たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27at ENTRANCE2
たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27 - 暇つぶし2ch1:Classical名無しさん
08/09/30 23:26 1fzq/IvM
~狼牙風々拳炸裂!! 勝つのはオレだ~

エーックス・・・
漫画界有数のヒット作品、ドラゴンボール。
その登場人物の内に他の追随を許さぬ最低のヘタレが居た。
そのヘタレに、わずかばかりでも活躍の場を・・・
しかし、そのあまりのヘタレさは人類の想像力の限界を遥かに超えていた。
あまりにもお留守な足元、雑魚キャラの自爆で道連れ、恋人を寝取られる甲斐性の無さ。
2ch中でヘタレの代名詞としてネタにされてゆく日々。
立ちはだかる「戦闘力のインフレ」という難敵。

誰もが「ヤムチャ」の2ch語化を覚悟した。
だが、そんなヤムチャにせめて妄想の中だけでも活躍させてやりたい…
ヤムチャを最もネタに使い、そして愛した彼らがこの困難に、立ちむかったのだ。

これは、少年漫画史上最も困難な創作に立ち上がった男たちの物語である。
※ヤムチャ以外の小説・ネタも大歓迎!おまえらも妄想爆発させようぜ?
【前スレ】
たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart26
URL 不明

【小説作品保管庫】
URLリンク(yamnov.hp.infoseek.co.jp)
【お勧め作品】
URLリンク(yamnov.hp.infoseek.co.jp)
【過去ログ倉庫】
URLリンク(yamnov.hp.infoseek.co.jp)


2:Classical名無しさん
08/10/01 00:33 X2CZOy.2
>>1
そして2get

久々のたまヤムスレでオラわくわくしてきたぞ

3:Classical名無しさん
08/10/01 21:53 X2CZOy.2
age

4:Classical名無しさん
08/10/05 19:53 sgx8/PU.
Saiyan Killerの続き書いていいですか?

5:Classical名無しさん
08/10/13 00:04 fEFbiM5Q
l

6:Classical名無しさん
08/10/24 23:59 80Ao8uwI
チェク

7:Classical名無しさん
08/10/25 22:44 CHiPoebg
URLリンク(www.geocities.jp)

ヤムチャのお話 編集きたねー

8:Classical名無しさん
08/10/26 23:46 O2pWojhs
スレリンク(news4vip板)

9:Classical名無しさん
08/11/01 13:16 5JHuknU2
まとめサイトの作品オモシレーw俺もなんか書こうかな

10:Classical名無しさん
08/11/01 14:15 5JHuknU2
――エイジ789
 孫悟空が『究極のドラゴンボール』によって子供になったのと同時期に神龍を呼び出す者がいた。われらがヒーローヤムチャである。
 白髪まじりの長髪にタレ目の周りには深い皺が刻まれている。が、その瞳からは確固たる強い意思が見受けられた。――そう、かって砂漠を駆け回り盗賊として名をはせた若かりし頃のような大きな"野望"を胸に秘め

11:Classical名無しさん
08/11/01 14:16 5JHuknU2





  時をかけるヤムチャ







12:時をかけるヤムチャ
08/11/01 14:35 5JHuknU2
「神龍、叶えて欲しい願いは1つ、オレを若返らせてくれ」
「お安い御用だ」
 神龍が言い終わるや否や、ヤムチャの身体がみずみずしさを取り戻していく。彼はすっかりと昔のような整った顔立ちと潤しい肉体を得たのだ。

13:時をかけるヤムチャ
08/11/01 14:47 5JHuknU2
「ハァァァァ!」
 試しに全力で気を解放するヤムチャ。が、駄目。いくら力を捻りだしてもそよ風すら吹かない。
(しまった! 戦闘力も昔に戻ったのか……!?)
 ちなみに現在のヤムチャの戦闘力は100にも満たない。狼牙風風拳を主力技にしていた野盗時代と同程度だ。エネルギー弾など撃とうものなら5~6発で卒倒してしまうだろう。
「……まぁいいか」
 しかし、意外とヤムチャは大してショックを受けていない
 コツは掴んでいるんだ、すぐに強くなれるさ。いや、むしろこれから始まる『新たな旅立ち』には好都合かもしれない。

14:時をかけるヤムチャ
08/11/01 15:12 5JHuknU2
「願いは残り2つだ。早く望むがよい」
 一人笑みを浮かべるヤムチャに痺れを切らした神龍がそう催促した
「ん? ……ああ、もういいよ。願いはこれだけだ」 願いはこれだけで充分、というより余計なことまで願いたくなかったのだ。
「そうだ。オレは、オレ自身の力で全てを手に入れるんだ……!」

15:時をかけるヤムチャ
08/11/01 15:31 5JHuknU2
 カプセルコーポレーション

 ブルマは作業着を身に纏い、ベンチを片手にせっせと何かの機械を組み立てていた。それはちょうど悟空がナメック星に行くのに使った宇宙船のような大きさで、側壁がまだ無く未完成であった。

16:時をかけるヤムチャ
08/11/01 15:36 5JHuknU2
 1m程のプレートを取り付け、流れるようにボルトをしめるその手捌きからは微塵も老いを感じさせない。
「母さん、少しは休んだら?」
 ブルマの背後からトランクスが言った。
「ん……もうちょい……」 振り返りもせずにそっけない言葉を返し黙々と作業に専念するブルマ。彼女にはもう機械の事以外頭に入っていない。
 母さんの悪い癖だ。トランクスは軽く溜め息をついた。

17:時をかけるヤムチャ
08/11/01 15:55 5JHuknU2
「別にさぁ……これが無くても普通の宇宙船があるんでしょ? 僕と悟空さんはそれでも構わないよ」
 その言葉に反応し、ブルマは初めてトランクスの存在に気付いたかのように作業を止めて振り向いた。
「まあそう急かさないでよ。この『タイムマシン2号』も今晩中には完成するわ。そしたら究極のドラゴンボールなんて一瞬で集められるんだから」

18:時をかけるヤムチャ
08/11/01 16:21 5JHuknU2
「一瞬て……大袈裟な」
「大袈裟じゃないわ! アンタ、まだこれの凄さが理解できないみたいね……いい! この『タイムマシン2号』は"あらゆる時空"に跳躍できる、……つまりその気になれば"別世界に行くこと"もできる私の英知を全て注ぎこんだ究極のマシンなのよ!」
「もう何回も聞いたよ……」
 興奮してまくしたてる母親と対照的にトランクスはうんざりとした表情を浮かべていた。
(こういうとこだけは科学者なんだからなぁ……)

19:時をかけるヤムチャ
08/11/01 16:44 5JHuknU2
「でもさ、それって一回跳んだら充電に50日もかかるんでしょ」
「う……け、けどほら、過去に跳べば実質プラスマイナス0だし……」
「無駄に年をくうし嫌だよ……」
「ああもう! 嫌なら乗らなくてもいいわよ! 孫くんだけでじゅーぶんよ!」
 なかば逆上したブルマは「帰れ帰れ!」とトランクスを強引に工場から追い出した。

20:Classical名無しさん
08/11/03 00:24 NmybRBbE
面白いから早くkake

21:saiyankiller2
08/11/16 15:01 dOhxEGhY
>>1ですが
URLリンク(yamnov.hp.infoseek.co.jp)
の続き書きますね。

多分、saiyankillerを全て読んだ人じゃないと話が分からないかも

22:saiyankiller2
08/11/16 15:05 dOhxEGhY
プロローグ

何年か前、人造人間たちとの戦いに備え、孫悟空をはじめとする戦士たちは個々に修行を重ねていた時期があった。
その修行中に、一人の少女が地球にやってきたことがある。
名をマーリンという。
そして戦士の中の一人ヤムチャと、その異星から来たマーリンに纏わる話を知っているだろうか…。

彼女は元々サイヤ人を滅ぼすために地球に降り立ったのだが、ひょんなところでヤムチャと出会う。
きっかけは最悪だった。
ヤムチャをサイヤ人と勘違いしいきなりヤムチャを襲うが、逆に翻弄され最後は自滅に近い技を放とうとし、寸前でヤムチャに気絶させられる。
意識が回復してからも、今度はサイヤ人である孫悟空にいきなり襲い掛かると、圧倒的な実力差を見せ付けられ、100%及ばない力に思わず発狂。
そして今度は自滅技「ファイナル・グランスピアード」を最後まで放ち、両腕が千切れてしまう。
だがヤムチャの迅速な処置により、仙豆で彼女は腕を再生し、一命を取り留めた。
次に意識を回復してからは、再生した腕に驚きながらも、まだヤムチャたちを警戒するしぐさを見せる彼女。
だが、ヤムチャの怒りの説教と、彼女が勘違いしていることを伝えると、さすがの彼女もヤムチャたちを含め地球に住む者達が悪者ではないと認識をしたのか、次第にヤムチャに心を許し始める。

そして自分を遥かに越える圧倒的な地球人(孫悟空含)の強さに心を打たれた彼女はヤムチャに稽古をつけてほしいと申し出る。
ヤムチャの答えはOK。
そして二人の修行は始まった。
最初はてんで弱かった彼女だったが、ヤムチャと修行を重ねるうちに見る見ると成長する。
成長したのはパワーだけではない。
人間としての心も、ヤムチャとの修行によって育まれていった。

23:saiyankiller2
08/11/16 15:07 dOhxEGhY
だが彼女は仲間からの無線により、戦闘のため再び宇宙へ旅立たねばならぬ理由が出来た。
しかも、宇宙船や星と星との距離の関係上、次いつ会えるか分からない、もしかしたらもう会えないかもしれないとのこと。
それは、いつまでも続くと思っていた過酷だったが楽しいヤムチャとの修行も、もうすぐ終わりだということを告げた。
だが彼女は、宇宙に旅立つ前にどうしても孫悟空と戦いたい。
しかし、戦えるまでの戦闘レベルになるにはまだまだ時間が足りない。
だが仲間の元へも向かわなければならないため、ノンビリしている時間もなかった。
そこでヤムチャは考え、精神と時の部屋で修行することにした。

そこへ入り、半日(ヤムチャ達にとっては半年)で部屋を出た。
部屋の中では数々のドラマや事実が明らかになったが…そこは省いておこう。
そしてすぐに彼女はスーパーサイヤ人・孫悟空に再び戦いを挑む。
修行の成果はばっちりといったところで、悟空の前に挑んできたベジータを軽くあしらう彼女。
そしていよいよ悟空との対決。
今までにない死闘を演じ、そして最終的にボロボロになりながら、彼女は意識を失いつつも孫悟空に勝った…。

意識を取り戻した彼女は、勝利の事実を確認すると歓喜の叫びを上げる。
だが、感傷に浸る暇もなく、マーリンは宇宙船へと乗り込んだ。
見送りにくるヤムチャ。
別れを目の前にし、マーリンは涙目ながらヤムチャに宇宙で一緒に自分と戦ってほしいとスカウトした。
それは単純にヤムチャの戦闘力が魅力的なだけではなく、ヤムチャに対しずっと胸に秘めていた想いが別れを前にして抑えきれなくなったからだ。
しかし、ヤムチャの答えはNO。
ヤムチャは言った。
戦いが終わり、再び平和がくるまでは地球に残ると。
そして、ヤムチャは自分も彼女のことが好きだと遠まわしに告白する。
だがマーリンはもっともっと好きだと…。
最後の最後で、重なり合った二人の想い。
ヤムチャと彼女は接吻を交わす。
次いつ会えるという確証もない。
諦めかけていた所だったが、咄嗟に「ドラゴンボール」のことを思い出す二人。
いつか世界が平和になったら、必ず…必ずドラゴンボールを使い連絡するとヤムチャは誓い、彼女は再び宇宙へと消えていった。
いつか再びヤムチャに会えることを信じて…。

24:saiyankiller2
08/11/16 15:09 dOhxEGhY
【1話】
―ここは惑星キカリーマ。
いや、正確にはキカリーマという名になった惑星と言うべきか。
元の名は惑星タッバと言う。
役10年ほど前にキカリマ星人による侵略を受け、元々住んでいたタッバ星人は全滅し、星は支配された。
キカリマ星人は戦闘力こそ平均300前後と大したことはないのだが、ものすごい群れをなすため、戦闘系の文明が発達してなかったタッバ星人では太刀打ちのしようがなかった。
だが、そのキカリマ星人の運命も今終わろうとしていた。

「クソ…!クソ!たった一人に…たった一人の女に我々キカリマ星人が―!」

ズドオォォォオオォンッ!!

