09/06/14 06:05:59
北朝鮮に対する制裁決議が国連安全保障理事会で採択された。2度目の核実験からまもなく3週間。時間はかかったが、国際社会としての強い意思を、全会一致で示せたことを高く評価したい。
北朝鮮には、国連加盟国として決議を受け入れる義務がある。即刻、核を放棄し、弾道ミサイル開発も中止しなければならない。しかし、現実はそうなるどころか、逆方向に動いている。
北朝鮮は決議の採択に反発し、新たに抽出するすべてのプルトニウムを兵器化する、ウラン濃縮にも着手すると表明した。さらに「封鎖されれば戦争行為とみなす」と激しく牽制(けんせい)した。北朝鮮の挑発と国連による対北措置の応酬が続くことになるかもしれない。
決議の目的は、北朝鮮の核兵器やミサイルの開発をやめさせることだ。軍事的な衝突を避けつつ国際協調に基づく「圧力」を通じて実現させなければならない。そのためには各国が結束を一層強め、粘り強く取り組む。それが最も現実的な道である。
決議の実施に日本はどう参加すべきか。政府や各党では、海上自衛隊や海上保安庁による公海上
での船舶検査が焦点になっている。
現行の船舶検査活動法は、日本への武力攻撃の可能性がある「周辺事態」が前提だ。そのため、
周辺事態という認定がなくても検査活動を可能にする新法を求める声が、自民党や民主党内に出て
いる。政府も検討を始めた。
日本にとって北朝鮮の核兵器やミサイルが、重大な脅威であることはいうまでもない。日本は今回の
決議づくりに積極的な役割を担った。必要とあれば決議に盛られた措置を行えるように法整備を考える
のは当然だろう。
決議が各国に要請しているのは、核兵器関連物資など特定の禁止品目を運んでいると「信じるに
足る合理的情報がある」船舶の検査である。しかも「その船が所属する国(旗国)の同意」という条件も
付いている。
情報を得て出動するが、その貨物船が検査に応じなければ後を追う。近くの港に入った段階でその国
が検査する。そんなイメージだ。
問題は、こうした目的を果たすために現行法をどう使うか、どこまでの新たな法整備が必要なのか、
現実的な有効性の面から冷静に検討することだ。
そもそも憲法9条の下で、どのような国連決議があっても、日本が自国の防衛以外の目的で軍事力
を行使することはあってはならない。そうした大原則の下で、今回の決議を有効にするために何ができるか
を考えたい。
自民党の一部には、この新法づくりを野党の分断や解散日程の先延ばしの口実にしようとするかの
ような空気もうかがえる。党利党略に走っているときではない。
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