09/04/04 22:33:02
日米韓3カ国の当局者の間では、北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射について「4日正午」とする意見が大勢を占めていた。だが、
結果は「見送り」。その理由を防衛省や外務省でも分析を進めているが判然としていない。そもそも、北朝鮮の技術レベルと発射すると
されるテポドン2号改良型の性能が細部まで解析できていないのだから分析には制約が伴う。ただ、発射が失敗すれば、日本列島に
その残滓(ざんし)が襲来する可能性もあることから、北朝鮮の「慎重姿勢」に安(あん)堵(ど)する皮肉な現実も生み出している。
発射は(1)政治的判断(2)技術的見地(3)環境-の、主に3条件で決定される。
今回の場合、政府部内で真っ先に出た見解は「風」だ。というのも、北朝鮮の長距離弾道ミサイルは液体燃料が主に使用されるが、
固体燃料に比べ爆発力に劣り、離陸速度が遅い。このため、発射時に秒速15メートル以上の風が吹けば、ミサイルが発射台に接触
する懸念があることなどから原則、発射は見送られる。ところが軍事筋は、予報より強かったとしながらも、現場は風速8~12メートル
であった事実を指摘している。この辺りから浮上しているのが「技術陣が極度に慎重になっている」という観測である。
北朝鮮は、2006年にテポドン2号の発射に失敗している。このときは、液体燃料が腐食を誘発するため、注入後速やかに発射
しなければならないにもかかわらず、注入から発射まで2週間以上経過。(1)腐食で脆弱(ぜいじやく)になったミサイル外板にエンジン
燃焼の圧力で大きな傷ができた(2)軽量化を優先する余り強度が担保できなかった(3)噴出口の腐食-などが原因だった、ともいわれる。
技術陣は今回、燃料注入を発射予定直前の今月2日から開始。一連の欠陥克服に向け設計を見直すと同時に昨年、平安北道・東倉里
の試験基地でテポドン2号を横倒しして行う、開発に必須である燃焼実験を不定期に実施してきてもいる。一方で、06年に比べて全長が
より強い推進力が必要となる10メートル以上も大型になり、一部に固体燃料を使用している可能性がある。欠陥克服と技術革新に向け
背水の陣を敷いた格好だ。
技術陣にはもう一つ、慎重にならざるを得ない理由がある。テポドン2号へ技術供与したイランの代表団が、発射データの引き渡しを
期待して臨場しているとみられることだ。今年2月にイランが打ち上げた「通信衛星」のデータは、テポドン2号の欠陥を補うことに相当
貢献している。今度はテポドン2号のデータを還元しなければならない立場だ。それ以上に、実験が成功すれば技術か本体の輸出に
直結するため失敗は許されない。
当然、最終チェック段階での不具合発生も観察対象からはずせない。エンジン・信号系統や外板などミサイル自体、発射台や観測・
支援施設など周辺におけるトラブルが生起した確率も高い。
さらに、金正日総書記が発射を観覧する可能性も挙げられる。観覧しなくても、技術陣が金総書記の顔色をうかがい、2度と失敗を
犯せない立場に追い込まれているといえよう。
ソース(MSN産経ニュース)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
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