10/06/29 00:33 le76vDM.
maravilla!!!!!!!!!
301:名無しが急に来たので
10/06/29 22:50 fPVpA0VY
「またどこかで会おう」と僕は言った。
「またどこかで」と本田が言った。
「またどこかでね」と松井が言った。
それはまるでこだまのように僕の心でしばらく響いていた。
バスのドアパタンと閉まり、長谷部が手を振った。何もかもが繰り返される・・・。
僕は一人スタジアムに戻り、冬の光が溢れるピッチでリフティングをしてからフリーキックの練習をした。
そして通り過ぎていくワールドカップの風景を眺めた。何もかもが透き通ってしまいそうなほどの六月の静かな南アフリカだった。
302:名無しが急に来たので
10/06/29 22:58 fPVpA0VY
「うまく言えないけど」と僕は言った。「君達がいなくなるととても寂しいよ。」
「私たちもよ。」
「寂しいわ。」
「でも行くんだろ?」
二人は肯いた。
「本当に帰るところはあるのかい?」
「もちろんよ。」とイタリアが言った。
「でなきゃ帰らないわ。」とフランスが言った。
303:名無しが急に来たので
10/06/30 00:21 z1Gl2VKM
日本はサッカーの強国じゃないんだ。
どうも解説の人たちは代表の試合にプラクティカルな物を求めすぎる。
304:名無しが急に来たので
10/06/30 04:05 BYtpR4QE
「ピース」、と駒野が言った。
「ピース」、と岡田も言った
「俺と一緒に、ウルグアイに行っちゃえばいいんだよ」、と駒野はカウンターに
肩肘をついたまま言った。
「それも悪くないな」、と岡田は笑って言った
305:名無しが急に来たので
10/06/30 20:43 6eC5WS6o
眠りたかった。
眠りが何もかもをさっぱりと消し去ってくれそうな気がした。眠りさえすれば・・・
目を閉じたとき、耳の奥に波の音が聞こえた。防波堤を打ち、コンクリートの護岸ブロックの間を
縫うように引いていく冬の波だった。
これでもう誰にも説明しなくていいんだ、と岡田は思う。いや、もう何も考えたくない。
もう何も・・・。
306:名無しが急に来たので
10/06/30 21:10 SusSdgQ6
「また会おう。いつの日か・・・」
「また会おう。いつの日か・・・」
キミのその顔を忘れない・・・
307:名無しが急に来たので
10/06/30 22:03 6eC5WS6o
ゾノはグラスに半分ばかりビールを飲み、溜息をついてそれをテーブルに戻した。
「ねえヒデ、人間はみんな腐っていく。そうだろ?」
「そうだね」
「腐り方にはいろんなやり方がある。
でも一人一人の人間にとって、その選択肢の数はとても限られているように思える。
せいぜいが・・・二つか三つだ」
「そうかもしれない」
「でもそんなことはどうでもいいような気がしてきた。どのみち腐るんじゃないかってね。そうだろ?」
ヒデはコーラのグラスを傾けたまま、黙ってゾノの話を聞いていた。
308:名無しが急に来たので
10/07/03 02:11 4sCVvArw
「よう、それで、イタリアに行く話だけどさ」
「はい」とナカタさんは言った。
「あんたそもそもイタリアに何をしに行くの?」
「それはナカタにもよくわからないのです」
「目的もなきゃ、行き先もよくわからねえ。でもとにかくイタリアに行くと」
「はい。ナカタは大きなクラブに移籍します」
「大きなクラブに移籍すれば、いろんなことがもっとはっきりするってか」
「はい。たぶんそうなります。しかしじっさいに大きなクラブに移籍してみないことには、ナカタは何もわかりません。」
「ふうん」と三浦は言った。「大きなクラブに移籍するのが大事なことなんだ」
「はい。大きなクラブに移籍するのはなんといってもとても大事なことです」
「参ったな」と三浦さんは頭を掻いた。
309:春樹
10/07/03 02:17 IZNvgKxk
「やれやれ」
310:名無しが急に来たので
10/07/03 02:20 4sCVvArw
「ねえ、サッカー選手は生まれつき不公平に作られてる。」
「誰の言葉?」
「中村 俊輔。」
311:名無しが急に来たので
10/07/03 20:36 97b6V.5o
アキレス腱踏むわ踏まれるわそらええわ
312:名無しが急に来たので
10/07/04 14:02 qmvaH9Ko
「サッカーライターってのがまたひどくってね。みんなわかったような顔して難しい
言葉使ってるのよ。それで私わかんないからそのたびに質問したの。『そのキムチ魂
って何のことですか?サッカーと何か関係あるんですか?』とか、『アンチ・フットボールって
バルセロナみたいなサッカー以外はサッカーじゃないってことですか?』とかね。でも誰も説明
してくれなかったわ。それどころか真剣に怒るの。そういうのって信じられる?」
「信じられる」
「そんなことわからないでどうするんだよ、何考えて生きてるんだよお前?これで
おしまいよ。そりゃ私そんなに頭良くないわよ。庶民よ。でも私だって日本が強くなって
ほしいと思うわよ。だからこそ質問するわけじゃない。そうでしょ?」
「そうだね」
「そのとき思ったわ、私。こいつらみんなインチキだって。適当に偉そうな言葉
ふりまわしていい気分になって、ニワカファンを感心させて、テレビやコラムの仕事をもらうことしか考えて
ないのよ、あの人たち」
313:名無しが急に来たので
10/07/04 14:25 qmvaH9Ko
「やれやれ、またテレビ出演か、という顔をしてるわ」と彼女は言った。
「そうかい?」と僕は言った。
「そういうのって、わかるのよ。私にも、そしてマスコミにもね」
「そうかもしれない」
実際のところ、僕はたしかにテレビ出演に飽きていた。海外移籍、代表チームの団結について、そして将来の目標…。こんなものを番組の中の5分の枠で話したところで、僕という人間は決して伝わりはしないのだ。
「テレビ局はあなた自身には興味がないの。あなたがテレビ局に興味がないのと同じようにね。あなたはマスコミに純粋な媒体としての役割を、マスコミはあなたに広告塔のメリットを求める。平行線よ」
平行線、と言いながら彼女は手のひらを水平に動かした。
「毒にも薬にもならないようなインタビューなんて、マクドナルドのコーヒーみたいなものよ」
「おそらく、君の言っていることの方が正しいんだろうな」
314:名無しが急に来たので
10/07/04 14:39 HbeTLDgs
>>302
ワロタw
315:名無しが急に来たので
10/07/08 22:02 B6I3r0tg
じゃりん娘チエ
316:名無しが急に来たので
10/07/08 22:37 SPiWD5Zo
僕は射精した
317:名無しが急に来たので
10/07/09 04:48 2l3umEag
「グレート・ギャツビイを三回読む男は、俺と友達になれそうだ」、と
マラドーナ監督は言った
「永沢さ・・、いや、マラドーナさんはどんな作家が好きなんですか」、と岡田は聞いた。
「バルザック、ディッケンズ、フィッツジェラルド」と、彼は答えた。
「あまり、今日性のあるサッカーとは言えないですね」、と僕が尋ねてみた。
彼は、「現代サッカーを信用しないと言うわけじゃないんだ。ただ、俺は時の洗礼を受けてない
サッカーをして貴重な時間を無駄にしたくないんだ」、と即座に言った
僕はゆっくりと考えて、
「でも、ドイツには4-0で負けて、そのドイツは、スペインに1-0で負けましたよ」と言った
318:名無しが急に来たので
10/07/09 21:42 FrVI7bLQ
このスレ最高
みんな立派な村上春樹だよ
319:名無しが急に来たので
10/07/10 11:18 KuoV0m7E
春樹スレの面白いのはネタもさることながら、実際にフットボールをシニカルに観てるやつが多いところだなw
320:名無しが急に来たので
10/07/11 21:28 FrkSt9R.
