09/05/25 07:52:48
日本の宇宙開発―技術は軍より民で磨け
軍事にばかり目が向いていると、日本の宇宙開発は先細りになりかねない。麻生首相を本部長とする
政府の宇宙開発戦略本部が初めてまとめた宇宙基本計画案を見ると、改めてこんな懸念を抱く。
計画案は、アジアの防災に貢献する陸や海の観測、気象観測など五つの利用分野と、
宇宙科学や有人活動など四つの研究開発分野を挙げ、今後10年を視野において5年間で進める
計画を掲げている。今月末に正式決定される。
安全保障はその利用分野の一つだ。昨年5月にできた宇宙基本法で道が開かれた。
早期警戒衛星の研究開発が盛り込まれているのが目を引く。
この衛星はミサイル防衛システム用だ。高熱の物体が放つ赤外線によってミサイルの発射を知る。
技術的な難しさに加え、解析システムの開発なども合わせると費用は巨額になり、
導入には消極的な意見が少なくなかった。
しかし、北朝鮮が4月に行ったミサイルの発射実験をきっかけに、自前の衛星を持つべきだという声が
与党内で一気に盛り上がった。
導入するかどうかは、年末に予定される防衛計画大綱見直しの際などに議論される。
その必要性や費用はもちろん、日本が宇宙の軍事利用に本格的に乗り出すことで国際的な緊張を高めないか、
十分に考える必要がある。安定した官需を求める宇宙産業の事情に引っ張られて先走ってはならない。
計画案は、宇宙技術は使い方次第で民生にも軍事目的にも使える「デュアルユース」の考え方を持ち出し、
安全保障への利用を広げようとしている。たとえば、早期警戒衛星の技術は森林火災の探知にも役立つ
というのだ。
たしかに偵察衛星も地球観測衛星も基本技術は同じだ。それなら企業間の競争がある
民生部門でこそ技術を磨くべきだ。米国の商業衛星は数十センチのものを見分けることができ、
日本の情報収集衛星の能力を上回っている。
防衛関連の技術は割高になり、その秘密主義は技術の発達を妨げる。
安全保障の名の下に採算を度外視した計画が増えれば、民生部門にしわ寄せが及ぶ恐れもある。
計画が遅れて費用が大幅に増え、その意義が薄らいでいるGXロケットも、安全保障目的で開発が
正当化されようとしている。
日本の宇宙開発を育てるためにすそ野を広げる必要があることは、計画案でもうたわれている。
そのためにも、開かれた環境で進めることが重要だ。
宇宙開発には国際的に大きくとらえる視点も欠かせない。宇宙は、各国が独自の技術やアイデアをもって
競い合い、協力しながら未知に挑む舞台だ。そこに日本ならではの技術力をどう生かし、
どう世界に貢献するのか。
日本の飛躍につながる、そんな戦略を示す基本計画であってほしい。
朝日新聞 2009年5月25日(月)付
URLリンク(www.asahi.com)
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