08/10/22 19:36 eQ6927rQ
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3:Classical名無しさん
08/10/22 19:37 eQ6927rQ
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論自体が行われなかった場合において自主的に修正するかどうかは、書き手の判断に委ねられます。
ただし、このような修正を行う際には問題議論用スレに一報することを強く推奨します
・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4:Classical名無しさん
08/10/22 19:37 eQ6927rQ
【能力制限】
◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)
◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件
◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力
◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力
【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
5:Classical名無しさん
08/10/22 19:37 eQ6927rQ
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
勝者のみ元の世界に帰ることができる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1~3個入っている。内容はランダム。
6:Classical名無しさん
08/10/22 19:38 eQ6927rQ
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
7:Classical名無しさん
08/10/22 19:38 eQ6927rQ
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
8:Classical名無しさん
08/10/22 19:39 eQ6927rQ
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
携帯からPCに変えるだけでも違います
9:Classical名無しさん
08/10/22 19:39 eQ6927rQ
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
10:Classical名無しさん
08/10/22 19:40 eQ6927rQ
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
【予約に関してのルール】
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない
・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。
【MAP】
URLリンク(www5.atpages.jp)
11:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:49 eQ6927rQ
バダンに対抗する自分たちの中では、最強のメンバーといっても過言ではないだろう。
次に、エレオノールと独歩を見る。
先ほどの三人ほどとまでは言わないが、体力の消耗はそれほどはない。
自動人形を壊した数も、先ほどの三人と比べて負けてはいなかった。特にエレオノールは、自動人形との戦いになれている様子である。
戦力としても、先ほどの三人には及ばないとはいえ、充分だ。
そして、服部とヒナギクはこの戦いにおいて、はっきりと暗雲を示していた。
しかし、赤木は二人をいくらか評価している。
服部は場を見極め、必要なら指示を他の面子に伝えていた。
赤木もいくらか行なおうと考えたが、自分が指揮するより、信頼されているだろう服部のほうが場が混乱せずに済む。
そう考えて指揮を譲った。
ヒナギクは他のメンバーのサポートがあったとはいえ、数体自動人形を倒している。
だが、ヒナギクの能力が問題なのではない。ヒナギクの、覚悟が赤木は気に入った。
ヒナギクにどんな影響があったのかは知らないが、戦わねば、刺し違えねば、という覚悟が見えているのだ。
まるで、誰かの隣りを歩みたがっているような。
おそらく、ヒナギクは長生きはしない。だが、その覚悟は何かこちらに望ましい結果を生むだろう。
赤木は、捨て札としてヒナギクを使うことを思考した。
そして、かがみ。
彼女は己の無力を悔いていた。村雨や覚悟などに気を使ってか、なんでもないように装っているが、バレバレだ。
何人かはかがみの様子に気づいているだろう。普通なら、かがみはもっとも殺すべき存在だと判断する。
事実、赤木は……
(死んでもらっては困るな。柊かがみ……)
と、だけ考えた。理由は、かがみを気遣う男、村雨良。
確かに村雨良は戦闘力がある男だ。しかし、かがみを喪う事態になればどうなるか、検討もつかない。
恋……などと甘い感情ではないのだろうが、村雨はかがみを守ろうとしている。
12:Classical名無しさん
08/10/22 19:49 tHMWa6N2
13:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:50 eQ6927rQ
自動人形戦でも、明らかにかがみを守るために動いていた節があった。
つまり、彼女の死はなるべく避けねばならない。赤木は長々と、肺に煙草の煙を送り込んだ。
「さてと、一仕事も済んだし、どうする?」
ジョセフが首をポキポキ鳴らしながら、尋ねてくる。その視線を受けた一同は、黙した。
結論はでている。しかし、先ほどの戦闘で戦いなれないヒナギクやかがみのコンディションを考えると、誰も進言しにくい。
服部は、ため息を吐いた。こういう役割は自分がすべきだ。
赤木は煙草を吹かしながら、こちらを見ている。
「……突入や」
服部の言葉に皆が頷く。できればここで、一息をついて体力の回復を待ちたいが、そうもいかない。
時間をかければかけるほど、こちらの襲撃への対処される確率が高くなる。
首輪に関しても、ジョセフや失言や、覚悟たちの大首領との接触でばれているであろう。
向こうから攻められてしまえば、一貫のお終いだ。
だからこそ、服部は決意する。ここは突撃するところだと。
「へっ、腕が鳴る……」
独歩が最初に賛同を示し、指を鳴らす。風を切り裂く拳が宙へと走り、隻眼を雷雲の向こうへと向けていた。
獰猛な表情が、虎を思い出させていた。
「とうとうバダンと…………」
「村雨さん……」
村雨が感慨深げに呟いた。落ち着かないのか、拳を握ったり開いたりして、力の具合を確かめている。
かがみは村雨を心配そうに見ていた。
村雨は元はバダンに所属していたのだ。思うところがあるのだろうか。
いや、そうではない。村雨の瞳には熱い炎が宿っている。
そこに宿るのは姉を殺された復讐ではなく、正義に燃える義憤であった。
14:Classical名無しさん
08/10/22 19:50 WMs/EaVw
15:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:51 eQ6927rQ
「応!」
『長引けばこちらが不利なるのは明白。今が攻め時だ!』
零式防衛術を収め、戦術にも長ける覚悟と、数多の英霊を抱え、戦術の何たるかを知る零が同意を示した。
戦場の機を知ることにおいて、二人ほど特化した者もそう多くはない。
ヒナギクも無言で頷いた。
服部は大きく息を吸い、吐き出す。全員を見渡し、戦いに向かうことを告げようとする。
しかし、喉が渇いてうまく言葉が出ない。
それもそうだ。服部は今、誰か死ぬかもしれない宣言を告げねばならない。
みんなに、死んでくれと頼むのも同然なのだ。誰かが告げねばならない。なぜ自分が告げねばならないのか、服部の胃がキリキリする。
だが、村雨も覚悟もジョセフもエレオノールも独歩も赤木もヒナギクもかがみも命を懸けている。
自分だけ安全な居場所にいるわけには行かない。服部は震えている拳をぎゅっと握る。
「みんな。聞いてくれへんか」
服部の頼もしい仲間たちは、自分の決意に答えてくれた。
今の時期を逃せば、バダンは自分たちが首輪を外していることに気づき、倒す機会を逃がしてしまうかもしれない。
攻め込むならともかく、守りに入れば人数の少ない自分たちが不利だ。
死人を減らすなら、特攻するしかない。それでも、死人は出るだろう。
服部はつばを飲み込み、舌の滑りをよくする。いつの間にか震えは止まっていた。
「おどれらの命、俺に預けてくれ。これから、特攻する!!」
服部の決意の言葉に、鴇の声が上がる。
決戦の幕が上がった。
□
16:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:51 eQ6927rQ
そして、現在に至る。
覚悟とZXが共に梅雨払いをしながら、長足クラウン号の進路を確保して進む。
敵の本拠地に潜入するまでは、二人の戦闘力頼みだ。
服部は攻撃に揺れるクラウン号の中、唾を飲み込む。服部に煙草の煙がかかった。
むっとしながら振り向くと、赤木が服部と視線を合わせた。
「よう落ちついとるな」
「……別に珍しいことじゃない」
含み笑いをする赤木に服部は不思議に思う。これから命を懸けた戦場へと向かわねばならないのだ。
しかも、一つ判断を誤れば自分の命だけでなく、周りの死を招く。
そんな状況なのに赤木は顔色一つ変えない。まるで異次元の生物のような印象を抱き、服部は苛立った。
「……怖いのか?」
「当たり前や。自分が死ぬかもしれないのに、平然としている奴が……」
「違うな。お前は……自分の死が怖いんじゃない……」
赤木の言葉に、服部が目を見開く。服部の心臓がバクバク鳴る。
他人に聞こえるのではないか、と思うほどに心臓の鼓動が大きい。
「いや、お前だけではない……。ここにいる連中は全員……死線を潜り抜け……死を恐れなくなった。
それどころか、最初から死を覚悟しているものもいる。麻痺しているといっていい…………」
赤木がどこかで見つけたのか、二つのサイコロを弄んでいる。
服部の心臓がドクン、と一際大きく跳ね上がった。
「お前が怖いのは……死を恐れない奴らを……一人でも喪うことだ……」
服部はカッと頭に血が昇り、赤木を睨みつける。
赤木はの言うことは真実だ。服部は己の死は覚悟した。
だが、他人の、仲間たちの死は……?
