たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27at ENTRANCE2
たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27 - 暇つぶし2ch100:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:23 oPl7hCEg

【25話】
「いくぜマーリン!対人で使うのは久々だな…狼牙風風拳ッッ!」
「ふふ…その技は見切っている!狼牙風風拳によっていやと言うほど痣(アザ)ができたのでなっ!」
マーリンがそれを言い終わるや否や、ヤムチャは超スピードでマーリンに突っ込んでいった。
シルフの目では、その速さを捉えることが出来なかったが、ヤムチャがマーリンの方へ向かっていってることだけはかろうじて理解できた。
ヤムチャの移動によって、走った道には砂嵐が巻き起こる。
その様子をシルフは息を飲んで見つめていた。

超スピードな上に砂嵐までもが巻き起こり、ほとんど肉眼ではヤムチャの姿を捉えられないはずだがマーリンは焦りもせず、表情一つ変えずに集中していた。
「そりゃああああッ!!」
砂嵐の中から突然ヤムチャの姿が現れ、その直後にヤムチャの拳がマーリンの目の前までそれが迫る。
それと同時に、マーリンの目付きが変わった。
「受けてやろう…お前の狼牙風風拳を!」

ドガガガガガガガッッ!
バキッ!ドガッ!

激しい攻防のように見えるが、ヤムチャの狼牙風風拳を完璧に全てガードするマーリン。
次から次へと拳を繰り出すものの、全て直前でマーリンに防がれてしまい、思うように攻めれないヤムチャ。
「チィッ!!」
一度もクリーンヒットすることなく、ヤムチャは再びマーリンから距離をとった。
「さすがに隙がないな…今みたいな単調な攻めじゃ通用しなそうだ」
ヤムチャは顔に汗を浮かべながら言った。
「つまり、腕を上げたのはヤムチャ、お前だけではないということだ」
マーリンは腕でヤムチャの攻撃を全て受け止めたのにも関わらず、その腕には傷一つない。
それどころか、殴っていたヤムチャの拳の方が逆にヒリヒリと痛んでいた。
「へへ、そうかい。それじゃあこいつはどうだっ!」

すると、ヤムチャは何かを閃いたのか、再びマーリンへと突進していった。

101:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:33 oPl7hCEg
【26話】
「ハイーーッ!」
マーリンは再びヤムチャの単純な突進に、怪訝そうな表情を見せたが、やがてその表情も不気味な笑みへと変わる。
「…というのは残像で、本物のお前は後ろだろう?…そこッ!」
ヤムチャの残像拳を見切り、マーリンは振り返らずに気を探り、後ろにいたヤムチャに肘打ちをくらわす。
が、ヤムチャはそれを顔面の直前で受け止めると、体勢を低くしてマーリンの足元目掛けて蹴りを入れる。
足元がお留守ではないマーリンは、最低限の跳躍でそれを避けると、クルリと体を回転させ、その遠心力を利用しフック気味のパンチを繰り出した。
「なっ…!!」
これは受け止めたらまずい。
変則的な動きで、こんな攻撃を予想できなかったヤムチャ。
恐らく、普通に受け止めても致命的ダメージを受けることになる。
単純にパワーだけなら確実にマーリンの方が上なのはヤムチャはよくわかっていた。
界王拳を本気の状態まで上げればどうにか受け止められそうだが、とてもそんな時間はない。
「チッ…!」
ヤムチャは脳内でとっさにこれを判断し、舌打ちすると空中へと飛び上がった。
「逃が…っ!」
逃がすか、と言いかけたマーリンの口が思わず止まる。
マーリンは空中にあがったヤムチャを追いかけようと、足にグッと力を込めたが、なんとヤムチャは2メートルほどしか宙に浮かんでなかった。
そう、ヤムチャが空中へ飛び上がったのは攻撃を回避するためもあったが、次なる攻撃に転じるためでもあったのだ。
「狼牙風風“脚”だ!」
「……!」
ズガガガガガガッ!
ヤムチャは武空術で空中に静止した状態で、凄まじい蹴りの連打を仕掛ける。
パワー、スピード共に以前のヤムチャからは想像がつかないほどの攻撃だ。
「ハイハイハイハイハイハイッ!ツリャアアアッッ!」
独特な掛け声と共に次から次へとヤムチャの蹴りがマーリンに向かって繰り出される。

102:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:47 oPl7hCEg
今日のところはこの辺で寝ます。
戦闘シーンは書くのが難しい…。
頭の中で描いた戦闘を、文章で読者様方にそのまま伝えるのは至難の技ですね。
◆Nt3ni7QiNwさんも、頑張ってください!

それでは。

103:Classical名無しさん
08/12/07 18:49 /TOnHu4U
これからどうストーリーが動くか楽しみ

104:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 01:06 HmL8Bl5A
【27話】
マーリンはその蹴りを全てガードしているが、攻撃が速すぎて反撃する隙がなかなかなかった。
距離を取って立て直してしまえばよかったのだが、彼女のプライドはそれを許さない。
意地でもこの場に留まろうとするマーリンに、ヤムチャは容赦せず蹴りを打ち込んでいく。
クリーンヒットもしてないし、ガードも全て間に合っているが、防戦一方では気分が悪いのか、段々と彼女の表情に余裕がなくなってくる。
「…っ!こ…の…ぐらいッ!!はぁあああッ!!」
勢いよく動いていたヤムチャの足が止まる…いや、止められたのだ。
もちろんマーリンの手によって。
「な…止めやがった…!」
マーリンはヤムチャの足をしっかりとつかみ、ジャイアントスイングのようにしてヤムチャをグルグルと回す。
遠心力の勢いでヤムチャは身動きができない。
そして数十回転させた後にマーリンは手を離す。
言うまでもなく、ヤムチャは無抵抗に数百メートル先まで吹っ飛んだ。
岩壁を貫通し、地面を数回バウンドしたところでようやく身動きがとれるようになったヤムチャ。
すぐに身構えるが、マーリンの姿が見えない。
「ここだ、ヤムチャ」
ヤムチャの真横からマーリンの声が耳に入った。
「は、速い…な」
吹っ飛ばされた直後に起き上がったつもりなのに、彼女は既に目の前に居た。
ヤムチャの体勢が整わない内にマーリンは攻撃を仕掛ける。
「さっきのお返しだ…今度はわたしの狼牙風風拳をくらうがよい」
マーリンはニヤりと笑い、高速でヤムチャに殴打のラッシュをかける。

ズドドドド…!ガキッ!バゴ!

対するヤムチャも最初は避け切れなかったが、体勢が整うと本場の狼牙風風拳で応戦する。
目では捉えられない超高速な攻防が続く。
そしてお互いに結局1発もクリーンヒットしないまま、両者は再び距離をとった。

105:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 02:37 HmL8Bl5A
【28話】
「準備運動はこれぐらいでいいか?ヤムチャ」
マーリンは息一つ切らさずにヤムチャに向かっていった。
「ああ、そうだな」
ヤムチャも負けてはおらず、余裕の表情を浮かべる。
「そろそろ本格的にこいよ。あくびが出ちまうぜ」
ヤムチャは人差し指をマーリンに向けると、クイクイっとやり挑発する。
「……」
その挑発にムキになって突っ込んでくると思ったヤムチャだったが、マーリンはその挑発に乗らずに、ただジッと身構えていた。
この数年で突っ込み癖は直ったか…と少し感心させられたヤムチャ。
しかし…それは…彼女は…マーリンはただ構えていただけではなかった。
「っはぁあ!!!」
唐突だった。
ヤムチャが気づいた頃には目の前に自分に向かって迫ってくるエネルギーの塊があった。
なんの前触れもなくマーリンの手の平からヤムチャに向かってエネルギー波が放たれたのだ。
そこまで威力はなかったが、ヤムチャは驚いていた。
「っ……今の…どうやって…!」
エネルギー波が予想できなかったヤムチャは、咄嗟に上に避けるしかなかった。

ドゴォオーンッッッ!

真下で爆発が起きる。
威力がないとはいえ、直撃したらヤムチャとは言えどただでは済まない体になっていただろう。
空中でうまく避けれたとホッとしたヤムチャだったが、マーリンの狙いはそのエネルギー波の不意打ちではなかった。
遥か下の地面に出来た影に、自分の物と、もう一つ自分のものではない人影が存在するのを確認し、ヤムチャは全てを悟った。
飛び上がった先…ヤムチャの背後はマーリンが待ち構えていたのだ。

106:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 02:41 HmL8Bl5A
【29話】
「な…後ろ……!」
ヤムチャがそれに気づいた頃にはマーリンの蹴りがヤムチャの背中を完璧に捉えていた。

メキッ!

「そーりゃああ!!」
鈍い音と共に、マーリンの足はヤムチャの背中にめり込むと、彼女はそのまま掛け声と共に、地面にむかって足を振り抜いた。
何かが壊れるような音が聞こえたのと同時に、背中に激痛が走る。
「グ…ハッ…アア…!」
声にならない声をあげることが今の彼に出来る精一杯だった。
ヤムチャは蹴られた瞬間に意識が遠退き、自分が今下に落ちていると言う状況を理解できずにいた。
上手く呼吸が出来ない。
ヤムチャが時速数百キロはあろうかという勢いで地面へと落ちていく。
「……だあああああ…ッ…まだだ!」
だが、地面寸前でヤムチャの意識と体が一致した。
そして墜落ではなく着陸という形で再び地面に足をつけるヤムチャ。
長年の武術経験からか、ヤムチャはマーリンに蹴られる寸前に無意識のうちに瞬間的に背部の気を高めていたため、致命傷だけは避けていたのだ。
かといってかなりのダメージを受けたことに変わりはないが。
数秒後にマーリンもゆっくりと着地してきた。
「さすがだな…エネルギー波を避けるのはわかっていたが、あの蹴りをくらって持ちこたえるとは…。だがダメージは大きいようだな、ヤムチャ。ふふ…早くも勝負あったか?」
腕を組ながら笑みを浮かべるマーリン。
ヤムチャはそれを見て口から血の混じった唾をペッと吐き出す。
「今のエネルギー波……普通じゃなかったな?」
かなりのダメージを負い、今後の戦闘に支障がないと言えば嘘になるヤムチャだったが、不適にも笑い返した。

107:ジュウ
08/12/08 06:40 TSsCU3GI
おもしろ杉~

108:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:24 HmL8Bl5A
【30話】
「…さあな」
マーリンはとぼけたように首をかしげる。
だがヤムチャは続けた。
「俺はお前がエネルギー波を打つなら、打つ前に手に宿った気を感じとり、あの程度ならもっと余裕でかわせたはず…というか打つ前に分かったはずだ。
だがお前からはその気の『溜め』を感じられなかった」
余裕を見せていたマーリンだったが、ヤムチャが喋り出すと表情が強張ってきた。
押し黙っているマーリンに、ヤムチャはなおも続ける。
「お前はもしかして、外見の気を変化させずに…内面的な気を高めることができるのか?エネルギー波のあとの蹴りにしてもそうだ。
後ろから気配は感じなかった…。
お前は高速で俺が動く方向を予想し、そこで気を消して俺の背後で待ち構えた。そして体の内側に溜めていた気を一瞬で体に宿らすとし、俺がお前の気を察知する前に俺を蹴った。
つまり、お前が気を入れたのは、蹴りが俺の体に触れる直前ってことだ。察知されたら避けられたりガードされたりしちまうからな。どうだ?違うか?」
単純に、気のコントロールならヤムチャとて達人レベルだ。
だが…ヤムチャとマーリンの違いはそのコントロールの『速度』だった。
普通、エネルギー波を打つにはヤムチャの言うように気の溜めが要る。
その溜めの動作をいくら短くしても、気を探れる能力があるものなら、相手がエネルギー波を打つ前からそれを察知できる。
だが、今のマーリンの攻撃はその次元の域にはいなかった。
体の内側…つまり相手に悟られないように気を体内で上昇、凝縮させ、外見の気を変化させずに、内面的な気を高める。
そして、凝縮されたその気を瞬時に外…つまり、体の一部、あるいは全体の強化や、エネルギー波やらへと変化させ、放出させるという技術だ。
その気のコントロールにより、蟻のようなレベルまで気を消したかと思えば、次の瞬間にはスーパーサイヤ人並のパワーでの攻撃を繰り出す…。
当然のことながら、気を察知しながら戦うヤムチャを初めとする地球人たちでは気を読むことが出来ず、相手の場所も非常に分かりづらい有効な手段だ。
ヤムチャがマーリンの攻撃が読めなかった答えは、この変則的なマーリンの気のコントロールだった。

109:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:25 HmL8Bl5A
【31話】
「ふっふっふ……あははははっ!」
ヤムチャの説明が終わると、マーリンは甲高い声で笑い出した。
「何がおかしい?俺の考えは間違っていたか?」
「ヤムチャ、お前は本当に凄い男だ…わたしがお前対策に長い時間かかけて編み出したこの技を…たった数秒のこの手合わせで見抜くとはな…」
言葉では自分の技が見抜かれたことを褒めているが、それでもマーリンの表情には再び余裕が戻っていた。
ヤムチャはそのマーリンの表情を見て自分の目を細めると、再び戦闘の構えを取る。
「だがな、ヤムチャ……わたしはお前のことをよく知っている。わたしがこんな小細工をしたところで、一瞬で見抜かれるだろうと思っていた…」
マーリンもヤムチャが構えたのを確認すると、同じく戦闘態勢に入る。
「しかし…この技は“見抜けても避けれない”技なのだよ…ふふ、残念だったな」
「………」
たしかにマーリンが同じような攻撃をしようと、相手を『気』で感じて動いていては、分かっていても今のヤムチャに攻撃をかわすことは難しいだろう。
いわゆる「詰み」の状態にさせたつもりだった…だが。
だが、次に起こった展開は彼女の予想とは違っていた。
ヤムチャの焦ったような表情を見られると思っていたマーリンだったが、ヤムチャはそんな様子もなくただただ自分に向かって真っ直ぐと構えている。
「…もうその攻めは俺には通用しない。やってみれば分かる」
静かにヤムチャが言葉を発する。
今度ははっきりと分かる、余裕の表情を浮かべて。
「…では、そうしてみよう」
予想外の展開にマーリンは面白くなかったが、気を取り直して再びヤムチャに攻撃を繰り出そうとしていた。
ヤムチャに悟られないように、静かに体の奥でエネルギーを溜める。
じわりじわりと体の芯にエネルギーが充満してくるのを感じる。
それと同時にヤムチャを見つめ、彼の気を察知する…全身に気が張り巡らせているようだが、足の方にパワーを集中しているみたいだ。
最初の攻撃をまず避けて、その後自分から一本取ろうというところなのだろうと解釈すると、マーリンは頭の中でどうヤムチャの不意をうとうか作戦を練っていた。

110:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:31 HmL8Bl5A
【32話】
だが、ヤムチャへの意識が疎かになったほんの一瞬…目を放した隙に、ヤムチャの気配が自分のすぐ近くにいることを感じた。
「油断したなっ!」
「…っ…!」
ガードしようとするが、気のコントロールが間に合わなかった。

ドス…!