「代表の監督辞任は、はっきりしている。もう私は前代表監督だ。」
深い心の傷を負ったドゥンガ。その言葉には、敗れた者の寂しさがあった。
ブラジルは全力で勝ちにいった。あのカカのシュートがはいっていれば歴史は違ったものとなったかもしれない。
国民はロナウジーニョを入れたがっていた。技術的にはそうだ。
しかしカカは立派にチームに貢献した。ロナウジーニョがこのチームに貢献するとも思わない。
どの国も子供じゃない。日本ですら体力がありマークも厳しい。
「優勝以外ブラジルサポにとって何の意味もない。」とドゥンガは語ったが、その顔色は蒼ざめていた。
常に優勝の十字架を背負うのがカナリア軍団だから。。
マラは鼻で笑った。「アルヘンのサカは奔放な攻撃に良さがある。ドゥンガは守りを言いすぎる。」
ジョルジが首を振った。「悲しい、単純に見られたものだ。」
それから数日後ディエゴ・マラは蒼ざめた表情で南アフリカを後にしブエノスアイレスへと帰った。
321:名無しが急に来たので
10/07/11 23:53 Vkg/5wdU
「何故ワールドカップなんて見る」
僕は考えた。「サカの面白いのはドリブル、ワンツー、シュート枠外、何も残らない」
「ビールの小便さ。」
僕にとってワールドカップを見るのは苦痛な作業でもある。
90分かけて1点も入らなければ120分でも1点も入らないからである。
僕は何故かチャウシンチーの少林サッカーを思い出した。
「少林寺サッカーなど無茶で、馬鹿げているが彼は、サカは不毛な闘いだと知っていたのだ。」
322:名無しが急に来たので
10/07/12 02:34 ixB./IUQ
「世界はメタファーだ、中村シュンスケくん」、と岡田さんは僕の耳元で言う。
「でもね、君にとっても僕にとっても、あの日本代表だけは何のメタファーでもなかった。
それだけはハッキリしておきたかった」。
「もちろん」、と僕はうなずく。
「さよなら、中村シュンスケくん」と岡田さんは言う。
「さよなら、岡田さん」、と僕は言う。
そして最後に僕は、以前からずっと聞きたかった事を尋ねた。
「怪我をしなくても、僕を使う気はなかったのでしょう?」
「もちろん」。岡田さんは優しく微笑みながら答えた
323:名無しが急に来たので
10/07/12 13:21 8YYPFHPY
いつの日か、変り種の好古家がブラジルが、どんな段階をへて繁栄したか考えないともかぎらない。
サカは後世を夢見たことなどなかったので、シューズは汚い茶褐色に変じているに違いない。
たしかにブラジルでは多数の選手が試され削りとられたからである。
かといって、プロットないし選手になにか偉大な独創性があったわけではない。
プロットの大半は常套的であった。
ブラジルでは、良い場面を生み出すのが良いサカであり、場面がプロットに優先する点にあるのだ。
すべての興味は数秒に満たないゴール場面にしぼられるが、その頃には観客は、帰ろうとしていると言うのである。
サカは過去の物語に棲息を見つけ古典であるペレ マラ バッジオ ロナウダンの情緒的基盤を非常にも超えていく物である。
道理をわきまえた人がサッカを見る理由も、この点にかかっているのだ。
324:名無しが急に来たので
10/07/12 13:26 2pBg8EAk
スポイルされた攻撃的サッカー
いいですか
人は傷ついたら血を流すんです
325:名無しが急に来たので
10/07/12 21:07 WM7Ue00.
やれやれ
春樹以外の文体でネタをつくるのはスレ違いじゃないか?
326:名無しが急に来たので
10/07/12 23:21 Dapt8W7U
「ホンダ君、あの音なんだかわかる?」突然ナカムラが言った。
わからない、と僕は言った。
「あれ、南アフリカのサポーターがラッパを吹いてるのよ」
「へえ」と僕は言った。それ以外に何を言えばいいのかよくわからなかった。
「プラスチック製の細長いラッパでブブゼラっていうの」
と言ってナカムラはにっこりした。「欧米の旧植民地ってキリスト教が盛んでしょ、
南アフリカでもそう。もともと教会でお祈りをするときに鳴らしてた動物の角の笛らしいんだけど
相手に威圧感を与えるために安いプラスチック製のをスタジアムで吹くようになったの。それがあの音なの」
「そう思って聞くとどことなく荘厳さがあるね」と僕は言った。
327:名無しが急に来たので
10/07/13 00:05 g.1o6q1Y
「どうしてわざと倒れる真似をするの?」西村副審が僕に訊いた。
「俺がオランダのDFにカードを出すからだよ」とハワード主審が言った。
「私、イニエスタ君に質問しているのよ」西村さんはきっぱりと言った。
「どうしてそんなことするの?」
「ときどきすごくファールをゲットしたくなるんです」僕は言った。
「相手ゴール前でチャンスがあるのなら、突破してシュートするわけにはいかないの?」
と西村さんは少し考えていった。
「複雑な事情があるんです」
西村さんはため息をついた。
328:名無しが急に来たので
10/07/13 00:07 g.1o6q1Y
「あのね、イニエスタ君、どんな事情があるかは知らないけれど、そういう種類のことはあなたには向いてないし、
ふさわしくないと思うんだけれど、どうかしら?」と西村さんは言った。彼はピッチの上に手を置いてじっと僕を見ていた。
「そうですね」と僕は言った。「自分でもときどきそう思います」
「じゃあ、どうしてやめないの?」
「ときどきフリーキックやPKが欲しくなるんです」と僕は正直に言った。
「そういう保険のようなものがないと、ときどきたまらなく淋しくなるんです」
「要約するとこういうことだと思うんだ」ハワードさんが口をはさんだ。
「イニエスタはテクニックがあるんだけれども、点取り屋ってわけじゃない。だから相手ゴール前ではチャンスメイクと
わりきって大げさに倒れてみせるわけだよ。それでかまわないじゃないか。話としてはまともだよ。
誰もがメッシみたいにドリブルで突破ってわけにもいかないだろう?」
329:名無しが急に来たので
10/07/13 02:42 ci4F85bk
,,,,,,,,,,,,,,,
/ ,,,, ,,,,\
| ・ ・ |
| ⊃ | オーケー認めよう。あれは僕のスタイルのサッカーじゃない
\ ー /
330:名無しが急に来たので
10/07/13 03:08 ci4F85bk
突撃隊。
たしか、「ノルウェイの森」に出てくる奴、いたじゃん?。
「ぼ、ぼ、僕はね。ち、ち、地図が好きなんだ」とか言う人
彼を次期ドイツ代表監督にすべき。
レーヴ監督以上の、突撃カウンターサッカーをしてくれると思う
331:名無しが急に来たので
10/07/13 22:24 0g2RUFRQ
>>330
あ、あのさ、ワタナベ君さ、ぼ、ぼくはドイツサッカーってあまり好きじゃないんだよ
332:名無しが急に来たので
10/07/15 09:04 Umg022W.