「当たり前やないか! 一人でも失うのを嫌と思うのが、そんなにおかしいんか……」
「そんなものは捨てろ……。でなければ……お前は失う……。本当に失いたくないものをな……」
17:Classical名無しさん
08/10/22 19:52 tHMWa6N2
18:Classical名無しさん
08/10/22 19:52 WMs/EaVw
19:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:52 eQ6927rQ
「そないなこと!」
「できなければ……ただ一度、凡人を捨てて異端にならなければ……ここにいる人間は死んでいく……」
赤木の不吉な予言に、服部が顔を歪めた。
赤木はそれ以上何も言わない。長足クラウン号の先頭車両で、二人は沈黙の中にいた。
「あいつらなにを話しているかねー……」
「まあ、頭のいい連中は連中で、詰めるものがあるさ」
リラックスしているように見えても、独歩とジョセフは戦闘態勢を整えていた。
長足クラウン号は暗雲の中を突き進み、再生怪人たちを跳ね飛ばしていた。
中には飛びついて侵入する怪人がいるかもしれない。警戒を怠らず、エレオノール、ジョセフ、独歩が迎撃準備をしているのだ。
とはいえ、今のところ暇であるのだが。
「そういえばかがみさん、腕のほうはどうですか?」
「うん、全然問題ない。凄いね、スタンドって。…………腕だけが飛んでくるなんて光景、怖かったけど」
「へへ……あいつの記憶にこのスタンドを使って、人の怪我を治療している場面があったからな。
もしかしてと思ったら、ビンゴだったぜ」
ジョセフが背後にクレイジーダイヤモンドを発現させ、得意気に告げる。
かがみの片腕は、すでにくっついていた。神経まで完全に治癒を終えているらしく、問題なく動かしている。
その様子にエレオノールは安堵しかけ、かがみの額に手を当てた。
「かがみさん、もしかして辛いのでは……?」
「え……? そんなことは……」
「よく見るとかがみ、顔色が悪い……いつから?」
ヒナギクの言葉に、かがみは答えを窮する。長らく切断された右腕を放置していたのだ。
応急処置を済ませたとはいえ、雑菌が入るのは止められなかった。
20:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:53 eQ6927rQ
「うん……ちょっとここに乗り込んで……しばらくしてから……安心したのかな……?
ごめんね、また私足手まといに……」
ヒナギクがかがみの言葉を否定しようと身体を乗り出した瞬間、エレオノールがあるるかんの聖ジョージの剣で指を傷つけた。
何をするのか理解ができない彼女たちの前に、エレオノールは血の出ている指をかがみへと差し出す。
「かがみさん、私の指を舐めてもらえますか? しろがねの血を飲めば、病気や怪我に耐性ができます。
大丈夫、しろがねの血からしろがねになるほどの生命の水は得ることができません」
そういう問題ではないのだが、エレオノールの気遣いを無駄にするのも悪いため、その好意を受けることにした。
かがみはエレオノールの右手の人差し指を見つめる。白磁のような肌に、赤い筋の傷口から雫が珠を作って留まっている。
火照った身体のまま、喉が渇いたかがみはエレオノールの白い指に、赤い舌を絡めた。
生命の水が含まれたエレオノールの血がかがみの身体を駆け巡る。少し、熱が収まった気がした。
「ありがとう、エレオノールさん」
「どういたしまして。ですが、安静にしていてください」
エレオノールの天使のような笑顔を見て、かがみは座席に背を預けた。
□
「ギィィィィィィィ!!」
「チィッ!!」
ZXが列車に張り付いて攻撃を加えていたクワガタ奇械人に近づく。敵の鋸状の両腕の一撃を、身を低くして躱した。
身体が泳いでいるクワガタ奇械人の懐に、黒い影がもぐりこむ。強化外骨格を纏った覚悟が、右腕の一撃を繰り出す。
「因果!」
高速で突っ込んできたクワガタ奇械人の身体が覚悟の拳で真っ二つになった。
爆発を背に、攻撃を受けながらも長足クラウン号が無事な事実にホッとしながら次々と迫り来る奇械人に視線を向ける。
「これ以上、列車には近づけん!!」
「ああ!」
21:Classical名無しさん
08/10/22 19:53 nJkANKz.