気付けば腹に、ヤムチャの拳がヒットしていた。

「………ッッ!」
胃液が口から出そうになるほどの激痛。
毎日鍛えているとはいえ、久しぶりにまとものパンチをくらったマーリンは苦しそうに顔を歪める。
「誰がこっちから攻撃しないって言った?」
先程とはまるで逆の展開。
自分の頭上からヤムチャの声が聞こえる。
「チィイ!」
腹を殴られたマーリンだったが、苦し紛れにヤムチャに向かって手刀を繰り出した。
だが、いとも簡単に受け止められてしまう。
怯まずに逆の手でアッパーを狙うが、これも紙一重で空を切る。
腹へのダメージが大きく、いつものように技に切れが出ない。

だが、マーリンは接近戦となるのを密かに狙っていたのだ。
「…はぁあっ!!」
ヤムチャとマーリンの間は1メートルもない。
その至近距離でマーリンは先ほどと同じ要領で、溜まっていた内面的エネルギーで、エネルギー波を放つ。
ヤムチャは避けれるはずもない。
そのエネルギー派はヤムチャを吹っ飛ばし、はるか遠くへと飛んでいった…かのように見えた。

111:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:33 HmL8Bl5A
【33話】
だがそれは違う。
当たったにしてはまるで手ごたえがない。
「あいにく心理戦は得意でね。あのタイミングでエネルギー波がくるのは分かっていた」
「!!」
今度は左からヤムチャの声が聞こえた。
声が聞こえた方向を向くと、ヤムチャはすぐ隣に腕を組みながら待ち構えていた。
「それにしても残像拳に引っかかるとは、さすがに焦りすぎじゃないか?」
分が悪いと思ったマーリンは、足で地面を蹴り、大きく後ろへとジャンプするように下がり、ヤムチャとの距離をとった。
「何故避けられたのだ……」
マーリンはヤムチャに聞こえないよう、独り言をつぶやく。
そして、そこで腹を押さえながらがっくりと膝をついた。
マーリンは歯を食い縛りながら悔しそうにヤムチャを睨む。
「結構効いたみたいだな。気を全く変化させずに気を溜めるという発想まではよかった…俺には思いつかなかったぜ。
気を察知して戦う俺たちにとっては、目を瞑って戦うよりやりにくいぐらいだ」
ヤムチャはあえて攻撃の手を止めて続ける。
「だがな…この技の弱点は、内面的な気を溜めている間は、外見の気を自由に変化させれないことだ。
つまり、内面の気を溜めている時にピンチの局面が突然訪れたら…頭では分かっていても対処ができない。
さっきみたいにお前が気を下げた状態で、気を入れた状態の俺に殴られたらどうなるかわかるよな。絶対的なパワーの差があってもこの通りだ」
ヤムチャの指摘に対し、びっくりしたような顔でマーリンがヤムチャを見つめる。
「なん…だと?そんなはずは……」
「じゃあなんで、戦闘力がお前より低いはずの俺の攻撃で、そこまでダメージを受けている?」
「……!」
口では強がってみるものの、冷静になって考えてみると確かにそうだった。
ヤムチャの気配を感じてから、防御に移るまでに時間がかかり、その時受けたダメージも大きい。
マーリンは言いかけた言葉を言うのをやめ、下へと俯く。

112:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:40 HmL8Bl5A
34話】
「それに意識が内面エネルギーの方へと偏りすぎてしまって、相手の気を完全に把握しようとしても意識がついていかない。
普通にやって相手の気を100%読めるなら、今のお前は40%ぐらいか。残像拳に引っかかったのもそのせいだろう」
ヤムチャはマーリンの方へ近づきながらなおも続ける。
「もっとも…俺が挑発して、お前がその技を確実に使ってくるって分かっていたから、今はたまたま回避できただけで、
戦闘中に上手くコンビネーションとして織り交ぜる分にはカナリありだと思うぜ…」
「……そうか…ふふ、そうか…」
「…俺の言ってることはおかしいか?」
マーリンの不気味な笑いにヤムチャは質問する。
「おかしいのではない…嬉しいのだ。わたしはこの技をよく考えて編み出したつもりだった。だがお前はその技の隙を一瞬で見つけ、実際に破って見せた。
確かに気のコントロールに集中しすぎて、ヤムチャへの意識が薄れたのは事実だ。わたしに隙があったとは言え、それを読むお前のブジュツの腕は凄まじい…
わたしが認めただけの男だ…」
「…おだてても何も出ないぞ」
「やはり、わたしにはこういった小手先の技を使って戦うのは性に合っていないらしいな…っ!できれば…できれば武術の腕だけでお前に勝ちたかった……!」

ボウッッ……!

マーリンの周りに赤いオーラが漂う。
そして、先程とは比べ物にならないぐらいにマーリンの気が膨れ上がり、ヤムチャはその気迫で一歩下がりそうになった。
「…勝たせてもらうぞ、ヤムチャ」

113:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:42 HmL8Bl5A
【35話】
「あれは界王拳…。なるほど…とことんやりたいってわけか…」
さっきまでのはお遊びだったとでも言わんばかりの凄まじい気に、ヤムチャの足は震えかけていた。
だが、武道家として、戦士として、ここは退くわけには行かない。
仮にも相手は自分の弟子だ。
マーリンは先ほどまでのような小細工は使っておらず、既に身体中の気を解放している。
解放しているはずなのに…なおも彼女の気は変化し続ける。
増えているのか…?はたまた減っているのか…?
激しい気の変化にマーリンの気の状態がよくつかめない。

「今のわたしの攻撃についてこれるかな?ふふ…」

「面白い…こちらも界王拳にかけるしかないようだ…!」
ボウ…と、ヤムチャの方も真っ赤な気のオーラが包む…!
砂嵐が巻き起こり、お互いの視界はほとんど遮られている。

だが、そんなことはお構いなしなのか、既にマーリンはヤムチャの目の前まで迫っていた。

「かああああああっっっっ!」
マーリンの拳が刺さるような勢いで、ヤムチャの顔面目掛けて飛んでくる。
「っく…!」
ヤムチャはそれを辛うじてかわした。
だが次の瞬間にはマーリンの逆の拳が目の前にあった。
それもギリギリでかわすヤムチャだったが、マーリンの手は止まらない。
次から次へと迫る拳に、ヤムチャは必死に避けることしかできなかった。
最初からヤムチャの回避力をマーリンのスピードが上回っている…このままでは時間の問題だった。

114:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 00:43 .50R71JU
【36話】
これは避け続けられないと思ったヤムチャは、手のひらに気を集中し、マーリンの拳を受け止める決心をする。

バシイイイ!

受け止めた反動で5メートルぐらい体が後ろに下がったヤムチャ。
「ッ…!受け止めた…だと!?」
マーリンは信じられない表情を見せる。
以前は孫悟空をも捉えた拳を、受け止められるなど考えもしなかった。
マーリンの戦闘力はあの時より格段にパワーもスピードも増しているはず。
ましてや、元からヤムチャの力は超えており、更にこの数年の修行で差をつけたつもりだった。
だが…自分の拳はヤムチャの掌の中にあるという事実。
マーリンは予想外のできごとに、思わず手を止めてしまう。
……この時彼女は、このパンチを自分自身の理性で威力を制御していたことに、まだ気付かなかった。
「……やっぱり、これだけ力の差があるといてえな。あの世に行った時大界王様のもとで修行してなかったら、手首から上がふっとんでいたところだぜ…」
あの世…?ダイカイオウ…?
ヤムチャが何を言っているか分からなかったが、自分の拳が受け止められた事実はなんら変わりない。
マーリンは焦りを感じていた。
…焦りを感じていたのだが、この気持ちはなんなのだろうと自問自答し、意識が葛藤しているのが分かった。
心の中でモヤモヤしたものがあり、それが中々姿を現さない。
「何を言っているんだ…?」
マーリンはヤムチャに自分が動揺していることをばれないよう、冷静に聞き返す。
「前にちょこっと話した界王様っていたろ。それより更に偉い人の元で修行したんだ」
ヤムチャは自慢げな様子もなく、淡々とあの世で修行した時のことを語る。
「おしゃべりタイムはこの辺で良いか?続けるぞ、マーリン!」
「…望むところだ」

ドスンッ!
バゴッ!
ガキィィ!

まるで金属と金属が物凄い勢いでぶつかり合っているような爆音が荒野に響き渡る。

115:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 00:44 .50R71JU
【37話】
「そりゃーッ!!ハイハイハイハイーッ!!」
ヤムチャはこれまでにないほどの、怒涛の進撃を見せる。
自らの限界である界王拳を30倍にあげてマーリンに猛打を浴びせていた。
常人なら、手の動きどころかヤムチャとマーリンの体の形すら見えないだろう。
だが、静かに勝負は付きつつあった。
「………」
この時、マーリンは心の中にあったモヤモヤをようやく理解したが、それを口には出せずにいた。
言ってはいけないことだと悟ったからだ。
必死のヤムチャの攻めに対し、マーリンは神妙な面持ちでそれを防御し続ける。
マーリンは防御の合間にコンマ数秒とない隙をヤムチャに見つけると、空かさずジャブ気味のパンチでカウンターをとっていた。
ほんの数十秒の攻防なのだが、手数が一瞬で数百回という次元なので、カウンターを受けた数もそれだけ多い。
ダメージを受けながらも、無理してマーリンを攻め続けるヤムチャ。
界王拳はなんとか維持しているものの、既に体力が限界を迎えつつある。
「はあ…はあ……」
ヤムチャは殴打を止めると、攻め続けては分が悪いと見たのか、“受け”の構えになる。
「ヤムチャがこないのなら、わたしからいかせてもらうぞ!」
それを見たマーリンはすぐにヤムチャの懐へ入り込み、ヤムチャに攻撃のラッシュを浴びせる。

ガガガガッ!ドガガガドガッッ!!!

今度はマーリンが攻め、ヤムチャが守りといった形になった。
マーリンの攻撃に、ヤムチャは何とか付いていき、防御することができていた。
そして、マーリンのときのように攻撃に隙を見つけるとカウンターを返す。
だが…彼の目にはもう燃え滾る闘志のような輝きは感じられなかった。

116:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:31 .50R71JU
【38話】
互角の攻防をしているように見えるが、ヤムチャの表情には余裕がなく、マーリンは笑いを見せる余裕すらあるように感じられる。
そんな中、攻防戦をしながらヤムチャの表情はどんどんと曇っていった。
すると、何を思ったか、ヤムチャは後ろに大きく跳躍し、攻防に見切りをつけたかのように、フッと界王拳を解いた。
ヤムチャを覆っていた真っ赤なオーラが、徐々に薄くなっていき、普通の状態に戻る。
マーリンはヤムチャのよく分からない行動に呆然とし、何を言って良いのか分からなかった。
体力の限界が近かったとはいえ、スタミナ切れではないはずだ。
あと1分ほどは持ったはず。
ということは…?
ヤムチャも無言でマーリンの方を見つめていた。
言葉を交わさずにただただ目と目を合わせる二人だったが、ようやくヤムチャの口が動く。
「…やめだ。もうこれ以上戦っても意味が無い」
「何!…それはどういう……」
「分かりやすく言ってやろうか?今までの攻防で悟った。これ以上続けても、俺はお前に勝てない。そうだろ?」
突然のヤムチャのギブアップ宣言。
マーリンは驚きを隠せず、すぐにヤムチャに突っかかる。
「何を言っているんだ、ヤムチャ。わたしとお前はほぼ互角の戦いを…………」
そこまで言いかけたマーリンだったが、ただならぬ視線を感じ、口が止まる。
ヤムチャが睨むようにして、マーリンを凝視していたからだ。
「…薄々勘付いてはいたが…お前、途中から俺の気に合わせて自分の気を調整していたな?…わざわざ“互角”になるように…。故意的かはわからねーけど」
「…!それは……」
答えを聞くまでもなく、マーリンの反応が全てを物語っていた。
ヤムチャはそれを確認すると、大きくため息をつき、下を向いて独り言のようなことをはじめた。

117:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:33 .50R71JU
【39話】
「…はは…あはははは!見ただろ?マーリン!」
「…なにをだ?」
独り言のようにそっぽを向きながら喋っているヤムチャだが、話の矛先はマーリンに向いているようだ
「毎日毎日、人生の大半を修行に注ぎ込んでも、俺はこの程度なんだよ!よーく分かったろ?お前が慕っているこの男は、この程度なんだってな」
「……ヤムチャ…違う…違うぞ、わたしはそんな風にお前を見ていない…」
マーリンも界王拳を解くと、話しながらゆっくりとヤムチャの元まで歩み寄っていった。
「…みんなの前ではヘラヘラしていた俺だけど、毎日のトレーニングを欠かしたことがない。もちろん、地球が平和になってからもな」
マーリンがヤムチャの傍までたどり着くと、ようやくヤムチャの視線がマーリンに戻る。
「…続けろ」
マーリンは何か言いたそうだったが、ヤムチャに話を続けるよう促した。
「お前に再会しても、恥ずかしくないように…堂々と胸を張れるように……必死に修行した。でも、これが結果だ。俺はお前に本気すら出させることが出来なかった…それどころか手加減されちまうとはな…情けない話だぜ」
「ヤムチャ…わたしはそういうつもりでやった訳では……」
「いや、いいんだ。お前がマジになったら、俺が相手にならないのは分かっているからな」
マーリンはヤムチャの開き直りに、励ましの言葉さえ思いつかず、何も言えなかった。
彼女自身、経験したことのあるこの“絶対的力の差”。
絶対に超えられない壁を目の当たりにしたとき、己の強さに一気に自信がなくなり、発狂した経験がある彼女だから、ヤムチャの気持ちはよく分かるのだ。
「マーリン…俺が何故、十年近くもお前に連絡をしなかったか…今教えてやろうか?……もう分かると思うけど…」
「……話してくれ、ヤムチャ」
すると、ヤムチャは大きく息を吸い込み、溜まっていたものを吐き出すかのように喋り始めた。

118:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:34 .50R71JU
【40話】
「俺は…俺は弱すぎるんだよ!いくら修行しても、悟空たちのように強くはなれなかった…。いや、悟空たちどころじゃない。あいつらがあっさり倒しちまうような敵にさえ、俺は勝つことが出来なかった。
そんな俺が、何事も諦めずに戦い続けるお前と…再び会う資格があるのか?…俺はずっと自問自答を重ねていた。だから連絡がこんなに遅くなったんだ」
「……」
拳を震わせながら喋るヤムチャを、マーリンは黙ってジッと見つめていた。
「…今の俺はそれなりの自信があった。今ならお前に勝てる…とまでは行かなくても、いい勝負が出来る…そんな甘い考えを抱きつつ、お前を地球へと移動させたんだ。…甘かったよ、俺は」
「もういい、ヤムチャ。分かった。それ以上自暴自棄になるな…」
「そりゃそうだよな…すぐにこーやって諦めるような男が、マーリンといい勝負になるわけがないよな…はは…」
ヤムチャはマーリンの足元に倒れるように座り込むと、無念そうな表情を浮かべ、青い空を見つめていた。
マーリンはどう言葉をかけて良いかしばらく考え込んでいたが、やがて口を開く。
「…ヤムチャ、これは励ましとか同情とかそういった類に聞こえてしまうかもしれないが…少し言わせてくれ」
「なんだよ」
「前にも言ったと思うが、お前は宇宙でも指折りの最強クラスの戦士だ。間違いない」
「仮にそうだとしても、仲間内じゃ強いとはお世辞でも言えな―」
「本当にそうか?」
全て言い終わる前にマーリンはヤムチャを制した。
「そりゃ…悟空やベジータには勝てないだろうし、悟飯は今や宇宙最強の戦士だし…ていうかサイヤ人は全部無理だろうな。ピッコロも勝てそうにない。
天津飯も修行しまくってそうだしな…やっぱりチャオズとヤジロベー…それから結婚して修行を怠けてるクリリンぐらいか、俺が勝てそうなのって」
「実際、最近そいつらとは戦ってはいないんだろう?なら分からないのではないか?」
「無理。絶対勝てねーよ、やるまでもない」
ヤムチャの投げやりな態度に、思わずこめかみと拳がピクリと反応したマーリンだったが、気持ちを抑えて話を続けた。

119:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:35 .50R71JU
【41話】
「ヤムチャ…お前は自分が思っている以上に強い力をもっている。その気になれば孫悟空にも勝てるぐらいのな…わたしはそう思う。本気で、だ」
「ありがとな。でも無理だ…あいつらは次元が違うんだよ、もはや」

パシン!!

ヤムチャはそれまでマーリンの顔を見ていたのだが、何故か視界から突然それが消えた。
マーリンにビンタされたのだ。
「い…いってーな!…なにすんだよ!」
ヤムチャは赤くはれ上がった頬を押さえながらマーリンに向かって叫んだ。
「諦めないって言ったのは嘘だったのか?わたしと同じように、諦めず戦うんじゃなかったのか?」
マーリンの目付きは厳しいものになっていた。
自分が尊敬するヤムチャを…こういう形で説教するとは少し残念なものだが、ここはびしっと言うしかないと判断したのだ。
ヤムチャもようやく目が覚めたのか、先ほどとは打って変わって真面目な顔つきになる。
「…たしかに前のレベルなら追い付こうと言う気になれた。だから俺も修行したさ…死に物狂いでな。けどあいつらも強くなっていく。俺の何倍ものペースで。
気が付いたら、この歴然たる差。お前は見てないから分からないだろうけど、もはや俺なんてお荷物状態だ。
だからもう、あいつらを目指すのはやめた。俺は自分の限界を越えて越えて、越えられなくなる日がくるまで修行を重ねることにしたんだよ…。これが俺なりの結論だ」
ヤムチャは立ち上がると、マーリンの目をしっかりと見ながら喋った。
「その修行の先には何があるというのだ…」
「さあな…たまに考えちまうんだよ。なんで俺修行してるのかなって…こんな頑張ってなんの意味があるんだろうってな。でも、そんな弱音にぶち当たったと

きに、そこで浮かぶのはいつもお前の顔だった…マーリン…」
「……ヤムチャ…」
「まっ、しょせん目標のない修行だ。狼の一人旅で終わっちまうかもな…」

120:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:36 .50R71JU
【42話】
自らの限界…いや、言い換えるのなら地球人の限界。
地球人の中では抜群の格闘センスを誇るヤムチャ。
そして一般人では想像を絶するような、血の滲むようなと努力と、神様や界王様の元での修行。
ヤムチャはマーリンの言うとおり、既に宇宙から見ても指折りの達人と言われても良いレベルの強さを持っていた。
だがその強さにも限界がある。
元々ぬくぬく平和な星の元産まれた地球人と、常に死と隣り合わせで毎日が戦いの日々…更に死にかけから全快すると強さがいくらでも増す戦闘民族サイヤ人

では、
体質や潜在能力…その他に“スーパーサイヤ人”などという界王拳を遥かに凌ぐパワーアップの技なども考慮すると、はじめから条件が違いすぎた。
だが、ヤムチャはそれでも諦めずに修行を続けていた。
しかし、待っていたのは悲惨な結果。
異常なまでに強くなっていく敵の出現と、それを相手に、手も足も出ないままやられるだけの自分。
そしてその敵を更に凌ぐような力をつけていく悟空をはじめとするサイヤ人たち。
現実の壁はヤムチャにとって、余りにも高すぎた。
ヤムチャは自分が敵に通用しないという現実より、その強い敵より更に強くなっていく仲間たちに対してのショックの方が大きかった。
なぜならそれは間接的に、ヤムチャと悟空たちの圧倒的な力の差をヤムチャに突きつけていたからだ。
恐らく、今悟空とヤムチャが戦ったら小指一本でもやられるだろう。
のし掛かる無言の重圧と、無意識のうちに確立された孤立感。
今じゃ一緒に稽古しようとすら言われなくなった。

そんな嫉妬心や蟠りを、ヤムチャはずっと胸に秘めながらも、一人で修行をしていたのだ。
いつか…いつか、この差が縮まって、悟空を倒せなくとも、せめて一泡吹かせることができるぐらいの強さを求めて。
悟空は全く意識してなかったが、ヤムチャの中の悟空へのライバル心は消えないままだった。

121:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:44 .50R71JU
【43話】
いつしか、ヤムチャの目には涙すら浮かんでいた。
「誰よりも強くありたい…俺は…俺はそんなことを願うことすら許されないのか……?」
誰かに問いかけたわけでもなく、ヤムチャは空を見ながら自問自答する。
「そんなことは…ない。一人旅では終わらせない」
そのヤムチャの様子を見て、ようやくマーリンはヤムチャに優しい声をかける。
「お前は…ヤムチャは…わたしの師匠だぞ?ソンゴクウを一度とはいえ破ったこのわたしの…な。
だから…それだけの悔しい気持ちがあるなら…諦めないでほしい…その気持ちがあれば、絶対に結果として現れるはずなんだ…」
マーリンはヤムチャに視線を合わせずに言った。
「……」
ヤムチャは何も言わない。
マーリンは続ける。
「そもそも…わたしたちがやろうとしてることは間違いだらけだ。違うか?」
「…!その台詞は…」
心に覚えのある発言にヤムチャは顔を見上げる。
「ああ、お前の言葉だ。地球人が最強のサイヤ人に挑もうとするのはたしかに間違っているかもしれない。でも、それがなんだ?
間違っていようといまいと、そんなことはどうだっていい…しかし、これだけは言える」
マーリンは少し考えてから言った。
「サイヤ人だろうと地球人だろうと、最終的に諦めなかったものが勝つんだ。わたしのように、そしてヤムチャ、お前のようにな…」
「…マーリン………」
その言葉は、体より心が苦しい修行を続けていたヤムチャにとって、物凄い支えとなり、心に響いた。
実際は、悟空に勝つのなんて不可能かもしれない。
しかし、ここにこうやって自分をきっちりと見つめ、真剣に考えてくれる人がいる。
例え勝てなくても、この言葉を励みにいくらでも修行に打ち込める気さえヤムチャは沸いてきた。
こうやって、人に認められたのは久々なのだろう。
ヤムチャの心はいつの間にか満たされていた。

122:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:48 .50R71JU
今日のところは寝ます。
また今週も忙しく、書くペースが中々上げられそうにありません。
いつもコメントくれる方は同じ人でしょうか?
ご丁寧にありがとうございます。

そろそろマーリン、ヤムチャ、シルフ以外のキャラも出していく予定です。

123:ジュン
08/12/09 17:37 iIqAYb6k
楽しみにして待ってます。

124:Classical名無しさん
08/12/09 22:44 YXkpOx7Y
たまに感想書くけど同一人物ではありませんよ


125:Classical名無しさん
08/12/10 21:43 dv8poS0w
ペース早くなってきていいね

126:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/11 01:04 ty0bixrc
【44話】
ヤムチャは黙ってマーリンをその場で抱き締める。
大きなヤムチャの肩幅が、一回り小さいマーリンの肩をすっぽりと覆う。
突然の抱擁にも、マーリンは抵抗すらしなかった。
そしてヤムチャは彼女の耳元でそっと囁く。
「…愛してる。やっぱり最高だ、マーリンは」
「…わ、わたしも……、その…同じ気持ちだ」
マーリンも恥ずかしそうに、ヤムチャに聞こえないぐらいの声で言葉を返す。
既にヤムチャの目から涙は消えていた。
黙っていても、二人が次にすることは客観的に見て想像が付く。
二人は目を瞑り、顔を近づけ、濃厚なキスを……

「お母さあああああん!お父さあああああああん!!今のどっちが勝ったの!?」

出来なかった。
シルフが大声で叫びながらこちらへ走ってきたのだ。
焦って体を離し、ヤムチャとマーリンはお互いに背を向ける。
「遠くてよく見えなかったけど、二人とも動いてなかったし組み手は終わったんだよね?どっちが勝ったの?」
シルフはそんなことを知るよしもなく、目をキラキラさせながら子供特有の残酷なまでに空気を読めない発言をする。
「え……あ、ああ…?ど…どっちが勝ったっけ、マーリン」
ヤムチャは赤面しているのがばれないように、顔をシルフの後ろに向けて、話をマーリンに振った。
「わ、わたしが答えるのか…?そ、そうだな…うーん…双方痛み分けってところだろうか…」
マーリンの頬も心なしか赤く見える。
「ソウホウイタミワケ?新しい技の名前?強いの?」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせて、やれやれという顔をする。

127:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/11 01:14 ty0bixrc
【45話】
「技の名前じゃない。引き分け、ってことさ…母さん曰く、な」
ヤムチャはシルフの頭を大きな手で撫でながら答えた。
「へへ…やっぱりお父さんもお母さんも、めちゃくちゃ強いんだね!」
「…いや、まだだ。俺はまだまだ強くなるぜ、シルフ」
ヤムチャはガッツポーズを取りながら、我が子に対し強気な発言をする。
絶望の淵から這い上がり、今ではその顔に希望の色が見えていた。
マーリンはそのヤムチャの様子を見て、とりあえず一安心といったところなのか、安堵のため息をつく。
先ほどの落ち込みようが嘘のように、今のヤムチャはやる気に満ち溢れていた。

その時!
大きな気を近くに感じ、マーリンの目付きが鋭くなる。
「この気…!」
そして、大きな気の主は、マーリンの真後ろに立っていた。
即座にマーリンは後ろを振り向く。
ヤムチャもほぼ同時に同じ方向を振り向いた。
そこには…ヤムチャにとってもマーリンにとっても、見覚えのある男が立っていた。
「オッス!久しぶりだなあ、ヤムチャ」
背後からのほほんとした声が聞こえた。
どこか気が抜けているが暖かい声が。
「ヤムチャの気がずっと乱れてたから瞬間移動で見に来たけど…やっぱりただの修行じゃなかったみてぇだな」
「ご、悟空…!はは…やっぱりこれだけ激しく戦ったらばれちまうか」
ヤムチャは恥ずかしそうに笑い飛ばした。
「お前は…ソンゴクウ…!」
マーリンは睨むようにして悟空を見ながら言った。
悟空がヤムチャと全く同じ胴着を着ていることが気に食わないようだ。
「あれ…おめぇオラのこと知ってんのか?そういや…どっかで見たことあるような顔だな…」
悟空はあごに手をあてながら考え込む。
「んー……あ!…あーーー!!おめぇは…あの時の…!?」
悟空はびっくりした様にマーリンを指差した。

128:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/11 01:17 ty0bixrc
【46話】
その声に一番びっくりしたのは何故かヤムチャだったわけだが。
ずっと記憶の片隅にあった、かつての敗戦の様子が悟空の脳裏に再現される。
悟空の中でちょっとしたトラウマでもあるこの女を目の前にし、思わず声を荒げてしまった。
マーリンは悟空のあまりの驚きようにも動じず、冷静な口調で言葉を返す。
「…。久しぶりだな、ソンゴクウ。気のせいかもしれないが、余り見た目が変わってないな…」
「ああ、オラは純粋なサイヤ人だから、わけぇ時間が長いんだ。…ってベジータが前に言ってたっけな…確か」
悟空はどうでもよさそうに笑いながら答えると、空かさず続ける。
「いやー、にしてもすんげぇ懐かしいな!そういえばオラまだおめぇの名前しらねぇや!なんつーんだ?」
「…マーリンだ」
「へぇ…マーリン、か」
悟空が自分から名前を聞くとは珍しい…と、ヤムチャは思った。
かつて勝負に負けたこともあり、マーリンにはただならぬ思い入れがあるのだろう。
それにしても、マーリンの悟空に対する接し方はずいぶんと冷たいように見える。
「で、なんでおめぇがここにいるんだ?ずいぶんめぇ(前)に宇宙に帰ったって聞いたけど」
悟空は不思議そうにマーリンに尋ねる。
「そこは俺から説明しよう、悟空」
マーリンと悟空の間にヤムチャが待ってましたとばかりに割ってはいった。
10年ほど前、悟空との勝負のあと、別れ際にヤムチャとマーリンは再び会おうという約束をしていたということ。
そして昨日、ドラゴンボールを使い、宇宙から地球に呼び寄せたということ。
事実をありのまま悟空に伝えるヤムチャ。
「なるほどなー…ドラゴンボールかぁ。それなら納得だ。ま、オラもおめぇに会いたかったしちょうどいいや」
悟空は本当に嬉しそうにしていた。
かつて自分を破ったほどの強敵と、再び会えたという事実が彼をワクワクさせているのだろう。
それはマーリンも同じで、あのギリギリの勝負を、もう一度味わいたいと思っていた。
だが、それよりマーリンは悟空に聞きたいことがあった。
「ところで、ソンゴクウ。…お前はヤムチャを、どう思っている?」

129:ジュン
08/12/11 17:18 YSHnUj2A
おもしろい。早く続きが読みたいっす!

130:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/12 02:50 rLw6IaXg
【47話】
マーリンは唐突に悟空に訪ねた。
予想だにしなかったマーリンの発言に、思わずヤムチャがまた首を突っ込む。
「お、おい。マーリン何言ってるんだ…そんなこと聞いてどうするんだよ」
質問を投げかけるヤムチャをほんの一瞬横目で見ると、再びマーリンは悟空へと視線を戻した。
「ヤ、ヤムチャをどう思っているか…って?言ってる意味がよくわかんねぇよ。…まあ、普通にイイ奴じゃねぇかな」
悟空はマーリンの突拍子もない質問に、たじたじと答える。
言ってる意味がわからないってことはないだろう…と、心なしか悲しい発言にヤムチャは苦笑いする。
「そうじゃない。わたしが聞いているのは、戦士としてのヤムチャだ」
「戦士と…しての?」
「そう。お前たちと共に戦ってきたヤムチャを、お前はどう思っているのかと聞いている」
マーリンは悟空を見つめる。
その目に迷いはない。
マーリンの目をしばらく見つめたあと、悟空は真剣に考えはじめた。
「改まって言われんとうまく言葉が出てこねぇけど…おめぇが聞きたいのは、オラがヤムチャを強いと思ってんのか、それとも弱いと思ってんのかってことか?」
「まあ、簡単に言うとそうだな。もう少し、捻った回答が欲しいものだが」
「そうか。じゃあ正直に話すぞ、普通にヤムチャはめちゃくちゃつえぇと思う。ただ、オラの仲間たちが強すぎてあまり目立てねぇけどな…」
悟空は自分なりの素直な答えを出した。
ヤムチャは弱いと言われなくてよかったとホッとするが、マーリンは納得していない。
数秒黙っていたが、再びマーリンの口が動く。
「最後の一言は余計だな。その言い方だと、ヤムチャがお前を含めお前の仲間たちと比べたら、弱い方に入ると言う風に聞こえるが、ソンゴクウはそう思っているのか?」
マーリンは少しだけ、声を震わせながら言った。
ヤムチャが弱いという扱いを間接的に下した悟空に対して、自分では気付かないほど自然に怒りがこみ上げてきている。

131:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/12 02:53 rLw6IaXg
今日は2時くらいに家に戻れました。
ちょっと体力的にきついので、1話だけで勘弁してください。

132:ジュン
08/12/12 06:40 f6EMH402
無理しないで頑張って下さい。お疲れ様でした。m(__)m

133:ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 15:14 U01cwzu2
書き込めるかテストです。

134:ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 15:39 U01cwzu2

第七話「悟空対人造人間。ヤムチャ達652人+(320人)」

色々あったが人造人間の所に一斉に着いた悟空達。
天津飯はヤムチャ達に近づき頭を拭かせ始めた。

ピッコロは腹を貫かれた2人のヤムチャに近づいた。
「ヤムチャ・・・」「ぐっ・・・助けてくれ・・・ハゲ・・・」「ずあっ!」
ピッコロにより放たれた大量の気により
瀕死だった2人のヤムチャは死亡した。細胞一つ残さずに・・・・

悟空は人造人間に場所を変えるから付いて来いと言う。
だが人造人間達は場所を変える必要はないと言い目から出した光線で
辺りをメチャクチャにしだした。
ドババババババ。破壊されていく町。人々もたくさん殺された。

ちなみにこの攻撃によりナンパしていた3人のヤムチャのうち2人が死亡した。
「おい!汚いから片付けておけよそのボロクズを!」
ナンパされていた女性は生き残ったヤムチャに吐いた。
次話「ヤムチャという名のヤムチャ!648人+(320人)」に続く

135:ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 16:06 U01cwzu2

第八話「ヤムチャという名のヤムチャ648人+(320人)」

「やめろー!」
バキッ、町を破壊していた人造人間に悟空の一撃があたる。
「ついてこい!2人ともぶっ壊してやる!」
「誰もいない場所を作ってやろうと思ったのだが、仕方ない」
悟空は町から別の場所に行こうとする。
その隙にヤムチャ達は逃げ出そうとしたが悟空は見逃さなかった。
「ヤムチャ達。おめえ達もついてこい!」
それに1人のヤムチャが答えた。
「悟空君。僕達見たいテレビがあるから帰るよ」
「ぶつぞ」
「行きます」
悟空は飛んでいき町から離れた。
それに人造人間、ピッコロと天津飯、嫌々ながらヤムチャ達がついていく。
一方ここはブルマ、悟飯、ヤジロベー、残りのヤムチャ達のいる所。
クリリンも仙豆を取りにここに戻っている。
破壊された町を見た悟飯達は悟空達のいる所に行こうとしている。
だがヤムチャ達は行こうとしない。それに悟飯は強い口調で言った。
「ヤムチャさん達も行きますよ!お父さんの所にいるヤムチャさん達もピンチですよ!」
それにヤムチャ達はフッと微笑しながら言い返す。
「ヤムチャは役立たずじゃない。多分、作戦があるんだよ」
「ねえよ、んなもん!」悟飯が怒鳴った。
次話「役立たずのヤムチャ達648人+(320人)」に続く

136: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 16:10 U01cwzu2
少なくてすみません。
>>102
ありがとうございます。あなたの話はかなり面白いです。君も頑張れよ!

137:Classical名無しさん
08/12/13 21:03 KO9FDwR6
こいつwwwwwww

138:Classical名無しさん
08/12/13 21:32 jtJ3Aki6
ここのSSはみんなレベルが高いので楽しみだ。

139:Classical名無しさん
08/12/14 20:47 f2VdT3p2
「ぶつぞ」「行きます」が秀逸w

140:Classical名無しさん
08/12/15 21:13 Al01H4Q.
◆Nt3ni7QiNwという人間が面白い

141:ジュン
08/12/19 06:34 cfWzoCPU
早く続きが読みたいです。

142:Classical名無しさん
08/12/19 20:14 pfx.pz0A
保守

143:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:23 qM74Xf0A

【48話】
「いや…まあ、順序付けしちまえばそうなるかもしんねぇけど…どうでもいいじゃねぇか、そんなこと」
「順序付けをすればそうなるだと…?」
マーリンはそれまで少し距離を置いていた悟空にジリジリと詰め寄る。
今にも悟空と一戦おっぱじめようかという空気になりかけたところを、ヤムチャがマーリンの肩をグイとつかんで止めた。
「…そろそろやめとけよ、マーリン。はは…悪いな悟空…こいつは結構無駄に熱くなるところがあって……。…な?マーリン」
言われてみれば、確かに地球にきてからというもの、ちょっとしたことですぐ怒りの感情が滲み出ていた自分に気付く。
ヤムチャのこととなると、いてもたってもいられない自分が少し大人気ないように思えてきて、ちょっと恥ずかしくなるマーリン。
ヤムチャは笑いながらいつもの明るさを纏い、マーリンの背中をぽんぽんと叩いて、怒りを宥めた。
だが、マーリンは知っていた。
このヤムチャの笑いが作り笑いであり、実際は先ほど打ち明けたような悔しい気持ちで胸がいっぱいなんだと。
その事実を再度確認すると、いくら悟空が強いからと言えど、悟空のさきほどの発言が余計頭にくる。
もちろんながら悟空には悪気など全くなく、ヤムチャを見下していたりはしていないわけだが。

「っっりゃああああ!ロウガフウフウケンッッ!」

その突然の掛け声と同時に、悟空は背後に殺気染みた気配を感じとる。
何かが後ろにいて、自分に向かって攻撃しようとしているという状況を振り向かずに理解すると、その気を瞬時に探り、相手の位置を正確に把握した。
そしてヒョイと数十センチ横に体を避けると、後ろから突っ込んできた犯人が前のめりにバタンと倒れこむ。
見たところ、まだ小さな子供みたいだ。
トランクスや悟天と同じぐらいだろう。
なんでこんなところに子供が…?
そう思った悟空だったが、その子供の顔を確認すると、誰かに似ている。
だが中々誰だか思い出せない。
うーん、と悟空は長考をはじめた。

144:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:32 qM74Xf0A
【49話】
「今の攻撃をかわすとは…運だけは強いようだな!オマエは!」
その子供は攻撃を避けられると予想すらしてなかったのか、驚いた様子で呆気に取られていたが、やがて起き上がり再び自分に向かって構えを取っていた。
「中々の不意打ちと言いてぇところだけど、その程度の攻撃じゃオラのかすりもしないと思うぞ」
「さ…さっきから聞いていれば偉そうな事を言いやがって…オマエ何も知らないみたいだな!ここにいるぼくのお父さんとお母さんは宇宙最強の戦士なんだぞ?」
子供は宇宙だとか最強だとかスケールの大きいことを自慢気に語るが、悟空の耳にはある一言しか耳に入らなかった。
「お父さんとお母さん……?おめぇ…何言ってんだ?ここにはオラとヤムチャとそこにいるマーリンって娘しか………って……えええ?まさか、ヤムチャ……?」
悟空は苦笑いしながらも、現実を必死に確認しようとする。
「いやあ…ははは……ばれちゃ仕方ないか。そいつは俺の子だ。母親はそこにいるマ―」
「ぎょえええええええええええええええええ!!ほんとかぁぁあ!?」
ヤムチャの言葉を全て聞き終わる前に、悟空は後ろにすっころんでいた。
まるで、未来から来たトランクスがベジータとブルマの子ですと告白した時に近い驚きようだ。
「お、おめぇら…結婚してたのかぁ…ヤムチャ全然教えてくれねぇんだもんなぁ…」
悟空は倒れながらヤムチャとマーリンの顔を見渡す。
そうとう驚いたのだろう。
悟空は腰を抜かしたかのように身動きをとれずにいた。
「結婚と言うか…子供はいた…みたいだ。まあこれには色々とあってだな……って悟空、大丈夫か?…立てる?」
「あ、ああ…よっこらせ…っと」
悟空は転んだことによって服についてしまった砂をパンパンと払い落とすと、ヤムチャの後ろに隠れているいまだに警戒心を解かない子供が視界に入った。
「そう力むなって、オラは別に喧嘩しにきたわけじゃねぇんだ」
「フン…じゃあお父さんやお母さんより弱いのに偉そうな態度を取るのはやめてもらおうか!」
「はは、わかったわかった」
悟空は参ったような顔をすると、らちが明かないと思ったのか、ヤムチャの方を再び見直す。
そして何かを思い出したかのように話を始めた。
「あ、ところでヤムチャ、マーリン。おめぇら天下一武道会に出てみねぇか?」

145:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:34 qM74Xf0A
【50話】
「テンカイチブドウカイ?」
黙っていたマーリンが理解できない単語に反応する。
「ああ、2週間後に地球の武道会があるんだ。組み手形式で相手を倒していって、最後まで勝ち進んだヤツが優勝する大会だ」
悟空は人差し指を立てながらマーリンに説明を始める。
「…ほう。それは面白そうだな」
マーリンは興味の沸いた大会にニヤリと笑うと、ヤムチャの様子を伺う。
すると、ヤムチャは何故か険しい表情になっていた。
「…誰が出るんだ?」
ヤムチャは恐る恐る悟空にたずねる。
「んーと…多分、オラ、悟飯、ベジータ、トランクス、悟天、ピッコロ…はわかんねぇな。あとクリリンも出るって言ってたと思う。18号とかも出そうだな…」
ずらずらと仲間の名前をあげていく悟空に対し、ヤムチャは名前を一人挙げられるたびに表情が暗くなる。
「ほ、ほとんど出るわけか、俺らの仲間は…」
マーリンは悟空の仲間の名前を挙げられても、ほとんど分からなかったが、ヤムチャの反応からして今挙げられた者たちの方がヤムチャより強いのだろうと把握する。
…今のところは。
「ああ、みんなで久しぶりに出ようぜって事になったんだ。ヤムチャも出ようぜ」
「悟空…それって俺が出ても……」
「ヤムチャ」
弱音が出そうになったヤムチャを、マーリンが制する。
そしてマーリンは悟空に歩み寄り、顔を悟空に近づけると、不適な笑いを見せながら言った。
「ソンゴクウ、わたしとヤムチャはその大会に出る。そして、お前たちを倒す」
「ちょ…お前何勝手なことを…」
ヤムチャはマーリンの勝手な発言に肝を抜かす。
それもそのはず、ヤムチャはあの大会では全くいい思いをしたことがない。
初参戦はジャッキー・チュンとかいう老人にさわやかな風をプレゼントされ、場外負け。
2回目は天津飯と激しい攻防をするものの、最後は失神し、足を折られてKO負け。
3回目は神様が相手で、繰気弾をヒットさせるも直後に手刀をもろにくらい場外負け。
いわばヤムチャのトラウマだ。
だが、そんなヤムチャも関係なしに、悟空とマーリンの間にピーンとした空気が張りつめる。

146:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:38 qM74Xf0A
【51話】
マーリンの透き通った目は、はったりではないと悟空は悟っていた。
本気でこいつは勝つ気でいる…。
だが―、そうでなければ面白くない。
その闘争心をかきたてられるような目に、悟空はここに来て初めて“温厚な地球人”ではなく“戦闘民族サイヤ人”の顔つきになった。
「ああ、楽しみにしてっぞ。…それから、大会の時の参考までに、今のオラの強さを少しだけおめぇに見せてやる。何も知らないままだと少しかわいそうだからな」
その挑発的な態度に、再び突っかかりそうになったマーリンだが、悟空はそれを無視するかのように気を高め始めた。
「っっはぁぁああぁああ…っ!!!」
高鳴る声と共に、悟空の髪が一瞬で金色に輝く。
その豹変振りに、思わず声が出ない。
地球がどうにかなってしまいそうなこの凄まじいパワー。
さすがのマーリンも、余りにも強大な悟空の力を目の前に、冷や汗がたれる。
宇宙最強の戦士、スーパーサイヤ人へと変身したのだ。
いや…ただのスーパーサイヤ人ではない。
凄まじい気のせいか、火の粉が舞っているかのようにバチバチと音を立てながら、金色のオーラの周りに電流のようなものが発生している。
「スーパーサイヤ人…2、か…」
ヤムチャはぼそりとつぶやく。
こんな凄まじい気なのに、大して驚いていない様子だ。
見慣れているのだろうか?
この強大な気を目の前にし、大して驚かないところからして、ヤムチャたちが地球でいかにハイレベルな戦いを続けてきたのかが見て取れる。
「うわ…あ…」
その気迫と、神々しいまでの輝きに、シルフは石になったかのようにピクリとも動けなくなり、やがて意識が途切れる。
咄嗟にヤムチャがその体を支えた。
「…ソンゴクウ…それが今のお前の強さか…」
マーリンは以前、スーパーサイヤ人である悟空と戦ったことがある。
その時は自分と実力も近く、良い勝負になった。
しかし、今の悟空と自分では、戦うまでもない。
到底埋まりそうにもない差があることがはっきりと分かる。
だが、これだけではなかった。
次の悟空の言葉はマーリンを更に絶望の淵へ叩き落すことになる。

147:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:40 qM74Xf0A
遅れてすみませんでした。
今日はもう少し書けそうなので、深夜にでも時間をとって、
またちょろちょろと書いていこうと思います。

148:Classical名無しさん
08/12/21 05:53 ojtDbS0Q
楽しみにしてます 頑張って下さい(・ω・`)

149:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 15:40 lcU.ccGE
【52話】
「はっきり言っておくぞ。今のオレはもう一段階上のスーパーサイヤ人になれる」
「なん…だと……」
スーパーサイヤ人2が本気の状態だと思っていたマーリンは、その言葉が信じられなかった。
「ソンゴクウ、お前は、い…今の状態より気を上げられるのか…?」
「そういうことだ。その変身をすれば、今より数段階強さが増す」
悟空はスーパーサイヤ人の状態ながらも、ニヤリと笑いながらマーリンに話す。
さすがのマーリンも、笑い返す余裕がなかった。
「わたしはお前が今以上に気を上げることが出来るなど信じられない。見せてくれ!……お前の本気の変身というのを…!」
マーリンは鬼気迫るかのように悟空に頼み込んだ。
少し悩んだ悟空だったが、やがて決心がつく。
「…ああ、分かった。少しだけだぞ、大会前にあんまり手の内を見せるわけにはいかねぇからな…一応」
そう言うと、悟空はスーパーサイヤ人2の状態から、更に気を練り始めた。
「はぁぁあ……っっ!」
地球がどうにかなってしまうのではないかとすら思えるほど、凄まじく地面が揺れる。
マーリンは立っていられなくなり、思わず武空術で空中へ飛び上がった。
ヤムチャも気絶したシルフを抱きかかえ、マーリンより先に既に空中へ避難していた。
「…っかぁぁっ!!!!!」
その悟空の掛け声とともに、悟空の気がもう一段階膨れ上がる!
揺れがおさまったのを確認すると、マーリンは悟空の姿をまじまじと確認する。
…顔付きもまるで変わり、髪の毛は何倍かに伸びており、気質も先ほどとはまるで違う。
悟空の戦闘力の大幅な上昇と、見た目の変化にただただ足を震わせ、呆然とするしかないマーリン。
ふとヤムチャを横目で見るが、やはり特に驚いた様子もなく、普通にしていた。
「…なんという戦闘力だ…。一体どういった修行をしたらこんなに……」
悟空の気がもう一段階膨れ上がったのにも驚いたマーリンだが、見た目の変化にも驚いていた。
あれではまるで別人と言っても過言ではない。

150:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 15:42 lcU.ccGE
【53話】
(いつも思っていたけど、どうしてスーパーサイヤ人3って眉毛がなくなるんだろう…)
この変身を見慣れているヤムチャは、悟空のは気の変化云々より、そんな些細なことに突っ込みを入れていた。
「…これが今のオレに出来る最高の変身だ。…この変身でも、ゴテンクスや悟飯を吸収した魔人ブゥには到底敵わなかったけどな」
「何…?今のお前でも、敵わない敵がいたというのか?」
「ああ、敵わないな。まぁそいつはもう元気玉で消滅しちまったが…」
その悟空の話を聞いて、ヤムチャが絶望し、悟空たちに追いつこうという闘志を失ったのも頷けるとマーリンは思った。
普通のスーパーサイヤ人の状態ですら、反則に近い強さであるのに、そこから更に二段階も変身できる悟空。
それに対し、界王拳で強さを倍化させることの出来るヤムチャだが、素の状態での戦闘力が違う上に、強さが何百倍にも膨れ上がる変身が可能な悟空には、到底及ぶはず

がない。

フッ、と悟空の変身が解け、元の黒髪の状態に戻る。
顔付きも前の穏やかなものになり、緊張感が一気に緩んだ。
「…とまあ、今のオラはこんなもんだ。どうだ?少しはやる気出たか?」
さすがに戦意喪失するだろうと思っていたヤムチャは、マーリンを横目でちらりと見た。
だが、そのマーリンの目は諦めた目でもなく、以前自分や悟空に見せた時の、燃えるような闘志が宿った目だった。
「……ああ、俄然やる気が出た。わたしの目標はやはり…ソンゴクウ、お前を倒すことにあるみたいだ」
マーリンの予想外の反応に、ヤムチャは驚く。
実力の差が分からないはずもない。
今から2週間では、どう修行しても追いつけるはずもない。
なのに…彼女のあの何かを信じて揺るがない、断固たる意志が感じられる目つきはなんなのだろう?
先ほどまでマーリンは震えて動くことすら出来なかったように見えたが、その震えは武者震いだったのだろうか?
今のヤムチャには到底理解できなかった。
「ははっ、そうかぁ!やっぱりおめぇはなかなか骨があるなぁ!オラ、期待してっぞ!あ、ヤムチャにもな」
「あ、ああ…って俺にも?」
ノリで受け答えするヤムチャだが、すぐさま悟空に突っ込む。

151:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 15:43 lcU.ccGE
【54話】
悟空の眼中にないと思われていたヤムチャだったが、悟空はしっかりとヤムチャを見ていた。
「ヤムチャ、オラは知ってるからな。ヤムチャが隠れて長年ずっと修行してんのは」
「…!…そ、そうか…」
悟空は気づいていた。
自分が修行していたことを。
だが、それは同時にヤムチャにとってに恥ずかしいことでもあった。
ずっと修行をしつつも、全く縮まることなく離れ続けていく実力差。
努力を認められ、評価されても、結果として現れなければ意味がない。
“ヤムチャはがんばった”
“ヤムチャはやるだけやった”
言葉では何とでも言える。
だが、今のヤムチャにはそんな評価なんて必要ない。
欲しいのは――皆をあっと言わせるだけの実力…ただそれだけだった。
ヤムチャは悟空を厳しい目で睨み返す。
「悟空…俺もお前を倒すつもりで今から修行に励むことにした。お前を倒さずして、優勝はないだろうからな」
「…ああ。けどヤムチャ、オラだって負けねぇからな」
「お前と戦えるのを楽しみにしているぞ、悟空」
「良い試合になるといいな…ヤムチャ」
二人はかつてのライバルだった時のように、腕と腕を合わせる。
悟空はこの時、内心本気でヤムチャに期待をしていた。
同じ時期に武術をはじめたもので、今も毎日修行に励んでいるのはヤムチャと悟空ぐらいなものだった。
この男は絶対に何か仕掛けてくる…自分の想像できない何かを…。
そんな胸に秘めた思いを募らせながら、悟空はヤムチャと距離をとった。
「…んじゃ、オラはそろそろ戻るとすっかなぁ…腹も減ったことだし。そのちっこいおめぇらの子供にもよろしくな」
ヤムチャはこくりと頷く。
マーリンも無言のまま悟空を見つめている。
そして、右手の人差し指と中指で額に手をあてながら、左手で自分たちに2、3回手を振ると、瞬間移動で跡形もなく消えてしまった。

152:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 15:45 lcU.ccGE
【55話】
…悟空が消えただけで、やたら空気が静かになったように感じる二人。
「…まあ、座ろうぜ…マーリン」
ヤムチャはそばにあったちょうど良い高さの石に腰をかける。
その隣にマーリンも腰掛ける。
「……さて、俺たちはどうしようか」
悟空が去ってからしばらくの沈黙の後、ヤムチャはそっとシルフを地面に寝かせると、マーリンに向かって話し掛ける。
「……ヤムチャ、ソンゴクウの戦闘力は…今数値で言うとどれくらいなのだ?」
マーリンはヤムチャに訊ねる。
「わ、分かるわけねーだろ…そんなの。お前の持ってる機械でさっき測ればよかったじゃないか」
「…あれは、わたしとヤムチャが組み手をする前に既にバッテリーを抜いてある。500万までしか計測できないのでな」
「それを超えるとどうなるんだ?」
「おそらく、電子回路がショートしてチップが故障し、二度と機能しなくなると思う…」
「へー…」
(測定不可能な値になった程度で故障するなんて、なんてデリケートな機械なんだ…)
ヤムチャはスピードガンで野球の球の速さを測るような感覚で物を考えていた。
気を察知して数値化する際に、大量に電力消費でもするのだろうか。
「前のように想像で構わない。ヤムチャ、わたしと最後に地球で戦った時のソンゴクウが500万だとすれば…今はどのくらいだ?」
「うーん…そうだな……うーん……どんなもんだろう…あれから結構経つからな」
ヤムチャは長考を始める。
「多分だけど…スーパーサイヤ人3の状態で、1億5000万以上はあるんじゃないかな…悟空は」
「…いちお…く…ごせんまん…?」
ある程度の数値は覚悟はしていたが、想像した単位と桁すら違っていたことにポカンとするマーリン。

153:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 17:16 lcU.ccGE
【56話】
1億5000万…前のソンゴクウが500万だとしたら、その30倍強くなっているということになる。
「ああ、本当に想像でしかないけど…。お前と戦った時と比べたら、遥かに強くなっているのは分かったろ?」
マーリンもヤムチャの言葉を聞き、マーリンは唸りながら下を向いた。
「……ヤムチャの言っていることが正しければ、普通に修行しては、孫悟空には到底追いつけないことは分かった…」
「はは…さすがのお前もお手上げか」
ヤムチャが笑いながら言うと、マーリンはキッとヤムチャを睨む。
「そうじゃない!ソンゴクウに勝つためには、“普通ではないこと”をする必要があるということだ」
「……例えば…?」
「……。……それは、今考えている」
はぁ、とため息が出る二人。
やる気はあるのだが、どうしていいかが分からない。

しかし、ふとヤムチャが何かに気づいたかのように立ち上がる。
「そういえば…マーリン、お前スーパーサイヤ人になれるのか?」
マーリンは立ち上がったヤムチャの顔を見上げると、やれやれといった表情で答える。
「いや…。誰でも簡単になれるものでもないだろう」
伝説の戦士と言われているスーパーサイヤ人。
彼女は、孫悟空が特別な存在であり、そう易々スーパーサイヤ人になれるものではないと思っていた。
自分がサイヤ人の血を引いているのにも関わらず、スーパーサイヤ人になろうという発想すらなかった。
だが、ヤムチャは意外そうな表情を浮かべる。
「いや…地球のサイヤ人たちは今や全員スーパーサイヤ人になれるぞ…」
ヤムチャのこの言葉に、マーリンも思わず立ち上がった。

154:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 17:20 lcU.ccGE
【57話】
「な…なんだと!?ヤムチャ、それは本当か…?」
「ああ、シルフと同じぐらいの小さなサイヤ人と地球人の混血の子ですら、スーパーサイヤ人になれてるからな」
信じられない表情を浮かべるマーリンだったが、やがて落ち込んだように再び地面に座り込んだ。
「くっ…では、わたしは何故なれないのだ……」
俯いて悔しがるマーリン。
「スーパーサイヤ人は強さ云々じゃなくて、怒りをきっかけに変身できるようになるって聞いた。だからいくら強くても、きっかけがなければずっとなれないんだ…タブン」
ヤムチャは得意げに語るが、どこか信憑性に欠ける感じだ。
「怒り?」
「…悟空の例で話すと、悟空はフリーザに親友を目の前で殺された怒りがきっかけで、スーパーサイヤ人に目覚めたんだ」
「……そうなのか」
「だからマーリンもとりあえず……怒れ!そうすればお前も絶対なれる、スーパーサイヤ人に!」
ヤムチャにそう叫ばれるマーリンだが、困ったような顔をする。
「だが、怒れと言われても…己の感情を自由自在に操るのは難しいぞ…」
「じゃあ、目を瞑って、俺やシルフが誰かに殺されたことを想像してみろ」
「……やってみる…」
マーリンは言われたとおりに目を瞑り、想像を始める。
が、当然ながらなかなか本気で怒ることができない。


「…っ……!」
「…だめか?」
うーんうーん…と唸りながら、1時間ほど目を瞑り続けたマーリンだったが、やがて心が限界にきた。
「…すまない、少し休みたい」
ヤムチャはマーリンの顔色を見る。
少し青白くなっており、あまりいいとは言えない。
体を酷使するより、心を酷使する方が疲れるのだろうか。

155:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 17:22 lcU.ccGE
【58話】
「分かった。こればかりはあんまり無理しても無意味だろうし、少し休むか…」
マーリンがそれに頷くと、ゴロンと二人は横になる。
目の前には、青い空が広がるのみだった。
「ヤムチャ…」
寝転がった状態でマーリンが不安げな声でヤムチャに話し掛ける。
「ん」
ヤムチャは再会してから初めて漏らす、彼女の震えた声に耳を傾けた。
「わたしは…いや、わたしたちはソンゴクウに本当に勝てると思う…か?」
常に強気な彼女にしては意外な質問だったが、ヤムチャは答える。
「勝つか、負けるか…選択肢があると思うか?もう勝つしかないんだよ、俺たちは。少なくとも俺は勝つことしか考えてないぜ。お前もそうだろ?」
「………うん」
ヤムチャが笑顔で答えてくれたおかげで、マーリンも少し安心した。
この男についていけば、間違いなく勝てるはず。
前回もそうだった。
自分に出来るのは、ヤムチャを信じることと、自分の力を信じることだけだ。
二人は再び空を見つめなおす。
「…マーリンは、今までずーっとこの空の先にいたんだよな」
「……?ああ、そうだが…」
「そんなお前が、この宇宙から見たらホコリみたいなちっぽけな星に偶然降り立って、偶然俺と会って、戦って…そんな二人がこうやって隣で寝そべってるんだなーって