「ぐわああああ!!」

ここはその都心部。
つい数時間前まで建物が建ち並んでいたとは思えないほどの荒野がそこには広がっていた。
生き残っている最後のキカリマ星人が何者かの巨大エネルギー波によって吹っ飛ばされたのだ。
「ふう…今回の任務は少々手間取ったな。予定より2日も遅れてしまった」
ほぼ無傷の一人の女性が、そこには立っていた。
プラチナブロンドの長い髪に、美しい顔立ち。
戦闘服の上からではっきりとは分からないが、全体的にしなやかな筋肉で、体のラインのバランスも良い。
そして、その美貌からは想像できないほどの強さが彼女にはあった。
「どうなってやがる…戦闘力は1000ほどしかないのになんだあの破壊力は……」
彼は見ていた。
数万人のキカリマ星人相手に、たった一人で立ち向かうこの女性の姿を…。
数十分後、そこに立っているのはこの女性だけだった。

25:saiyankiller2
08/11/16 15:11 dOhxEGhY
戦闘力1000前後ならば、差があるとはいえ戦闘力平均300のキカリマ星人いっせいに襲われて生きていけるわけがない。
しかも、あくまで平均が1000なだけであって、優秀な戦士は3000を越える者もいるのだ。
彼自身も戦闘力は2000以上あり、この星ではかなりのエリート戦士だった。
それだけに、にわかに信じられない現実に混乱していた彼だったが、そんな暇さえ彼女は与えなかった。
「スカウターか。それはわたしにとっては余り意味がない…この歴然たる差を見ていただろう?」
女性はそう言うと、額から流れる汗を軽く腕で拭い、自ら吹っ飛ばしたキカリマ星人に歩きながら近づいていった。
「クソ…なめやがって……だりゃあぁあ!」
キカリマ星人は最後の力を振り絞り、彼女の顔面めがけて殴打のラッシュを浴びせるが、軽く片手でガードされてしまう。

バキィ!

何かの衝撃音が聞こえたと思うと、次の瞬間キカリマ星人の視界には地面があった。
「ギャアアアア!足が…足が…!」
そしてコンマ数秒後に、彼の足に激痛が走る。
どうやら彼女に足を蹴られたようだが、動きが早すぎてキカリマ星人は何が起こったか気づいていないようだ。
「すまんな、足元がお留守になっていたものでつい」
かつて、自分の師匠から言われたことのある名台詞を得意気に言い放つ彼女。
キカリマ星人はほとんど感覚すらない足をもう片方の足でかばいながらフラフラと立ち上がる。

26:saiyankiller2
08/11/16 15:12 dOhxEGhY
「てめえは…一体何者なんだ…」
キカリマ星人は観念したのか、逃げ出す様子もなく女性に尋ねた。
「…世間では“銀光のマーリン”で通っている。弱者だけを襲い続け、強者との戦いは避けていた貴様らには縁のない名だったか…ふふっ」
彼女の名はマーリン。
女性でスーパーサイヤ人孫悟空に勝ったことのある唯一の戦士だ。
頭が上がらないという意味では孫悟空の妻であるチチも、悟空に負けることはないと思われるが…。

27:saiyankiller2
08/11/16 15:13 dOhxEGhY
需要があれば2話からも書いて行こうと思います。
閲覧者がいらっしゃるのなら、何かしらのレスポンスをお願い致します。

28:Classical名無しさん
08/11/17 23:28 0.YFVyOo
ヤムチャは女体化すればいいと思います><
そしたら地球人でNo2になるんじゃね?

29:Classical名無しさん
08/11/20 22:42 wVblvOWc
サイヤンキラー続編まで来てたのか!
たまヤムスレ復権のためにage

30:Classical名無しさん
08/11/21 02:27 777g/8b.
考えない考えない。
頭使わず、体動かせ


31:Classical名無しさん
08/11/21 21:10 s9wBpVp.
このスレはマジで期待
関連スレに宣伝したほうがいいんじゃないか?

32:Classical名無しさん
08/11/22 00:58 HfVptA/w


33:saiyankiller2
08/11/22 02:15 R8HOdc7.

【2話】
それにしても、ニヤリと自慢気に自らの異名を語るところは、宇宙最強クラスの戦士にしては意外とかわいい一面を見せる。
「な…なんだと…!お前が帝王フリーザをも凌ぐ戦闘力をもったと噂される…あのマーリンなのか…!」
一見お花摘みでもしてそうな、気品高そうなこんな女性が全宇宙でもトップクラスの戦闘力を誇る、あのマーリンだとは、姿を見たことのないキカリマ星人が想像できないのも当たり前だった。
適う筈がない。
彼はこの状況をどうにかしたかったが、それを考えることすら無駄なのではないかと思い始めた。
「名前だけは知っていてくれたようだな。嬉しく思うぞ」
そう言い放つマーリンだったが、顔は全く嬉しそうではない。
「さて…おしゃべりが過ぎたな。次の予定がつまっている。悪いが手短に終わらせてもらうぞ」
彼女は悪びれる様子もなく淡々と話すと、再び戦闘態勢の構えをとった。
「ひ…た、助けてくれ…。お願いだ、殺さないでくれ!」
星に残っている最後のキカリマ星人が必死に彼女に命乞いをする。
既に放っておいても治療しなければ死にそうな体力しか残っていなそうなものだったが、それでも最後の力で必死に女性に頼み込んでいた。
「…利己的なことを言うな。元々この星に住んでいたタッバ星人はどうした?お前らが全員殺したのだろう?同じことだと思え」
女性は冷酷な言葉を吐き捨てると、既に死にそうなキカリマ星人にトドメを刺そうと手にエネルギーを溜めていた。
「終わりだ」
そして女性は手からエネルギー波を放つポーズを取った。
「お、おい!待ってくれ!話を聞いてくれ!」
キカリマ星人は後ずさりをしながら両手を上げ、お手上げ状態といった形相で女性に同情をねだる。
「この期に及んで…くどいぞ…」
女性の手のひらはすでにキカリマ星人の目の前にあった。
その手には往生際の悪い宇宙の無法者に対しての怒りなのか、若干最初より膨れ上がったエネルギーが充満しているのがわかる。
「俺には別の惑星に住んでいる家族がいるんだ…腹をすかせたガキが3人に病に侵された女房…それに歩くのもままならない母親が!」
「!!…」
“家族がいる”…その言葉に彼女は一瞬ピクリと反応した。

34:saiyankiller2
08/11/22 02:16 R8HOdc7.
「な!わかるだろ…?頼む、見逃してくれ!俺は心を入れ換えてこれからひっそりと暮らす!二度と悪さはしねえ!」
それに気づいたのか、気づかないのかわからないが、キカリマ星人はつけ込むように彼女に話す。
「…それが分かるなら、何故タッバ星人をほろぼした…彼らにも家族はいた」
女性は躊躇ったのか、手に貯めていたエネルギーを少し弱めながら言った。
「仕方ねえんだ…何か特別な技術もない我々は、創造力もなく生まれたときから星を侵略して生きることしか許されなかった…別に好きでやったわけじゃない!」
「…ならば、貴様の存在自体が罪だな」
「そ、そう言うなよ…頼む!この通りだ!」
キカリマ星人は死の恐怖に耐えかねたのか、半ば発狂気味に叫び続けた。
「…ッ…不快だ…黙れ!」

ズドーン!

その女性の叫びと同時に、女性の手からエネルギー波が放たれた。
だが、その矛先はキカリマ星人ではなく、1キロほど離れた直径50メートルほどの岩の固まりだった。
岩は大爆発を起こし、すぐ近くまで岩の破片が飛んできた。
「あ…あああ……」
キカリマ星人は一瞬死を覚悟したのか、放心気味だ。
そして爆発してから数秒後に、ショックのあまりか膝からがっくりと倒れ込み、意識を失った。
「……チッ」
女性は軽く舌打ちして、後ろに振り向きその場を去ろうとする。
「次、わたしの目の前に現れたら確実に殺す…いいな」
そして、ボソリとそう呟くと、宇宙船に戻るためか、武空術で素早く空へと飛んでいった。

35:saiyankiller2
08/11/22 02:20 R8HOdc7.
【3話】
既にこの星にはあのキカリマ星人しか残っていない。
この女性一人に全員倒されたのだ。
「まったく…あの男に出会ってからどうも慈悲深くなってしまったようだ…」
女性は軽くそう呟くと、何かを思い返したのか、少し微笑んだ。
「でも…お前ならこうしたはずだ。そうだろう?…ヤムチャ」
“ヤムチャ”…それは彼女から取って切り離せない名前。
一緒に過ごした期間こそ生涯時間から言えば短いものだったが、彼女にとってもっとも濃いと言える時間はこのヤムチャと過ごした数ヶ月なのだ。

しかし、笑顔だった表情にはどことなく悲しさも含んでいるように見えた。

スタッ!

数分もするとマーリンは宇宙船の前へと降り立った。
丸い形をした型で、どうやら一人乗りのようだ。
だが、その狭い宇宙船にはすでに誰か入っていた。
しかしマーリンは驚く様子もなく、宇宙船に乗っていた誰かに近づいていった。

プシュウー…

マーリンが宇宙船の目の前きた時、自転車のタイヤから空気が抜けるような独特の音をたてながら、宇宙船のハッチが開いた。


「遅れてすまんな、シルフ。今戻ったぞ」
「お母さんっっ!おかえり!ねぇ、お母さんが一人でここの奴らみんなやっつけてきたの?」
宇宙船の中には子供がいた。

36:saiyankiller2
08/11/22 02:21 R8HOdc7.
マーリンが小さくコクリとうなずくと、“シルフ”と呼ばたマーリンをお母さんと呼ぶ小さな子供は、目をキラキラと輝かせながら、キャッキャッとマーリンに抱きつく。
そんな子供に一切迷惑そうな顔をせず、優しく頭をなでるマーリン。
「ところでシルフ…一応目立たない所に宇宙船をとめてはおいたが…キカマリ星人に襲われたりしなかったか?」
「あ!さっき5人ぐらいでここにやってきたんだよ!でもね、スカウターがあったから、そいつらにばれる前にぼくが隠れて、逆に後ろから“ロウガフウフウケン”をくらわせてやったんだよ!そしたらあの雑魚ども遠くへ逃げていきやがったんだ!」
「ほう…一人で撃退出来たのか」
「そのすぐあとに、そいつらの逃げた方で大爆発が起きてたから、多分全員お母さんにやられたんだよね!」
そういうとシルフは少しマーリンから離れ、“ロウガフウフウケン”の真似をする。
楽しそうに敵をやっつけたことを語る様は、幼いながらにもやはり彼は戦士の血を引いているなとマーリンは思った。
「お母さん、ぼくの“ロウガフウフウケン”どうかな?」
ブンブンブンと手が空を切る。
少年は必死に練習中のロウガフウフウケンをマーリンの前で披露し、評価を請った。
「ふ…そうだな…中々いいのではないか…?もしかしたら、シルフはヤムチャ…父さんよりもう強いかもな…ふふふ…」
ただ単に手を振り回しているだけにしか見えなかったマーリンだが、冗談混じりにシルフに言う。
すると、ヤムチャと言う単語に反応し、少年の目は更に輝いた。

37:saiyankiller2
08/11/22 02:26 R8HOdc7.
「お父さんより!?でも父さんのロウガフウフウケンは手が見えないぐらい速かったんでしょ?ねぇねぇ、もっとお父さんの話聞かせてよ!」
「わかったわかった。ふふ…仕方のないヤツだな…。とりあえず宇宙船にのるぞ、シルフ。続きは中でだ。一人乗り用で狭いが、我慢するんだぞ」
「うん、わかった!ぼくサイバイマンの話もう一回聞きたい!」
「サイバイマン?…ああ…確かヤムチャが死にそうな仲間を庇い、自分の命と引き換えに仲間の命を助け、結果的に地球は救われた話だったな。宇宙船を起動したらたっぷりとしてやろう…ふふ」
サイバイマンの話は、実際こんなかっこいいものではなかったが、ヤムチャが誇大表現してマーリンに話したため、彼女はそのままそれをシルフに語り継いでいた。

ピピピ…
「ハッシャジュンビデキマシタ…」

宇宙船のオペレーターが発射の準備ができたことを伝える。
宇宙船のスイッチを操作しながら彼女は続けた。
「わたしは…わたしは…まだ最後の言葉を信じているぞ…ヤムチャ…」
彼女は静かにそう言い放つと、何もない空を見上げた。
まるで、視線の遥か何万光年も先にいる、地球にいるはずのヤムチャに訴えかけるように…。

38:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/22 02:30 R8HOdc7.