もし圭祐という選手に会わなければオカナチオは使わなかったかもしれない。
彼とは何だか気が合いそうだった。
「目立ってなんぼじゃないですか。エブエやレーヴ たこのパウル リスクを背負わないと目立たない。」
「それに僕には無回天もある。まったく無問題です。」
「ヘナギはどうだ。」
「ゴール前でシュートを打たないだけじゃ目立ちませんよ。」
「イングランド戦の釣男のヘッドや中沢さんのダイレクトは笑えましたけど。」
「それにオカナチオは東アジアでの香港サカのパクリだと見え見栄じゃないすか。」
僕は言った。
バードフィールド監督の映画では僕は燃えよサカが気に入っているしオカナチオはサカ危機一発が最高だと言う。
試合は前半得点もなく僕は退屈な時をおくる。
後半何故か前線で孤立するのが心地良かった。
相手からボールを奪った時僕は自陣を向いていた。
オカナチオがスペースを埋めているのが見えた。
それから僕はニホンゴールへ向かってドリブルをはじめた。
333:名無しが急に来たので
10/07/15 14:19 dpofg9Ic
たっぷり一時間かけて僕は2chレスを書き込んだ。
僕は仰向けになって目を閉じ、そしてタバコを吸った。
このレスの333をゲトした。
そして何処に辿り着いたのかは僕にもわからない。
334:名無しが急に来たので
10/07/16 22:05 W0aUho.w
クラブハウスの電話が鳴る。そしてこう思う。
誰かが僕以外の誰かに向かって代表入りを告げようとしているのだ、と。
僕自身に電話がかかってきたことはなかった。
僕に向かって代表選出を告げる人間なんてもう誰ひとりいなかったし、
少なくとも僕が語ってほしいと思っていることを誰ひとりとして語ってくれなかった。
多かれ少なかれ、Jリーグクラブのどこもが自分のシステムに従って生き始めていた。
それが僕の望むサッカースタイルと違いすぎると腹が立つし、似すぎていると悲しくなる。それだけのことだ。
335:名無しが急に来たので
10/07/16 22:24 W0aUho.w
「それはあなたが好き放題やってもマスコミが一切口を出さなかったからよ」
と中澤が言った。「でも本当の代表チームというのはそういうものじゃないわ。本当の大人の代表というのはね。
本当の代表チームというのは選手と選手がもっと正直にぶつかりあうものよ。
そりゃジーコが監督だったころの代表はそれなりに楽しかったわ。自由で、気楽でね。
でも最近になって、そういうのは本当のサッカーじゃないと思うようになったの。
なんていうか戦術の実体というものが感じられないのよね。あなたはまるで自分のこと
しか考えてないし、途中出場してもボールを奪われてばかりだし」
336:名無しが急に来たので
10/07/16 22:25 W0aUho.w
「内気なだけなんだ」と僕は言った。
「傲慢なのよ」と中澤は言った。
「内気で傲慢なんだ」と僕はワインをグラスに注ぎながら本田圭祐に向って説明した。
「内気と傲慢の折り返し運転をしてるんだよ」
「わかるような気はします」本田圭祐は肯きながら言った。「でも横浜に戻ったら―つまり
代表を引退しちゃったらということだけど―やはり中村さんもまた代表に戻りたいと
思うようになるんじゃないですか?」
「そうかもしれない」と僕は言った。
337:名無しが急に来たので
10/07/16 22:34 W0aUho.w
一九九三年五月、日本のプロサッカーはそこから始まる。
それが入口だ。出口があればいいと思う。
もしなければサッカーをやる意味なんてなにもない。
338:名無しが急に来たので
10/07/17 08:58 TkXR6LT2
二人は驚くほど何も知らなかった。セルビアとクロアチアの区別さえつかなかった。
朝鮮が二つにわかれてW杯に出場してることを納得させるのに三日かかり、中国が金正日を支援する理由
を説明するのにあと四日かかった。
「あなたはどちらを応援してるの?」と208が訊ねた。
「どちら?」
「つまり南と北よ」と209。
「さあね、どうかな?わかんないね」
「どうして?」と208。
「僕は朝鮮半島に住んでるわけじゃないからさ」
それが僕のサッカー観戦におけるライフスタイルであった。ドストエフスキーが予言し、僕が固めた。
339:名無しが急に来たので
10/07/17 10:36 TkXR6LT2
南アフリカW杯終了後、本田圭祐は夜行バスに乗り、所属クラブへと帰った。
一方、海外挑戦を目指す巻さんも、なにかに引き寄せられるようにロシアへと向かう。
16強と2部落ちの影の谷を抜け、世界と世界が結びあわされるはずの場所を求めて。
340:ロバート・グリーン
10/07/17 10:45 TkXR6LT2
誰も私を助けてはくれなかった。誰にも私を救うことはできないのだ。
ちょうど私がイングランドのゴールを守ることができなかったのと同じように。
341:名無しが急に来たので
10/07/17 10:50 TkXR6LT2
どのような真理をもってしてもグループリーグ敗退の哀しみを癒すことはできないのだ。
どのような真理も、どのような誠実さも、どのような強さも、どのような優しさも、その哀しみを癒すことはできないのだ。
我々はその哀しみを哀しみ抜いて、そこから何かを学びとることしかできないし、そしてその学びとった何かも、次にやってくる予選落ちの哀しみに対しては何の役にも立たないのだ。
342:駒野
10/07/17 10:56 TkXR6LT2
僕は時折PKを外す。
最後にPKを外したのはパラグアイ戦のことだ。
PKを外すのはひどく嫌なことだ。レッドカードとPK失敗は現代サッカーにはびこる二つの巨大な罪だと言ってもよい。
実際僕たちはよくPKを外し、しょっちゅうバッシングされてしまう。
しかし、もし僕たちが年中PKを蹴り、それも成功しかしないとしたら、延長PK戦の価値など失くなってしまうのかもしれない
343:名無しが急に来たので
10/07/17 11:03 TkXR6LT2
東京ヴェルディは僕に生物進化の行き止まりのようなものを連想させた。
遺伝子的後退。 間違えた方向に進んだまま後戻りできなくなった奇形クラブ。
進化のベクトルが消滅して、歴史の薄明りの中にあてもなく立ちすくんでいる孤児的生物。
時の溺れ谷。
それは誰のせいでもない。
誰が悪いと言うわけでもないし、誰にそれが救えると言うものでもない。
まずだいいちに彼らは川崎から移転するべきではなかったのだ。
過ちはまずそこから始まっていた。第一歩から、全てが間違っていた。
最初のボタンがかけ違えられ、それにあわせてすべてが致命的に混乱していた。
混乱を正そうとする試みはあらたな細かい混乱を生み出した。
そしてその結果、何もかもが少しずつ歪んで見えた。
344:名無しが急に来たので
10/07/17 11:11 TkXR6LT2
「あんなにホッとしたの本当に久しぶりだったわよ。
だってみんな私にいろんなものを押しつけるんだもの。顔をあわせればああだこうだってね。
少なくともあなたは私に何も押しつけないわよ」と岡田監督は言った。
「何かを押しつけるほど日本サッカーに期待してないんだよ」
「じゃあ日本がもっと強くなったら、あなたもやはり私にいろんなものを押しつけてくる?
ほかの人たちと同じように」
「その可能性はあるだろうね」と僕は言った。
「現実の世界では人はみんないろんなものを押しつけあって生きているから」
「ねえ知ってる?
世の中にはいろんなもの押しつけたり押しつけられたりするのが好きな人ってけっこう沢山いるのよ。
そして押しつけた、押しつけられたってわいわい騒いでるの。そういうのが好きなのよ。
でも私はそんなの好きじゃないわ。やらなきゃ仕方ないからやってるのよ。」
345:名無しが急に来たので
10/07/17 12:31 O3qNJsSc
このスレには日本代表の限りない喪失と再生が描かれているなw
346:名無しが急に来たので
10/07/20 21:26 BHrWEbyA
「エンドウ君ってよく見るとけっこう面白い顔してるのね」と岡田監督は言った。
「そうかな」と僕は少し傷ついて言った。
「私って面食いの方なんだけど、あなたの顔って、
ほら、よく見ているとだんだんまあボランチこの人でもいいやって気がしてくるのね」
「僕もときどき自分のことそう思うよ。まあ俺ボランチでもいいやって。」
「ねえ、私、悪く言ってるんじゃないのよ。私ね、うまく感情を言葉で表すことができないのよ。
だからしょっちゅう誤解されるの。私が言いたいのは、あなたのプレーが好きだってこと。
これさっき言ったかしら?」
