08/10/22 20:03 eQ6927rQ
「おい! てめえ……どういうことか説明しやがれ!!」
「そうよ……なんで独歩さんが囮になっているのよ!?」
ヒナギクとジョセフの声で、意識が覚醒した赤木が目を瞬かせる。
腹に鈍い痛みが残っているが、直前に独歩に気絶されたことを思い出した。
ジョセフの剣幕を見て、赤木は不機嫌な表情となる。
「やめい……ジョジョ、桂」
「だがよ! 服部!!」
「赤木……囮になるッつーたのは、お前のほうやな」
服部の確認するような言葉に、赤木は答えない。その態度にヒナギクがさらに怒りを募らせている。
対してジョセフは、服部に答えを求めるように続きを促していた。
「独歩はんを囮にするつもりなら、ここで赤木が寝とる理由がつかん。独歩はんの性格と現状なら、文句を言わずに向かうやろうからな」
「待てよ! こいつが煽ったってこともあるじゃないか!?」
「無意味やな。煽ったところで独歩はんは都合よく動かせるような人やない。それは短い付き合いやけど、よく分かったはずや」
「でもよ……」
ジョセフはどこか納得しきれないように呻く。ヒナギクは悔しそうに俯いていた。
それもそうだろう。仲間が一人死んだのだ。服部の胸も抉れるような痛みが襲う。
「いつ魔方陣を抜けるか分からん。とっとと持ち場に戻るで。突入前の打ち合わせは覚えているやろう?」
「分かったよ。だが、俺は納得はしねえ。いいな、服部」
「ええで」
そういって先頭車両に戻るヒナギクとジョセフを見送り、服部は赤木に右手を差し出した。
赤木が掴み、立ち上がったのを確認して服部は問う。
「……実際のところはどうなん?」
「俺がけしかけたかどうか……か?」
「ジョジョや桂にはああいったが……お前さんが独歩はんが自ら囮を買って出るように仕向けたんじゃないか、少し疑うている」
「ククク……はっきり言う」
61:Classical名無しさん
08/10/22 20:03 nJkANKz.
62:Classical名無しさん
08/10/22 20:04 tHMWa6N2
63:Classical名無しさん
08/10/22 20:04 WMs/EaVw
64:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:04 eQ6927rQ
服部の表情が僅かに歪む。少なからず、二人を騙したことをすまなく思っているのだ。
とはいえ、敵本拠地に乗り込むというのに、わだかまりができたままではまずい。
非情ともいえる判断をとらざるを得なかった。もしかしたら、ジョセフあたりは理解して、あえて乗ってくれたのかもしれない。
「……正直に言えば、独歩が囮になる手は現状……二番目に有効な手だった……」
歯に衣を着せない言い方に、服部はカチンとくる。
正直とは違う。隠すことに意味を感じないと言わんばかりの、非人間的な態度だ。
「もっとも……独歩の生還が望めないという点では愚策……。後の戦闘のことを考えると、独歩の喪失は痛い……」
「お前さんが囮になることのほうが、何倍もよかったちゅうわけか」
「……ククク。何より、独歩はお前たちの信頼が厚い……まとめ役としては充分……」
「……だとしたら、お前が独歩はんの代わりにまとめ役をやることや。今回は独歩はんの性格を読みきれなかった、お前のミスやで」
「確かにな…………」
あっさりと認めた赤木に驚きながらも、服部も先頭車両へと向かう。
「とはいえ……お前が死ぬ必要もなくなったな……」
「……嫌な言い方するな。独歩はんなら、確かに内と外から大首領を倒す計画を知ってる。信頼も厚い……。けどな……くそっ!」
僅かにホッとしている自分を許せず、服部は己の手の平に拳を打ち込む。それも、落ち着くためだ。
もうじき、戦場へと突入しなければならない。
最後の決戦が、今始まる。
『良よ……』
「零……俺は納得はしない。あまりにも理不尽だ……」
「残念ながら、それが戦場というもの。我ら葉隠一族は理不尽に耐えることを良しとしない。
理不尽に勝利することを目指す……村雨殿、我らは今、理不尽を強いる敵へと向かっている」
「ああ……覚悟、零。俺はもう、俺や姉さん……死んでいったみんなのような、悲しい気持ちを抱かせる理不尽はごめんだ……」
『その怒りを、悲しみを決意に変えるのだ! 良よ!』
65:Classical名無しさん
08/10/22 20:04 dckPpLnE
( OHO)…
66:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:04 eQ6927rQ
「ああ……俺は……」
ZXがバイクのアクセルを全開にして異空間を駆け抜ける。
後ろは振り返らなかった。振り返ることじたい、今は残った独歩への侮辱のように思えたからだ。
悔しさと無念を抱えながらも、ZXの中に燃える覚悟が生まれる。
誰も悲しませない。全てを抱えて戦い続ける。
「俺は……仮面ライダーだ!」
魔方陣を駆け終えて、光がZXの視界に満ちる。
クルーザーの白い車体が、ZXの思いに応えるかのようにエンジン音を唸らせた。
□
黒い巨体を地面に下ろし、全てを飲み込むように不気味に佇む要塞が一つ。
