09/04/08 23:22:28
国際政治学者、経済学者として知られる呉稼祥氏は8日、自らのブログに、2009年に出版されベストセラー『中国不高興(不機嫌な中国)』
を厳しく批判する文章を掲載した。同文章は中国青年網、中国新聞網など、大手出版社・通信社のサイトが転載した。
『不機嫌な中国』は5人による共著。「中国は欧米に代わり、世界の兄貴分になるべきだ」などとする同書を、呉氏は「被害者意識の
裏返しの、病的な民族主義」などと批判した。同氏が発表した原文は約8000文字の長大な文章。その要旨は以下の通り。
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■健全な民族主義と“病態”民族主義を区別せよ
偉大な民族は偉大な人物と同様に、どんなに傷つけられようとも、他者を愛する心を失うことはない。恨みと復讐心だけに自己を
ゆだねることはない。心理的なレベルが高いからだ。
(中略)
■“病態民族主義”は民族を滅ぼす
民族主義は、健全なものと「病態」であるものの2種に大別できる。健全な民族主義は世界に対して開かれており、未来志向だ。
「病態民族主義」は自分自身に対して「後ろ向きの恋」をする。また、健康的な民族主義は他民族との平和共存・平和競争を目指す。
「病態民族主義」は排他的で、暴力や侵略主義に走る。健康的な民族主義は自民族を強め、「病態民族主義」は最終的に、自民族を
破滅に導く。
健全な民族主義者としては、孫文、トルコのケマル・アタチュルク、インドのガンジー、エジプトのナセルなどを挙げることができる。
「病態民族主義者」としては、領土拡張や強引な権益奪取に走ったナポレオン、ムソリーニ、ヒトラーなどがいる。
■『不機嫌な中国』で、危険がさらに拡大
『不機嫌な中国』は、1996年に出版された『中国可以説不(NOと言える中国)』の延長線上にある。『NOと言える中国』には、中核的な
概念も理論もなかった。論理性も皆無だった。親米的な心理を攻撃し、「われわれは容易に奴隷になるだろう」、「その汚い手を放せ」、
「ハリウッドを燃やせ」、「どっちつかずの日本」などと繰り返すだけの、単なる「感情の排泄行為」だった。「絶対にあんたの言うことは
聞かないからね! これからは、あんたと違うやり方をする」などと、親に向かって叫ぶ反抗期の子と同じだ。
『不機嫌な中国』は行動を示す内容が多いだけに、さらに危険だ。「大目標は、世界の指導者になること」、「軍事戦とビジネス戦で、
大目標を達成」、「我々は強大になった。我々はお前らを殴りつける」などの記述が、いたるところにある。
「中華民族は偉大な民族だ」と主張すること自体は、おかしくない。ただし、その主張に正当性があると認められるのは、「他民族を
見下す感情がない場合」に限られる。『不機嫌な中国』は明らかに、独善的な民族主義に満ちている。「米国がどれだけのものだ?
世界の兄貴分はだれだ? 文明史からいえば、われわれが世界の兄貴分だ」などと主張する。さらに、「われわれ世界を指導しなければ
ならない。西洋人は、その次に控えていればよい」と言う。彼らは結局、他人を支配したいわけだ。
(中略)
■愚かな「文化大革命」を繰り返すな
「病態民族主義」の恐ろしさは、若者に「感染」しやすいことだ。青春期には激情にかられ、憤懣を暴力の形で排出しやすい。我々は
かつて、文化大革命期に同じような経験をした。多くの「青春」が浪費されただけでなく、国家の担い手になったはずの貴い血が流された。
「一度も石につまずいたことのない人間は臆病者だが、同じ石に二度つまづく人間は愚か者」という。我々は、同じ石に二度
つまづかないだけの、知恵を持たねばならない。
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呉稼祥:男。経済学者、政治学者、企業管理学者。1955年に安徽省銅陵市に生まれる。1982年に北京大学経済学部を卒業。1988年に
中国共産党中央弁公庁副研究員に選出される。2000年からは米ハーバード大学で研鑽を積む。帰国後は研究だけでなく、執筆・講演
活動なども多い。
ソース(サーチナ) URLリンク(news.searchina.ne.jp)