347:中村俊輔
10/07/20 21:43 BHrWEbyA
代表引退を受け入れることは容易なことではないけれど、それは私が私自身の裁量でやりくりしていることなのだ。
だからそれはそれでかまわない。
『ワーロック』のヘンリー・フォンダと同じだ。
しかしクラブに戻ったあとくらいは、静かにそっとプレーさせて欲しかった。
私は大昔のエジプトの王様が死んだ後で
ピラミッドの中に閉じこもりたがった理由がよくわかるような気がした。
348:名無しが急に来たので
10/07/20 21:48 BHrWEbyA
「どうして千葉から移籍したの?」彼女が訊いた。
「遠征するときバスの窓側の席に座れないから」と私は言った。
「冗談でしょ?」
「J・D・サリンジャーの小説にそういう科白があったんだ。高校生のときに読んだ」
349:名無しが急に来たので
10/07/20 21:52 BHrWEbyA
降りしきる雪の中をフリーキックが相手ゴールのはるか上方に飛んでいくのが見えた。
ボールは壁を越え、相手サポーターで埋まった南のスタンドに呑みこまれていった。
そのあとには僕が踏む芝の軋みだけが残った。
350:香川
10/07/25 14:26 sW9WIIOE
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でドイツ語のアナウンスが流れ出した。
僕は2010年、これからブンデスリーガに移籍するにもかかわらず、ドイツ語をまったく学習していなかったことを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。
351:名無しが急に来たので
10/07/25 14:51 sW9WIIOE
「バルセロナをでることにするよ」とアンリはグアルディオラに言った。
「出るって・・・どこに行くんだい?」
「あてはないさ。知らないリーグに行く。あまり大きくない方がいいね」
「そこで何をするんだい?」
「センターフォワードさ」アンリは左手の爪を切り終えると何度も指を見つめた。
「このチームじゃ駄目なのかい?」
「駄目さ」とアンリは言った。
352:ラウル
10/07/25 17:49 sW9WIIOE
「どんな戦術変更をするんですか?」
「簡単なもんですよ。古い選手を切る。新しい選手を入れる。それだけ。10分で済んじゃいます」
僕は少し考えてからやはり首を横に振った。「今のクラブで不自由ないんだ」
「今のは旧式なんです」
「旧式でかまわないよ」
「ねえ、いいですか、」とモウリーニョは言ってしばらく考えた。「そういった問題じゃないんです。みんながとても困るんだ」
「どんな風に?」
「レアルは常に新しいスターを獲得しなきゃいけないんですよ。ところがお宅だけが生え抜きとして居座るとね。これはとても困るんだ。わかりますか?」
「わかるよ。移籍金と年棒の関係だよね。」
「わかったら移籍してくれませんかね?」
僕はあきらめてレアルを退団しドイツへと向かった。
353:名無しが急に来たので
10/07/25 20:39 sW9WIIOE
ヘニー・マイヤーなるウイングFWの名に心当たりのある方はまずいるまい。
かつてそのようなサッカー選手が存在し、そして引退した、とそれだけのことだ。彼の生涯に
ついては誰も知らない。深い井戸の底のみずすましほどにしか知らない。
もっともJリーグ史上第1号ゴールが1993年にこの人物のミドルシュートによって国立競技場にもたらされた
というのはひとつの歴史的事実である。そしてそれはまた細川内閣という連立政権によって55年体制が終焉の梯子の
一段めに手をかけようとしていた年でもあった。
354:名無しが急に来たので
10/07/25 20:40 sW9WIIOE
さてこのヘニー・マイヤー氏の人生はペレやヨハン・クライフのごとき神話的色彩に彩られているわけではない。
ワールドカップにおける活躍もなければ、劇的なスーパーゴールもない。僅かに物好きな読者のために書かれた
専門書の第一ページめにその名を留めるのみである。1993年、Jリーグの第一号ゴールはヴェルディ川崎のマイヤーにより記録された、と。
写真さえも載ってはいない。もちろん肖像もなければ銅像もない。
あなたはこう思うかもしれない。もしこのマイヤー選手が存在しなければ日本サッカーの歴史は今とすっかり
違ったものになっていただろう。いや、存在すらしなかったかもしれない。さすれば、このマイヤー選手に対する
我々の不当評価は忘恩の行為ではないのか、と。しかしながらもしあなたがマイヤー選手がプレーした初期Jリーグの試合を
見る機会があれば、その疑念は解消するに違いない。
そこには我々の想像力を刺激する要素など何ひとつ無いからだ。
355:名無しが急に来たので
10/07/26 20:59 E1dC3DHM
うまいねどうも
356:蛸の消滅
10/08/03 20:30 amUPLw36
蛸がワールドカップのドイツ戦の勝敗を予言していたことを僕は新聞で知った。
僕はいつもと同じように六時十三分にセットした目覚まし時計のベルで目を覚まし、台所に行ってコーヒーをいれ、
トーストを焼き、FM放送のスイッチを入れトーストをかじりながら朝刊をテーブルの上に広げた。
蛸の予言記事は海外版のトップに載っていた。「ドイツに予言ダコ」という海外版にしてはかなり大きな見出しがまず目につき、
それから「準決勝敗退の予言にドイツサポーターに不満強まる。管理責任追及の声も」
という一段小さな見出しが続いていた。勝敗を予言する蛸はどことなく不自然だった。
必要以上に無表情で、それは臓物を抜かれて乾燥された巨大生物のように見えた。
357:名無しが急に来たので
10/08/12 14:57 vmnzE0B6
基本的に僕は一人でゴールキーパーの練習をして、一人でPKをとめた。
ピンチの折にDFがゴールライン際を死守することもないではなかったが、一人で守ってることのほうがずっと多かった。
ゴールキーパーとは一人で守るべきポジションであるような気がした。
理由なんてわからない。
358:名無しが急に来たので
10/08/21 12:22 ifuEm4IU
我々はその前線の三人を「3R」と呼んでいた。それ以外にどう呼べばいいのか僕には
見当もつかなかった。だってそれはまったくの、絵にかいたような三人のRだったのだ。
セレソンはその三人を主力にワールドカップを戦っていた。2005年だか6年の話だ。
「3R」といってもいわゆる3トップの形を想像してもらっては困る。われわれの見ていた
3Rはもっと2トップ+1トップ下、あるいは1トップ2シャドーという細長く、くさびのような形をしている。
どうしてそのような不自然な形で三人のRが並んでしまったのか、とあなたは訊ねるかもしれない。
あるいは訊ねないかもしれない。どちらでもいい。なぜそうなったかは僕にもよくわからないのだ。
地元の人に訊いてみてもよくわからなかった。地元の人々はどちらかというとその「3R」について
はあまりしゃべりたくもないし考えたくもないという感じだった。
どうして「3R」がそんな風に―耳のうしろのいぼみたいに―冷たく扱われるのか
その理由はよくわからなかった。たぶん7人で守って3人で攻めるというセレソンが美しくないと思ったからだろう。
359:本田圭祐
10/08/21 12:27 ifuEm4IU
その時僕は二十四歳で、あと何ヶ月間かのうちに二十五になろうとしていた。
当分のあいだビッグクラブに移籍できる見込みはなく、かといって前線で攻撃の中心になるだけの確たる評価や信頼も得ていなかった。
奇妙に絡みあった絶望的な状況の中で、何ヶ月ものあいだ僕は新しい一歩を踏み出せずにいた。
360:名無しが急に来たので
10/08/22 13:49 Q5bSx7P6
ロシアリーグなんてどうかしらと私は言った。
私が移籍先にCSKAモスクワを選んだのはチャンピオンズリーグに出場するクラブならきっと夫の圭祐も興味をもつだろうと思ったからだ。
それに正直な話、私はずっと以前からロシアには一度いってみたいと思っていたのだ。私はオーロラだって見てみたかったし
レーニンの遺体だって見てみたかった。私は自分がフードのついた毛皮のコートを着て、赤の広場で群衆に混じってレーニン廟に並んでいるところを想像した。
私がそういうと、夫の圭祐は私の目をじっと見た。瞬きもしないでずっと。彼はしばらく黙って考え込んでいたが、やがてちかちかした声でいいよといった。
君がもしそれを望むのならモスクワにいこうじゃないか。本当にそれでいいんだね?