22:Classical名無しさん
08/10/22 19:53 tHMWa6N2
23:Classical名無しさん
08/10/22 19:53 WMs/EaVw
24:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:54 eQ6927rQ
覚悟の言葉に、ZXが決意を込めて頷く。列車には彼らの仲間がいるのだ。
指一本触れさせはしない。クルーザーのアクセルを全開にして、ZXはコウモリ奇械人を狙って空を翔る。
「クルーザーアタック!!」
白い弾丸と化したバイクで、敵を砕いた。そのまま空中でアクセルを捻り、急降下をする。
群れている奇械人を三匹まとめて吹き飛ばす。暴風となったZXが稲妻を避けて、後輪で奇械人ワニーダの顔を踏み潰した。
『覚悟! 良! 怪人どもが列車に取り付いたぞ!!』
「ちぃっ!」
群がる再生怪人が列車に到達した時、真っ二つに切り裂かれた。
「あるるかぁぁぁん!!」
エレオノールが高速で走る列車のうえに跳び乗り、列車に飛びつこうとした怪人を斬り裂いた。
糸を手繰り寄せて、着地した瞬間、エレオノールの背中に奇械人モーセンゴケが飛び掛ってきた。
「エレオノール!!」
ZXが反転しようとするが、到底間に合わない。
歯噛みするZXの視界に、エレオノールと奇械人モーセンゴケの間に割ってはいる影が現れた。
「ドラララ!!」
ジョセフが奇械人モーセンゴケをクレイジーダイヤモンドで砕き、華麗に着地を……
「とっとと……ってやべっ!」
「ジョセフ!」
列車からバランスを崩すジョセフを認め、バイクを進ませる。
エレオノールもジョセフを助けようと、片腕を伸ばした。
「なーんちゃって」
ZXは列車の壁に立つジョセフを見て目を見開く。くっつく波紋を操作して、足を壁に固定したのだ。
25:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:55 eQ6927rQ
無事な様子にホッとするが、次第に怒りの感情も浮かんでくる。
ZXはバイクを反転させ、再生怪人へと走った。
□
「ちっ……キリがねえな」
両腕にモータギアを装備した独歩が、踏み込んできたコマンドロイドを砕いてぼやく。
赤木より首輪のまかれた核鉄を渡され、使っているのだ。
怪人たちは固く、独歩の鍛え抜かれた拳でも一撃で貫くことは難しい。
そのことに少々落ち込みながらも、核鉄の力で打撃力を上げて応戦していたのだ。
「まったく、こいつら倒しても倒してもわいてきやがる……」
「文句言わないで……こっち手伝ってよ!!」
「待っていろ!」
ヒナギクの声に答えながらも、独歩はコマンドロイドの腹にモーターギアを装着した回し蹴りを放つ。
真っ二つになった敵を窓から放り投げ、独歩は後方を見る。
「このままじゃジリ貧だな……」
「せめて後ろから追いかけてくる奴を何とかできれば……」
独歩の言葉に、服部が返す。かがみを守るように円陣を組んでいた各々の人物はため息をついた。
だが、屋根にでているエレオノールとジョセフはこれ以上の敵を相手にしている。
露払いを買って出たZXと覚悟はさらに桁の違う数の敵を相手にしていたのだ。
弱音は誰も吐かなかった。
「……前方に魔方陣が見え始めた。稲妻の迎撃装置も……ここでは効力が薄いみたいだな……。
ゴールが見えているが……」
赤木が報告するが、列車が揺れる。再生怪人たちの攻撃を受けているのだ。
このままでは魔法陣に飛び込む前に潰されてしまう。不安がよぎる中、赤木は不敵に笑った。
26:Classical名無しさん
08/10/22 19:55 WMs/EaVw
27:Classical名無しさん
08/10/22 19:56 dckPpLnE
28:Classical名無しさん
08/10/22 19:56 nJkANKz.
29:Classical名無しさん
08/10/22 19:56 WMs/EaVw
30:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:56 eQ6927rQ
「車両を一つ……切り離すぞ……」
「なるほど……それで再生怪人を巻き込んで先に進むというわけやな」
「けど……それで本当に無事に突入できるの……?」
ヒナギクの疑いの言葉に、服部は押し黙る。
たとえ後方車両を切り離して、再生怪人をまとめて振り払ったとしても列車が魔方陣まで持つ確率は低い。
予想以上に敵の攻撃が激しいのだ。
地中を行くという機能があることは伊藤博士の手紙でみんなが知っている。
同時に、手紙には地中を突き進むのは勧められていない。
理由は、地中を走る怪人が何体も配備されているため、格好の的ということだ。
ZXや覚悟が護衛をしている地上のほうが、まだ確率はあると判断した結果だった。
「いくぞ……独歩。あんたは俺と来てくれ……」
「おう。お前たちはここで待っていな」
赤木は独歩を連れて、重苦しい車両を涼しげに進んだ。
「おめえさん……切り離すのは車両だけじゃねえな」
「ほう……」
「切り離すのは後方車両と……あの場にいた、戦闘力があるうちの一人。つまり俺だ」
赤木がニヤリ、と微笑む。独歩はその表情に己の考えが正しいと知る。
同時に、その策は独歩も想定していた。このまま列車を進ませるには誰か残り、敵を惹きつけないといけない。
「モーターギアの特性は把握している……。スカイウォーカーモード……これで敵を引っ掻き回し……列車から遠ざける……」
「だから俺を呼んだというわけか」
独歩の言葉に赤木は返さない。
独歩は頭髪の生えていない頭部をがしがしと掻き、まあしょうがないか、と呟いた。
車両の連結部に辿り着いた時、赤木が右手を差し出した。
31:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:56 eQ6927rQ
「……何のつもりだ?」
「核鉄を……渡してもらおう……」
「敵を引っ掻き回すには、必要だとさっきいったばかりじゃねえか」
不可解な表情で問う独歩に、赤木は変わらぬ不敵な笑顔を向けながら、静かに告げた。
「なにを言ってる……。囮役は……独歩、あんたじゃあない……。
敵を惹きつける手札は……モーターギアを使う役割は……この俺だ……ッ!」
赤木の意外な提案に、独歩は驚愕した。車両は列車の揺れしか響かない。
「あんたは貴重な戦力……。モーターギア以外にも打撃力を上げる核鉄は……もう一つある……。
あんたとビーキーガリバーなら……充分敵に通用する……。
ヒナギクやかがみ、服部では敵を惹きつけきれない……なら、戦闘力が下の方で……この核鉄を知り尽くしている俺こそが……」
赤木が一旦言葉を切り、口の端を持ち上げた。目に宿る光に、独歩は勇次郎や刃牙を思い出す。
そう、世界最強。男なら一度は憧れるそれを、いくつになっても追い求める自分たちとの同類だけが宿す光。
確かに、赤木の中に確認した。
「俺こそが……もっとも捨て札に……相応しい……!」
己を捨て札と言い切る男赤木しげる。
だが、その瞳に己の身を犠牲にする気は少しも持ち合わせていなかった。
