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領土問題を論ずる際は、その領有権を主張する歴史的根拠が問題となる。そのため韓国側が竹島を
韓国領とする論拠としてきた『東国文献備考』の分註「輿地志に云う、欝陵・于山、みな于山国の地。
于山は倭の所謂松島(現在の竹島)なり」が、編纂時の1770年に改竄されていた事実は、韓国側にとっては
致命的であった。韓国側は歴史的根拠がないまま、竹島を侵略したことになるからだ。それも2008年2月、
外務省が刊行した小冊子『竹島問題を理解するための10のポイント』に改竄の事実を記載し、今日に至る
まで韓国側からの説得力のある反論がなされていないということは、韓国側も改竄の事実を認めたからなの
であろう。
事実、韓国側及び韓国側に同調する人々の言動を見ると、島根大学名誉教授の内藤正中氏は『竹島
=独島問題入門‐日本外務省「竹島」批判‐』の中でそれを「異説」とし、在日独島研究家を自称する
朴炳渉氏も、「外務省は下條の論説をまったく検証することなく引用したが、そもそも下條の論説は誤りで
ある」(「独島研究」第4号・韓国嶺南大学校編)とするだけで、歴史研究とはまったく異なる次元で反応
していた。その典型が朴炳渉氏の「下條正男の論説を分析する」(「独島研究」第4号)である。朴炳渉氏
は、「下條が書いたもの」は、「『諸君』、『正論』など右翼系の二大雑誌に発表されることが多いので、専門
家以外からも注目をあびている」とし、結語では「下條の流儀や主張は島根県や、右翼系の雑誌『正論』
や『諸君』で高く評価されている。そうした彼の主張が右翼以外にどこまで受け入れられるのか、今後も注意
深く見守る必要がある。また、彼と外務省との関係が今後どのように展開するのかも興味深いところである」
と結んでいる。
朴炳渉氏の流儀によれば、外務省がまとめた小冊子『竹島問題を理解するための10のポイント』もまた
右翼の所作となるのであろう。だが歴史研究に求められるのは、正当な文献批判を通じて、より客観的な
歴史の事実を明らかにすることにある。朴炳渉氏のように私の出身大学と奉職先の拓殖大学を「右寄りの
大学」とし、私に「少数派」、「運動家」、「右翼」といったレッテル貼りをすることで、歴史研究そのものまでも
否定したように錯覚することではない。
そこで今回は、朴炳渉氏が「独島研究」第4号に発表した「下條正男の論説を分析する」について、さらに
次回は、鳥取短期大学の『北東アジア文化研究』第28号に掲載された朴炳渉氏の「明治政府の竹島=
独島認識」を中心に、その真偽を糾すことにした。
果たして朴炳渉氏が「下條正男が宣伝するような史書の「捏造」や「改竄」はなかった」というように、『東国
文献備考』の分註には改竄の事実はなかったのであろうか。今回の実事求是では、朴炳渉氏の立論の
問題点と誤謬を指摘することにした。
(1)『東国文献備考』(「輿地考」)の解釈
これまで韓国側は、竹島の領有権を主張する際に、『東国文献備考』(「輿地考」)の分註を根拠として
きた。分註には、「輿地志に云う、欝陵・于山、皆于山国の地。于山は倭の所謂松島(現在の竹島)なり」
とあるため、韓国側では文献上の于山島を無批判に今日の竹島と読み換え、「欝陵・于山、皆于山国の
地」から竹島を欝陵島の属島として疑わなかった。
だが韓国側がそれを論拠とするためには、分註に引用された『東国輿地志』と『東国文献備考』に対する
文献批判をすべきであった。しかし1950年代から始まった日韓の論争では、『東国文献備考』の分註に
引用された『輿地志』は問題にされず、『東国文献備考』の編纂過程を検証するといった、基本的な研究
すらなされていなかった。それが問題にされたのは1996年、韓国側が竹島に接岸施設を建設し、竹島問題
が再燃して以後である。
(>>2-5あたりへ続く)
URLリンク(www.pref.shimane.lg.jp)
【竹島問題】実事求是「東北アジア歴史財団」の愚挙―樹木があったはずだとして岩場に植林[06/16]
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