私は肯いた。
361:名無しが急に来たので
10/08/22 13:50 Q5bSx7P6
しかし時間がたつにつれて、私は夫にロシアリーグ移籍を持ち出したことを後悔するようになった。
どうしてだかはわからない。CSKAに移籍して以来、夫のサッカー人生が変わってしまったような気がするのだ。
夫のポジションは以前よりもずっと後方になり、攻撃参加がずっと少なくなった。
彼は以前よりずっと無口になり、ずっと頑固になったようだった。
私は思い切って夫に提案してみた。もっとビッグクラブのあるリーグに行った方がいいんじゃないかって気がしてきたのよ。
西ヨーロッパがいいんじゃないかしら、スペインあたりでのんびりしましょうよ。ワインを飲んだり、パエリヤを食べたり、闘牛を見たりして。
でもCSKAのフロントはとりあわなかった。代理人はしばらくのあいだじっと遠くの方を見ていた。それから私の顔を見た。私の目をじっと深く覗きこんだ。
君たちはまだリーガのビッグクラブには行けないな、と代理人はきっぱりと言った。
362:名無しが急に来たので
10/08/22 14:00 Q5bSx7P6
やがて厚い氷に囲まれた寡黙なサッカーリーグの中で、夫の圭祐はすべての力を失っていった。
少しずつ、少しずつ。そしてやがては苛立つ力さえ消えてしまった。
私にはこれだけはわかった。ロシアにいるこの私の夫はかつての私の夫ではないのだ。
どこが違うというのでもない。彼はいままでと同じようにチームメイトを気づかい、パスを供給している。そしてそれが手を抜いたプレーではないこともわかっている。
でも私にはやはりわかるのだ。夫は、オランダリーグや南アW杯で活躍したあの本田圭祐とは違う本田圭祐なのだということが。
しかし私はそれを誰かに向って訴えることもできない。CSKAのサポーターはみんな彼に好意を持っているし、私の語る言葉は彼らにはひとことだって理解できないのだ。
みんな白い息を吐き、ちかちかとしたロシア語で冗談を言ったり議論をしたり歌を歌ったりしていた。
私はずっと一人で部屋に籠って、この先何カ月も晴れる見込みのない灰色の空を眺め、ひどくややこしいロシア語の文法を勉強していた。
363:名無しが急に来たので
10/08/22 14:01 Q5bSx7P6
やがて移籍期間は過ぎてしまった。冬が来たんだよ、と代理人はいった。とても長い冬だ。移籍話もこないしどうやら僕らはシーズンオフまで待つしかないようだね、と彼は言った。
そして私にはわかっていた。私たち一家がロシアリーグの外に出ることはもう二度とないのだということを。
移籍金が、その途方もない重みが私たちの足をしっかりと捉えていた。そして私たちにはもうそれを振り払うことができないのだ。
私は泣く。氷の涙をぽろぽろと流し続ける。遠く凍えたロシアリーグの観客席で。
364:名無しに明日はない
10/08/22 15:43 893TUKr6
世界の終りだ
365:名無しが急に来たので
10/08/23 00:25 uh0EypKM
なんか綺麗な文章でひどい事書く奴がいるな
366:名無しが急に来たので
10/08/23 06:57 YWwpmhPk
>>360-363は「氷男」だなw
367:名無しが急に来たので
10/08/24 22:16 e8kZFWzs
「もしもし、日本サッカー協会の者ですけど、内定おめでとうございます」
と電話の向こうの男は穏やかな口調で言った。
「ちょっと待って」と僕はあわてて言った。「あなたはたぶん電話番号を
間違えていると思う。あなたはどこの人間に電話したんだろう?」
「んーと、待って下さいね」と彼は言って、受話器からメモを取り出すような
音が聞こえた。「えーと、元レアル・サラゴサ監督のビクトル・・・」
僕だった。「僕です、それは」と僕は言った。
「じゃあ、間違ってないじゃないですか」
「ちょっと待ってください。確かに僕のところにかかってきた電話です。
でも僕には全然理解できない。あなたはどうして僕のところに電話したんだろう?」
「掛けるように言われたからです」と彼は当然という口調で言った。
「誰に?」
彼は一瞬言葉に詰まり、「スペインサッカーに好意を持っている協会の幹部に。その人が
命令してきたんです。分かるでしょう、どういうことだか?」
368:中田英寿
10/08/26 20:26 KJ8D1sXI
「私ね、雑誌の取材で裸になっちゃったの。全部脱いでじっくり
見せてあげたかったの。ヨガみたいにやって。はい、ゲーテ、これ腹筋よ、
これ大胸筋よって」
369:原博実
10/08/26 20:37 KJ8D1sXI
代表監督を探すというのは非常に重大なことのようにも思えるし、
逆にまるでたいしたことじゃないようにも思える。つまり自己療養行為
としての監督選びがあり、暇つぶしとしての監督選びがある。
終始自己療養行為という監督選びもあれば、終始暇つぶしという監督選びもある。
はじめは自己療養行為であったものが暇つぶしで終る例もあれば、逆の場合もある。
なんというか我々の日本代表のサッカーは欧州や南米のサッカーと根本的に異っているのだ。
我々は世界レベルの代表ではない―これは僕の代表監督選びにとって、ひとつの重大なテーゼである。
370:岡田武史
10/08/26 20:44 KJ8D1sXI
「日本代表監督の続投を辞退したんだって?」と彼が口を開いた。
「一ヶ月も前の話だぜ」と僕は窓の外に目をやったまま言った。後任が決まらない代表チームを見ると心が痛んだ。
「どうして辞退したんだ?」
「個人的な理由だよ」
「知ってるよ」と彼は我慢強く言った。「個人的じゃない監督辞任なんて聞いたこともない」
371:名無しが急に来たので
10/08/30 23:59 m8Z30wMQ
僕は極東の島国に赴いて代表監督に就任する。
アジアの代表の監督をすることが面白いなんて思ったことなんてないし、
意味があるとも思わない。
でも誰かがこのサッカー後進国の監督にならなければならないのだ。
雪かきと同じなのだ。
「ザッケローニ・ジャパン。」と僕は声に出して言ってみた。
372:名無しが急に来たので
10/09/01 03:31 x7wuQd5c
「のだ。」をつければそれなりにぽいのだ。
373:はじめまして。
10/09/18 21:55 4DVKLupQ
楽しませていただいています。ぜひ西シベリアのトム・トムスクに移籍した松井大輔選手の物語もお願いしたいです。
374:松井大輔
10/09/18 22:33 QanaNGXM
僕はいまだに有名クラブに移籍できずにいた。そしてたぶんそれが、僕がシベリアなんかでプレーしている
ことに関係しているのだ。よくは分からないけれど。
交代が告げられて、気がつくともう後半13分をまわっていた。
やれやれ。
僕は頭を振った。まずはこのチームのレギュラーをとることを考えよう。次の移籍先を探すのはそれからでも遅くはない。
そのとき後ろにサポーターのブーイングの気配を感じたが、振り返るのはやめておいた。たぶん、今はその時期じゃない。
そう、物事のタイミングを間違えるとろくなことにならないと、
僕はうすうす気がつきはじめていた。代理人がが伝えたかったのはそのことかもしれない。
375:名無しが急に来たので
10/09/18 22:52 QanaNGXM
「今度の移籍先って寒いのかな」と松井が僕に訊いた。
「どうだろう」と僕は言った。「僕は細かいことを何も聞いていないんだ」
「巻はこれまでにロシアでプレーしたことある?」
僕は首を振った。考えてみれば海外クラブに移籍をしたことは生まれてから一度もない。
「これまでの移籍はけっこう難しかったの?」と僕は質問してみた。
「そんなでもないな」、松井はちょっと難しい顔をした。「もちろんまったく難しくないってわけじゃなくて、
場合によってはいくらか適応が難しいこともある。でもすごく難しいっていうんでもないね」
「じゃあ今度のも同じようなものじゃないかな。代理人の話だと、これまでととくに変わったサッカーをするわけじゃなさそうだから」
376:名無しが急に来たので
10/09/18 22:56 QanaNGXM
「でもさ、これまでと変わらないことをやってたら、やっぱり同じようにチームの中心にはなれないんじゃないかな」
「それはわからないよ。何かの拍子ってこともあるだろう」
「栓がすぽっと抜けるみたいに?」
僕は言った、「クラブが変われば気分も変わるし、ちょっとしたチーム戦術の違いが大きな意味を持ってくることだってある。
簡単にあきらめちゃう手はないと思うよ」
「べつにあきらめているわけじゃないんだ」と松井は言った。
「でもうんざりする?」
「まあね」と松井は言って、溜息をついた。「一番つらいのは、ボールがまわってこないことなんだよ。
トライしてみてボールを奪われるより、チームメイトに差別されてプレーの機会を奪われる方がずっと嫌だし怖いんだ。
そういうのってわかる?」
「わかると思う」と僕は答えた。
377:名無しが急に来たので
10/09/19 08:40 58oc58I6
少し間を置いてから、小倉会長が打ち明けるように言った。
「ねえ、僕のリーグをちょっと視察してみてくれない?」
「Jリーグを視察?」ザッケローニは少し驚いて言った。
「ただちょっとスタンドから見るだけでいいんだけど」
「それはいいけど、どうして?」
「なんとなくさ」と小倉会長は顔を赤らめて言った。「どんな風か、ちょっと見てもらいたかったんだ」
378:名無しが急に来たので
10/09/24 15:14 rSge0vwY
「ザッケローニってどんな人なの?」彼女は思い出したように僕に尋ねた。
「パスタのゆで方が抜群にうまいんだ。代表監督としての資質やサッカーに詳しいかどうかなんてどうでもいいくらいだよ。」僕は茹で上がったパスタを皿に盛り付けながら答えた。
「心の底からあきれるわね。」彼女はため息をついた。
「僕には本当に大事なことが分かるんだ。アルデンテが何たるか。それを知る機会を彼は与えてくれるよ。」
379:名無しが急に来たので
10/09/25 16:27 qdLfPwCw
松井のも雰囲気出てるけど
本田の作品は本当に出来がいいな
内容はアレだけど
380:名無しが急に来たので
10/09/25 23:46 T0BxYLBA
「鈴木君、あなたフリーキックは蹴れる?」
「フリーキック?」と僕はびっくりしてききかえした。フリーキック?フリーキックってなんだ、いったい?