今日のところはこの辺にしておきます。
トリップはこれで。
急いで作成したものなので、誤字脱字、矛盾点など多々ありそうです。
内容についてですが、最後まではまだ考えていません。
が、大よそのストーリーは考えています。
GTと若干結びつかないかもしれませんが…。

39:Classical名無しさん
08/11/22 10:02 G/zZ7R9o
サイヤンキラー2はじまったか!楽しみにしてます
ちなみに作者は別人なんだよね?
あと時をかけるヤムチャも早く書いてくんろ

40:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/23 00:23 tjagLBCg
【4話】
一方…ここは地球。
孫悟空による特大元気玉で最強の敵、魔人ブウが消滅してから1年が経っていた。
世間ではミスターサタンが魔人ブウ(正確には魔人ブウの記憶はドラゴンボールで世界から消されたため、人々の記憶には残っていない)を倒したことになっている。
何はともあれ、地球に平和な日々が続いていた。

しかし、そんな平和な日々が続いているのにも関わらず、激しい修行に励む武道家がいた。

「狼牙風風拳…!ハイハイハイハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイヤーッ!」
一人の男が、砂漠と岩壁しか見当たらない灼熱の荒野で掛け声と共に勢いよく素振りをしていた。

凛々しい男前の顔立ちに、鍛えぬかれた全身筋肉質な鋼のような肉体。
激しい運動のせいか、その顎や肘からは大量の汗が滴り落ちている。

素振りを行っている彼の手の動きは、恐らく常人の胴体視力では間違いなく捉えることはできない速さだろう。

ビュオーン!

男が素振りを終えると、その素振りによる風の影響で、前方に突風が吹き荒れた。
「今日の調子はまずまずだな……よし!」
男は独り言を呟くと、すーっと一度全身の力を抜き、次の一瞬で全身の気を一気に高めた。
「んぐぐぐぐッ…ががあああああ!」
そして真っ赤な気のオーラのようのものが彼を纏う。
空にかかっていた雲は一気に消え、立っているところはクレーターのようにへこみ、回りの砂や腐って折れた木などは遥か遠くへと飛んでいった。
「んぐぐ…くッ…このままを……あと1分維持しつつ…はあっ!」
掛け声と共に男はそこから消えた。

ビュオーーーン!!

そして何もないはずの空間で再び突風が吹き荒れた。
先ほどとは、比べ物にならないほど大きな突風が…。

41:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/23 00:24 tjagLBCg
そして一分後。

スタッ

ボフゥゥウウ!!

そこに、先ほど素振りをしていた男が再び何もないところからパッと激しい砂煙と共に現れた。

しかし、男は消えていたわけでもなく、何もないところでいきなり突風が吹いたわけでもない。
不可解にも思えるこの一連の怪奇現象は、男が超高速で動き回っているため、消えたように見えただけだった。
まるでハリケーンのような突風も、彼の動作によって引き起こされたものである。
「く…は…ああぁああーーーーーーーいてえーー!!」

すると男は動きまくっていた今までとは対照的に、今度は激しく息を切らしながら地面に寝転がった。

「はあはあ…………はあ…なんとか20倍は…はあ…使えるようになったけど…はあはあ…………はあ…さすがに30倍はいてえな…チクショウ!…………いてッ!」
叫べば叫ぶほど男の肉体は悲鳴をあげるが、どうやら叫ばずにはいられない性格のようだ。
男は周りを見渡した。
一昔前まで岩や枯れ木でデコボコだったこの荒野も、男の放った凄まじい気によって全てが吹き飛んだため、今は地平線が広がるのみだった。

42:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/23 00:25 tjagLBCg
【5話】
「ロンリーウルフ…砂漠のヤムチャ…か。ははっ…寂しいもんだぜ。こんな修行を都会のど真ん中でやったら、町が吹っ飛んじまうからな…思い切り気を高め

て行う修行には、ここしかないってわけだ」
この男の名はヤムチャ。
幾度も地球の危機に直面し、そのたびにヤムチャは戦ってきた。
役に立ったのか…と聞かれたら、大きく頷くことはできないが、時には勇敢に戦い自らの命を落としたり、セルジュニアから弱った悟空を援護したり、陰なが

ら活躍をしていた。
だが、ヤムチャの表情は煮えきらない様子だ。
ヤムチャが未だに修行を続ける真意はそこにあった。
「こんな俺が…またあの子に会う資格があるってのかよ」
男は寝転がりながら、仰向けになると、自分が気で吹き飛ばした雲一つない青空を見つめた。
「……マーリン…」
男は漏らすように一言だけ、こう呟くと悲しげな表情を浮かべた。
遥か彼方の惑星キカリーマで、空を見上げたとある女性と同じように…。
“マーリン”…それはヤムチャにとって忘れられない名前だ。
最初は、純粋に彼女の飽くなき向上心や強さに強欲な精神に惹かれただけだけだと思っていた。
しかし、精神と時の部屋で死にそうな彼女を目の当たりにし、自分の気持ちに素直になってみると、ヤムチャは彼女を愛していたことに気づいた。
そして別れ際、最後にあの約束を交わしたことだってもちろん忘れてはいない。
「………」
それからはしばらく無言になっていたヤムチャだったが、しばらくすると立ち上がり何かを目指し空高く飛び上がった。
ヤムチャはいよいよ決心がついたようだ。
約束を果たそうという決心が…。

43:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/23 00:29 tjagLBCg
>>39さん
はい、別人です。
勝手に書いてますので、元の作者さんの世界観というか、イメージを損ねてしまうのが怖いところです。

時をかけるヤムチャの続きもみたいところです。
わたしと並行して、どなたか新規の小説や、中途半端な小説の続きを書いていただけると
このスレも盛り上がるでしょうね。

44:Classical名無しさん
08/11/24 01:58 WjmT3RyA
久々の病むスレに期待wwww

45:Classical名無しさん
08/11/24 07:16 1MRxeW.g
ブウ編の後の話か
パワーバランスが難しそうだ
応援してます!

46:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/25 00:15 x9C0dROI
【6話】
「ピ…ピッコロさん、ヤムチャさんがこちらに向かってきています」
ここは天界。
世界一高いカリン塔の更に上にある、地球の神の家のようなものだ。
地球の神、デンデはそばにいたピッコロに話しかける。
戦闘タイプではないデンデだったが、ヤムチャのいつもとは異なるただならぬ気配を感じたのか、若干不安そうにしていた。
「そのようだな。まあ大体何しに来るかは予想はつくが…」
ピッコロは宙に浮き、精神統一をはかりながら答えた。

そして数分もしないうちに天界にヤムチャが姿を表した。
「よう、デンデ、神コロ。久しぶり」
いつもと変わらないお調子者といった雰囲気のヤムチャが軽く挨拶を交わす。
「お久しぶりです、ヤムチャさん」
「ピッコロと言え」
表情一つ変えずにボソっと言ったピッコロだったが、その声に不機嫌さがにじみ出ていた。
意外と執念深い性格のようだ。
「あっはっはっ…、すまんすまん…今の神様はデンデだしな」
「そういう問題でもないが。で、ヤムチャ…ここへ何しに来た?」
ピッコロは宙から地面に降り、やっと目を開いてヤムチャに視線を向けた。
「またまた…分かっているくせに一々聞いてくるところは変わってないよなー、本当に!ははっ」
ヤムチャはピッコロの肩をポンポンと叩きながら笑い飛ばした。
だがピッコロは険しい表情をしながらじっとヤムチャを見つめていた。
その表情に気づいたヤムチャだったが、きっと最近悟飯に構ってもらえなくて不機嫌なんだろうなと勝手に解釈し、話を続けた。
「あるんだろ?ドラゴンボール。使いたいんだ」
ヤムチャは天界に来てから初めて真面目な表情になる。

47:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/25 00:17 x9C0dROI
数秒ほど沈黙が流れたが、やがてピッコロが口を開いた。
「…たしかに、いざという時の為に集めてはおいたが…ヤムチャ…マーリンとやらに会うつもりなのか?」
「ああ、約束したからな。世界が平和になったらまた会おうと。魔人ブウも消えた今、この世は平和そのものだろ?」
同意を求めるヤムチャだが、ピッコロは何も答えない。
すると今まで黙っていたデンデが重い空気に耐えかねたのか、会話に入ってきた。
「私も悟飯さんからその話を聞いたことがあります。会わせてあげたらどうでしょうか…確かにこの世に平和は戻りましたし、ヤムチャさんは今までずっと地球のために戦ってきた…
特に悪巧みを企んでそうな願いでもありませんし、それぐらいの願いは叶えてあげていいと思います」
なんだか上から目線だな…と一瞬思ったヤムチャだったが、デンデは地球の神だ。
まだ幼さが若干残るデンデだが、神が背中を押してくれてヤムチャはなんとなく心強かった。
「私利私欲のために使うのはあんまり好ましくないのは俺も分かっているさ。でも今回だけは見逃してくれ、頼む!」
ヤムチャは申し訳なさそうにピッコロに頼み込む。
「…嫌な予感がするんだ。かつて孫を殺そうとしたほどの奴だぞ…?そしてその孫にヤツは勝利した。あれから何年か経ったが…ヤツが危険じゃないという保証はあるのか?
考えにくいことだが、万一に俺たちの力を凌ぐ力を持っていて、俺たちに襲いかかってきたら…ヤムチャ、責任は取れるのだろうな」
ピッコロは真顔でヤムチャに確認をとる。
ピッコロがあまりにも真剣な顔で訪ねてきたので、少し返答に困ったヤムチャだったが、すぐに口を開いた。
「初対面の悟空を殺そうとしたという点は、俺も神コ…いやピッコロもベジータも同じだろ。しかもマーリンの場合は悪気があって襲った訳じゃない。
それに、いくらあいつが強くなっていたとしても、俺の言うことを聞かないということはないと思うんだ」
「…」
納得がいかないのか、ピッコロは表情を変えずヤムチャを睨むように見つめ続けているだけだった。

48:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/11/25 00:18 x9C0dROI
納得がいかないのか、ピッコロは表情を変えずヤムチャを睨むように見つめ続けているだけだった。
「そ、それに、悟空は今やスーパーサイヤ人3になれるんだぜ?更に悟飯は悟空より強いわけだし、心配することはないさ」
ヤムチャの執拗な説得に対し、ピッコロは少し眉を潜めるものの、やがて諦めたのか重い足取りでしぶしぶと宮殿の奥にあるドラゴンボールを運んできた。
「願い事は3つまでだ、この神龍は。さっさと始めろ」

