09/07/04 00:16:30
「日本の変化する役割」と題する6月25日の公聴会はオバマ政権が登場して以来、初めての米国議会での
日本だけに焦点をしぼった討論の場として注視された。下院外交委員会のアジア太平洋・地球環境小委員会が
主宰し、日本や日米関係に詳しい専門家4人が証言した。
論題は日本の安保から政治、経済と、広範にわたったが、安全保障に関連して「日本の核武装」が頻繁に
論じられたのには驚いた。単に米国の核戦力による日本防衛の核抑止だけでなく日本自体の核武装の
可能性の有無までが何度も自由な討論の対象となったのだ。
この点は仮定に仮定を重ねても核武装を論じることはタブーだとする日本側の年来の禁忌とはあまりに対照的だった。
日本国内では自国の安全保障での核を語ることもためらう間に、外部ではこれほど議論が進んでいるのだ。
巨大なギャップを実感させられた。その内外の落差を示すためにこの公聴会での「日本の核武装」についての発言を紹介しよう。
まずこの公聴会の議長となったエニ・ファレオマベガ同小委員長の冒頭発言である。
ちなみに民主党の同氏は米領サモア選出の代議員で、小委員長とはいえ下院での投票権がない。
「北朝鮮の核兵器が日本への脅威となると、日本も核戦力を開発する必要があるという議論がどうしても出てくるだろう」
「日本は核兵器を製造する能力がないわけではない。もし日本が核武装するとなると、
アジア太平洋地域全体、とくに中国にとっての軍事戦略情勢が完全に変わってしまう」
「韓国の有力紙も先月の社説で韓国の核武装を説く一方、日本の核武装への懸念を示した。
ロシアの通信社も6月、自国の外務省筋が日本も北朝鮮の核開発に対応して核兵器を保有する展望への懸念を伝えた」
「中国外務省関連の雑誌も、中国の当局者が北朝鮮の核兵器保持で日本も核武装に走ることへ
深刻な懸念を抱いていると報じる記事を載せた。ロシア、韓国、中国の日本の核武装の野心への
こうした懸念は過剰な反応かもしれないが、認識が政策決定で致命的な役割を果たすことがある」
証人として公聴会に登場したハーバード大学のジョセフ・ナイ教授も同じ課題に触れた。同教授も民主党系の人物である。
「日本は自ら欲するならば核兵器を保有する能力を持っている。だが米国が核抑止力を提供しているために、
日本は独自の核戦力開発の必要性をこれまでのところ感じていない」
ブッシュ前政権の国家安全保障会議(NSC)アジア担当上級部長だったマイケル・グリーン氏も
日本国内での核兵器配備の可能性について証言した。このシナリオも一種の日本の核武装だった。
「北朝鮮の核の脅威に対して日米両国は核ドクトリンを再考すべきだろう。
日本側の責任ある立場の人たちは米国が1980年代にソ連のSS20ミサイル配備に対抗して
西欧で取ったと同じような措置をいまや日本も考慮すべきではないかと問うようになった」
米国が1980年代に西欧で取った措置とは、ソ連の核ミサイルに対抗して西ドイツやオランダに
巡航ミサイルと弾道ミサイルのパーシングII合計572基を配備することだった。その配備の決定が
結局はソ連を大幅に後退させた。グリーン氏は日本の場合、米国の核ミサイルを日本領土に配備して
北朝鮮の核への抑止とする可能性を提案しているのだった。その背後には核の脅威を抑え込むには
相手に核の脅威を感じさせる能力、つまり核抑止力を持つことが最善だという国際的な現実認識が存在する。
同盟国の米国からみても日本をめぐる核の脅威はこれほど切迫しているわけだ。
だが日本では核抑止も核武装も真剣な論題とはならない。この内外の断層をどうみるか。
核兵器を安全保障ではない面からだけ語る8月がまたやってくる。
7月3日23時41分配信 産経新聞
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