「だってあなたトルシエジャパンの頃、蹴ったら弾丸シュートでポストが揺れたって言ってたじゃない」
「たまたまだよ。たまたま蹴ったらまっすぐポストに当たっただけだ。ゴールじゃない。フリーキックなんて蹴れない」
「でもフリーキックって言ったって角度が悪いときのフリーキックよ。たいしたものじゃなくていいのよ。
べつにロベルト・カルロスみたいなフリーキックを蹴れっていってるわけじゃないし、適当に蹴ればそれでいいんだから」
「ロベルト・カルロスも何もフリーキックなんて絶対に蹴れない」僕はきっぱりと言った。蹴れるわけがないじゃないか。
381:本田圭佑
10/09/29 21:54 9Hw4L1Vw
そのとき、僕と僕の妻は人影もまばらなクラブのカフェ・テリアで遅い昼食を取っているところだった。
「大体、あなたは物事を深刻に考えすぎるわよ。」
「そうかな?」
「決まってるじゃない。レアル・マドリード移籍だとか、チャンピオンズリーグだとか、普通の日本人選手は、そういった
ことはできるだけ考えずに生きていこうとするものよ。あなたにはそういう生き方が
意味の無いことに思えるかもしれないけど。」
かたちの良い両手の指を、テーブルの上でそっと組み合わせてから、彼女は静かに言った。
「私は、あなたにもっと上手く世の中を渡っていって欲しいのよ。そりゃ、あなたが本質的に
守備的なポジションでプレーしていくのが好きじゃないし、その能力も無いことは分かってるつもりだけれど。」
「やれやれ。ひどいね」
382:内田篤人
10/09/29 22:02 9Hw4L1Vw
「やあ、久し振り」と香川君が言った。「懐かしいな。元気かい?」
「なんとか元気だよ」と僕は言った。
香川君の笑顔は昔と変わらずさわやかで、活躍ぶりはJリーグ時代以上だった。
「リハビリの帰り?」と彼は訊いた。
「どうしてわかるんだろう?」
「シャルケ戦に出てなかったからさ」と彼は言った。
まるで厭味のない言い方だった。
香川君がしゃべると、周りの空気がぱっと明るくなる。
まさに新しいブンデスリーガのスター選手のようにだ。
383:名無しが急に来たので
10/10/04 20:55 KgLfYysA
「私が間違っていたと思う?」岡ちゃんがそう訊ねた。
カズはビールを一口飲み、ゆっくりと首を振った。「はっきり言ってね、みんな間違ってるのさ」
「なぜそう思うの?」
「うーん」カズはそう唸ってから上唇を舌でなめた。答えなどなかった。
「わたしは気が狂うくらい一生懸命に考えたのよ。マスコミの批判で死ぬかと思ったわ。
それでね、何度も何度もこんな風に考えたわ。私が間違っていてあなたが代表メンバーに入るのが正しいのかもしれないってね。
私がこんなに苦しんでるのに、なぜあなたは何もせずワールドカップを観戦してるんだろうってね」
岡ちゃんはそう言うと軽く笑って、しばらく憂鬱そうに眼の縁を押さえた。
「わたしが死ねばいいと思った?」
「少しね」
「本当に少し?」
「…忘れたよ」
384:柿谷曜一郎
10/10/04 21:12 KgLfYysA
話せば長いことだが、僕は21歳になる。
まだ充分に若くはあるが、以前ほど若くはない。もしそれが気に入らなければ
日曜の朝にエンパイア・ステート・ビルの屋上から飛び降りる以外に手はない。
385:と
10/10/05 21:57 6ZkFx7n.
「きみは今も旅を続けているのかい?」
十数年前だったか、イタリアに新しい風を持ってきた若いジョカトーレは、
今は気ままな旅人として、地球を3回くらい回ったと報道されていた。
「人生って・・・」まだ十分に若さを保ってはいるが、ジョカトーレに
必要な資質である攻撃性を失った青年は三日月のような目を私に向けた。
私が一度でもいいからシーズンを過ごしてみたいと思ったあの眩しい
時代。私が率いていたチームのジョカトーレたちが、あの頃、この
東洋の青年の話をクラブハウスでしていたのが、つい、昨年のようだ。
「結局、自分の時刻表は自分で作るものなのです」
私は口にこそ出さなかったが、密かに彼を慕っていたジョカトーレが
いたのを知っている。漂ってくるイタリア製のコロンを香りが、
ミラノの町を想い出させた。
「時刻表?」私は少し混乱した。そして、ゆっくりとワインを手に
とった。「旅人よ、ナカタよ、きみが導いた東洋の島国の魂は、私が
ゆっくりと時間をかけて育てよう。この赤ワインが、年を経るほど
成熟するように」
386:名無しが急に来たので
10/10/05 22:10 SbGs9CJ2
わたしは先々代の一郎先生には殴られたり、
けとばされたり、もうへそのゴミ、耳クソ同然に扱われてきました。
それに比べたら洋平先生や太郎先生なんてずいぶん親切だったですよ。
でもですね反町さん、世の中というのは変なもので、
わたしは先代にはいちおう黙ってへいへいとどこまでもついていったし、
太郎先生にはそれがちょいとできなかった。
どうしてだかわかりますかね?」
僕は首を振った。
387:岡田武史
10/10/06 21:03 PrZK0WGg
僕は以前、日本サッカーの存在理由(レーゾン・デートゥル)をテーマにした戦術で
ワールドカップを戦おうとしたことがある。結局その戦術でW杯本戦を戦うことはしなかったのだけれど
その間じゅう僕は日本サッカーのレーゾン・デートゥルについて考え続け、おかげで解任寸前になるまで代表は低迷することになった。
僕はまずターゲットになる大型FWを外し、セカンドストライカータイプの選手を前線に並べ、暇さえあればプレスに走り回らせた。
その時期、僕はそんな風にフィジカルの弱さを運動量とスピードで補うことによって
世界に日本的なサッカーを伝えることができるかもしれないと真剣に考えていた。
そして世界を驚かせる何かがある限り、日本サッカーは確実に存在しているはずだと。
しかし当然のことながら、ボールを奪うためだけにプレスに走り回るサッカーなど90分間持ちはしない。
そして僕は自分と日本サッカーのレーゾン・デートゥルを見失い、結局は平凡な守備的戦術を採用することになった。
388:QBK
10/10/07 15:07 CIAjyDTY
すごいなこのスレ
住人たちの腕をちょっと見なおしたww
389:ズラタン・イブラヒモヴィッチ
10/10/07 19:39 AGElgrZ2
僕はいったいどうすればいいのだろう?
でもどうすればいいのかは僕にはわかっていた。
とにかく待っていればいいのだ。
ゴール前にボールがやってくるのを待てばいいのだ。いつもいつもそうだった。
手詰まりになったときには、慌てて動く必要はない。じっと待っていれば、何かが起こる。
チャンスがやってくる。じっと目をこらして、味方がパスをくれるのを待っていればいいのだ。
僕は経験からそれを学んだ。スコアはいつか必ず動くのだ。もしそれが必要なものであるなら、それは必ず動く。
よろしい、ゆっくり待とう。
390:名無しが急に来たので
10/10/07 21:41 Zwmx8IEQ
今年もノーベル賞取れなかった記念age
391:名無しが急に来たので
10/10/07 22:05 KGo6cKjs
「どうせザッケローニの話だろう」とためしに僕は言ってみた。
言うべきではなかったのだ。受話器が氷河のように冷たくなった。
「なぜ知ってるんだ?」と博美が言った。
とにかく、そのようにしてザックをめぐる冒険が始まった
392:名無しが急に来たので
10/10/08 18:55 ojQaziv.