自分ならどんな境地でも、生き残れる。
ふてぶてしく、傲慢な思想。勇次郎が持ち合わせていた、王者の思考を、赤木もまた持っていた。
「おめえさん、生き残るつもりだろう?」
「当たり前だ……まだ、俺は奴と再会していない……」
「たく、どんな手段で生き残るつもりだよ。雷様もお前を狙うんだぜ?」
32:Classical名無しさん
08/10/22 19:56 dckPpLnE
33:Classical名無しさん
08/10/22 19:56 FSlAV6nQ
34:Classical名無しさん
08/10/22 19:57 dckPpLnE
35:Classical名無しさん
08/10/22 19:57 WMs/EaVw
36:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:57 eQ6927rQ
「魔方陣が近いせいか……雷の落ちる頻度も減っていっている……。
真直ぐに移動さえしなければ……スカイウォーカーモードで対応はできる……。
そして……見張りの再生怪人……。いざという時……奴らを戻す手段は必ずある……。
俺はそれを使い……単独で突入する……。だからあんたたちは先に行け……」
「確率は相当低いぜ?」
「ククク……おそらく、成功確率は1%もないだろうな……。
だが、その1%を物にできないのなら……奴に再会する意味などない……」
できる、と確信しているその瞳には慢心の二文字はない。
できることをできる、と告げている。本人はおそらく、そのつもりだろう。
(傍から見ればどんなに無茶なこともやり遂げる……勇次郎もそんな奴だったな……)
だが、赤木は勇次郎ではない。本人も断定するほど、純粋な戦闘力は下の方だ。
勇次郎のようにはいかないだろう。
「どうした……早く核鉄を……」
渡せ、と言い切る前に、独歩は赤木の鳩尾を殴る。睨みながら崩れ落ちる赤木をその場に寝かせ、独歩は核鉄を持って連結部へと進む。
レバーに手をかけて、前方車両にいる仲間たちを思った。
「へっ……らしくないぜ」
だが、赤木はきっと敵との戦いに必要になる人材だ。なぜかそう信じる気持ちが独歩に湧き上がっている。
独歩は今まで共に過ごした仲間たちを思い返しながら、彼らが生きて変えれる道を作ってやるのが自分の役目だと確信した。
思いっきりレバーを倒し、切り離されていく車両を見届けて、己も地面へと降り立つ。
独歩は迫り来る怪人へと向かって、前羽の構えをとった。
切り離された車両が多くの敵を巻き込んで遠のいていく。
たいした機転だと覚悟が感心していると、列車から降り立つ独歩の姿を目撃した。
「独歩殿!!」
37:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:58 eQ6927rQ
「くっ!」
「村雨殿はそのまま列車の護衛を頼む! 独歩殿は私が!」
「頼む!」
覚悟はバーニアを全開して反転、独歩を迎えに進む。
左右からコマンドロイドが迫り来る。覚悟は身体を倒し、脇から抉りこむように蹴りを放つ。
「重爆!!」
丸太を振り回したような衝撃がコマンドロイドを二体まとめて胴から引き裂き、覚悟は勢いを緩めず独歩に向かう。
右手を差し出し、独歩に届こうとした手は、
「悪いな」
あっさりと拒否された。覚悟は再度独歩に近づこうとして、独歩の視線に気づいた。
「独歩殿……」
「俺ぃらは、ここで奴らを食い止める。後のことは頼んだぜ……」
『覚悟……!』
零の言いたいことは理解している。独歩の意を汲んでやれ。
覚悟とて戦士だ。決死の思いで仲間のために危地に挑む戦士を救出など、侮辱に等しいことは理解している。
コマンドロイドの右腕を独歩が捌き、モーターギアを拳につけて顔を砕いた。
片目を器用に上下左右に動かして敵の動きを把握している。
「独歩殿……生還の当ては?」
「あいつらから、突入のための道具を奪えばいいだろう?」
「…………了解した。独歩殿、敵本拠地で会おう!」
「おうよ!!」
回し蹴りによって真っ二つになった怪人が爆発を起こし、爆炎をまといながら独歩が構えを解かず敵を見据えている。
覚悟は一度だけ、敬礼をして列車へと向かった。
拳は強く握り締めたため、血が流れている。
『覚悟……忘れるな! 独歩殿は戦士として、戦ったているのだ! それを無駄にするな!!』
38:Classical名無しさん
08/10/22 19:58 dckPpLnE
39:Classical名無しさん
08/10/22 19:58 WMs/EaVw
40:Classical名無しさん
08/10/22 19:58 dckPpLnE
41:Classical名無しさん
08/10/22 19:58 nJkANKz.
42:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:58 eQ6927rQ
「応!!」
覚悟が列車に並んだとき、ZXは不思議に思った。独歩がいないのである。
「覚悟、独歩は……?」
「……独歩殿は、敵を惹きつけてから突入するということだ」
「なんだと……」
ZXは信じられないものを見るように、覚悟へと視線を向けた。
独歩を回収するために、反転しようとするZXへ、零の怒声がかかる。
『よせ! 戦士の矜持を踏み躙る気か!』
「戦士の矜持だと……独歩を見捨てたも同然じゃないか!!」
『良よ……無駄だ。独歩殿は自ら進んで囮を買って出た。その決意は超鋼よりも固い!』
「だからといって……!」
『それに良よ。危険を省みず、戦場へとたった戦士を侮辱する権利など……誰にもない!』
「だからといって……」
「独歩殿は……生き残るつもりだ」
覚悟が搾り出すようにZXに告げた。覚悟自身も己の言葉を信じていないのだろう。
身体が震えていた。己への怒りか。
ZXは黙したまま、引き返すのをやめる。覚悟も、零も耐えているのだ。
自分だけが子供のように駄々をこねるわけにはいかない。
悔しさを噛み締める二人の眼前で、魔方陣が展開を始めた。
「いったか」
独歩は魔法陣に飛び込んでいく長足クラウン号とZXと覚悟を見届けて、追いかけようとするコマンドロイドの首を貫手で貫く。
43:Classical名無しさん
08/10/22 19:59 tHMWa6N2
44:Classical名無しさん
08/10/22 19:59 WMs/EaVw
45:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 19:59 eQ6927rQ
さらに一つのモーターギアで地面を走り、もう一つのモーターギアを拳につけて、敵を殴り砕いた。
敵の残骸が身体にかかることも構わず、次の標的へと独歩は突進する。
「キキィー!!」
コウモリ奇械人が不快な鳴き声と共に空より強襲してくる。
独歩は冷静に両腕の突きを捌き、喉元に正拳を叩きつけた。
だが、砕くことは敵わない。なぜなら独歩の拳はモーターギアを装着していないからだ。
「たくっ、自信がなくなっちまうぜ。何十年も繰り返しついた突きなんだがな」
「キキキキキィー」