考えるとなんか凄いよな。宇宙は広いのにさ」
「…?えっと、何が言いたいんだ」
何が言いたいのか分からないヤムチャに、マーリンは首をかしげながらヤムチャを見つめる。
「……。…とにかく、会えてよかったよなってことだ!」
「そうだな…。自分の運命を憎み続けていたわたしだが、ヤムチャと出会えたことだけは運命に感謝しなければならない…」
マーリンは空を見つめながら素直な気持ちを語る。

156:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/21 17:29 lcU.ccGE

【59話】
戦うことしか出来なかった自分に、ヤムチャは戦いを通じて様々なことを教えてくれた。
そのおかげで、今の自分がある。
ヤムチャが思っている以上に、マーリンはヤムチャに心から感謝していた。
「マーリン」
ボーっとしていたマーリンだったが、ヤムチャの声に気がつくと、自分の顔のすぐ前にヤムチャがいることを確認する。
そして、いつの間にか口と口が静かに重なり合っていた。
「…ん」
二人は、ようやく久しぶりのキスを交わす。
思わず他の事に手が出そうだったヤムチャだが、シルフもそばで寝ていることだし、さすがに自重した。
っていうか、こいつマーリンに似て寝すぎだろ…とキスの最中に心の中でヤムチャはそっと思う。
対照的にマーリンはなんとも言えないこの胸に高鳴りに、自分がどうにかなってしまいそうな気さえしていた。
ほんの10秒ぐらいの時間だったが、マーリンにとってはもの凄く長く感じた。
「…さて、マーリン、気を取り直して特訓だ!スーパーサイヤ人への道はまだ遠いぜ」
「…そ、そ…そうだな。はじめるか」
キスで調子を狂わされたと思っていたマーリンだったが、先ほどよりずっと心が楽になっていることに気づいた。
ヤムチャが自分を安心させてくれたおかげなのだろう。
もしかしたら、それも計算してヤムチャは自分にキスをしたのだろうか?
そうだとしたら、実に凄い男だ…と彼女は再び思った。
「…ありがとう、ヤムチャ」
「何がだよ」
「…ふふ、いろいろとな」
「ふうん…」
マーリンはニヤリと笑う。
ヤムチャも釣られて笑う。
そして二人はマーリンをスーパーサイヤ人にするため、再び特訓に励むのだった。
特訓と言っても、ヤムチャは隣でアドバイスを送るだけだが…。

157:Classical名無しさん
08/12/23 07:15 O04vnwwk
更新乙です。やっぱりおもしろいな

158:Classical名無しさん
08/12/25 10:31 ShTPL/Z2
Meri-kurisumasu

159:Classical名無しさん
08/12/25 21:22 gPU1qno.
サイヤンキラー無印の頃から悟空が悪役に見える

160:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:44 eRGZjAqU
メリークリスマス!
たくさんのコメントや支援書き込み、ありがとうございます。
皆さんからの応援があるから頑張って書いていけます><

>>159さん
それは私も思いましたw
あくまでSaiyanKillerはヤムチャとマーリンが主役なので、
悟空やベジータなどにはそっち路線に行ってもらったほうがストーリーが展開しやすい気がします

161:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:46 eRGZjAqU

【60話】
一方、ピッコロは占いババの元を訪れていた。
神と融合したあとのピッコロには、ちょっとした未来予知能力のようなものが備わっている。
その能力により、ピッコロは具体的に何が起きるかは分からないが、近い将来“悪い何か”が起きると予知をしていた。
そう、セルの出現を地球で一番早く予知していた神のように…。
つまり、ピッコロはその“悪い何か”を占いではっきりさせるために、占いババの元へと単独で乗り込んだのだ。

「ここか…。出て来い、占いババとやら!」
ピッコロが建物の外から叫ぶ。
すると、薄黒い建物の中から、水晶球に乗り、フワフワと宙に浮かびながら占いババが姿を現した。
「なんとまあ…これはこれは、珍しい客がおいでなすった…」
占いババは驚いたようにピッコロに向かって言った。
「…貴様、占いが出来るんじゃないのか?俺が来ることぐらい占いで分かっているものだと思っていたが」
ピッコロはそう言うと、腕を組みながら占いババに向かって近づいていった。
「ふぉふぉ…ここに誰が来るかなどを頻繁に占ったりはせんのでね」
「そうか」
ピッコロはつまらなそうに言葉を返す。
「それにしても、まさかおぬしが単独でたずねてくるとはのう…」
占いババはピッコロが怖いのか、少し距離を置きながら喋っている。
「俺もまさかこんな胡散臭い所に、一人で来るとは思わなかった。…ダラダラ喋るためにここにきたわけではない。手短に言う、地球の近い未来を占え」
ピッコロは真剣な面構えで、淡々と占いババに向かって喋る。
「地球の…未来?お主ともあろうものが、地球の未来が心配なのかね?」
「……つべこべ言ってると後悔することになるぞ。もう一度言うが、俺はダラダラ喋るためにここにきたわけではない」
「わ…分かった!占えばええのじゃろ、占えば!」
ピッコロの威圧感により、占いババはびびってすぐさま占いを開始する。

162:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:46 eRGZjAqU
【61話】
占いババは水晶球から地面に降りると、それに向かって手の平で何かを念じ始めた。
それを黙って見つめるピッコロ。
「ほほほーいほほーいほいホーイ…」
占いババが奇妙な呪文のようなものを唱えると、水晶球に変化が現れる。
透き通っていた水晶球が、白く濁り、何も見えなくなったのだ。
「これ…は………」
占いババは小さく声をあげる。
その頬に、わずかな冷や汗を浮かべて。
やがて、水晶球の濁りは消え、元の透き通ったただの球に戻った。
その水晶球をしばらく見つめていた占いババだが、元からシワだらけだった顔が更に歪む。
「終わったみたいだな。…どうなんだ?」
その表情を見て、ピッコロはただごとではないと思い、占いババに結果を問う。
「……こりゃ…とんでもない事が起きるかもしれん」
「かもしれん、では困る。具体的に何が起きるのか話せ」
ピッコロが強い口調で占いババに結果を話すよう催促すると、占いババの顔は深刻そうなものになり、しばらく間を置いて口を開く。
「…“具体的”には分からん。何も映らんのじゃ」
その呆気に取られるような結論に、ピッコロは占いババに突っかかる。
「なんだと…?ふざけているのか?」
だが、占いババは微動だにもしない。
ピッコロも気付いていた。
こいつはただ単に、ふざけているわけではないということを。
「…ピッコロとやら、よく聞け。今わしは地球の未来をこの水晶球を使って占った。…じゃが、この水晶球に、地球の未来が映らんかった。…この意味が分かるかね?」
「分からん。どういう意味だ」
占いババは青ざめながら、ゆっくりと言った。
「どういう経緯かは分からんが、このままいけば………地球がなくなる…ということじゃ」

163:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:48 eRGZjAqU
【62話】
しばらくの沈黙が流れる。
ピッコロは目を大きくさせながら、占いババを見つめていた。
占いババはそれ以上何も言わずに黙り込んでいる。
「貴様、何を言っている……?」
重い空気の中、ピッコロが沈黙を破る。
「……こんな事が本当に起きるだなんて、わしじゃって信じたくないわい」
この様子だと、占いババが嘘を言っているとは思えない。
そして、ピッコロの中の予想は、確信へと変わって言った。
「…やはり、あの娘……マーリンとやらは、何かしでかしやがるのか……」
占いババに聞こえないように呟くと、ピッコロは続ける。
「おい、貴様。貴様の占いと言うものは確実に当たるんだろうな?これは今から何日後の話だ?」
「今から3週間後ぐらいじゃと思う…。未来予知に関しては、“一番確率の高い未来”を映し出すようになっておる。じゃから、100%とは言いきれないが…地球がやばいことに変わりはないじゃろうな」
「…そうか、分かった。助かったぞ、占いババとやら。悟空たちには俺から伝えておく」
「ああ…そうしてくれ。わしは近いうちに、地球以外の場所に避難するとするかのう…」
「…好きにしろ」
ピッコロはそう言うと、宙に飛び上がり、高速で悟空たちの家へと向かっていった。。
「…チッ。だがどうすればいい……悟空に言ったところで、何が起きるか具体的には分からんのでは、手の打ちようが…」
ピッコロは高速で移動しながら、独り言を呟く。
その目には、明らかな焦りの色が浮かんでいた。

164:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:49 eRGZjAqU
【63話】
そして、ここはパオズ山。
孫家は天下一武道会に備え、ちょうど今日から本格的に修行を始めようとしているところだった。
「今日は日曜日だから、一日中修行が出来ますね。父さん」
悟飯が家の中で私服から胴着に着替えながら、悟空に話しかける。
「そうだな、悟飯。とりあえず、着替え終わったら準備運動すっか。にしても…昨日悟飯がデートなんてしなけりゃ昨日から修行できたのによー」
悟空は屈伸しながらニヤニヤして悟飯に言う。
「す、すみません…ビーデルさんが忙しくて昨日ぐらいしか時間とれなかったもので…」
その率直過ぎる言葉に、顔を赤らめる悟飯。
「ぼくも一緒に修行するー!少年の部はなくなったから、一般の方で出るんだ!」
悟天は腕立て伏せをしながら、気合十分といった感じだ。

スタッ!

そこへ静かにピッコロが降り立つ。
「え?ピ…ピッコロさん!?どうしてここに?」
降り立ったピッコロの元に、悟飯が一番に駆けつける。
「オッス、ピッコロじゃねぇか。天下一武道会に備えて、オラたちと修行する気になったのか?」
悟空も遅れてのそのそと歩み寄る。
「…武道会なんぞに興味はないが、話があってここまで来た」
「なんだ?改まって」
「実はだな……――」
ピッコロは占いババから仕入れた情報を、全て悟空、悟飯に話す。

165:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:53 eRGZjAqU
【64話】
「―という訳だ。マーリンという娘が鍵を握っているだろう。俺の嫌な予感が始まったのが、ヤツが地球に来ると知った辺りからだからな」
「地球が…なくなるって…本当なんですか?ピッコロさん…」
悟飯はいきなり突きつけられた最悪な未来にうろたえる。
悟空はそれを聞いてもあまり驚いた表情は見せず、ただ下を向いて何かを考え出した。
「占いババとやらがそう言っているんだ。ただ、もっとも確率の高い未来というだけであって、100%地球がなくなるというわけでもないらしいが…」
「なくなるにしろ、なくならないにしろ、ばっちゃんがそう言ってんならどっちにしろ地球がやべぇことに変わりはねぇ。けどよ、それだと抽象的過ぎて解決法がねぇんじゃねーか?」
「その通りだ。俺が今のところ思いつくのは、非道かもしれないが…取り返しがつかなくなる前に、マーリンとかいう小娘を始末するという方法ぐらいだな…」
ピッコロは提案を出すが、その提案に、悟空や悟飯が賛成するはずもなかった。
尤も、ピッコロも本気でそんなことをするつまりなんて更々ない訳だが。
「ピ、ピッコロ…さすがにそりゃねぇよ…。第一、今は別にワリィことしてねぇのに手ぇ出すってのはオラにはできねぇ…」
「そうですよ!それはあんまり過ぎます。ぼくたちと一緒にもっと他の方法を考えましょう、ピッコロさん!」
「…チッ…相変わらず甘いな、貴様ら親子は」
ピッコロは一回舌打ちし、続ける。
「それでは孫、お前はどうすればいいと考える」
ピッコロは意見を悟空に求めた。

166:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:54 eRGZjAqU
【65話】
「難しいことはよくわかんねぇけどよ…もしマーリンが原因なら、マーリン以上にオラたちが強けりゃ問題ねぇんじゃねぇか?」
ピッコロの問いに悟空はすぐさま答えた。
「ぼくもそう思います…。それに、果たして本当にマーリンさんに原因があるのでしょうか?」
悟飯も悟空の意見を肯定する。
そして、その言葉にピッコロはハッとした。
「…確かに、俺の勘違いだということもあり得るな。だが…もし原因がヤツではないとしたら一体他に何が……」
「さっきチラッとあいつを見てきたけど、オラや悟飯の方が、だいぶパワーは上だったぞ。あいつが元凶とは思えねぇな」
「…忘れたわけじゃあるまい。10年ほど前、ヤツが1ヶ月という短期間で前のお前並みの強さに伸し上ったことを。今の強さは参考にならん」
「……まあな」
悟空、悟飯、ピッコロの3人は同時に深く考え込む。
悟天も最初は耳を澄ませて聞いていたが、会話についていけず、暇そうに腕立て伏せを再開していた。

「で…ピッコロ、地球がなくなる時期ってのは今からどんぐれぇ先の話なんだ?」
悟空がピッコロに質問する。
「役3週間後…だと聞いた。そう遠い話ではないぞ」
「そうか、じゃあ天下一武道会の後ってことだな…」
悟空はそう答えると、再び屈伸を始めだした。
「おい、孫…」
能天気にも見受けられる悟空の行動に、ピッコロは何かを言いかける。
だが、悟空はピッコロの言葉を気にせず準備運動を続けていた。

167:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:55 eRGZjAqU
【66話】
「考えたってはじまらねぇさ。オラはとりあえず、うんと修行する。そして誰にも負けねぇぐれぇの強さになる!それじゃだめか?」
悪く言えば楽観的過ぎ、良く言えばとてもポジティブな悟空ならではの結論に、ピッコロの口元が緩む。
「……ケッ、貴様らしい結論だな。やはり、そうするしか手はないか」
「ピッコロさんも一緒に修行しましょうよ、せっかくですし!」
悟飯は一大事だと言うのに、ワクワクしているように見える。
やはり、このへんは悟空の血を引いているのだなとピッコロは思った。
「…フン、いいだろう。だが勘違いするな、俺は別にお前らと修行がしたいわけでは―」
「ピッコロー、そうツンツンすんなってー!それよりとっとと始めようぜ!」
こうして、孫家とピッコロの修行が始まった。
ピッコロが感じ取った“悪い予感”とは一体何なのか?
地球危機の原因は本当にマーリンなのか?
元凶は分からないまま、彼らはひたすら修行に打ち込みはじめた。

168:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:57 eRGZjAqU
【67話】
「くっ……ぎっ…」
それから更に1時間経っていた。
動いてもいないのに、マラソンをした後のようにマーリンの体から大量に水滴が滴り落ちてゆく。
「だめだだめだ!ただ単に気を上げてどうする!それじゃあ疲れるだけだぞ」
ヤムチャの厳しい指摘が入る。
「いいか?気を上げることはさほど重要じゃない。それより何かにブチ切れるんだ。その怒りがお前をスーパーサイヤ人にする」
ヤムチャはさっきから何度も同じことを言っていた。
スーパーサイヤ人に関する知識が、それくらいしかないからだ。
だが、大よそ間違っているわけでもない。
「分かっている…!分かっているのだが……っ…」
マーリンは全神経を集中して怒ろうとしているが、特に憎く思っている相手もいないため、非常に難しいものだった。
「………よし!とりあえず休憩だ。髪の毛がゾワって一瞬逆立つときがあったから、多分もうちょいだな」
ヤムチャから休憩の合図が出ると、マーリンはバタリと倒れた。
「お、おい…大丈夫か?」
「…問題ない。それより一秒でも早くスーパーサイヤ人になれなければ…まだ続けるぞ、ヤムチャ!」
「無茶だ。とりあえず今は休め、体の傷は治るが、心が壊れちまったら取り返しつかないぞ」
ヤムチャはそう言いながらマーリンの背中をぽんぽんと叩いた。

169:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/25 23:59 eRGZjAqU
【68話】
さっきまで寝ていたシルフは既に起きていて、両親が行っている不可解な修行をジッと見つめていた。
ただ目をつぶりながら何かを考えている母と、その隣で腕を組みながらそれを見守っている父。
余りにも不可解なため、何をしているか質問したのだが、『ソンゴクウを倒すための修行』としか教えてくれなかった。
悟空よりマーリンやヤムチャの方が絶対に強いと信じてやまないシルフにとっては、当然納得のいくものではない。
「ねー、お父さん。修行しなくてもあいつに勝てるのになんでこんなことしてるの?」
シルフが健気にヤムチャに質問する。
「…そ、それはなあ…」
父としては、子にここまで信じられたら、自分は悟空より弱いだなんて中々言い出しづらい。
それを聞いたマーリンは、乱れていた髪をかきあげるとシルフに近づいていった。
「シルフ、ソンゴクウはお前の想像している以上に強い男だ。今のままでは、わたしもヤムチャも勝てない。だからこうしている」
「え……お母さんたちが…あの男に勝てない?…どうして?」
「……ソンゴクウは、お前が生まれる前に、わたしが辛うじて倒したという話をしただろう?」
マーリンはシルフの前にしゃがみこみ、目線を合わせて言った。
「うん、でもお母さんはその時よりぜんぜん強くなったって…」
「確かに、わたしはその時より遥かに強くなったが、ソンゴクウはそれ以上だった。ヤツは前あった時より30倍ほど強さが増している…この意味が分かるな?」
シルフはそれを聞くと、驚いた顔になる。
「だって…だって…いろんな星を回ったけど、お母さんより強いヤツなんて一人も今まで……」
「シルフ…宇宙は広い。今までわたしが倒してきた者など、ただの雑魚に過ぎなかったということだ。少なくとも、この星の視点からだとな…」
残念にするシルフを見て、心が締め付けられるような思いがしたヤムチャ。
「そっか……でも、最後の勝つのはきっとお母さんかお父さんだよね?」
「それは、約束しよう。そのためにも、わたしたちは一秒たりとも無駄に出来ないんだ…」

170:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 00:04 Vq.Wea2g
【69話】
マーリンはそう約束をすると、拳を強く握り締め、打倒ソンゴクウを誓うように空を見上げた。
「…うん!がんばってね…お母さんも、お父さんも!応援するから!」
やはり、シルフは自分たちを信じきっている。
この純粋な期待を裏切るわけにはいかない…絶対に。
黙って会話を聞いていたヤムチャだったが、そう心の誓った。

それに…ヤムチャを心から応援してくれる者は、シルフだけではない。

「―様ー!ヤムチャ様ぁー!」
少し遠くから声が聞こえる。
3人はまっすぐと飛んでこちらに向かってくる者に一斉に視線を向けた。
当然ながら、ヤムチャはすぐにその声の主の正体に気付く。
「プーアル…!」
ヤムチャは思わずその正体の名を叫んだ
「プーアル……?知り合いか?ヤムチャ」
マーリンがヤムチャの言葉に反応し、ヤムチャに尋ねた。
「知り合いも何も、俺と長年ずっと一緒に過ごしてきたパートナーだ、あいつは」
自慢げにプーアルのことを語るヤムチャだったが、マーリンの表情はあまり穏やかではなかった。
「パートナー…恋人?」
マーリンは少し声のトーンを落としながらヤムチャに言った。
「ば、ばか!どう見たって恋人じゃないだろ…そもそも地球人じゃなくて猫だし」
「そういう意味だと、わたしも地球人ではないが…」
マーリンは不信そうな表情を浮かべ、ヤムチャを睨むようにして立っていた。

171:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 00:05 Vq.Wea2g
【70話】
「……あのなあ」
「ヤムチャ様ぁーー!今戻りました!」
プーアルは飛んできた勢いで、小さな体ながらそのままヤムチャの顔面にに抱きつく。
「ご、ご苦労だった、プーアル…」
抱きついてきたプーアルの頭をよしよしと撫でるヤムチャ。
しばらくしてからプーアルがヤムチャの顔から離れる。
「あれ…ヤムチャ様、そちらの女性とお子さんは…一体?」
プーアルは今気付いたのか、ようやくその話題に触れた。
「ああ…紹介しようプーアル。こっちは俺の嫁さんでマーリン。で、これが俺たちの子供、シルフだ」
「……!?……え…?ヤムチャ様、結婚されてたんですか!?」
ヤムチャの言葉を聞いて、思わず目が点になるプーアル。
それもそのはず、長い間ヤムチャと共に過ごしてきたのに、ヤムチャに奥さんがいることに全く気付かなかったからだ。
だが、プーアルが気付かなかったのも無理はない。
「ほら、前に話したろ、人造人間との戦いに備えて俺が一人身で修行していた時に出会った女の子の事。それがこのマーリンってわけだ。で、昨日ドラゴンボールを使っ

て地球まで呼び寄せた」
「あ…!そんな話ありましたね。ボクはその場にいなかったからいまいち記憶が曖昧で…でもお子さんは…いつ…?」
「んーと…なかなかプライベートな質問だな。まあ、その時に精神と時の部屋で…ちょっとな」
自分が知らなかったヤムチャを取り巻く事実を告げられ、プーアルは素直に驚くしかなかった。
だが、その驚きの表情もやがて喜びに変わる。
なんせ、結婚とは長年主人であるヤムチャが追い求めていた夢だったのだから。

172:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 00:09 Vq.Wea2g
【71話】
「そうなんですかぁ……。ヤムチャ様、おめでとうございます!やっと結婚できましたね!」
「あ、ああ…はは、ありがとな。式は挙げてねーけど…」
「さっそく結婚式あげましょうよー!ボクが手続きとかは全部やりますから!」
プーアルはまるで自分のことのように張り切っていた。
「そうだな…天下一武道会が終わったら式でも挙げてみるか」
ヤムチャは呟くように言った。
「え、ヤムチャ様…天下一武道会に出られるんですか?」
「ああ、今回は出るつもりだ」
「それじゃあ、いっそう修行に身を入れるしかないですね!」
マーリンとシルフは、ヤムチャとプーアルの話の内容自体はあまり気にしていなかったが、いきなり現れたこの青い猫がヤムチャとやたら親しげで、なんともいえない複雑な心境だった。
あの猫はどう見ても戦士ではないが、一体ヤムチャのなんなのだろう?
そんな疑問がマーリンには募る。

「で、プーアル。カプセルコーポレーションに修理を頼んだアレはどうだ?直ったのか?」
「あ…!そうでした、今日はこれを届けに来たんですよ」
そう言いながらプーアルはカプセルを取り出すと、ボタンを押下して地面に放り投げた。
すると、砂煙が舞い、何もなかった荒野に、カプセルの何千倍はあろうかというかなり大きな宇宙船のようなものが姿を現す。
「……す、すごい…!」
昨日ヤムチャからカプセルを見せてもらったマーリンはさほど驚かなかったが、シルフは口をあけながらその宇宙船を見つめていた。
「随分と綺麗になったな。大きさも前より大きくなって中も広そうだ。最大重力は何倍って聞いている?」
「えっと、重力はヤムチャ様の希望で一応1000Gまで設定できるみたいですが…とても心配していましたよ、ブリーフ博士」
「お、ようやく1000Gか。確かに今の俺では立って居られるかすら微妙なところだけどな…」
ヤムチャは顔を顰めるが、どこか嬉しそうにも見える。

173:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 00:10 Vq.Wea2g
【72話】
二人の会話を黙って聞いていたマーリンだが、ヤムチャのそばまで歩み寄ってきた。
「ヤムチャ、これはなんだ?一見宇宙船のように見えるが…」
マーリンは宇宙船を手で軽くコンコンと叩きながらヤムチャに尋ねる。
「これは重力発生装置だ。まあ、元々宇宙船だったんだけど、今は宇宙船としての機能はついていない。純粋に重力を発生させるだけだ…最大1000倍のな」
「なるほど。…1000倍……ヤムチャとわたしが修行したあの不思議な部屋で、確か10倍だったような…」
「でも、あの時はそれとは別に錘(おもり)もつけていたし、体感重力は100倍ぐらいだろうな」
昔、ヤムチャとマーリンは精神と時の部屋で修行をしたことがある。
その時は、10倍だけの負荷じゃ足りないと思い、手足に錘もつけて修行を行っていたのだ。
「それでは、ボクはこれで……」
プーアルは用が済んだからか、その場を去ろうとした。
「ちょっと待て。どこに行くんだ?」
逃げるようにこの場から離れていこうとするプーアルを、ヤムチャが引き止める。
「…西の都にでも、戻ろうかなーって…思いまして……」
「どうしてだよ、プーアル。ここにいろよ」
「そうしたいのは山々なのですが、なんというかその……いいんですか?」
申し訳なさそうな表情を浮かべるプーアルに、ヤムチャは笑いながら言った。
「はは、いいんですかって…何言ってるんだお前。まさか俺がマーリンたちと一緒にいるからって、気を遣っているのか?」
「……ええ、その方がいいのかなと思いまして…」
「水臭いぞ、プーアル。むしろ俺はマーリンたちにお前のことを知ってもらいたいし、お前にもマーリンたちのことを知ってもらいたい。ちょうどいい機会だし、お互い自己紹介しようか、ほら」
ヤムチャはプーアルを捕まえると、マーリンたちの前に座らせた。

174:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 00:16 Vq.Wea2g
【73話】
「…えっと、初めまして、マーリンさん、シルフさん。ボクはプーアルと言います。特技は変身です」
「ぼくはシルフって言うんだ。よろしく、ぷーあるさん」
「…マーリンだ。ヤムチャが世話になっている」
さっそくシルフはプーアルの頭を撫でたりしてかわいがっていた。
マーリンは腕を組みながらプーアルを見つめる。
その様子を見て、うんうんと一人で頷くヤムチャ。
「ちなみに、プーアルは俺の古くからの親友だ。悟空たちと会う前から一緒に居たからな」
「あはは!シルフさんくすぐったいですよー!」
プーアルはシルフに擽られて笑い転げていた。
その様子を見てヤムチャは腹を抱えて笑っている。
息子はすっかりプーアルとなじんだみたいだが、マーリンは、未だに複雑な気分だった…。

シュビッ!

「……!」
ヤムチャたちは、再び後ろに大きな気を感じた。
だが、この気は悟空とは違う。
振り向くと、そこには明らかに異世界の人間と思われる人物が立っていて、こちらを見ていた。
悪い気ではないので、悪人ではないと思うが…一応警戒を始める二人。
はしゃいでいたプーアルとシルフも途端に静かになる。
変わった服装のその男は、二人に向かってしゃべり始めた。

175:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 00:51 Vq.Wea2g
ふう…。
誤字脱字が確認しただけで2箇所ありました。
疲れているのかもしれません。

続きはまた明日にでも!

176:Classical名無しさん
08/12/26 01:40 e3VqxY06
初めて書き込ませていただきます。SaiyanKillerを以前読ませていただいて、続編があればいいのにと
思っておりました。書いている方が違うということですが、SaiyanKiller2もとても
おもしろいです!楽しみにしてますので、がんばってください!!

