09/05/22 17:28:22
前回のコラム「日本に住みたい、カナダに住みたい」の中でカナダの移民政策について取り
上げたが、断定的に書いてしまい、誤解を招く部分があった。読者からの指摘を受け、改めて
カナダ在住の弁護士に話を聞いた。
カナダにはたくさんの国籍の人が滞在し、時には帰されることもある。それぞれのケースは
事情が異なるために一つの方程式には当てはまらないという。弁護士ネーザン・ガナパシ
さんにうかがうと、カナダの移民法にある「人道主義と思いやり」(Humanitarian
and compassionate grounds)は不法滞在を考慮したものではなく、
それを奨励するものでもない。だが、不法滞在が発覚する前に自分から出頭した場合、人種・
国籍などに関係なく、この「人道主義と思いやり」により、カナダに残れるという可能性が
あるそうだ。ただ、ほかの犯罪歴があれば該当しない。残留が可能かどうかは移民局大臣の
判断によるが、法律的に大臣の判断が出た後でも裁判をすることができ、判決が最終決定に
なるという。
「人道主義と思いやり」は、適用される場合とされない場合がある。例を挙げると、不法
滞在の中国人男性がカナダ人女性と結婚し、移民申請をした際、不法滞在がわかってしまった。
しかし、配偶者が妊娠していたため07年12月、大臣の判断で滞在が許可された。
06年11月の別のケースでは、イラン人学生が自国から奨学金をもらってカナダに来た。
子どももいた。卒業後に移民申請をした際、「卒業したら戻ること」という自国の奨学生の
条件が問題になった。このケースでは、4年間、カナダで生活をしていた子どもの社会は
カナダであり、残されるべきだという理由から、親もともにカナダに残るべきだとの大臣
判断で滞在が許可された。
インターネットサイト「thestar.com」に今年4月24日、韓国人の母親が不法
滞在・就労をしていたため、カナダ国籍の子どもとともに韓国に帰国させられたというニュース
があった。この場合は、裁判に持っていく前に帰国したそうだ。子どもはカナダ国籍のため、
後見人がいればカナダに残ることが出来たが、母親が帰国させられるために一緒に韓国に連
れて帰ったという。
この韓国人は不法就労が発覚する前に自ら出頭するべきで、逮捕されてしまえばカナダに
残るのは難しいケースではあるが、ガナパシさんによると、裁判をしていたら、どんな判決
になったかは分からないという。大臣の決定の後でも「人道主義と思いやり」が認められる
可能性もあったということだ。
>>2以降に続きます
毎日新聞社 2009/05/22
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