「笑っているのか? だったら俺からの忠告だ」
独歩が次の言葉を告げる前に、コウモリ奇械人の頭が宙に舞う。独歩の右腕には空を旋回してきたモーターギアが留まっていた。
「後方不注意……って、遅かったか」
そのまま拳にモーターギアを装着したまま、幾百もの怪人を前にして空手の構えを取る。
かつて武神と呼ばれた男は誰一人通す気などないと、無言で示した。
次の怪人の襲撃を独歩は待ったが、敵は遠巻きにこちらを見るだけだ。
不審に思っていると、怪人の群れを掻き分ける一人の白い男がいた。
「誰か残ったと聞けば、ただの人間か……」
「ほう、こりゃ驚いた。怪人の連中は全員、ギーだのガーだのしかいえないホラー映画の怪物じみた連中しかいないと思っていたぜ」
「我々デルザー軍団の改造魔人には魂はない。ゆえに、蘇ったとしても記憶や知識を失うことはない。
もっとも……なぜか今回蘇ったのは俺だけだがな……」
「あんまり嬉しそうじゃねえな……」
独歩の問いにシャドウは答えず、鞘に納まるシャドウ剣の柄に手をかけている。
その動きに隙がない。不意打ちを仕掛けようかと思ったが、シャドウはそれも想定しているだろう。返り討ちは必須だ。
大物に出くわしたことに内心冷や汗をかきながらも、独歩は構えを解かない。
うごめく後方の再生怪人を視界に納めると、独歩は奥歯を噛み締めた。
とても雑魚を潰しながら相手にできるような敵ではない。すると、シャドウは独歩を向いたまま口を開いた。
46:Classical名無しさん
08/10/22 19:59 dckPpLnE
47:Classical名無しさん
08/10/22 20:00 dckPpLnE
48:Classical名無しさん
08/10/22 20:00 WMs/EaVw
49:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:00 eQ6927rQ
「キサマらは手を出すな。奴は俺が殺す」
敵の意外な言葉に独歩は目を丸くする。好都合だが、敵が何か考えているのではないか、警戒をする。
否定の言葉はあっさりとシャドウの口から出た。
「案ずるな。キサマごときに策をとったなど、我が改造魔人の名に傷がつく」
「そうかい」
舐められたことにむかっ腹を立てながらも、シャドウの隙を独歩は待ち続ける。
剣を使った武術でも収めているのだろうか。喋っている最中ですら、ピクリとも動かない。
知能がある分、改造されている身に過信して付け入る隙がないかとも思ったが、そんなに甘くはないようだ。
止まっているのに、落雷は来ない。目の前の男が止めたのだろうか。
風が吹いて、コマンドロイドの残骸が転がる。その残骸が再生怪人の一匹に踏み潰された音が響いた。
瞬間、独歩とシャドウがほぼ同時に地面を蹴る。
シャドウが剣を逆袈裟に振り上げた。凄まじい速度で、独歩の右目でも追えない。
ゆえに、剣を握る手を手刀で捌けたのは偶然というしかなかった。
懐に入った独歩は、五十年以上繰り返した正拳突きの構えを取り、右腕を突き出した。
幾人も沈めた拳が、改造魔人ジェネラルシャドウへと迫る。
その拳は、シャドウの身体を、
「トランプフェード」
貫かず、トランプの束を風圧で吹き飛ばしただけだった。
すぐに敵を探そうと体勢を整える独歩の腹から、剣が生えていた。
「終わりだ」
シャドウは独歩と背中合わせに呟いている。
逆手に構えた剣が独歩の背から腹まで貫いていた。シャドウは剣を引き抜いて、血を振り払う。
腹に感じる痛みと熱さに耐え切れず、独歩は膝をついた。
(他愛もない……)
50:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:00 eQ6927rQ
シャドウはどこか虚しい気持ちを抱えながら、崩れ落ちた独歩には視線もくれず進んだ。
列車にいる仮面ライダーを含む生存者を始末せねばならない。
それが自分に与えられた仕事だ。本来のシャドウならその仕事をそれほど熱心に遂行しようとは思わなかっただろう。
誇り高きトランプの魔人は使い走りになることを良しとはしない。
暗闇にいいように扱われている現状は、本来の彼なら不満を持って当然の出来事なのだ。
だが、ストロンガーがいないという事実は、シャドウをナーバスにしていた。
「待ちやがれ……」
聞こえた声に、シャドウは驚く。急所は確実に貫いたはずなのだが。
首を回して視線だけ向けると、重症の独歩が立ち上がっている。
「ち……今隙ができたのに……不意打ちする元気すらねえ……」
モーターギアとかいう武器を核鉄に戻し、傷跡に当てている独歩を認めたシャドウは再び構えを取る。
人間にしてはしぶとい相手だと思いながらも、笑っている独歩に不思議に思う。
「なにがおかしい?」
「ああ……なんでかな。俺は死にかけで、お前さんは万全だが……」
独歩の両腕が段々と上がる。そのまま核鉄を、独歩は捨てた。
「……どういうつもりだ?」
「へ……あんなものに頼っているから、お前さんに半歩踏み込みが足りなかったぜ。
こっからは……俺が五十年鍛え続けた拳がお前を殺す……」
シャドウが独歩の殺す、という言葉に反応する。
独歩の隻眼には諦めという文字は浮かんでいない。
「その拳が、俺に……いや、それどころか改造人間にすら通用すると思っているのか?」
「思っているぜ。人間が幾千年もかけて闘争のために練り上げた技法なんだからよ」
「血反吐を吐き、致命傷を負い、そこまで吼えるか……」
「てめえに一つ教えてやるよ……」
「む?」
独歩が腰をどっしり構えて、息を整えた。
51:Classical名無しさん
08/10/22 20:01 WMs/EaVw
52:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:01 eQ6927rQ
その構え、重傷人とは思えないほど隙が見当たらない。
「人の瞳が背中についてねぇのはな……後ろを振り返らず、前に進むためだぁ……いくぜぇ」
シャドウは口角を僅かに上げ、首だけではなく身体を向きなおす。
剣のかっ先を独歩へと向けて、風に白いマントをはためかせた。
「キサマの名……聞かせてもらおう」
「今更か? まあ、いいがな。愚地独歩……ただの空手家よ」
「愚地独歩……覚えておこう」
シャドウが呟いたと同時に互いの殺気が膨れ上がる。
またも隙の探りあい。シャドウは独歩の認識を改めている。
一度見せた技、トランプフェードがもう一度使える相手だと思ってはいない。
五枚の巨大トランプとなって囲んだり、シャドウ分身で二つ身となって独歩に迫るの手もある。
そのどちらも、シャドウは良しとしなかった。久しぶりに宿る胸の何かに従ってただ純粋に剣技をもって葬りたい。
シャドウにしては珍しい欲求に従い、独歩と対峙する。
今度は独歩の荒い息遣いが聞こえる。再び風が吹くと同時に、シャドウの身体に覇気が漲る。
わざわざ、迎撃装置をオフにした甲斐があるものだ。
(ああ。ストロンガー……城茂。キサマは常に、俺にこんな感情を抱かせてくれたな。
キサマは俺に、多くの力を刻んでくれたな。あの時も!)
