ繋がる道は、しっかりと雪かきされて歩きやすくなっている
ようだ。良いお年を、と声を運転手に声をかけ走り去るのを眺めてから玄関へ向かう。心なしか高鳴る胸を押さえ
つつ、インターフォンを鳴らした。
僕を見た両親の驚きようと言ったらなかった。普段感情を表に出さない父さんでさえ、口に加えていた煙草を落
としたし、母さんに至っては泣き出してしまった。なんだこの程度で、ただ帰ってきただけじゃないかと心の中で
思うと同時に、両親に対する綺麗な気持ちで心が一杯になる自分もいた。
とりあえずいつまでもコートを着ているわけにもいかないし、荷物もある。階段を上り自分の部屋へ入る。掃除
はしてくれているだろうが、それでもいくらか埃は舞っているだろう。そんな予想とは裏腹に、部屋は綺麗に整頓
され、空気もすがすがしいものだった。花巻の冬は暖房器具なしで過ごすには寒すぎるから、冬場には必須のハロ
ゲンヒーターまで出ている。前に帰ってきたときは気づかなかったが蒲団は冬用のものが出され、シーツには汚れ
の一つも無い。いつ帰ってきても、過ごすことが出来るようになっている。
コートを脱ぐことも忘れ、しばし立ち尽くした。ぐるぐるとしたものが胸に浮かぶ。しかしそれはタクシーに乗
っていた時感じたようなものではなくて、もっと明るい、だけど強いものだった。
161:店売りには愛情が無い 6/6 ◆7cy2QI8jBM
08/12/28 22:31:54.13 j3r+T6Js0
少しだけぼやけた視界を、手で眼を擦って透き通らせてコートを脱ぐ。荷物を置いて、階段を下る。
母さんはまだ少し涙ぐんでいたが父さんは平静を取り戻したようで、落ち着いた声でいった。
「おかえり」
「……ただいま」
「まあ、酒でも飲むか。コップ持って来い」
先ほど緩んだ涙腺から涙が滴りそうだったから、隠すようにしてキッチンへ向かう。コップを取ろうと思い電気
をつけると、見慣れないものがあった。黒い箱が、調理台の上に置いてあった。
「……どうした?」
戻ってこないのを気にかけたのだろう。父さんがキッチンへ入ってきた。
「これ」
「ああ。母さんがな、作ったんだ。お前は会社もあるし、すぐに帰らなきゃならないだろう? いつもは、お前が
帰ってきたときは親戚の家で食べられたけど、今年は無理だろうなって。なら作ってあげたいと思ったんだとさ」
母さんと結婚して、御節作るとこを見るのは初めてだぞ。父さんは笑ってそう言った。
「……っ」
「大人に、なったな。泣けばいいさ。俺もそうやって大人になった」
あの紳士が言っていた言葉の意味がようやく解った。確かに僕は愛されていたんだ。気づいていなかっただけで。
テレビから除夜の鐘が響き渡った。
「……父さん」
「どうした」
「今年は、ありがとう、御座いました。来年も、宜しくお願いします」
無表情な父さんが少しだけ笑みを浮かべた後で、作ったような渋い顔をして、言った。
「それは、母さんに言ってくれ」
<了>
162: ◆l2/fr.zO7w
08/12/28 22:43:23.28 tfkqeJhQO
品評会投下
163:小鳥たちの深淵 1/4 ◆l2/fr.zO7w
08/12/28 22:44:09.82 tfkqeJhQO
菜穂子は水槽の金魚をぼんやり覗いている。薄く濁った水に四匹の金魚が泳いでいる。黒と白がそれぞれ二匹
ずつ。黒い金魚の一方は他の三匹よりだいぶ大きく、幼児の握りこぶしほどはある。菜穂子はこの金魚をシオと
名付けていた。
菜穂子は水槽から離れ、二段ベッドの下段に仰向けになった。上段は妹の詩織が使っている。四月には中学生
になるのだから、自分一人の部屋が欲しいと菜穂子は思っているが、親は聞き入れてくれそうになかった。
ベランダの窓の向こうは雪景色だ。マンションの高い位置にある菜穂子の部屋からは市街が見渡せ、その遠い
向こうにはなだらかな山々が座っている。その内の一つ、山頂が三日月のように抉れた山の斜面には、クリーム
色をしたセメント工場が建っている。
菜穂子は去年、学校であの工場を見学したのを思い出した。円柱形の巨大な建造物があった。セメントを練っ
ているのだと説明を受けた。
詩織は中年の女性教師の袖をひいていた。菜穂子と詩織は双子なので、クラスは違うが、学年は一緒だった。