サザンクロスと呼ばれたバダンの要塞は、目の前に現れた列車の突撃を避けきれず、突入を許してしまう。
「だからドリルは外せといっただろ……なんて誰か言わんかねー」
「アホかい」
長足クラウン号の先端についているドリルで、サザンクロスの外壁を砕いて突入したのだ。
服部はこのまま、長足クラウン号を走らせ続ける。
「このまんまぶっちぎるでぇー!!」
襲い掛かる再生怪人ごと長足クラウン号が突き進み続ける。
何もかも蹂躙するその歩みを止めるものはいない。
― …………トランプフェード………… ―
その声が、小さくだが服部に聞こえた。と、同時に長足クラウン号が傾き、地面と車体を削る不快な音が響く。
必死でブレーキをかけるが、効果が薄い。
「みんな、席に掴まれぇぇぇー!!!」
服部の声が車内に響く。壁にぶつかって大きく長足クラウン号が揺れ続いた。
67:Classical名無しさん
08/10/22 20:05 WMs/EaVw
68:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:05 eQ6927rQ
何が起きたのか、中にいるメンバーには理解ができなかった。
「あれは……ッ!」
『列車の車輪を斬っただと……!?』
絶技といえる所業に、覚悟と零に戦慄が走った。
突如現れた、バイクにまたがる白い怪人に驚きを隠せない。
「くっ! 列車に、近づかせるか! マイクロチェーン!!」
ZXはクルーザーからシャドウへと飛び掛り、右腕から鎖を射出。
シャドウはZXの姿を認めたとき、僅かに微笑んでチェーンを切り払った。
そのまま体勢を崩すZXへと迫ろうとした時、横から覚悟が蹴りを捻じ込む。
「重爆ッ!」
「ちッ!」
シャドウは飛び退き、列車の屋根へと立つ。いつの間にか、エレオノールもあるるかんを構えて屋根へ立っていた。
ジョセフも、波紋を漲らせてシャドウの右斜め前方で待機している。
「……ここでは邪魔が多いか」
「逃がしはしねえぜ、化け物野郎!」
ジョセフが拳を叩き込んだとき、トランプの群れが虚しく散る。
あっけにとられた一同に、隙ができた。突如列車の中から、かがみの悲鳴があがる。
「かがみから手を離しなさいよ!」
列車から出てきたヒナギクが叫ぶが、周囲にシャドウの姿はない。
「あいつはどこよ! いきなり中に入ってきたと思ったら、かがみ連れて行っちゃうし、トランプしかないし!」
「落ち着け、桂。かがみは……」
「俺ならここだ。仮面ライダー」
声に振り返ると、星型のヘッドライトをつけたバイクにまたがるシャドウの姿が目に入った。
69:Classical名無しさん
08/10/22 20:05 dckPpLnE
70:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:05 eQ6927rQ
警戒心を剥き出しにする彼らを前に、気絶したかがみを脇に抱えたまま、ZXに視線を向けていた。
「かがみを離せ!」
「構わんぞ」
あっさりと返った声に、一同は戸惑う。
明らかな罠じゃないか? 猜疑心に苛まれる一同の様子に、シャドウはまったく気にもしなかった。
「ただし……」
シャドウがカードを投げ、列車の壁に突き刺さる。
ZXが視線をシャドウに向けたまま引き抜くと、カードに要塞内地図が描かれたいた。
一室に指定がある。どういうことかと、ZXはシャドウに視線を向けた。
「ここでは邪魔が多いからな。そこに……一人で来い」
「決闘というわけか……?」
「さあな」
ZXに曖昧な態度を返して、バイクのエンジンを唸らせる。
シャドウを逃がすかと、ジョセフが走った。
「そういうわけにはいかないだろうがッ! 普……!?」
しかし、ジョセフは途中で急ブレーキをかけて止まる。
シャドウとジョセフの間に、十字手裏剣が飛び込んできたのだ。
コマンドロイドの群れが現れ、ジョセフが舌打ちをする。
「言っただろう。ここは邪魔者が多いとな。……待っているぞ、仮面ライダー。トランプフェード!」
シャドウが言い切り、トランプが舞い散って姿が消える。
襲い掛かってきたコマンドロイドと再生怪人と組み合いながら、ZXは必死で手を伸ばすが届かない。
「かがみぃぃぃぃぃ――!!!」
残ったのは、無数に散るトランプのカードだけだった。
71:Classical名無しさん
08/10/22 20:06 dckPpLnE
72:Classical名無しさん
08/10/22 20:06 WMs/EaVw
73:Classical名無しさん
08/10/22 20:06 yDZuTBok
かがみ=桃姫論浮上支援
74:Classical名無しさん
08/10/22 20:07 dckPpLnE
( OHO)…
75:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:07 eQ6927rQ
「因果ッ!!」
シオマネキングを砕き、血に塗れながら覚悟は降り立つ。ZXと背中合わせになり、前方の敵を睨みつけた。
「村雨殿……行くがいい。ここは任せてもらおう」
「覚悟……」
「けどよ、罠って可能性もあるんじゃないか?」