かつて、ストロンガーと黄金の剣と赤い悪魔の剣を交えたころの気持ちを思い出し、シャドウが僅かに高揚する。
久しぶりに心地よくなり、知らずシャドウは笑っていた。
「うりゃアアァァァァッ!!」
独歩の怒声がシャドウの耳朶を打つ。神速の踏み込みで間合いに入った独歩が拳を振るうと同時に、シャドウも剣を水平に薙ぎ払う。
53:Classical名無しさん
08/10/22 20:01 tHMWa6N2
54:Classical名無しさん
08/10/22 20:01 WMs/EaVw
55:Classical名無しさん
08/10/22 20:01 dckPpLnE
56:Classical名無しさん
08/10/22 20:01 WMs/EaVw
57:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:02 eQ6927rQ
互いに身体をすれ違いさせ、剣を、拳を振るいきったままの姿勢で固定した。
静寂。
二人の間に風が流れ、音を消す。
シャドウの口元から、血が一筋つつっ……と流れ落ちた。
「俺が魔人なら、キサマはさしずめ……」
シャドウが告げると同時に、独歩の身体が崩れ落ちる。左脇腹から心臓までを一気に斬り裂いた。
生存は不可能だ。
その代わり、命を懸けて独歩は最後の突きをシャドウの右胸へと叩き込んでいた。
避けきれず、充分な威力を持ってシャドウへと傷を負わせた。シャドウは自然と、剣を眼前へと掲げ、死体となった独歩に敬意を示す。
「武神といったところか……。感謝する、キサマのおかげで思い出した」
戦士とは、戦いにおいて死ぬべきだと。
シャドウの瞳に闘志が戻る。
かつてストロンガーの命を狙い続けた、雇われ幹部としての闘志が。
再生怪人の群れが、独歩の死体に殺到しかける。
「触るなッ!!」
再生怪人の頭部に、トランプが突き刺さって爆発した。
爆炎が風に散る中、シャドウは悠然と仁王立ちで一群を睨みつける。
「魂を持たぬお前らに誰一人として、この男を触ることは許さん!」
シャドウはマントをはためかせ、独歩を抱き列車が消えたほうへ視線を向ける。
再生怪人たちに待機するよう命じ、トランプとなって姿を消した。
独歩の肉体の確保の命令が届いたのは、その直後だった。
58:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:02 eQ6927rQ
(ああ……俺はここいらで終わりか……)
薄れいく意識の中、独歩は自分が死に近づく感覚を噛み締めた。
戦いの中で死ねるのなら、それなりに幸せじゃないか。
唯一つ、地上最強となれなかったことが心残りだった。
(最後の最後まで……頑張ったな……俺の拳……)
シャドウの頑強な身体を殴り、砕かれた拳を見つめて独歩は労う。
五十年、ただ突き、貫き、無茶をし続けた己の半身だ。
ふと、視界の向こうに手招きする鬼がいたような気がする。
(ああ……たく。そんなにそこは暇なのかよ……。お前が望む最強に近い生物はいるだろう……?)
ニィッとその男が生前と変わらぬ笑みを浮かべた。
独歩ははげ頭の後頭部をガシガシ掻き、呆れた表情をする。
ただ、口は笑みを形作っていた。
(しょうがねえ。俺もやることはやったし、そこで付き合ってやるよ。すぐにトンでもねえ奴が来ることも、教えてやらねばな)
独歩は光に向かって歩いた。
そこには、彼の知る鬼が永遠の闘争を持って存在していた。
【愚地独歩@グラップラー刃牙 死亡】
【残り9人】
□
59:Classical名無しさん
08/10/22 20:03 WMs/EaVw
60:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:03 eQ6927rQ
「おい! てめえ……どういうことか説明しやがれ!!」
「そうよ……なんで独歩さんが囮になっているのよ!?」
ヒナギクとジョセフの声で、意識が覚醒した赤木が目を瞬かせる。
腹に鈍い痛みが残っているが、直前に独歩に気絶されたことを思い出した。
ジョセフの剣幕を見て、赤木は不機嫌な表情となる。
「やめい……ジョジョ、桂」
「だがよ! 服部!!」
「赤木……囮になるッつーたのは、お前のほうやな」
服部の確認するような言葉に、赤木は答えない。その態度にヒナギクがさらに怒りを募らせている。
対してジョセフは、服部に答えを求めるように続きを促していた。
「独歩はんを囮にするつもりなら、ここで赤木が寝とる理由がつかん。独歩はんの性格と現状なら、文句を言わずに向かうやろうからな」
「待てよ! こいつが煽ったってこともあるじゃないか!?」
「無意味やな。煽ったところで独歩はんは都合よく動かせるような人やない。それは短い付き合いやけど、よく分かったはずや」
「でもよ……」
ジョセフはどこか納得しきれないように呻く。ヒナギクは悔しそうに俯いていた。
それもそうだろう。仲間が一人死んだのだ。服部の胸も抉れるような痛みが襲う。
「いつ魔方陣を抜けるか分からん。とっとと持ち場に戻るで。突入前の打ち合わせは覚えているやろう?」
「分かったよ。だが、俺は納得はしねえ。いいな、服部」
「ええで」
そういって先頭車両に戻るヒナギクとジョセフを見送り、服部は赤木に右手を差し出した。
赤木が掴み、立ち上がったのを確認して服部は問う。
「……実際のところはどうなん?」
「俺がけしかけたかどうか……か?」
「ジョジョや桂にはああいったが……お前さんが独歩はんが自ら囮を買って出るように仕向けたんじゃないか、少し疑うている」
「ククク……はっきり言う」
61:Classical名無しさん
08/10/22 20:03 nJkANKz.