「ぼくにもよくわかりません」とそりまちくんは目を閉じたまま言った。
「ただそのような気がするのです。目に見えるものが本当のものとはかぎりません。
ぼくの敵はぼく自身の中のベルマーレでもあります。
ベルマーレの中には非湘南がいます。ぼくの頭はどうやら混濁しています。
降格がやってきます。でもぼくはまかべさんにそのことを理解していただきたいのです」
「そりまちくん、君は疲れているんだ。眠れば回復する」
393:名無しが急に来たので
10/10/10 21:30 /VezYpO2
「ねえ都築さん」
「なんや?」
「ベルマーレってからっぽなんだよ」
「そうか」
「うん」
目を閉じるとわけもなく涙がこぼれてきた。涙は次から次へと頬をつたって落ちた。身体が細かくぶるぶると震えた。でも涙はとまらなかった。
「ほんとに何もないんだよ」と彼女はずいぶんあとになってかすれた声で言った。「きれいにからっぽなんだ」
「わかってる」
「どうしたらいいの?」
「ぐっすり寝て起きたら、だいたいはなおる」
「そんな簡単なことじゃないよ」
「そうかもしれんな」
「少し眠っていい?」
「いいよ」
「降格したら起こしてくれる?」
「心配するな。降格したら、寒くなっていやでも目は覚める」
彼女は頭の中でその言葉を繰り返した。降格したら、寒くなっていやでも目は覚める。それから体を丸めて、束の間の、しかし深い眠りに落ちた。
394:名無しが急に来たので
10/10/10 23:22 oCfIKNqU
このスレねたを知ってると爆笑できるな、面白すぎる
395:名無しが急に来たので
10/10/11 09:06 J2uxELbE
「お疲れ様でした。日本代表に対する印象を教えて下さい」。
この先僕は永遠にこの質問に答え続けなくてはいけない気がした。
ただでさえ、ハードスケジュールの中、親善試合のためにわざわざ極東の島国までやってきて、
時差ボケでうんざりしてたってのに。
「組織的でいいチームでした。何人かいい選手もいた」
神経質そうな銀縁メガネをかけた記者は僕の答えの真意を読み取り
かねているようだった。
「具体的にはどういうことですか」。彼の顔には僕に対する憎悪と嫌悪に満ちた
笑顔が浮かんでいる。
やれやれ。最高の湯で加減のパスタを完成させて、ソースを焦がした
程度の話じゃないか
396:中村俊輔
10/10/11 09:16 J2uxELbE
「僕は僕だし、それにもうみんな終わったことさ。だいいち代表の中盤なんて
同じような若手がどんどん出てきてるから、今さらレギュラーなんてとてもなれないよ。」
「じゃあ、意味なんてないじゃない?」
「意味?」
「日本のクラブでプレーする意味よ。」
「ないさ。」と僕は言った。
彼女はつまらなそうに唸ってからビーフシチューを一口食べた。
397:名無しが急に来たので
10/10/11 13:46 bN44AiuY
僕のボールは彼女のヴァギナを伝わってアヌスをノックした。やれやれ、またバックか。僕は半ば気だるくなった体でレシプロ運動を始めた。
398:名無しが急に来たので
10/10/11 21:57 J2uxELbE
『若い選手なので、ここで終わりではない。これを次につなげて、A代表で活躍できる選手に成長してほしい。』
僕は布監督の真似をして声に出してそういってみた。
全然期待はしていなかったのだが、実際に声に出していってみると、不思議なことにそれで少し気分が良くなった。
布監督は宗教家になればいいのに、と僕は思った。朝と夕に彼がみんなを唱導するのだ。
『これを次につなげて、A代表で活躍できる選手に成長してほしい』と。受けるかもしれない。
399:布&牧内
10/10/11 22:09 J2uxELbE
できることならU-20W杯のことはなるべく早く忘れ去ってください。
あなたが新しいサッカー人生を歩んでいくことが、私たちにとって最良の道なのです。
何よりも重要な事実は、何がしかの理由によって私たちがすでに異なっ
た世界に分かれてしまったことなのです・・・
400:名無しが急に来たので
10/10/13 00:48 .K8qMhSI
配られたユニフォームのタグには羊男と書かれていた
鼠が送ってきた手紙にもタグに書かれてある羊男と同じマークの消印
図書館のサッカーに関する資料によれば
羊男のタグについてそれほど詳しくは載ってはいなかった
町はクリスマス。電飾のきらめきに頭痛がする
ふと声をかけられ振り向くと☆のかたちをしたメガネフレームの
女が羊男について知りたいならついて来てというではないか
あまり乗り気ではなかった。頭痛のせいで早く家に帰りたいが
羊男についてはこれを逃すと後が無い気がした。いわゆる感というやつだ
女の言うままについていくことにした。
401:名無しが急に来たので
10/10/13 17:19 /qhNIhxI
その時、日本人達が大きな身振りで、猛烈に声をあげているのがみえた。
どうやら、僕に何かを抗議しているようだった。
そうはいっても、僕はパスタを茹でている途中だったし、
アルデンテの時間をのがしてまで、彼らの話を聞くつもりはなかった。
ようするにそれは、どうでもよい事だった。
402:名無しが急に来たので
10/10/13 18:52 7vJTROko
中村スンスケでよろぴく
403:イビチャ・オシム
10/10/22 22:59 jLCB2MFg
「走るんだよ」
「オンプレーの間はとにかく走り続けるんだ。おいらの言っていることはわかるかい?走るんだ。走り続けるんだ。
何故走るかなんて考えちゃいけない。意味なんてことは考えちゃいけない。意味なんてもともとないんだ。そんなこと考えだしたら足が停まる。
一度足が停まったら、もうチームは何もできなくなってしまう。プレッシング・サッカーの戦術はもう何もなくなってしまう。永遠になくなってしまうんだよ。
そうするとボールの支配率はどんどん下がる。どんどん相手のパス回しに引き込まれてしまうんだ。だから足を停めちゃいけない。どれだけ馬鹿馬鹿しく思えても、そんなこと気にしちゃいけない。
ベストを尽くすんだよ。あんたはたしかに疲れている。疲れて、脅えている。誰にでもそういう時がある。何もかもが間違っているように感じられるんだ。だから足が停まってしまう」
「でも走るしかないんだよ」
「それもとびっきり上手く走るんだ。みんなが感心するくらいに。そうすればおいらもあんたのことを、手伝ってあげられるかもしれない。だから走るんだよ。プレーの続く限り」
ハシルンダヨ。プレーノツヅクカギリ。
404:永井謙佑
10/10/30 19:40 coEmQYDk
「ねえ、神戸を愛してる?」
「もちろん。」
「入団したい?」
「今、すぐに?」
「いつか・・・・・・もっと先によ。」
「もちろん入団したい。」
「でも私が訊ねるまで第一志望は名古屋だって言ってたわ。」
「言い忘れてたんだ。」
「・・・・・背番号は何番が欲しい?」
「7か10。」
「トップ? 二列目?」
「基本CFでたまにウイング。」
スカウトはコーヒーで口の中のパンを嚥み下してからじっと僕の顔を見た。
「嘘つき!」
とスカウトは言った。
しかし彼女は間違っている。僕はひとつしか嘘をつかなかった。
405:蛸の消滅
10/10/30 19:59 coEmQYDk
蛸のパウル君の消滅を経験して以来僕はよくそういう気持ちになる。
何かをしようとしてみようという気になっても、その行為を回避することによってもたらされるはずの
結果との間に差異を見出すことができなくなってしまうのだ。
僕はあいかわらず便宜的な世界の中で便宜的な記憶の残像に基づいて、サッカーを観戦し、試合結果を予測している。
おそらく人々はワールドカップという大会の中にある種の統一性を求めているのだろう。
強豪国レベルの統一、戦術の統一、プレースタイルの統一。
新聞にはもうほとんどパウル君の記事は載らない。人々はかつてドイツの水族館の蛸がワールドカップの
試合結果を予測していたことなんてすっかり忘れ去ってしまったように見える。
パウル君の水槽には新しい蛸が入れられ、あたりには既に冬の気配が感じられる。
予言蛸のパウル君は消滅してしまったし、2010年の南アワールドカップの熱は
もう二度とはここに戻ってこないのだ。
406:フランコ・バレージ
10/10/31 21:40 paeMy9O2
これは実話であり、それと同時に寓話である。