「サンキュー、神コロ!よし……いでよ、神龍!」

ヤムチャの掛け声と共に、空が真っ暗となり、ドラゴンボールが激しく光を放ち始めた。
そして、次の瞬間ボールからまるで滝登りをする鯉のように、はるか上空へと向かいボールの中から神龍が現れた。
「うお…!いつ見ても神秘的だよなあ、神龍って!」
幾度となく神龍を見てきたヤムチャだが、何度見てもその姿は神秘的で美しいみたいだ。
「どんな願いでも3つだけ願いを叶えてやろう…さあ願いを言え」
ヤムチャは少し考え込むと、大きな声で叫んだ。
「神龍、今回の願いは2つだけでいい。まず1つ目の願いだ。…7年前、宇宙船で地球にやってきたマーリンという女性がいる。その女性と5分ほど会話をさせてほしい」
「ちょっと待てヤムチャ。ヤツと会うのが目的ではないのか?」
ヤムチャの会話をさせて欲しい、という願いに思わずピッコロが横から口を出した。
「まあ焦るなよピッコロ。もし何か取り込み中だったら急にこの星に移動させるのも悪いだろ。まずは確認をとる」
「フン…好きにしろ」
恋愛経験豊富なヤムチャは意外と女性に対してデリカシーのある男だった。
「いいだろう…願いをかなえてやる。目を閉じて、マーリンとやらに話しかけるがよい。もう会話は出来る」
「ああ…やってみる」
ヤムチャは戸惑いながらも目を閉じて、ゆっくりと口を開いた。
『マーリン…聞こえるか?』
ヤムチャは声が届いているのか不安になりながらもマーリンに向かって話しかけた。

49:Classical名無しさん
08/11/27 06:11 0qM240I.
そしてクリリンは大きくいきむと、褐色の赤子を産み落としたのでした
見事な安産だったそうです
                      完

50:Classical名無しさん
08/11/27 16:53 IgqJCoD6
支援

51:Classical名無しさん
08/11/27 21:23 Op4ApIU.
マーリンちゃん
URLリンク(yamnov.hp.infoseek.co.jp)


52:Classical名無しさん
08/11/28 22:57 YByTKg.2
ついにコンタクトか

53:Classical名無しさん
08/11/29 20:59 fM.ip9nA
普通におもしろい

54:Classical名無しさん
08/12/01 23:45 0DqanOXc
続きが早く読みたいです

55:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:09 BD4UM7Wo
【7話】
すると、どこからともなく返事が帰ってくる。
『ま……ま、まさか!…ありえるわけがない。その声は………ヤムチャ…!』
マーリンは狭い宇宙船で思わず立ち上が…れなかったが、中腰になり、キョロキョロと周りを確認する。
声が聞こえたのは夢かと思ったが、はっきりと意識があるのは自分でも分かる。夢ではない。
とすると、これは現実なのだろうか?
俄かに信じられないことではあるが、確かに自分の耳にはヤムチャの声が聞こえたのだ。
一秒たりとも忘れたことのない、この安心できる声。
聞き間違えるはずがない。
マーリンはヤムチャが一言話しかけただけで、声の主はヤムチャであると確信していた。
『ああ、ヤムチャだ』
ヤムチャは目をつぶりながら、落ち着いてマーリンの問いに答える。
どうやらしっかり声は行き届いているようだ。
『ヤ…ムチャ……どうやら本当にヤムチャのようだな…。今どこにいる!何故わたしの声が聞こえているんだ!そもそも、わたしは宇宙船の中なのだがどうやって話しかけているんだ!答えろ!』
『そう一辺に質問されてもな…何から答えりゃいいのか』
マーリンは惑星キカリーマを後にし、宇宙船内で体を休めじっとしていたところだった。
そんな中、突然のヤムチャからの呼びかけ。
こんな宇宙の果てで、ヤムチャの声がいきなり聞こえるなど…一体何がどうなっているのか、当然ながら理解できるわけがない。
マーリンは急な出来事に焦ったのか、既にもう必要ないはずのスカウターをカチカチと操作し、ヤムチャの位置を探ろうとする。
当然ながらスカウターはシルフの微々たる戦闘力と、気を抑えた状態の自分の戦闘力しか感知せず、マーリンは軽く舌打ちをした。
一方、驚きを隠せない様子のマーリンの声が耳に入り、ヤムチャの顔には自然と笑みがこぼれていた。
『お前が地球にきた時は“ありえるわけがない”事ばかり起こっていただろ。いくら探してもそこには俺はいない、なんせ俺はその地球から話しかけてるからな。
それにしてもマジで久しぶりだなあ、マーリン!約束通り、ドラゴンボールを使って連絡したぞ!もう地球は平和なんだ!』
『……!…そうか、ドラゴンボール…!』

56:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:12 BD4UM7Wo
マーリンはハッとした。
ドラゴンボールという不思議な球があり、何でも願いをかなえてくれるという話をヤムチャから聞いたことがある。
そして、その球を使って連絡をくれるという約束も忘れたことがなかった。
だが、まさかこんな急に、何の前触れもなく連絡がくるとは思っても見なかったのだ。
『…ドラゴンボールとは、本当になんでも出来るのか…。それにしても…ふふ、ヤムチャ、久しいな…待たせすぎだぞ』
宇宙には不思議な出来事が多々転がっているが、無線機も何も使用していない状態で、ここから遥か彼方にある地球に住んでいる人間と会話できるという現象を中々受け入れられないマーリン。
しかし、どういった原理で会話が出来ているのかは分からないが、ヤムチャから話しかけられている事実は事実だし、マーリンにとっては嬉しい誤算であることは間違いない。
声の謎が解けた上に、ヤムチャから話しかけられているという事実を再確認すると、機嫌が良くなり思わずマーリンから笑みがこぼれた。
しかし、すぐに彼女は暗い表情になる。
『最初に…謝らなければならないことがあるんだ。…すまない、ヤムチャ……。残念なことに前の宇宙船はあれから故障してしまい、今のところこの辺りの宇宙で最先端のこの宇宙船でも、地球に向かうのに281年かかってしまう……。せっかく連絡をくれて嬉しいのだが……』
マーリンは一瞬だけ子供のように喜んでいたが、次第に声のトーンが落ちていった。
マーリンと地球は距離が遠すぎるのだ。
いくら強くなっても、決して手が届かないものだってある。
例えそれが宇宙最強クラスの戦士だったとしても。
マーリンが10年近く地球に出向かなかったわけは、ここにあった。
正解に言うと“出向けなかった”のだ。

57:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:14 BD4UM7Wo
孫悟空が取得している瞬間移動という技があれば別の話かもしれないが、そんな技術を身につけていないし、どこで身につければいいかも分からないマーリン

はどうしようもなかった。
それでもいつか、何かしらの方法を使って地球に出向こうとは思っていたのは言うまでもないが。
だがそんなことはお構いなしにヤムチャは続ける。
『まあそんなことは気にするな。それよりマーリン…今暇か?暇なのか?』
『?…まあ、船内だし暇と言えば暇だが…一応1週間後に仕事が入っている。わたしがいなくてもどうにかなりそうな星だがな…。しかし先ほども言ったよう

にこの宇宙船では……』
その言葉を聞いた瞬間、ヤムチャの表情が思わずにやける。
『なるほど…なるほど…281年ねえ…はははッ!そいつは好都合だぜっ!じゃあ決まりだな!』
『??…決まり?』
『そう、決まり』
『…ヤムチャ…前から思っていたが、わたしは常人より語学に関する知識は卓越している訳ではないので、分かりやすく言ってくれないと…。お前の言うこと

はたまにほとんど伝わらないときがあるぞ…まあ、その直後にいつもそれを無理矢理に理解させるあっと驚くことが起きるのだがな…ふふ』
昔のヤムチャの思い出を振りかえり、思わず笑いがこぼれるマーリン。
ヤムチャはそれを小バカにしたように軽く笑い飛ばすと、マーリンがムッとなってそれに突っかかる。
自然と“昔と変わらない”やりとりを取っていた二人は同時にそれに気づくと、再び大笑いするのだった。
そして自分はこの人を愛しているんだな、と心の中で静かに思う二人。
結局、マーリンはヤムチャがこれからしようとしていることはわからずじまいだったが、会話が一段落すするとヤムチャは目を見開いて、再び神龍に向き直った。

58:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:16 BD4UM7Wo
「神龍、2つ目の願いだ!今…今話していたマーリンが乗っている宇宙船を、宇宙船ごと地球に移動させてくれッッ!」
ヤムチャは2つ目の願いを大声で言いはなった。
「いいだろう…それではマーリンが乗っている宇宙船を地球に移動させる。中に乗っている人間も移動させることになる」
「ああ、頼む。間違えて宇宙船だけ移動させてマーリンを宇宙に忘れたりしないでくれよ!」
ヤムチャはよく分からないギャグを言ったが、神龍に無視されていた。
一方…目を開いている間は、ヤムチャの声はマーリンには届かないようで、彼女は宇宙船で突然途切れたヤムチャからの連絡にあたふたしていた。
「ヤムチャ……?どうしたのだ…黙らないでくれ…頼む……うう…」
たった1分ちょっと通信がとれなくなっただけで、マーリンの精神状態はここ数年で一番不安定になった。
泣きそうな小さな声でヤムチャと連絡が取れなくなることを怯え、恐れていた。
そもそもこんな離れた所で会話ができること自体細い細い糸をつかむようなものであって、いつ途切れるかも分からない…いや、もしかしたら今途切れてしま

ったかもしれないその糸を必死に彼女は探し求め、掴もうとしていた。
スヤスヤと眠る我が子の手を強く握りながら、マーリンは強く念じ続ける。

…その時、マーリンの乗っていた宇宙船が何かオーラのようなものに覆われ、ピカピカと光り始めた。
そして視界が次第に薄くなり、見えていた宇宙空間も一瞬で白い靄(モヤ)のようなものしか見えなくなった。
「!?…まずいな…故障か?それとも宇宙嵐にでも巻き込まれたか…どちらにせよさすがにこんな所で宇宙船が壊れたら死んでしまうな…」
マーリンは額に汗を浮かべながら緊急再作動ボタンの操作をし始めたが、ほんの数秒後に白い靄は消え、再び視界が戻った。
何がなんだか分からないマーリンは呆然としていたが、故障ではないのなら幸いだと思い、ほっと胸をなでおろした。
しかし…戻った視界に映し出されたものは、先ほどまで見ていた青く暗い宇宙空間ではなく…緑が生い茂る森の真上だった。

「…ッッ!…墜落する!」

ドゴオォォォォォォオン!!

59:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:21 BD4UM7Wo
【8話】
そのマーリンの声とほぼ同時か、少し早くか、宇宙船は森の中へと音を立てて墜落し、そこには直径100メートルほどのクレーターができた。
宇宙船が着陸体勢に入っていなかったため、マーリンの宇宙船は無造作に地面に墜落する形となったのだ。
「…いったあ…」
マーリンは無意識に我が子を抱きこむようにして庇ったため、墜落の際に頭を打ってしまった。
そのおかげか、シルフはいまだにスヤスヤと眠っている。
こんな衝撃だったのになんと無神経なんだと思いながらも、その寝起きの悪さは自分に似たことに気付いていなかった。
シルフに怪我もなさそうでほっとするマーリンだったが…異様な事態に気づく。
「ここは…どこだ?わたしが宇宙船で行き先を設定するときに、星を間違えたのか…?」
マーリンが拠点とする星は文明が発達し、自然など無縁の星だったため、こんな森などなかったのだ。
自分が拠点としている星ではないと即座に気づいたマーリンだったが、もう一つの異様な事態に気付く。
そしてそれは目に見える結果として現れた。

ピーッ ピーッ!!