62:Classical名無しさん
08/10/22 20:04 tHMWa6N2
63:Classical名無しさん
08/10/22 20:04 WMs/EaVw
64:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:04 eQ6927rQ
服部の表情が僅かに歪む。少なからず、二人を騙したことをすまなく思っているのだ。
とはいえ、敵本拠地に乗り込むというのに、わだかまりができたままではまずい。
非情ともいえる判断をとらざるを得なかった。もしかしたら、ジョセフあたりは理解して、あえて乗ってくれたのかもしれない。
「……正直に言えば、独歩が囮になる手は現状……二番目に有効な手だった……」
歯に衣を着せない言い方に、服部はカチンとくる。
正直とは違う。隠すことに意味を感じないと言わんばかりの、非人間的な態度だ。
「もっとも……独歩の生還が望めないという点では愚策……。後の戦闘のことを考えると、独歩の喪失は痛い……」
「お前さんが囮になることのほうが、何倍もよかったちゅうわけか」
「……ククク。何より、独歩はお前たちの信頼が厚い……まとめ役としては充分……」
「……だとしたら、お前が独歩はんの代わりにまとめ役をやることや。今回は独歩はんの性格を読みきれなかった、お前のミスやで」
「確かにな…………」
あっさりと認めた赤木に驚きながらも、服部も先頭車両へと向かう。
「とはいえ……お前が死ぬ必要もなくなったな……」
「……嫌な言い方するな。独歩はんなら、確かに内と外から大首領を倒す計画を知ってる。信頼も厚い……。けどな……くそっ!」
僅かにホッとしている自分を許せず、服部は己の手の平に拳を打ち込む。それも、落ち着くためだ。
もうじき、戦場へと突入しなければならない。
最後の決戦が、今始まる。
『良よ……』
「零……俺は納得はしない。あまりにも理不尽だ……」
「残念ながら、それが戦場というもの。我ら葉隠一族は理不尽に耐えることを良しとしない。
理不尽に勝利することを目指す……村雨殿、我らは今、理不尽を強いる敵へと向かっている」
「ああ……覚悟、零。俺はもう、俺や姉さん……死んでいったみんなのような、悲しい気持ちを抱かせる理不尽はごめんだ……」
『その怒りを、悲しみを決意に変えるのだ! 良よ!』
65:Classical名無しさん
08/10/22 20:04 dckPpLnE
( OHO)…
66:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:04 eQ6927rQ
「ああ……俺は……」
ZXがバイクのアクセルを全開にして異空間を駆け抜ける。
後ろは振り返らなかった。振り返ることじたい、今は残った独歩への侮辱のように思えたからだ。
悔しさと無念を抱えながらも、ZXの中に燃える覚悟が生まれる。
誰も悲しませない。全てを抱えて戦い続ける。
「俺は……仮面ライダーだ!」
魔方陣を駆け終えて、光がZXの視界に満ちる。
クルーザーの白い車体が、ZXの思いに応えるかのようにエンジン音を唸らせた。
□
黒い巨体を地面に下ろし、全てを飲み込むように不気味に佇む要塞が一つ。
サザンクロスと呼ばれたバダンの要塞は、目の前に現れた列車の突撃を避けきれず、突入を許してしまう。
「だからドリルは外せといっただろ……なんて誰か言わんかねー」
「アホかい」
長足クラウン号の先端についているドリルで、サザンクロスの外壁を砕いて突入したのだ。
服部はこのまま、長足クラウン号を走らせ続ける。
「このまんまぶっちぎるでぇー!!」
襲い掛かる再生怪人ごと長足クラウン号が突き進み続ける。
何もかも蹂躙するその歩みを止めるものはいない。
― …………トランプフェード………… ―
その声が、小さくだが服部に聞こえた。と、同時に長足クラウン号が傾き、地面と車体を削る不快な音が響く。
必死でブレーキをかけるが、効果が薄い。
「みんな、席に掴まれぇぇぇー!!!」
服部の声が車内に響く。壁にぶつかって大きく長足クラウン号が揺れ続いた。
67:Classical名無しさん
08/10/22 20:05 WMs/EaVw
68:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:05 eQ6927rQ
何が起きたのか、中にいるメンバーには理解ができなかった。
「あれは……ッ!」
『列車の車輪を斬っただと……!?』
絶技といえる所業に、覚悟と零に戦慄が走った。
突如現れた、バイクにまたがる白い怪人に驚きを隠せない。
「くっ! 列車に、近づかせるか! マイクロチェーン!!」
ZXはクルーザーからシャドウへと飛び掛り、右腕から鎖を射出。
シャドウはZXの姿を認めたとき、僅かに微笑んでチェーンを切り払った。
そのまま体勢を崩すZXへと迫ろうとした時、横から覚悟が蹴りを捻じ込む。
「重爆ッ!」
「ちッ!」
シャドウは飛び退き、列車の屋根へと立つ。いつの間にか、エレオノールもあるるかんを構えて屋根へ立っていた。
ジョセフも、波紋を漲らせてシャドウの右斜め前方で待機している。
「……ここでは邪魔が多いか」
「逃がしはしねえぜ、化け物野郎!」
ジョセフが拳を叩き込んだとき、トランプの群れが虚しく散る。
あっけにとられた一同に、隙ができた。突如列車の中から、かがみの悲鳴があがる。
「かがみから手を離しなさいよ!」
列車から出てきたヒナギクが叫ぶが、周囲にシャドウの姿はない。
「あいつはどこよ! いきなり中に入ってきたと思ったら、かがみ連れて行っちゃうし、トランプしかないし!」
「落ち着け、桂。かがみは……」
「俺ならここだ。仮面ライダー」
声に振り返ると、星型のヘッドライトをつけたバイクにまたがるシャドウの姿が目に入った。
69:Classical名無しさん
08/10/22 20:05 dckPpLnE
70:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:05 eQ6927rQ
警戒心を剥き出しにする彼らを前に、気絶したかがみを脇に抱えたまま、ZXに視線を向けていた。
「かがみを離せ!」
「構わんぞ」
あっさりと返った声に、一同は戸惑う。
明らかな罠じゃないか? 猜疑心に苛まれる一同の様子に、シャドウはまったく気にもしなかった。
「ただし……」
シャドウがカードを投げ、列車の壁に突き刺さる。
ZXが視線をシャドウに向けたまま引き抜くと、カードに要塞内地図が描かれたいた。
一室に指定がある。どういうことかと、ZXはシャドウに視線を向けた。
「ここでは邪魔が多いからな。そこに……一人で来い」
「決闘というわけか……?」
「さあな」