ジョセフが波紋でコマンドロイドの身体機能へと異常を起こさせてから、疑問を投げかける。
その疑問ももっともだが、覚悟は静かに首を横に振った。
「あの瞳は一流の武人の魂が宿っていた。技にも曇りがない。おそらく、本気で村雨殿との決闘を望んでいる。
もしも私が決闘を申し込まれたなら、唇に朱をひいて向かわねばならぬほどの武士【もののふ】と見受けた」
「ですが、かがみさんを人質にとるような人なので、油断はできないのでは?」
「そうよ! かがみを連れ去るような奴のところに、一人で行く必要はないわよ! 村雨さん、一緒に行ってかがみを取り返しましょう!」
エレオノールとヒナギクが反対の意を示しながら、蜂女を八つ裂きにする。
その意見ももっともだと思う。名前の知らない白装束の怪人の言葉を信用するのは危険が大きかった。
「いや、俺は一人で向かおうと思う。あいつは、俺をZXではなく、仮面ライダーと呼んだ」
その理由を、どうしても知りたい。だからこそ、罠かもしれないが、ZXは一人で向かう気になった。
エレオノールは心配そうにこちらを見ている。ヒナギクはムッとした表情で、不機嫌なのが一目瞭然だ。
「行くなら、こっち来る前のいうたこと、覚えているよな?」
「……一旦離散し……再び合流する……」
ZXは知らないが、服部が作戦前に告げた、仲間の死に覚悟や村雨が影響されないための策である。
ZXたちには、基地を探索し、幹部を仕留めるためと教えていた。
とはいえ、突入前の打ち合わせ通りとはいかない。村雨と独歩が欠けてしまった以上、チーム分けは変えざるを得ない。
新たなチーム分けを発表してから、頷いたZXを確認して、服部が大きく息を吸った。
「じゃあいくでぇ! お前ら!!」
応!と各々の応える声が響く。
76:Classical名無しさん
08/10/22 20:07 WMs/EaVw
77:Classical名無しさん
08/10/22 20:08 tHMWa6N2
78:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:08 eQ6927rQ
それぞれ、未来のためへと散っていった。
□
「きゃっ!?」
かがみは地面に乱暴に降ろされて、目を覚ました。目の前にいるのはここで出会った頼れる仲間じゃない。
畏怖すべき、異形の怪人だ。かがみは恐怖に錯乱した。以前のかがみなら、だが。
「……き、きっと……村雨さんがあんたを倒しにくるんだから……!」
恐怖に脅えながらも、かがみはシャドウを睨みつけた。
そのかがみを認め、シャドウは感心したような眼差しを向ける。
「な……何よ……」
「この俺と一対一でいる割りに、それほど恐れていないのを感心しただけだ」
「恐れて欲しかったの……?」
「いや、どうでもいい」
シャドウは投げやりに答える。扉が急に開き、コマンドロイドが入ってきた。シャドウは鬱陶し気に見る。
コマンドロイドは無機質な動きのまま、シャドウへと声をかけてきた。
「ジェネラルシャドウ様……愚地独歩を殺したアナタ様に質問がございます」
「独歩さんが……ッ!」
かがみの声を無視して、シャドウは顎で続きを促した。
「独歩を優勝者と認め、回収命令が出ています。生死は問わないので、その身の在り処を教えて欲しいと暗闇様からの伝言です」
「フン……」
シャドウは鼻を鳴らしながら、コマンドロイドに出口を示す。
戸惑うコマンドロイドに不機嫌なまま会話を続けた。
「あの男は見事な死に様だった。欲しければ俺を倒して無理やり吐かせろ。そう伝えとけ」
「まさか……アナタも反逆をっ……!」
79:Classical名無しさん
08/10/22 20:08 dckPpLnE
80:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:08 eQ6927rQ
するつもりか、と続ける前にコマンドロイドの頭が吹飛ぶ。
その額に、シャドウがトランプを撃ち込んでいたのだ。
シャドウは死骸には目もくれなかった。
「アナタが……独歩さんを殺したの!?」
「……奴には感謝をしている」
「え……?」
シャドウの意外な言葉に、かがみは目を見開いた。
シャドウの眼差しに懐かしむ色が宿る。手前にあるバイクの星型のヘッドライトを撫でた。
「このバイクは我が宿敵、仮面ライダーストロンガーのものだ……」
「仮面ライダー……って村雨さんの……」
「先輩に当たる。奴は強い。俺は奴と戦うことを至上とした。そう、最後のあの決闘……あれは心躍った……」
饒舌な怪人を前に、かがみは反応に戸惑う。しかし、シャドウの声のトーンが急に下がった。
「だが、死んで大首領の力で蘇ったこの世界には、ストロンガーはいない……。
奴が残したカブトローを乗り回しているが……俺には虚しさが積もるだけだった」
かがみはここまで人間臭い怪人もいることに不思議に思う。
だがすぐに、村雨のことを考え、そんな相手もいるだろうと考え直した。
「独歩さんは……」
「キサマらを逃がすために、最後まで戦い続けた。己が負けることなど、微塵も信じずに。
この核鉄とやらを捨てて、自分の鍛えた拳だけでな。奴の形見だ、