09/07/16 08:14:50
5年前からテロが頻発するタイ南部3県での死者が3500人を超えた。その9割まで
が一般の市民だ。タイ政府は分離・独立をもくろむイスラム過激派の犯行と主張する
が、疑問視する声も多く、犯人像はなぞのまま。治安回復への展望も見いだせて
おらず、住民の間には恐怖心と政府への不満が高まっている。
深い森に囲まれたタイ南部ナラティワート県アイパヤ村で銃声が鳴り響いた。6月8日
午後8時。礼拝が始まって20分が過ぎたモスクでは、23人が宗教指導者(イマム)と
祈りをささげていた。 最前列のサマン村長(45)はとっさに身を伏せた。乱射音は後方、
そして左右からも聞こえてきた。「囲まれている」。体が凍った。
5分後、静寂が戻り顔を上げると、体中に銃弾を受けたイマムが死んでいた。隣には
頭から血を流し、即死状態の友人(64)。105発の弾丸が撃ち込まれ、10人が死亡、
12人が重傷を負った。難を逃れたのは2人だけだった。
狙われるのはイスラム教徒だけではない。犠牲者の多くは仏教徒で、教師や公務員
など政府への協力者とみなされる者が主な標的だ。
治安機関も例外ではない。今年2月、パタニ県で警察幹部らの乗った車両が道路脇
に仕掛けられた爆弾で爆破された。車は上空20メートルまで跳ね上がり、地面に
たたき付けられて3人が即死した。
モスク事件の直後、捜査当局は「分離・独立を狙うイスラム過激派の犯行」と発表した。
9割以上が仏教徒のタイで、マレーシア国境に近いナラティワートとパタニ、ヤラーの
南部3県は住民の大半がイスラム教徒だ。かつてこの地域にはマレー系住民による
イスラム国家「パタニ王国」が存在したが、19世紀にタイに併合された歴史がある。
このため、04年から南部でテロが頻発するようになると、治安当局や地元メディアは
「過激派の犯行」と主張してきた。王国復活を目指してタイからの分離・独立を目指す
イスラム勢力が、当局や仏教徒、当局に協力するイスラム教徒へのテロを続けて
いるというのだ。 だが、モスク事件のサマンさんは首をかしげる。
「イスラム教徒が信仰の中心であるモスクを襲うだろうか」。450人の村民の大半も
当局の説明に納得していない。父親を殺された男性(37)は「過激派とは誰なのか。
我々はなぜ襲われたのか。また狙われるのか。怖くて仕方ない」と話した。
軍によると、これまでにテロに関与した疑いで拘束されたのは100人以上。押収物
などから四つの組織名が浮上しているという。
だが、30年以上の取材経験がある地元ジャーナリスト(53)は「詳細な組織構成や
指導者名を供述できた容疑者はおらず、不明な点が多い」と指摘。
「王国復活の信奉者は実際には一握りだが、政府にとっては『過激派』の存在を強調
した方が、政府への支持を求めやすいのだろう」と分析した。
政府はモスク襲撃事件の翌日、テロ被害者の救済に4億バーツ(約11億円)の予算
投入を決めた。治療費などの生活支援に加え、地域経済の活性化にもあてる。支援策
で住民から協力を引き出し、村に隠れているとされる「過激派」をあぶり出す作戦だ。
URLリンク(www.asahi.com)
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道路に仕掛けられた爆弾で壊れた警察車両=タイ南部パタニ県、山本写す
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線道路には2キロごとに検問が設置され、武装兵が24時間態勢で警戒にあたる
=タイ南部パタニ県、山本写す
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ソース:朝日新聞
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