ZXに曖昧な態度を返して、バイクのエンジンを唸らせる。
シャドウを逃がすかと、ジョセフが走った。
「そういうわけにはいかないだろうがッ! 普……!?」
しかし、ジョセフは途中で急ブレーキをかけて止まる。
シャドウとジョセフの間に、十字手裏剣が飛び込んできたのだ。
コマンドロイドの群れが現れ、ジョセフが舌打ちをする。
「言っただろう。ここは邪魔者が多いとな。……待っているぞ、仮面ライダー。トランプフェード!」
シャドウが言い切り、トランプが舞い散って姿が消える。
襲い掛かってきたコマンドロイドと再生怪人と組み合いながら、ZXは必死で手を伸ばすが届かない。
「かがみぃぃぃぃぃ――!!!」
残ったのは、無数に散るトランプのカードだけだった。
71:Classical名無しさん
08/10/22 20:06 dckPpLnE
72:Classical名無しさん
08/10/22 20:06 WMs/EaVw
73:Classical名無しさん
08/10/22 20:06 yDZuTBok
かがみ=桃姫論浮上支援
74:Classical名無しさん
08/10/22 20:07 dckPpLnE
( OHO)…
75:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:07 eQ6927rQ
「因果ッ!!」
シオマネキングを砕き、血に塗れながら覚悟は降り立つ。ZXと背中合わせになり、前方の敵を睨みつけた。
「村雨殿……行くがいい。ここは任せてもらおう」
「覚悟……」
「けどよ、罠って可能性もあるんじゃないか?」
ジョセフが波紋でコマンドロイドの身体機能へと異常を起こさせてから、疑問を投げかける。
その疑問ももっともだが、覚悟は静かに首を横に振った。
「あの瞳は一流の武人の魂が宿っていた。技にも曇りがない。おそらく、本気で村雨殿との決闘を望んでいる。
もしも私が決闘を申し込まれたなら、唇に朱をひいて向かわねばならぬほどの武士【もののふ】と見受けた」
「ですが、かがみさんを人質にとるような人なので、油断はできないのでは?」
「そうよ! かがみを連れ去るような奴のところに、一人で行く必要はないわよ! 村雨さん、一緒に行ってかがみを取り返しましょう!」
エレオノールとヒナギクが反対の意を示しながら、蜂女を八つ裂きにする。
その意見ももっともだと思う。名前の知らない白装束の怪人の言葉を信用するのは危険が大きかった。
「いや、俺は一人で向かおうと思う。あいつは、俺をZXではなく、仮面ライダーと呼んだ」
その理由を、どうしても知りたい。だからこそ、罠かもしれないが、ZXは一人で向かう気になった。
エレオノールは心配そうにこちらを見ている。ヒナギクはムッとした表情で、不機嫌なのが一目瞭然だ。
「行くなら、こっち来る前のいうたこと、覚えているよな?」
「……一旦離散し……再び合流する……」
ZXは知らないが、服部が作戦前に告げた、仲間の死に覚悟や村雨が影響されないための策である。
ZXたちには、基地を探索し、幹部を仕留めるためと教えていた。
とはいえ、突入前の打ち合わせ通りとはいかない。村雨と独歩が欠けてしまった以上、チーム分けは変えざるを得ない。
新たなチーム分けを発表してから、頷いたZXを確認して、服部が大きく息を吸った。
「じゃあいくでぇ! お前ら!!」
応!と各々の応える声が響く。
76:Classical名無しさん
08/10/22 20:07 WMs/EaVw
77:Classical名無しさん
08/10/22 20:08 tHMWa6N2
78:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:08 eQ6927rQ
それぞれ、未来のためへと散っていった。
□
「きゃっ!?」
かがみは地面に乱暴に降ろされて、目を覚ました。目の前にいるのはここで出会った頼れる仲間じゃない。
畏怖すべき、異形の怪人だ。かがみは恐怖に錯乱した。以前のかがみなら、だが。
「……き、きっと……村雨さんがあんたを倒しにくるんだから……!」
恐怖に脅えながらも、かがみはシャドウを睨みつけた。
そのかがみを認め、シャドウは感心したような眼差しを向ける。
「な……何よ……」
「この俺と一対一でいる割りに、それほど恐れていないのを感心しただけだ」
「恐れて欲しかったの……?」
「いや、どうでもいい」
シャドウは投げやりに答える。扉が急に開き、コマンドロイドが入ってきた。シャドウは鬱陶し気に見る。
コマンドロイドは無機質な動きのまま、シャドウへと声をかけてきた。
「ジェネラルシャドウ様……愚地独歩を殺したアナタ様に質問がございます」
「独歩さんが……ッ!」
かがみの声を無視して、シャドウは顎で続きを促した。
「独歩を優勝者と認め、回収命令が出ています。生死は問わないので、その身の在り処を教えて欲しいと暗闇様からの伝言です」
「フン……」
シャドウは鼻を鳴らしながら、コマンドロイドに出口を示す。
戸惑うコマンドロイドに不機嫌なまま会話を続けた。
「あの男は見事な死に様だった。欲しければ俺を倒して無理やり吐かせろ。そう伝えとけ」
「まさか……アナタも反逆をっ……!」
79:Classical名無しさん
08/10/22 20:08 dckPpLnE
80:人の瞳が背中についていない理由は ◆KaixaRMBIU
08/10/22 20:08 eQ6927rQ
するつもりか、と続ける前にコマンドロイドの頭が吹飛ぶ。
その額に、シャドウがトランプを撃ち込んでいたのだ。
シャドウは死骸には目もくれなかった。
「アナタが……独歩さんを殺したの!?」
「……奴には感謝をしている」
「え……?」
シャドウの意外な言葉に、かがみは目を見開いた。
シャドウの眼差しに懐かしむ色が宿る。手前にあるバイクの星型のヘッドライトを撫でた。
「このバイクは我が宿敵、仮面ライダーストロンガーのものだ……」
「仮面ライダー……って村雨さんの……」
「先輩に当たる。奴は強い。俺は奴と戦うことを至上とした。そう、最後のあの決闘……あれは心躍った……」
饒舌な怪人を前に、かがみは反応に戸惑う。しかし、シャドウの声のトーンが急に下がった。
「だが、死んで大首領の力で蘇ったこの世界には、ストロンガーはいない……。
奴が残したカブトローを乗り回しているが……俺には虚しさが積もるだけだった」
かがみはここまで人間臭い怪人もいることに不思議に思う。
だがすぐに、村雨のことを考え、そんな相手もいるだろうと考え直した。
「独歩さんは……」
「キサマらを逃がすために、最後まで戦い続けた。己が負けることなど、微塵も信じずに。
この核鉄とやらを捨てて、自分の鍛えた拳だけでな。奴の形見だ、