スカウターが危険信号を発している。
ある一定以上の戦闘力を感知すると、自動的に音を立てるようになっているのだ。
マーリンは嫌な予感がしつつも、シルフをそっとシートに寝かせると、宇宙船から降り、スカウターを装着してボタンを操作し始めた。
「な…なんなんだ、この星は……」
戦闘力が10万を越す反応が一つや二つじゃない。
「1…2…3…5………10人以上…だと…!!」
マーリンはスカウターで正確にその数を数え始める。
どう考えてもこの星は異常だ。
「まさかここは地球…?いや、そんなはずはない…」
マーリンは首を振り、一瞬頭を過ぎった考えをすぐに引っ込めた。

60:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:23 BD4UM7Wo
ここ数年で宇宙で一番強かった敵を思い出しても、精々戦闘力2万前後がやっとだった。
戦闘力10万を越す反応が今ざっと確認しただけで10人はいるこの星が、どれだけ異常な星かは誰が見ても明らかだということになる。
かと言って、10万程度の戦闘力ではマーリンには遠く及ばないのだが、戦闘力10万クラスと言えばあのギニュー隊長レベルの猛者が何人もいるのと同じことだ

と思うと、少しぞっとしたが、すぐにニヤリと表情が変わった。
“こんな奴らと戦ってみたい”…自分では気付かなかったのかもしれないが、彼女の中のサイヤ人の本能はそう叫んでいた。
長く宇宙で戦いを続けてきた彼女だが、10万を越す反応にはほとんど出会ったことがない…ある一つの星を除いては。
そしてマーリンは無意識に気を高めてしまう。
まるでこの星にいる誰かに、自分に襲い掛かってこいと挑発するかのように…。
「はああああああ………!」
マーリンは自らの潜在パワーを体のエネルギーへと変えていく。
見る見るうちに彼女の気が上がっていった。
まだまだ本気じゃないにしろ、戦闘力に直したら100万は軽く超えている。
相手が戦闘力10万程度なら、ここまで力を引き上げる必要はないのだが…マーリンはこの戦闘力10万の集団に不気味さを感じていた。
普通、相手が気を込めれば戦闘力が1000だろうと2000だろうと、離れていてもその力を込めた気の“気迫”が伝わってくる。
だが…こいつらからそれは感じられなかった。
むしろナチュラルな気…まるで、最低限に抑えて行動しているかのような気のように感じたのだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオォォオオオ…

大地が激しく揺れる。
地球全体で地震が起きたかのような揺れだ。
しかし、その揺れは突然収まった。

それは、あまりにも衝撃的であまりにも懐かしく、そして…あまりにも信じられない出来事が彼女の目の前で起こったからだ。

61:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:24 BD4UM7Wo
スタッ!

彼女の目の前に、突然男が降り立った。

「…よっ!探したぜ。分かりやすく気を上げてくれて助かった」
黒髪に、頬の傷…見覚えのある胴着にこのどこか柔らかく、優しい声…。
もう戦闘力10万前後の集団のことなんてどうでもよくなっていた。
そして…彼女の全身の力が抜けた…。


「ヤ…ヤ…ヤム…チャ…………なのか……?」
マーリンの目には、既にあふれんばかりの涙が浮かんでいた。
男は一歩、また一歩とゆっくりマーリンに近づく。
「ああ…そうだ。顔も忘れちまったか?悲しいもんだな…ははっ…ってうわ!」

ドンッ!

ヤムチャの体にずっしりと重い衝撃が走る。
彼女はヤムチャが全て言い終わる前に、ヤムチャに向かって全力で走り、体にギュッと抱きついたのだ。
さすがにマーリンの全速力を受け止めるのがなかなかの力がいるようで、ヤムチャも足にグッと力を込め、抱きついてきたマーリンをしっかりと受け止めた。
顔を見られないようにか、マーリンはヤムチャの胸に顔を押し付けるようにして決して離さなかった。
「マーリン…久しぶりだな……」
そんなマーリンを強く抱きしめ返し、優しく声をかけるヤムチャ。
いつしか、マーリンの涙は…止まらなくなっていた。
「ヤム…ううう……チャ……わ…わたしが…どれだけ待ったと…うう…思っているのだ…う…ヒック…」
マーリンはバンバンとヤムチャの胸を叩きながら、長年自分を待たせた事に対する不服を訴える。
それに対し、ヤムチャは申し訳なさそうに自分の頭に手をやる。
「いやあ…ははは…これには色々と訳があってだな…」
「??…その訳とやら…あとで詳しく聞かせてもらうぞヤムチャ…」
マーリンにこう言われると、少しギクリとしたヤムチャだったが、マーリンは何かに気付いたように再度口を開いた。
「そういえばヤムチャ…ここはどこなのだ…?地球なのか…?」

62:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:27 BD4UM7Wo
マーリンのぼけた質問に、ヤムチャは耳を疑った。
「何言ってんだ、ここは地球…俺とお前が数ヶ月過ごした星に決まっているじゃないか。宇宙船が着陸する際に頭でも打ったのか?」
確かに頭を打ったマーリンだが、こればかりは別にマーリンがぼけていた訳ではなく、むしろマーリンの記憶力を褒めるべきところであった。
「いや、そんなはずはない。ヤムチャ…ドラゴンボールとは1つだけ願いを叶えてくれるのだよな?先ほどわたしと会話をしたことによって、願い事を1つ叶

えたのではないのか…?だとしたら、わたしがここに居るのはおかしいという事になる…」
ヤムチャはマーリンの言っていることが最初はよく分からなかったが、ようやく意味を理解した。
「あー、そういうことか…。今神龍で叶えられる願いは1つじゃなくて、3つに増えたんだ。だから最初の願いでお前に話しかけ、次の願いでお前の宇宙船ご

と地球にワープさせた。それだけのことだ」
はぁぁと大きなため息をつくと、深刻そうな顔をしていたマーリンは再び笑顔に戻り、またヤムチャに抱きついた。
「そういうことは…早く言えッ!一度連絡が遮断され…もう話せないかと…思ったんだぞ…」
マーリンがむすっとした顔を見せたが、ヤムチャはそれを笑い飛ばす。
ヤムチャに笑われたマーリンだが、このやり取りに不快感はなかった。
それどころか、マーリンは既に昔ともに洞窟で過ごしたときのような感覚を思い出し、自分の胸が熱くなるのを感じていた。
戦闘力10万前後の反応の謎も、ヤムチャがいるこの星…地球ならそんなに驚くことでもない。

63:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:29 BD4UM7Wo
【9話】
「それよりマーリン…お前…ずいぶんとまあ……」
ヤムチャはそう言いかけて上から下までマーリンを見直した。
顔からは幼さが消え、体つきもよくなり、出るところは出て、髪の毛もしっかりと手入れが施してある。
最後に見た時より、全然女らしくなっているマーリンにヤムチャは正直驚いていた。
(こんな良い女になっているとは……にしてもなかなかのボディだ…)
ヤムチャの顔は自然とにやけていた。
そのヤムチャの何かやらしそうな顔を、マーリンは大きな目で不思議そうに見つめていた。
「??…なんだ?そんなにじろじろ見て…わたしの体に何かついているか?ふふ…それともわたしにパフパフとやらでもしてほしいのか?ふふふ…」
「ばっ…そんなんじゃねーよ!前より…ちょっと…あれだ。お前、背、伸びたよな?はは…」
マーリンは冗談交じりにヤムチャをからかうと、ヤムチャは顔を真っ赤にした。
その様子がよほどおかしかったのか、マーリンは腹を抱えて笑う。
(本当はちょっとしてほしいけど…)
ヤムチャは心の中でそう思っていたが、さすがに口には出せなかった。
「と、とりあえずどこか移動しないか?こんな森でいつまでも話し込むのもなんだしな」
照れ隠しにヤムチャはマーリンに移動するよう促した。
「そうか。わたしはどこでも構わないのだが、ヤムチャがそうしたいならそうしよう。それで、どこに行くのだ?」
「うーん、そうだな…都の喫茶店なんてどうだ?コーヒーが美味い店を知っているんだ」
得意げに語るヤムチャだったが、マーリンの顔には「?」マークが浮かぶ。
「キッサテン?こーひー?なんなんだ、それは」
マーリンはよく分からないことを言われ、話についていけないようだった。
宇宙ではあの不味いブロック状の食べ物と水しか口にしないマーリンにとって、ヤムチャの言っていることが理解できないのは無理もない話だ。
「ま…まあ、説明はその場でする。とりあえず案内するから俺についてきてくれないか?」
未知の世界への案内に、半分不安で半分楽しみなマーリンだったが、ヤムチャの言うことだしついていく事にした。

64:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:32 BD4UM7Wo
2人が30キロほど離れた所まで飛んでいくと、やがて街が見えた。
「よし、そろそろ降りるぞ。飛んでいると怪しまれるからな」
そういうとヤムチャは地面へと降り立った。
飛んでいるところを見られるだけで不都合がある事が不思議だったマーリンだが、あえて何も言わずに共に降りていった。
ここは西の都。
建物充実具合や人の量からして、世界一の都会と言っても過言ではないかもしれない。
かの有名な、カプセルコーポレーションがあるのもこの西の都なのだ。
まあ、ヤムチャにとっては余り良い思いがしない場所ではあるだろうが…。
「さて…と、とりあえずマーリン………喫茶店の前に服を何とかしようぜ」
ヤムチャはマーリンの戦闘服を見ながら言った。
「何故服を変える必要がある?この戦闘服は2週間前に変えたばかりで新しいのだが…」
…やっぱり何も分かっちゃいないな…とヤムチャは思った。
「戦闘服が新しいとか、古いとか、そういう問題じゃないんだ。お前の服は地球では余り適していない。周りを見渡してみろ」
マーリンはムッとしたがおとなしく周りの人だかりを見渡してみた。
…たしかに、自分と同じような服を着た人がいない。
しかし、マーリンには地球人の服装が理解できなかった。
ヒラヒラしたスカートを履いたり、生地の薄いノースリーブだったり、と…
自らの体の防御力を多少なりとあげるために服を着ていた彼女にとって、そんな服を着ても意味がないとしか思えなかったのだ。
「…地球人とはずいぶんと情けない服装をしているのだな。いや…もしかしたらあの服装は薄そうに見えて実はかなりの強度を誇っていたりするのか…?」
マーリンは興味ありげにヤムチャに質問する。
「なんつーか…服に対する概念がずれてるのかもな。地球人は基本的に服に強度なんて求めちゃいないよ。
いかにお洒落な服装でいられるかを念頭に置いているんだ。地球はもともと平和な星だしな…」
そのヤムチャの説明に対し、ふーんと軽くうなずくマーリンは、まだまだこの星の環境に慣れるには時間がかかりそうだと思いながらも、
地球の文化に興味を示していた。

65:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:35 BD4UM7Wo
長らく待たせてすいませんでした。
その代わりに沢山書いてみました。
残業やら休出やらでほとんど文章を書く時間がなかったのですが
待たせすぎては悪いと思い、今日は少し無理をしましたw

また明日も忙しくなりそうなので、今日のところはこれで寝ます。
おやすみなさい。

66:Classical名無しさん
08/12/02 22:35 s8WCij9I
乙です

67:Classical名無しさん
08/12/03 17:24 L2YB25ZU
オメシロイ

68:ダークオ
08/12/03 17:28 L2YB25ZU
最高にはまっダー

69:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:24 /ieIiF0.
それにしても、地球とは実に不思議な星だ、と彼女は思った。
孫悟空をはじめとする宇宙全体から見てもトップに君臨するであろう強さの人類が存在するのにも関わらず、
他の地球人の戦闘レベルが極端に低過ぎる。
マーリンが仕事を請け負った星に比べても、比べ物にならないほど地球人のパワーは弱い。
これは、マーリンが元々「余所者に侵略された星」を奪い返す依頼しか引き受けていなかったため、
必然的に気性が荒く力の強い民族ばかりが相手だったからとも言える事だが。
しかし、ここまでレベルの低い戦闘力で、よく平和にぬくぬくと暮らせたものだ。
いつどこから突然やってくるかも分からない侵略者に、恐怖心はないのだろうか?
ヤムチャたちがいなかったらとっくに地球人の文明など滅びていただろう。
マーリンはそんなことを考えているうちに、一人で段々と腹が立ってきた。
「ど、どうした…?そんな怖い顔して、具合でも悪いのか?」
ヤムチャはマーリンの顔を覗き込むと、恐る恐る額に自分の手を当てた。
どうやら熱はないようだ、と一人で悟る。
ヤムチャの手が額に触れ、マーリンはハッとわれに返る。
「…ヤムチャ、質問がある!」
「い、いきなりだな…なんだよ」
マーリンは我に返ると、いきなりヤムチャにつかみかかる様に攻寄りながら言った。

70:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:27 /ieIiF0.
「今こうやって地球人がヌクヌクと暮らせているのは、お前たち…ヤムチャたちの活躍があったからなのだろう?」
「…うーん、俺はあんまり活躍してないけど、まあそうなるな」
「お前は…お前にはプライドはないのか?地球人はもっとヤムチャたちを慕い、尊重すべきだ。それなのに、なんだこの有様は…」
「ありさま…?」
「誰一人として、お前に挨拶しようとしない。それどころかもはや他人同然だ。命をかけ、地球の運命を救ってきたのに…」
「まあ…言いたいことは分かった。とりあえず落ち着けよ。な?」
ヤムチャはマーリンの肩をポンポンと優しく叩く。
だが、彼女の勢いはそれでは治まらなかった。
「いいや、言わせて貰う!では訊こう…何故、感謝もされず、称えられもせず、誰からも知られもせず、それでもなお、お前は命をかけて戦い続けた?この恩

知らずな地球人どものために、お前は…ヤムチャは―」
「もうよせ!分かったから!!」

71:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:35 /ieIiF0.
【10話】
ヤムチャは辺り全体に響くような大声で怒鳴った。

ピキッ

ヤムチャの気合の影響で、近くにあったビルにちょっとしたヒビが入る。

だが、その怒鳴り声は怒りとは違うものだったのかもしれない。
周りにいた地球人はある者は立ち止まり、ある者は腰を抜かし、いっせいにヤムチャの方を見つめた。
「す…すまない。わたしはお前がこうも評価されていなかったのが悔しくて…つい」
「…分かってる。ありがとな。ささ、それよりとっとと服を買おうぜ」
するとマーリンは微妙な表情を浮かべる。
「別に要らないのだけど…戦闘服のほうが動きやすいし…」
確かに、防御力、耐熱性、柔軟性どれをとっても戦闘服のほうが優れた服と言えるだろう。
だが、その特性のほとんどは、平和な今の地球じゃ意味がないものなのだ。
「ダメ」
ヤムチャはニヤリと歯を見せながら断固否定した。
「…どうしても?」
「うん、どうしても」
「うう…」
「ほらほら、この店なんていいんじゃないか?」
するとヤムチャはある方向を指差してマーリンの背中を押し始めた。
軽く抵抗し、踏ん張ろうとするが、マーリンはずるずると店の前まで運ばれてしまう。
それからもしばらく渋っていたマーリンだが、結局再びヤムチャに引き摺られるように連れられ、服屋に入ることになった。

72:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:42 /ieIiF0.
【○話】の区切りが適当すぎるので、もう書き込むたびに入れておきますw

73:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:44 /ieIiF0.
【11話】
「いらっしゃいませ!本日はどういったお洋服をお探しでしょうか?」
店に入ると早速店員の女性が話しかけてきた。
「どんな服がいいのだろうな…わたしにはよく分からない。とりあえず、
お前が適当にわたしに合いそうな服を選んでくれると嬉しいのだが…なにぶん、地球での買い物は初めてなものでな」
地球での買い物が初めてと言われ、どれだけ田舎物なんだろう…とでも思ったのか、店員はしばらくポカーンとしてたがやがてビジネススマイルになった。
「…か、かしこまりました。それでは、中へどうぞ」
マーリンは店の奥へと案内された。
当然試着をするのだろうし、さすがにヤムチャは中まではついていけなかった。

10分後…店からマーリンは出てきた。
膝上20センチぐらいの、足がほとんど見えるデニムのショートパンツに、体のラインが際立つサイズが小さめのTシャツ。
ラフな服装だが、これがマーリンの体の美しさがもっとも強調されるファッションだろう。
予想以上のマーリンのプロポーションに、ヤムチャは思わずあいた口がふさがらなかった。
いや、戦闘服の上からよく見たのだが、やはりそれでは完全に把握できていなかったようで、
マーリンの胸やクビレのラインは一流モデルに引けをとらないほど素晴らしい。

74:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:51 /ieIiF0.
【12話】
「…やはり、違和感はあるが…意外と動きやすいし特に不快でもないな。どうだ…?ヤムチャ…こんな服装でいいのか…?」
マーリンは恥ずかしそうにヤムチャに尋ねる。
こんな戦士らしくないところを見られるのは、さすがの彼女も恥ずかしいのだろう。
女の子らしい…とは言えたものではないが、ぎこちなくもじもじしていた。
そのぎこちないところがまた、ヤムチャにとってはたまらなくツボなのだが…。
「か、かなりいいんじゃないかな…。よく似合っていると思うぜ」
ヤムチャの顔が再びやらしくニヤニヤするのを感じてか、マーリンは再びクスクスとヤムチャを笑うと同時に、不信そうな目付きになる。
「ところでヤムチャ、わたしの戦闘服はどうすればいい?捨てるわけにはいかないのだが、持ち運ぶのも手間がかかる」
「ああ、そうだろうな。これを使ってみろ」
ヤムチャは懐からカプセルのようなものを取り出し、マーリンに手渡す。
「なんなのだ…これは」
マーリンはそのカプセルをよく見回したが、ヤムチャがなんのためにこれを渡してきたのかが分からなかった。
「その中に戦闘服を入れるんだ」
「……は?」
「一回俺に貸してみろ」
ヤムチャはマーリンから再びカプセルを受け取ると、それのボタン状の部分を押下し、地面へと放り投げた。
するとそこには、砂煙と共に、カプセルではなく、大き目のアタッシュケースが現れたのだ。


75:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:52 /ieIiF0.
【13話】
「な…」
「これに戦闘服入れておけ。そこのボタンを押すともう一度カプセルに戻るから」
「や、やってみる…」
あんなに小さかったカプセルが、ここまで大きなアタッシュケースに化けるとは物理的に不可解な現象だったが、マーリンは驚くのを堪えて戦闘服をアタッシ

ュケースにつめこみ、再びボタンを押下した。
すると、再びアタッシュケースはカプセルへと戻った。
しかも重量はカプセルの重量のみで、アタッシュケースや戦闘服の重みが全く感じられない物理的にも、重力的にもありえないことが起きている。。
「それで持ち運びも便利だろ。さ、いこうぜ」
「…素晴らしい技術力だな…地球とは」
地球が生んだ、カプセルコーポレーションの奇跡の技術に、ただただ感心するしかないマーリンであった。

支払いを済ませると、ヤムチャたちは喫茶店へと向かう。
これで、とりあえず見た目は地球人と全く変わらなくなったマーリン。
道中を歩いていると、やたらと男からの視線を感じて不快になったマーリンだったが、ヤムチャと二人きりで街中を歩けた喜びのほうが断然に大きく、気にし

ないようにしていた。
当然ヤムチャもその視線に気付いていた。
(やっぱり地球人目線から見ても可愛いのかな…マーリンって)
マーリンの美しさに、段々マーリンと二人で居る自分が気恥ずかしくなってきていたヤムチャであった。
いや、もちろんヤムチャも十分に格好いいと言える容姿なのだが…。
それに、マーリンは容姿以外にも何か惹かれるものがあった。
独特のオーラというか、雰囲気というか、地球人から見れば「宇宙人」であるマーリンは、少し地球人とは違ったものが感じられた。
それがなんなのかはよく分からないが、一言で言うと「不思議な感じ」がするといったところだろうか。
「ヤムチャ、もう少しこっちを見てくれても…いいのではないか」
マーリンはヤムチャが自分の方を余り向いてくれないせいか、不機嫌になりかけてた。
「あ、ああ…すまんな、考え事をしていた。ここが喫茶店だぞ、マーリン」
ヤムチャは喫茶店に着くと立ち止まって、それを指差した。

76:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:11 /ieIiF0.
【14話】
「なるほど…これがキッサテンとやらか」
人ごみが多いせいか、街に入ってからずっと警戒心を張り巡らせていたマーリンは習慣からなのか、スカウターを操作して中の人間の戦闘力を探った。
「…中の人間の戦闘力は最高で4。きっと気を抑えているのだな」
「それから…スカウなんとかは外したほうがいい。ここでは必要ない」
あえてヤムチャは戦闘力の話に突っ込まずに、マーリンに次なる指摘をした。
するとマーリンは再びキョロキョロと周りを見渡す。
「ふむ…スカウターのような物をつけている地球人もたまに見かけるが…あれは違うのか?」
「あれはサングラスって言って、服と同じさ。自分を着飾るためにつけている人がほとんどで、別に機能とかはついていない」
意味のない事が好きだな…地球人は、と思いつつもヤムチャに言われた通りスカウターを外す。
ここ数年で前より少し素直になったようで、ヤムチャは感心した。
「ほら、それ付けてない方が可愛いぜ」
「カワイイ?わたしが?それはバカにしているのか?」
「……一応、褒めてるつもりなんだけど」
話がかみ合わないまま、二人は喫茶店へと入った。

店内に入ると、早速二人は窓際の席へと座る。
この喫茶店は地上から高いところにあり、窓からは色々な景色が見えた。
スカイカーで走り回っている人や、下の方でワイワイと楽しそうに日常生活を送る人たち。
建物が隙無くびっしりと立ち並び、西の都の都会具合が伺える。
そして、更に遠くの待ちの外れには、空気が美味しそうな森が見えた。
ヤムチャたちがさっきまでいた場所だ。
「いい景色だろ。西の都じゃ、一番この景色を見ると落ち着くんだ」
「どう落ち着くんだ?」
「うまく言えないけど…『ああ、俺って地球で生きてるんだな』って感じる」
「やはり、お前は変わっている。地球上で地球人であるお前が生きていても、別に普通というやつではないのか…?」
「ま、わからないならいいさ。いつか分かる時がくると思うぜ」
「ふぅん…」
ヤムチャは窓の外の景色を見ながら、マーリンに言った。
その目は、どこか寂しそうな目のようにもマーリンは感じた。

77:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:23 /ieIiF0.
【15話】
ヤムチャは視線を店内に戻す。
全体的に地味で暗いお店だが、落ち着いた雰囲気があり、心を和ませるクラシック音楽が流れている。
育った文化は違えども、そこはマーリンにとっても悪くない空間であった。
「お客様。ご注文はお決まりでしょうか?」
ウェイトレスの若い店員がヤムチャに尋ねる。
「コーヒー2つ。片方はブラックで頼む」
ヤムチャは慣れた口調で頼むと、チラッとマーリンに視線をやる。
それまで店内を興味深そうに見回していたマーリンだったが、ヤムチャの視線に気付くとヤムチャを見つめ返した。
「ここは…いい場所だな。なんだか、心が落ち着く…」
マーリンは感心したように言った。
宇宙で戦いばかりしてきたマーリンにとってこれほどの“癒し”を感じたのは久しぶりなのだろう。
それまで地球人を警戒してきたマーリンだが、いつの間にかその警戒心は消えていた。
「だろー!修行が疲れたらたまにここで心を落ち着かせに着たりするんだ。生きていて楽しいことばかりじゃないからな、少しは精神を休めてあげないと」
「なるほど…」
戦いにおいて、もっとも大事なのは体と心のバランス…かつてヤムチャが言っていた台詞を忠実に守っていたヤムチャ自身に納得したマーリンだった。

78:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:25 /ieIiF0.
【16話】
「失礼します、お待たせ致しました」
ヤムチャが喋り終わるころにコーヒーが届き、先ほどの店員がテーブルにそれを並べる。
ヤムチャはそれをズズズと一口だけ飲む。
マーリンもそれを見て、対抗心からか、負けじと一気に飲み干そうとする。
「…!!っつぅ…!」
マーリンは絶叫すると、ヒリヒリした舌を出しながら飛び上がりそうになった。
「ははっ、そんな一気に口に入れたら熱いに決まっているだろ。これはこうやって少しずつ飲むんだ」
そう言ってヤムチャは二口目のコーヒーを口にする。
「……!」
マーリンは半分涙目になりながら、無言でヤムチャに目で訴える。
「わ、悪い悪い…怒るなよ」
勝手に飲みだしたくせに…と思いつつもヤムチャはマーリンに謝った。
「熱いのが嫌ならお子様向けのアイスコーヒーもあるんだけど、どうする?」
ヤムチャの馬鹿にしたような態度にマーリンはムッときたのか、首をぶんぶんと横に振り、再びコーヒーにチャレンジする。

ズズズ…

そしてやっと一口飲み干したところで、マーリンは神妙な顔をしながらヤムチャに問いかけた。
「……ヤムチャ、…この液体は口の中に痺れるような味が残るというかなんというか…不思議な味がするぞ…」
マーリンは生まれて初めて飲んだコーヒーの不思議な味に、興味津々のようだ。
「ああ、ブラックだしお前にとっては苦いだろうな。俺はその苦味が好きなんだけど…。とりあえずこいつを入れてみろ」
ヤムチャは二つの不思議な液体を差し出した。
マーリンはそれを受けとると、不器用に蓋を開けてコーヒーに入れる。
飲んでみろと促すように、ヤムチャが手でジェスチャーをする。
マーリンは慎重にそれを一口飲む。
するとマーリンは驚いたように目を見開き、ヤムチャを見つめる。
「どうだ…?結構味が変わるだろ。暖まるし。ガムシロとミルクを足しただけだけどな…」
「……これは中々いいな…」
マーリンは目を瞑り首をコクコクと頷かせると、猫舌ながら一口ず一口ずつつコーヒーを口にする。
そして全て飲み干すと、ふう…と至福の溜め息が漏れた。

79:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:33 /ieIiF0.
【17話】
「…地球人が温厚なのが、何故なのかわかった気がする…」
マーリンはヤムチャに聞こえないように呟いた。
そのうっとりとしたマーリンの様子に満足そうな表現を浮かべるヤムチャ。
「気に入ったようだな、良かった良かった。まあ俺が作ったコーヒーのほうが数段美味いんだけどな!」
逆にマーリンも、ヤムチャが楽しそうに話す様子を見て嬉しくなる。


それから―
ヤムチャたちはしばらくこの数年間、何があったかお互いの報告をしあった。

とはいっても、マーリンはほとんど星々を行き来して戦ってばかりの毎日だったため、話のネタとしてはやはりヤムチャのほうが豊富だった。
最初は交互に互いの話をしていた二人だが、いつの間にかヤムチャが話し手、マーリンが聞き手という形になっていた。
「…というわけで、ミスターサタンとか言う地球人が今や2度も地球を救った空前絶後の大ヒーローになってるってわけ。笑えるだろ?」
マーリンはヤムチャの話にすっかり聞き入っていた。
まさに驚きの連続。
ヤムチャが言うには、あのフリーザなんて、もはや比較するのが馬鹿らしいレベルの戦闘の連続だったらしい。
次元が高すぎる話に、マーリンは中々現実を飲み込めないでいたが、次から次へと出てくるヤムチャの話にうんうんと聞き入る。
その話の中で、ヤムチャが一度死んだという話を聞いたときはさすがに驚いたが、
笑いながら話すヤムチャに呆れながらも今ヤムチャが生きている現実に安心したというかなんというか、よく分からない気持ちになった。

80:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:38 /ieIiF0.
【18話】
そして、話は更に遡り、ちょうどセルを倒したあとの話になっていた。
「…で、俺の修行仲間のクリリンがなんとそのおっそろしい人造人間と結婚しちゃうんだぜ!
当時は信じられなかった話だけど、今はあいつも幸せそうで何よりなんだ…って…………そういえば…」
ヤムチャはここまで話すと、マーリンを少し怪しい目で睨み始めた。
「な、なんだ…?」
ヤムチャの声のトーンが急に落ちて、マーリンは何もしてないのに何か悪いことをしてしまったかのような焦りを感じた。
「マーリン…お前この数年の間に…恋人とかは出来たの?…ていうか、結婚とかしてないよな?子供とかいたりしないよな…?」
ヤムチャが疑いの目で問いかけてくる。
最初は中々意味が飲み込めないでいたが、ようやくマーリンがヤムチャの言っている意味を理解する。
そして、元々大きくてキラキラしていた目が更に見開いた。
「……あ」
そして、はっとしたのかマーリンはその場で急に立ち上がった。
「……………忘れていた。ヤムチャ、急いでさっきの宇宙船に戻るぞ!」
「おいおい、ずいぶんと急だな。しかも何焦ってんだ?まさか……」
「いいから来い!」
マーリンはオドオドしているヤムチャの手を引っ張り、店を出ると猛スピードでマーリンは先ほどの宇宙船がある場所へと戻っていった。
かなり飛ばしたため、数分もしないで元の場所についた。
無言でヤムチャを引っ張ってきたマーリンに、ヤムチャはどう反応したらいいか迷っていた。
「なあ…そんな焦ってどうしたんだ。宇宙船に大事な忘れ物でもしたのか?」
「……ヤムチャ、先ほどの話で思い出した。お前に言わなければならないことがある…」
マーリンはヤムチャと顔を合わせないようにして言った。

81:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:43 /ieIiF0.
今日はこの辺でやめておきます。
SaiyanKiller1から読んでくれている方にとっては、結構気になるところだと思います。

それではおやすみなさい。
ってあれ…この板私しか小説投稿してない…?w

82:Classical名無しさん
08/12/05 07:10 .OyAtq7Q
いいと思います。

83:Classical名無しさん
08/12/05 07:12 .OyAtq7Q
これ読むのが楽しみです

84: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 13:27 k2bqoOiM
俺は最強への道を読んだでかなり爆笑した。
でも人造人間編がない、なら俺が書きたいと思いました。
なので書こうと思います。だが最強への道や最強の道Zとは違って
ヤムチャが1000人になったのは人造人間編前でなったということです。



85: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 14:18 k2bqoOiM

第一話「ヤムチャが1000人!そこにいるのは仙人」

人造人間との戦いまで、あと一年。
Z戦士達は人造人間との戦いに備え日々、修行をしていた。
そんな中、一人の男がドラゴンボールを集めていた。
「へへっ、この願いが叶えば、人造人間が来ようと恐れることはないぜ!」
そうヤムチャである。彼はカプセルコーポレーションからドラゴンレーダーを持ち出し
気を消しながらドラゴンボールを探しているのである。
そして八個のドラゴンボールを集め終えた。
「いでよ、神龍。そして願いをかなえたまえ!」
バリバリバリ!ヤムチャが合言葉を言うと辺りが真っ暗になり
巨大な竜が現れた。この竜が神龍である。
神龍が願いはなんだと聞く。
「俺をあと、999人増やしてくれ!」
「了解した」
そして、ヤムチャが1000人になった。
神龍がいなくなりドラゴンボールが八個それぞれ別の場所に飛んでいった
「はっはっはー!もう誰も俺に敵う者はいない!」
笑うヤムチャ達、しかし、すぐに気を消して隠れ家に戻った
「皆を驚かせるのは一年後だ・・・」







86: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 14:41 k2bqoOiM

第二話「悟空もビックリ!ヤムチャ達1000人」

ヤムチャが1000人になってから一年後、人造人間襲来の日
悟空、悟飯、ピッコロ、クリリンが島の待ち合わせ場所に向かう
「な、なんだありゃ?」
「や、ヤムチャさんだ!」
ビックリしながら待ち合わせ場所におりる悟空達。ヤムチャは事情を説明した。
ちなみにヤムチャ達は皆に会う時は一人だけ会っていたのである。
なにも言わないピッコロ、頭を拭いている天津飯。ブルマは怒り狂っている。
「ヤムチャさん達を他の場所に誘いださないと島の人達が見たらショック死するかも知れませんよ・・・」
「そうだな・・・」悟飯がこっそりと悟空に言う。
クリリンは話を変えようとブルマが抱いている物体に注目した。
「そ、そんなことより俺はブルマさんが抱いている物体に驚いた・・・」
ヤムチャ達よりも!?悟空達のほとんどがそう思った。
「父ちゃんはベジ―タだよな、トランクス」
「な、なんでそんなこと知ってんのよー?ビックリさせようと思って
誰にも言わないでおいたのに・・・」会話がブルマの赤ちゃんの話題になりはじめ
しだいに無視されはじめたヤムチャ達。仕方ないのでヤムチャ達は「UNO」をやりはじめた。
次話「現れた人造人間。UNOをやり続けるヤムチャ達1000人に続く

87: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 15:07 k2bqoOiM

第三話「現れた人造人間。UNOをやり続けるヤムチャ達(1000人)」

悟空達の前にスカイカ―に乗ったヤジロベーが現れた。
ヤジロベーは仙豆を渡すとスカイカ―に乗りすぐに帰って行った。
だがヤムチャ達の攻撃によりスカイカ―ごとヤジロベーが打ち落とされた。
「けっ、きたねぇ花火だ」
不快そうな顔をしながらヤムチャが言った。
「なにやってんですか!ヤジロベー、せっかく仙豆届けてくれたのに!」
ヤムチャに向かってクリリンが言う。
「だって人数分ないんだぜ?俺達の分が足りねえぞ」
「そんなに仙豆ありませんって!普通に考えてくださいよ」
ヤムチャがヤジロベーを攻撃したのは仙豆を人数分届けなかったからかと思う悟空。
「全部、俺達の分だとしても全然足りねえし・・・」
「貴様らで全部食べるきか。それよりもヤジロベーを助けに行ってこい」
しぶしぶ、ピッコロの言う通りに助けにいこうとする一人のヤムチャ。
しかしヤムチャが空を飛んだ時、何者かのエネルギー波が向かってきた!
あわてて攻撃するヤムチャ。
「ふう驚かせやがって・・・」
そう言いながらヤムチャは死んでいった。




88:Classical名無しさん
08/12/06 03:54 f34AC9Ow
盛り上がってきたねぇ
続き楽しみにしてるよ

89: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/06 12:49 Tu9pnu5E
>>85の八個のドラゴンボールというのは入力ミスです。
ドラゴンボール七個の間違いです。

90:ヤムチャ最強への道3
08/12/06 13:13 Tu9pnu5E

第四話「恐怖!怯えるヤムチャ達320人+(679人)」

「あっ、ヤムチャが!」
「ついに出やがったな。人造人間!」
急いで島にある町へおりる悟空達。悟飯は打ち落とされたヤジロベーを助けにいった。
ヤムチャ達679人が悟空達についていった。他の320人のヤムチャ達は残った。
ブルマは残っているヤムチャ達を見ながら聞いた。
「あんた達は行かないの?」
その質問にすかさずヤムチャ達は答えた。
「あたり前だ。行かん!」
「い、行かんって、こういうときは一人でも多い方が・・・仲間も地球もピンチよ」
「だろうな・・・」
「だろうなですって!あんた達なんとも思わないの!サイテ―よ!」
「恐いんだよ、俺達は・・・」
「ど、どうも・・・」ブルマが申し訳なさそうに言った。
次話「襲いかかる人造人間。ヤムチャ達679人+(320人)」

91:ヤムチャ最強への道3
08/12/06 13:42 Tu9pnu5E

第五話「襲いかかる人造人間。ヤムチャ達679人+(320人)」

町へ降りた悟空達。クリリンは近くにいた男に怪しい奴を見なかったか聞いた。
「おいっ、怪しい奴見なかったか!?」
「み、見た。あそこに・・・」男は指をさしながらいった。
「きゃー、誰か助けてー!」
「へへへ、今からお茶しなーい?」
その方向には3人のヤムチャが女性をナンパしていた。
クリリンは見なかったことにして人造人間の捜索を続けた。
一方、他のヤムチャ達は真剣に人造人間を探していた。
「くそっ、どこだ?」そこにキャーと女性の悲鳴が聞こえる。
ヤムチャ達がそこの場所に向かう。
それに気づいた人造人間達。だがとりみだすことはなかった。
「エネルギー値が異常に高い人間が何百人も近づいてくる。サーチシステムの故障か?」
「故障ではありません。私も同じ反応をとらえました」
ヤムチャ達がそこにかけつけた時には3人の人間が殺されていた。
そこで人造人間達はヤムチャ達に襲いかかった。
次話「かけつける悟空達。余裕のヤムチャ達679人+(320人)」