詩織がすがりついているのは菜穂子の担任である。菜穂子はその教師をもう一人の母のように慕っていた。菜
穂子もその教師のそばで見学したかったのだが、詩織がいては気がひけた。
詩織は私に意地悪をしているんだ、と菜穂子は思った。わざわざ違うクラスにくるなんて。きっとそうに違い
ない。子ども達の隙間をぬって、菜穂子ははしゃぐ妹の姿を睨みつけていた。
セメントを練る円柱からは滑り台のようなレールが三本延びていた。練ったセメントを移すための道だ。菜穂
子は土砂崩れのように流れだしたセメントが、詩織を埋め固めてくれる様を空想した―。
菜穂子はベッドから跳ね起きてさっとカーテンを閉めた。朝日の遮られた部屋は少し暗くなった。
三が日が過ぎて、菜穂子はけだるかった。初詣や親戚への挨拶にと、両親につれまわされたからである。形式
ばったことが嫌いな菜穂子には正月はあまり好ましいものでない。
つれまわされたのは詩織も同じだったが、菜穂子の目には生き生きとしているように見えていた。ピンク色の
生地に大きな花がたくさんの描かれた振袖を着た詩織は、菜穂子の目にも可愛かった。あいくるしい小動物が、
花のあいだに首を伸ばしているようだった。
164:小鳥たちの深淵 2/4 ◆l2/fr.zO7w
08/12/28 22:44:50.06 tfkqeJhQO
同じ姿のはずなのに、どうして自分と詩織はこうも違ってしまうのだろうかと菜穂子は思っている。詩織は誰
からも好かれ、可愛がられる。見た目は同じ水であっても、詩織は砂糖水で自分は水道水だ。みんな甘い方が好
きなのだ。
午後からは学校の友達と近くの神社にお詣りに行く予定だ。神社の子が菜穂子のクラスメートなのである。
菜穂子は友達と会えるのが嬉しかった。詩織もいないのだ。お年玉もあるからお菓子を買ったりもできる。フ
ァストフード店に寄るのもいいかもしれない。
菜穂子は学習机の引き出しを開けた。もらったお年玉はぽち袋に入れたまま、すべてここにしまってある。
そこへ部屋の扉が開いた。菜穂子は振り向いた。リビングにいた詩織が戻ってきた。パジャマのままだ。
「なおちゃん何してるの?……あ、お年玉袋。もうお年玉使っちゃうの?」
「……うん、ちょっとだけ」
「何に使うの?」
「なんだっていいでしょ」
「どっか遊びに行くの?」
「友達と古川神社に行くの」
「あたしも一緒に行っていい?」
「だめよ」
詩織は拗ねた顔をしてみせた。
「いいじゃない。お友達って誰?」
「……美由紀ちゃんと春奈ちゃん」
「なおちゃんのクラスの? わあ、いいな! あたしも一緒に行く!」
「絶対だめ!」
菜穂子は突き放すように言った。すると詩織は一瞬体を強ばらせて、しょげる顔を見せた。その様子すら甘え
に見えて菜穂子はなおさら不愉快になった。
「だいたいあんたいつまでパジャマのままなの? 一緒に行きたいって、パジャマでお詣りに行けるわけないじ
ゃん」
165:小鳥たちの深淵 3/4 ◆l2/fr.zO7w
08/12/28 22:47:12.07 tfkqeJhQO
「さっきママに洋服はって聞いたら、今日はどこにも行かないからパジャマのままでいいよって言われたの。ね
え、着替えるからあたしも一緒に行く」
「……ああ、もう!」
菜穂子は両手で机を思い切り叩いた。
「ママがそう言っても、あんたが自分で服を出せばいいでしょ! お着物借りる時はすぐに自分の好きなの選ん
だくせに! あたしもあのお着物着たかったのに!」
「えっ、いきなりどうしたの?」
不意に激昂して喚きはじめた菜穂子に、詩織はわけのわからないものを見る面持ちで呆然としていた。
「なんなのその顔!」
「なんで怒るの?」
「怒ってない!」
「怒ってるよ」
「もう! いい加減にして! あんたなんか大嫌い!」
菜穂子は水槽に駆け寄り、しおと名付けた巨大な金魚を手掴みに取った。そして詩織におどりかかり、上から
押し倒した。
「いやっ!」
詩織は叫んだ。詩織を組み敷いた菜穂子が、金魚を詩織の口に突っ込もうとしたのだ。
「やめて!」
詩織は必死に顔を振ってあらがおうとする。菜穂子は左手で詩織の顔を押さえつけ、親指を唇に滑り込ませて
口をこじ開けようとした。
「痛い!」
今度は菜穂子の方が叫んだ。詩織が菜穂子の指に噛みついていた。痛い、