177:Classical名無しさん
08/12/26 19:12 sFDI0N2k
>>176
ageてるのは故意なのか?それともsage方が分からないんですか?今度から気をつけてください。

それとマーリンがスーパーサイや人3の悟空を超えるのも無理ではないか?
老界王神に潜在能力を開放してもらって悟空を超えるのなら分かるが
悟空は何年もかかってスーパーサイヤ人3になれたのに
マーリンはそれを短期間で超えるってのはおかしいよ。
悟空を超えるのはかまわんけど悟飯やゴテンクスは越えないでくれよ。
悟天とトランクスは元々すごくてフュージョンしてさらにとびっきりの戦士になった。
だから短期間でスーパーサイヤ人3になれたのは分かるけどマーリンはフュージョンもしないで悟空を超えられるか?
悟飯は潜在能力がたくさんあってそれを限界以上に老界王神に引き出してもらってゴテンクス以上になったんだし・・・
だから普通の修行では悟飯とかを超えないでくれよ。潜在能力を開放してもらうってのは分かるけど。

なんか悪く聞こえたらすみません。これだけは言いたかったので
悪く聞こえたら無視していいので頑張って下さい。

178:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 20:59 Vq.Wea2g
【74話】
「…そんなに驚かないでください。怪しい者ではないですから。はじめまして、ヤムチャさん、マーリンさん。あなたたちの今日の行動、ずっと見させてもらいましたよ」
「やれやれ、今日はやたら背後に人が現れる日だな」
ヤムチャはそう声を漏らすと、やけに丁寧に話す男に、半信半疑ながら近寄っていく。
「俺たちの名前を知っていてくれて光栄だ。だが、まずあんたは誰だ?俺の知り合いには見覚えないぜ」
「…今の技は瞬間移動か…?いきなり背後に気配を感じたが…只者ではなさそうだな」
ヤムチャとマーリンは同時に質問すると、男は申し訳なさそうに答える。
「申し遅れました。わたしは東の界王神です。そしてマーリンさん、あなたの言うとおり今の技は瞬間移動ですよ。悟空さんのものとは少し違いますがね」
男が全て言い終わる前に、ヤムチャは腰を抜かしてそっくり返った。
そう、ヤムチャと界王神は面識がなかったのだ。
「あ…あ、あ、あなたが、か…界王神…様!!??」
「ヤムチャ…なんなのだ、カイオウシンとは…。ソンゴクウの知り合いのようだが」
「…今使ってる界王拳を教えてくれたのが、界王様。その上にもっと偉い人がいて、それが大界王様だ。で…更にその上に界王神様という宇宙で一番偉い人がいるんだ。それがこ

の人ってわけ」
「なるほど…よく分からないが宇宙の偉人なのだな」
マーリンは界王神を見ながら答えた。
ヤムチャは起き上がると、マーリンより前に出て界王神の耳元で囁く。
「か、界王神様…今日の行動を全部見てたって…もしかしてキスシーンも…?」
「え、あ…すみません、そんなことをするとは思わなくて、つい見ちゃいました……」
それを聞いて顔を真っ赤にするヤムチャだが、マーリンからはただコソコソと内緒話をしているようにしか見えなかった。

179:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:00 Vq.Wea2g
【75話】
「それで…界王神様。一体俺たちになんの用が…?」
ヤムチャはようやく真剣な顔付きになり、話を始める。
界王神も真面目な顔付きになった。
「はい、実は…界王神界におられる、大界王神様がお二人を見ていて『ここにつれてこい』と言っておりまして…早い話なのですが、わたしについて来ていただけませんか?悪い

ようにはしませんよ」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせる。
「大界王神様…悟空から聞いたことがある…。なんとかソードに封印されていたっていう例の…?」
「はい、そうです。直接話したほうが早いと思うので、とりあえず私の肩へ手を…」
「は、はい!」
ヤムチャは界王神の肩に手をあてたが、マーリンはそうしなかった。
「マーリン…?」
「マーリンさん、どうしました?」
「あいにくだが、わたしはソンゴクウを倒すための修行がある。私用ならソンゴクウとの戦いが終わったあとにしてもらいたい」
マーリンはきっぱりと答えた。
「マーリン…!界王神様に向かってなんてこというんだ…あはははっ…あーもうすいません界王神様、こいつちょっと寝ぼけているみたいで…」
ヤムチャは慌ててマーリンの口を押さえるが、タイミングが遅すぎる。
そんな二人のやり取りを見ていて、界王神はニヤリと笑った。
「マーリンさん、大丈夫です。今あなたたちが何をしようとしているか、全て知っていますから。それを知った上で、ついてきて欲しいと言っているのです」
妙に自信ありげな界王神の回答に、最初はついていく気はなかったのだが、マーリンは少し迷いはじめた。
「え…そうなんですか?じゃあ、俺たちが悟空を倒そうとしていると言うことも…」
「もちろん知っていますよ。今日の行動を見ていたと言ったじゃないですか。それより…今は一刻一秒も惜しいのではないですか?強くなるためにも…」
“強くなるため…”この一言が、マーリンにとって決定打だった。

180:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:04 Vq.Wea2g
【76話】
「…ヤムチャ、気が変わった。この人についていこう。きっと、何か考えがあってのことなのだろう」
「あ、ああ…」
二人は界王神の肩にしっかりとつかまった。
それを見て、プーアルは慌てて重力発生装置を元のカプセルに戻す。
そしてヤムチャの肩にプーアル、マーリンの腰にシルフもしっかりと捕まった。
界王神は再び軽く微笑む。
「それではいきますよ………カイカイ!」
界王神が奇妙な呪文を言い放ったと思うと、4人と1匹は地球上から姿を消した。

―ここは界王神界。
「さ、つきました」
さっきまで見ていた辺り一面の荒野が嘘のように、緑の草原が広がる。
その景色はとても自然が美しく、まさに界王神界という名に相応しい世界だった。
「ここが聖地・界王神界か…」
ヤムチャは声を漏らす。
「ヤムチャ、あそこに人がいるぞ」
隣にいたマーリンが数十メートル先を見ながらヤムチャに話しかける。
ヤムチャはその視線の方向に首を向けた。
すると、そこには一人の老人が立っていた。
その老人は界王神と同じような服装をしている。
ということは、この人が…?
「あなたが…大界王神様ですか?」
ヤムチャは老人に恐る恐る質問する。
「うむ、いかにも。こやつの15代前の界王神じゃ。よくきたのう、ヤムチャとやら…と、そこのギャルよ」
大界王神はほんの数秒だけヤムチャを見ていたが、その視線はすぐにマーリンだけに集中していた。
(この人…武天老子様と同じタイプだ…)
その様子を見て、ヤムチャは一瞬で悟った。

181:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:05 Vq.Wea2g
【77話】
軽い足取りで大界王神はヤムチャたちのほうへ近づいてくる。
「…ぎゃる?それは、わたしのことを言っているのか?」
目の前までやってきた大界王神にマーリンが質問する。
「お前以外にギャルはおらんじゃろう…ぬふふ」
そう言ってやらしい目つきになる大界王神。
マーリンはそれを無視するかのように、キリッとした目で大界王神を見つめる。
その鋭い視線に大界王神もすぐに気付いた。
「マーリンとやら…実に良い目をしておる。その何かを信じて疑わない目…目標のためには妥協を許さない目…そして、絶対に諦めない目じゃ」
目を見ただけで、大界王神はマーリンの性格を全て当てて見せる。
さすがに大界王神だけあって、ただのエロ爺ではないな、とヤムチャは思った。
「…大界王神様、さっそく彼らにご説明を…。地球の大会まで、残り2週間しかないみたいなので、あまり時間がありません」
ヤムチャたちを地球からここまで連れてきた方の界王神が割って入る。
「まあまあ、そう急かすでない…。とりあえず、お主はお茶でも入れて来るんじゃ」
「は、はあ…かしこまりました」
大界王神に命令され、界王神はお茶を入れに行った。
界王神ともあろうものが、地味にお茶入れをしているという光景にヤムチャは笑いそうになったが、どうにか堪える。
「さて…お茶はまだじゃが本題に入ろうかの」
大界王神は二人の前に立つと、背を向けて話始めた。
「…わしが今日、偶然地球を見ておったら、平和なのにも関わらず、大きな力と力が衝突しておった」
「俺たちのことですか?」
ヤムチャが間髪いれずに聞き返す。

182:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:06 Vq.Wea2g
【78話】
「うむ。何でお主らを呼び出したかと言うと、お主らが戦っている様子が目に入ったからなんじゃ」
「この星から…わたしたちを見たのか?」
マーリンが質問する。
この世界がどこだかは知らないが、地球とは明らかに別世界なのは確かだ。
とすると、ずっとここにいては自分たちが戦っていた様子も見れるわけないはず。
ならば、当然どうやって戦っている様子を見たのだろうかという話になる。
「わしの目は神眼で、全宇宙どこでも見渡せる。それに、この水晶球で見ることも可能じゃ」
大界王神は地面に転がっていた水晶球を指差した。
「例えば……ほれ、悟空たちじゃ。今は必死に修行しておる」
マーリンとヤムチャ、それにシルフとプーアルは小走りでその水晶球に駆け寄り、それを見つめた。
そこには確かに悟空や悟飯がパオズ山で修行している姿が映し出されていた。
「へー…テレビみたいだな、これ。ていうかピッコロも一緒なのか」
ヤムチャは感心したように言う。
その水晶球を見て、何故このような映像が映し出されるのか原理は分からないが、一応マーリンも納得する。
「なるほど…不思議な現象だが、世界中どこでも見渡せると言うのは事実のようだな」
「でも、大界王神様…偶然目に入ったってだけで、俺たちをここに?」
ヤムチャは続けて質問を重ねる。
「……もちろん、最初はその気はなかったんじゃが……悟空とのやり取りを見て、賭けてみとうなったのじゃよ、お主らに」
大界王神は神妙な顔付きになる。
「俺たちに…賭けてみたくなった?」
「あれだけの差を前にも、飽くなき向上心を持ち、何より“強さ”に欲があるお主らに、賭けてみとうなったんじゃ。時代が変わる瞬間を見たいと思わんかね?」
大界王神はヤムチャたちに何かを期待しているのか、気持ちを昂揚とさせながら喋る。

183:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:08 Vq.Wea2g
【79話】
「…話が見えません。どういうことでしょう?」
ヤムチャは焦っているかのように、核心に迫ろうとする。
大界王神は一息おき、ヤムチャたちに言った。
「…オホン。では、まずお主達に聞こう…今より強くなりたいかね?」
「はい、もちろんです」
「ああ、聞くまでもない」
ヤムチャとマーリンは大界王神の問いに即答する。
「……悟空たちを、倒したいかね?」
さっきより重い口調で大界王神は言う。
「……はい」
「…そのつもりでわたしは修行している」
二人はそれに対してかみ締めるように答えた。
大界王神はヤムチャとマーリンの顔を交互に数回見ると、ニコッと笑い再び口を開く。
「よろしい。お主たちを強くしてやろう」
「「…!?」」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせた。
強くしてやろうと言われても、痩せ細ったこの老人が、自分たちに一体何が出来るのだろう?
二人とも大体こんなことを考えていた。
「つ…つまり、大界王神様が直々に稽古をつけてくださるんですか…?」
ヤムチャは不安そうに大界王神に聞いた。
「稽古?そんなもんこの老体には無理に決まっておろう。それに、時間も足りない」
大界王神は首をゆっくりと振りながら断言した。
「じゃ、じゃあ一体……?」
「潜在パワーを引き出すのじゃよ。それで、お主達は今の何倍も強くなる」
大界王神は微笑みながらヤムチャとマーリンに向かって話す。
「潜在…パワー……?」

184:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:09 Vq.Wea2g
【80話】
「そうじゃ。要するに、眠っている力というやつじゃな。わしはそれを引き出すことが出来る」
ヤムチャはてっきり稽古をつけてくれるとばかり思い込んでいたので、予想外の大界王神の言葉に驚いていた。
それに、果たして自分には潜在能力…つまり、使わずに眠った力なんてあるのだろうかと疑問も抱く。
今備わっている顕在能力でさえ、限界を超えるぐらいの強さを身に付けたつもりなのに、今の何倍も強くなると豪語されては信じるほうが難しい。
仮に潜在能力があったとして、それを引き出したところでも、悟空たちと対等以上の実力になれるとも考えにくいのではないだろうか。
「…そんなことが可能なのか?」
マーリンも信じられない様子で界王神様に言った。
「ほっほ、わしにかかれば余裕じゃよ。見たところ、お主ら二人ともかなりの潜在能力が眠っておるのう…実にもったいないわい」
大界王神は笑いながら答える。
「大界王神様、お茶が入りました。ヤムチャさんたちもどうぞ」
「ああ、ご苦労じゃった」
大界王神は例を言うと、湯飲みを受け取りお茶を啜り出す。
どうやらプーアルとシルフは界王神の手伝いをしていたみたいで、プーアルからヤムチャ、シルフからマーリンに同じようにお茶が渡された。
しばらくお茶を飲んでいた大界王神だったが、半分ぐらい飲み干すと再びヤムチャたちに向き直る。
「で、どっちからやるんじゃ?わしはいつでもいいぞい」
大界王神は飲みかけのお茶を地面に置きながら、ヤムチャたちに質す。
「…どうする?マーリン」
ヤムチャは小声でマーリンに言った。
「そのパワーアップはどれぐらい時間がかかるのだ?」
その質問に大界王神が答える。
「うーむ、そうじゃな…個々の潜在能力の度合いにもよるが、儀式に5時間、パワーアップに20時間ってところじゃ。その間パワーアップを受けている者には、わしの目の前で座

ってもらうことになる」
「な…ながっ!」
ヤムチャは思わずいつものノリで突っ込んでしまった。

185:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:11 Vq.Wea2g
【81話】
「思った以上に長いのだな。そういうことなら、ヤムチャが先に受けてくれるか?わたしはその間一人で修行している。スーパーサイヤ人にもならなければいけないしな…」
マーリンは、ヤムチャに先に受けるように促す。
「ああ、分かった。マーリン、修行頑張れよ…期待しているからな」
「ふふ…こちらもパワーアップした後のヤムチャがどれほど強くなるかが楽しみなものだ」
言葉を交えた後、二人は小さく拳と拳を合わせると、お互い背を向け違う方向に歩み出した。
ヤムチャは大界王神の方向へ、マーリンは界王神の方向へとそれぞれ向かう。
「…それじゃ、大界王神様。…俺からお願いします」
ヤムチャは深く一礼をする。
「ふむ。ヤムチャからか、よかろう。じゃ、そこに座れ」
ヤムチャは言われたままに、その場に座り込む。
「よし、始めるぞい!…フンフンフーン♪フフーンフーン♪フフーンフフフンフン♪ヘイヘイ!」
何を思ったのか、大界王神は唸りながらその場で踊るような動きでヤムチャの周りをクルクルと回り始めた。
「…大界王様……パワーアップの方は一体……?」
「静かにしとれ!もう始まっておるぞ!フフーンフン!」
「あ…は、はい…」
大界王神の不可解な行動に、この人酒でも入ってるんじゃないかとヤムチャは疑ったが、大人しくしていることにした。
いよいよ、大界王神によるヤムチャの修行(?)が始まった。

186:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/26 21:16 Vq.Wea2g
>>176さん
ありがとうございます。
前の作者さんのように、絶妙な臨場感溢れる描写は
中々出せませんが、出来る範囲で頑張ります。
完結まではまだまだかかりそうですし、
更新ペースも速いとは言えませんが、
どうか、まったりと見守っていてください。

>>177さん
長々とありがとうございます。
この話を書くにあたって、一番難しそうだなと思ったのがパワーバランスなんですよね。
で、本題ですが、悟空や悟飯、ゴテンクスをマーリンが超えるのは無理なのではないか?とのことですが、
小説の中でマーリンが「普通にやっていては到底無理」とこっそり複線を出しています。
それが、結果的にこういう方向になったのですけれどね。
ちなみに、老界王神による潜在能力の開放については、書き始めの段階から
パワーバランスを調整する要因としてずっと考えていました。
それを、ちょうど界王神登場シーンを書く前のこのタイミングで言われてしまったので、
あまり言うことがないのですが…。
分かっていただきたいのは、>>177さんの助言によって、
「界王神の登場」という描写を追加し、今作品を矯正したわけではありませんので、
ご理解いただけたら何よりです。


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