そしてまた、我らが1980年代のフォークロア(民間継承)でもある。
僕は1960年に生まれた。1974年にACミランのプリマヴェーラに入り、1978年にトップチームに昇格した。
そして、80年の賭博スキャンダルによる降格騒ぎの中でチームの主役になった。
だから僕は文字どおり80年代の子供たち(エイティーズキッズ)であった。
407:フランコ・バレージⅡ
10/10/31 21:42 paeMy9O2
人生のいちばん傷つきやすく、いちばん未成熟で、それ故にいちばん重要な時期に、
1980年代ののっぺりしていて焦燥感に満ちた空気を吸い込んで、
そして当然のことながら、宿命的にそれに酔ってしまったのだ。
点取り屋のマルコ・ファン・バステンから中盤のダイナモであるフランク・ライカールト、
当時史上最高額の移籍金でアヤックスから移籍してきたルート・フリットまで、
オランダトリオもばっちりそろっていた。
1980年代のミランというクラブには、確かに何か特別なものがあった。
いかに大人たちが「ベルルスコーニの汚れた金で強豪の座を買った」と広く謳っていたとしてもだ。
今、自分の自己分析のためにこうして思い出してもそう思うし、その時だってそう思っていた。
この時代のミランには、何か特別なものがあると。
408:名無しが急に来たので
10/11/01 13:21 vYqD0llo
>>406-407
これは傑作。
80年代のミランと「我らの時代のフォークロア」がこんなにマッチするとは。
409:名無しが急に来たので
10/11/14 21:43 4AZULLlk
彼は一月前の新聞の地方版でスペインのクラブへの移籍を知った。
そして一ヶ月間、自分がゴールするに相応しい試合の到来を待ち続けていたのである。
しかし、そんな試合はなかなかやってはこなかった。
ある試合では足が痛かった。次の試合でもやはり足は痛かった。
その次の試合ではゴールが小さかったし、それに続く二日間は嫌な監督が出場させなかった。
ある試合では嫁の虫歯が痛み、ある試合ではPKを譲らねばならなかった。
そんな風にして一ヶ月が過ぎた。
410:名無しが急に来たので
10/11/22 00:50 S1WeU9EE
「本田圭佑くん、僕らフットボーラーの人生にはもう後戻りができないという移籍がある。
それからケースとしてはずっと少ないけれど、もうこれから先には進めないという移籍がある。
そういうクラブに移籍したら、良いことであれ悪いことであれ、僕らはただ黙ってそれを受け入れるしかない。
僕らはそんなふうに生きているんだ」
「世界の注目はチャンピオンズリーグだ。本田圭佑くん」
411:名無しが急に来たので
10/11/23 11:01 u6CCrxU6
湘南はマリの向かい側に腰を下ろし、思い出したようにマリに尋ねる。
「ちょっとのあいだJ1にいてていいかな。観光したらすぐ行っちゃうから。持ち合わせがないんだ」
マリは少しだけ顔をしかめる。「そういうことって、まず最初に尋ねるものじゃないの?」
412:名無しが急に来たので
10/11/23 21:23 scJ0zQPI
「ねえ、まだ神戸の残留可能性は生きてるかな?」と電車の中で彼女は僕に訊ねた。
「生きてると思うよ。だって死んだっていう記事が出ないもの」
「得失点差で、実質降格決まったかもしれないわよ」
「それにしても記事は出るさ」
「入場者水増しで勝ち点剥奪がでるんじゃないかしら」
「神戸が?」
「まさか。大宮がよ。奥の暗い部屋で勝ち点剥奪されないよう頑張ってるんじゃないかしら」
女の子というのは実にいろんな可能性を思いつくものだと僕は感心する。
「なんだか、この機会を逃すと二度とJ1の神戸を見られないような気がするのよ」
「そんなものかな」
「だってあなた、これまでにすぐにJ1に戻った神戸を見たことある?」
「いや、ないな」
「これから先、みるだろうって自信ある?」
「どうだろう。わからないよ」
「だから私は心配してるのよ」
413:名無しが急に来たので
10/12/11 16:12 Hg6K4CP.
駄目になったクラブの裏手にはきれいな練習グランドがあった。
とてもきれいな練習グランドで、選手なんかもいっぱいいる。
芝もはえていて、選手たちはその上で練習して暮らしている。
選手たちは、クラブが駄目になろうがどうしようが関係ないと考えている。
そりゃそうだ。
選手にとってはJ1だろうがJ2だろうが、そんなもの何の関係もないのだ。
移籍だってしないし、減給だって飲まない。
「そんなの俺たち関係ないもんね」と彼らは考えている。
僕は練習グランドに足を運んだ。
練習グランドの風は冷たくて、ちょっと顔を向けていると赤くなった。
練習グランドからは駄目になったクラブのクラブハウスとガスミュージアムが見えた。
クラブハウスにはまだ二色旗が立っていて、風にぱたぱたと揺れていた。
練習グランド辺りを通る人々はみんなその旗を見た。
そしてこう言った。
「ほらごらん。あれが駄目になったクラブの旗だよ」と。
414:名無しが急に来たので
10/12/12 19:02 yAR2amBc
テスト
415:名無しが急に来たので
10/12/13 01:24 aNpNCiB.
さようなら、ガスチーム。駄目になったチーム。
書いているのはカズさんなのか。
416:名無しが急に来たので
10/12/13 01:43 mePPTh76
僕は射精した。
417:名無しが急に来たので
10/12/20 23:22 MBGJvbr2
ねえ東京ガスさん、あなたにはきっとわからないと思うな。
十七位の京都サンガが真夜中にはだかで、
月の光の下でぽろぽろと涙を流しているときには、
たとえどんなことだって起こっちゃうんですよ。
そうだよ。
418:名無しが急に来たので
10/12/24 22:16 1ypL69Z2
うん、さっきからずっとみんなの体験談を聞いてるとさ、そういったタイプの話にはいくつかの
パターンがあるんじゃないかって気がするんだよ。
まずひとつはこちらにJリーグの世界があって、あちらに欧州リーグの世界があって、
それをテレビで見るってタイプの話だね。たとえばスカパーとか、そうゆうの。
それからもうひとつは三次元的な空間を超えたある種の移動や滞在が介在するってことだね。
つまり現地観戦とかパブリックビューイングとかね。
大きく分けるとそのふたつに分類できると思うんだ。
で、そういったのを綜合してみるとさ、みんなどちらか一方の分野だけを集中して経験してるような気がするんだな。
つまりさ、Jを見てる人はしばしばJはみるんだけど、欧州リーグを見ることはまずないみたいだし、
欧州リーグをよく見る人はJって見ないんだね。
どうしてだかはよくわかんないけれど、そうゆうのに対する向き不向きというのは、どうもあるみたいだね。
僕はそう思う。
419:名無しが急に来たので
10/12/24 22:17 1ypL69Z2
それから、もちろんどちらの分野にも適さないって人もいる。例えば僕がそうだね。
僕はもう三十何年生きているけれど、サッカーなんて一度も見たことがない。
天皇杯とかチャンピオンズリーグとか、そういうこともない。
420:名無しが急に来たので
11/01/01 03:56 VE7YPqMk
ヒースロウ空港は豪雪のため、閉鎖されているという機内アナウンスがあった。
飛行機はフランクフルト空港に向かうという。ぼくの旅は最初からドイツと
かかわりがあるのだと悟るのに、時間はかからなかった。
「フランクフルトまで、2時間ありますが、そのあいだに話を聴けますかね」
成田から同乗してきた若い新聞記者がぼくの席に来て、まるで、あらかじめ
このトラブルを予想していたかのような口調で言った。ぼくは18歳ではあるが、
マスコミとのかかわり方については、すでに多くのことを学んでいた。
「今、日本時間の朝なんだ、ちょっと眠らせてください」
不安がないと言えばうそだった。しかし、プレミアリーグという、子供のころから
の憧れていたリーグと契約したからには、少しばかり居直ってみよう、という
気持ちの方が強かった。18歳で、飛行機の中に閉じ込められて、
時差ぼけと格闘し、マスコミに追いかけられて、明かりさえ見えないこの瞬間、
これもいつかは過去になり、その過去は「正しかった選択」か「間違った選択」
かというたったふたつの言葉でしか語られなくなるのだ。