09/04/06 23:30:00
北朝鮮は通告通り、長距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を発射した。北朝鮮は「人工衛星」と主張
しているが、搭載するのが衛星か弾頭であるかの違いだけで、技術的な違いはない。
今回の発射は国際社会の自制を求める声を無視して強行された。東アジアの安全保障環境を
不安定にする挑発的な行為である。
飛翔体は東北地方上空を通過したが、1段目のブースターは秋田県沖の日本海に、2段目のブースターは
太平洋上に落下した。ミサイル防衛(MD)による迎撃措置は海上からも陸上からも取られなかった。
生命・財産に影響を与えるような事態にならなかったのは幸いだった。
政府は国連安全保障理事会の開催を要請し新たな決議を目指している。
北朝鮮が弾道ミサイル7発を発射したことを受けた2006年7月の安保理決議1695号と、同年10月の
核実験を強行した際の安保理決議1718号は「弾道ミサイル開発に関するあらゆる活動の停止」を求めており、
一連の決議違反というのが理由だ。
今回の発射についてさまざまな見方があるが、核と米本土を射程に収めたミサイルを手に入れたことを
アピールし、米国と対等な立場で核・ミサイル交渉を進めたい狙いがあるのは間違いない。
国内的には9日に最高人民会議が開かれ、金正日総書記が「国家の最高ポスト」国防委員長に3選される。
健康悪化がいわれる中で第3期指導体制に向け求心力を高める意味が込められていよう。
北朝鮮が核とその運搬手段である長距離弾道ミサイルを持ったことは日本にとっても重大な脅威である。
しかし、だからといって、海上と陸上で大々的に展開したミサイル防衛(MD)システムを強化せよ、ということには
ならない。ピストルの弾をピストルの弾で撃ち落とすような、と例えられるMDは技術的にも多くの問題を抱えているからだ。
初歩的なミスによる誤発表もあったが、これさえも、MD増強の材料に使われないか懸念する。
日本政府は迎撃はしなかったものの、今回、ミサイル防衛システムを初めて作動させた。自治体を実際に動かす
演習の要素もあった。迎撃の可能性に言及した麻生太郎首相には、近づく解散・総選挙を意識し政権浮揚を図る
意図はなかったのかどうか。
大量破壊兵器とその運搬手段の拡散防止はオバマ米政権の優先度の高い課題である。北朝鮮に発射を思い
とどまらせることができなかったのは、冷戦崩壊後の米国の軍備管理・軍縮政策がうまくいかなかったことの
証左ではないか。中国やロシアは新たな安保理決議採択には否定的だ。核検証問題で停滞している6カ国協議の
早期再開は困難との見方も出ている。
日米韓は連携を強化し北朝鮮と粘り強く核・ミサイル交渉の道を探ってほしい。北朝鮮が暴発するようなことが
あってはならず、そういう意味でも交渉の道を閉ざしてはならない。
ソース
沖縄タイムス URLリンク(www.okinawatimes.co.jp)