92:ヤムチャ最強への道3
08/12/06 14:09 Tu9pnu5E

第六話「かけつける悟空達。余裕のヤムチャ達679人+(320人)」

人造人間達は二人ヤムチャの首を掴み腹に手をつきさした。
いきなり現れた人造人間達を前にあっけにとられるヤムチャ達。
ここで七人のヤムチャが逃げ出した。老人の姿をしている人造人間は
それを逃すまいとエネルギー波を放った。七人の全てのヤムチャが爆死した。
そこに一人のヤムチャが動いた。「特大繰気弾!とうっ」
巨大な繰気弾を人造人間に向けてなげる。だが片手で跳ね返されてしまった。
跳ね返った繰気弾がヤムチャにせまりくる。
「くっ、こうなったら天津飯!技を借りるぜ!排球拳いくわよー!」
数人のヤムチャが協力し排球拳を使った。
「ワン!」
「ツー!」
「アタ―ック!」
空中に投げられた繰気弾を最後のヤムチャが人造人間に向けて叩き落とす。
だが運悪くそこにかけつけててきた悟空達もまきぞえになってしまった。
「ゆ、許さん・・・絶対に許さんぞ虫けら共!」
怒った天津飯が気功砲を放つ。ここで20名のヤムチャが命を落とした。
次話「悟空対人造人間。ヤムチャ達652人+(320人)」

93: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/06 14:12 Tu9pnu5E
今日はここで終わりです。
ちなみに>>87のあわてて攻撃するといのは防御の間違いです。
マジでごめん・・・

94:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/06 23:40 2MGc1fDM
>>80の続き

【19話】
「先ほどの話…?ああ、子供とか結婚とかの話か。……って………え?」
ヤムチャは嫌な予感がした。
これだけは絶対にないと思っていた。
しかし、マーリンの言葉はヤムチャの予感を確信させる。
「あの…その…ヤムチャ…。わたし…さ、実は…子供が、いるんだ」
「………なんだってえええええええええええ?!?!!!!!!」
マーリンは恥ずかしそうに下を向いていた。
森中の野生動物が、ヤムチャの大声に驚いてほとんど逃げ出した。
「そ、そんなに大声をあげなくてもいいじゃないか…」
「………」
さっきまで暖かかった風が少し肌寒く感じられる。
ヤムチャはしばらく硬直し、それに対しマーリンは落ち着かない様子だ。
しかし、ヤムチャはこの言葉の意味を大きく勘違いしていたことにまだ気付いていない。
「……俺はこの数年間、ずっとお前を信じて待っていたんだぜ?女も作らずに、いや、遊んだりぐらいはしたけど…。…それなのにマーリン、お前ってやつは…その辺の男と……」
ヤムチャの気がどんどん上がっている。
どうやらかなり怒っているようだ。
それを見て何に怒っているか分からず、ポカンとしていたマーリンだったが、やっとヤムチャが勘違いしていることに気付いた。
「えっと…ヤムチャ……何か勘違いしていないか?」
「か、勘違い…?勘違いもクソもあるかよ!どう言い訳してくれるか楽しみだぜ、他の男との子供が出来た言い訳をな!」
ヤムチャが大声で怒鳴りつけると、マーリンはやっぱり…と言った表情をし、苦笑いをしながらやれやれと首を横に振る。
「どうやら言い方が悪かったらしい…。ヤムチャ……子供というのは……わたしと、…お前……ヤムチャの子だ」

「…………………………は?」

95:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/06 23:55 2MGc1fDM
【20話】
空気が凍りついた。

ヤムチャは、微動だにせず、目の焦点もどこにあっているか分からないような方向を見つめ、そのまま30秒ほどが過ぎた。
「…ヤムチャ?」
全く動かなくなったヤムチャを心配し、マーリンが肩をちょんちょんと指で触ると、ヤムチャの目の焦点が彼女に戻る。
「あ…マーリンか。悪い悪い、今立ちながら寝ていたみたいで夢を見ていたんだ。なんかその夢の話だと俺とマーリンの間に子供がいるとかいう話でよ…あははっ」
ヤムチャはいつもの陽気なヤムチャに戻ったようだ。
「ふふ、信じられないようだな。それは夢ではないぞ。わたしは出産した……お前との子をな」
なかなか現実を受け入れられないヤムチャに、マーリンは笑いながら言った。
「………マジで?」
ヤムチャは耳を疑う。
自分に子供がいるだなんて、実感がまるで沸かないのだろう。
「だって……だってマーリンと俺は…その……一回しか………ねえ?」
「…と、言われてもな……わたしはどう答えたらいいのか……結果こうなってしまったのだから、そういうことなのだろう」
「…本当に、俺の子なのか?」
「間違いないと言って良い。そもそも、わたしの性格上、他の男に体を許すわけがないのはヤムチャが一番よく分かっていそうなものだが…」
確かにヤムチャとマーリンが交わったのは精神と時の部屋での一回のみだ。
しかし…偶然にもマーリンはその一回でヤムチャとの子を胎内に宿していた。
「なんで…そういう大事な事をもっと早く言わないんだよ!」
ヤムチャは半笑い半怒りのような良く分からない表情でマーリンを問い詰める。
「その点はすまない…ヤムチャが急に現れたせいで、すっかり忘れてしまっていたのだ」
マーリンは指で頭をかきながらヤムチャに謝る。
「……で、まさか、お前が宇宙戦に忘れたものって………」
ヤムチャはそっと宇宙船に目をやる。
「ああ、わたしの子…シルフだ。当然ヤムチャ、お前の子でもある」
ヤムチャは目を白黒させながら、恐る恐る宇宙船の中を覗いてみた。

そこには……スヤスヤと眠るかわいらしい男の子が眠っていた。

その顔はマーリンのような気品ある感じもするが、ヤムチャにあるような野心も纏っているように見える。

96:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/06 23:59 2MGc1fDM
【21話】
ヤムチャはシルフの顔を見た瞬間、これは自分の子だとすぐに分かった。
「これが…俺の…いや、俺とマーリンの……子…」
「そうだ。こう改まってみると、少し照れくさいものだな…ふふふ」
眠る我が子を片目に、宇宙船を覗き込むヤムチャの横にマーリンもやってきた。
すると、タイミングがいい事にシルフは目をパチパチやりながら起き上がった。
「お母さん……?あれ?ここどこ?」
寝ぼけているのか、シルフはフラフラしながら立ち上がり、宇宙船を降りる際に転びそうになる。
「シルフ、ここは地球だ。今日はお前にとって最高の日になるだろう。父さんに会えるぞ」
マーリンははっきりした口調でシルフに言うと、シルフの細かった目が急に見開いた。
「…えっ!地球…?父さんに…会える?」
我が子の質問に対し、マーリンはうんうんと頷くと、シルフはキョロキョロあたりを見渡した。
そして、すぐ近くに立っていた男の姿が目に入る。
その男とシルフはしばらく目が合った。
「……え?」
シルフは、まさか…まさか…と思い、呆然とする。
照れたような顔でその男はしゃべりだした。

「よ、よう…シルフ…大きくなったな…!いや、小さい頃のお前は知らないけどさ…はは」
ヤムチャが子供には通用しなそうなギャグを言っていたが、シルフの耳には入っていなかった。
「―なの?―さん…なの?お父さん…なの?」
少年は既に泣きそうな顔をしている。
ヤムチャはその少年を優しく抱きかかえると、顔を近づけて言った。
「ああ…そうだ、俺がヤムチャだ。…今まで長い間会えなくてすまなかったな、シルフ」
そのガッチリとした腕に抱かれたシルフは、この人がヤムチャであるということを疑うことすらしなかった。
「お父さぁぁああぁぁんッ!!!」
そして、今まで抑えてきた気持ちが全て開放され、それは少年の大量の涙へと形を変えた。
ヤムチャは少し驚いたような顔をしたが、抱き上げているシルフの頭を強く、優しく撫で、長い間抱きしめていた。
その様子を、マーリンはニヤニヤしながら見つめていた。

97:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 00:12 oPl7hCEg

【22話】
―数時間後。
辺りは薄暗くなったが、とある荒野の洞窟だけはいまだに明るさに満ちている。
ゴウゴウと焚き火が燃える中、3人の人影がそこにはあった。
狭い場所だったが、その狭さがあえてちょうどよかったのか、そこにいる3人は仲良さそうに鍋を小さく囲むように座っていた。
「どうだ、シルフ。その料理は地球でマーリン…いや、母さんが最初に食べたものと同じものだ」
ヤムチャは喋りながら鍋の中身を皿によそい、それをシルフに手渡す。
「最高だよ!お父さんは料理も上手いんだね!」
「このぐらい普通さ。地球にはまだまだ美味い食い物があるんだぜ」
「本当に!?これより美味しいもの食べたら気絶しちゃいそうだ」
「はは…大袈裟な奴だなー」
シルフはがっつくようにスプーンを口に運び、口の中のものが飲み込み終わるとヤムチャに話しかけていた。
食べては話し、食べては話しを繰り返し、忙しそうにしている。
たまに動作を急ぎすぎたせいか、変なところに詰まらせ、むせかえる姿を見てヤムチャとマーリンは大笑いをする。
お互い違う環境で何年も暮らしていたので、いくらでも会話は弾む。
尽きることのない雑談にすっかり時間を忘れ込んで話し込んでしまい、気付くとシルフは眠り、マーリンも少しウトウトしていた。
「眠いか?マーリン」
「いや……平気だ。地球時間にしてあと二時間は大…丈……」
と言いながらヤムチャにもたれかかり、眠りに落ちてしまう。
ヤムチャはマーリンが眠ったのを確認すると、彼女の肩を優しく抱えながら毛布をかけ、
生まれてから初めて感じるこの温もりと、本当の幸せを噛み締めながら共に眠りに落ちるのだった。

98:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 00:35 oPl7hCEg
【23話】

ゴゴゴゴゴゴ…

「…ん…」
マーリンは地響きによって目を覚ます。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
マーリンは昨日まで惑星制圧の任務をぶっ続けでやっていた疲れが溜まっていたせいか、二人よりだいぶ遅れての起床となってしまった。
体には暖かい毛布がかかっており、それにはまだわずかだがヤムチャの温もりが残っていたように感じる。
目をゴシゴシやりながら周りを見渡すと、ヤムチャとシルフがいない。

初めてあの洞窟で迎えた朝に似ているこのシチュエーションがとても懐かしく、思わず修行に明け暮れた日々を思い出した。
ふと外で大きな気を感じる。
この気の感じはヤムチャのものだろう。
マーリンはヤムチャが何をしているのか大体想像がついた。

「お父さんすごいや!それはなんて技なの?」
シルフの大声は、洞窟内にいたマーリンの耳にも入る。
マーリンはフラフラとした足取りで洞窟の入り口まで歩いていった。
自分の真上にある太陽がやたら眩しく感じる。
そしてその光が、彼女の目を優しく覚ましてくれた。
少し遠くからヤムチャの声が聞こえる。
「界王拳2倍、って技だ。無理をすれば30倍以上まで上げられるけど、1、2分持つのがやっとってところだな。それに使い終わったら反動でしばらく動けない。使いこなせるのはせいぜい20倍ってところか」
シルフはヤムチャが何を言っているかはよく解らなかったものの、この男はスゴイということは、近くにいるだけで痺れるぐらいその肌で感じていた。
もちろんマーリンも。
その赤いオーラを纏うヤムチャの姿は、マーリンの記憶の中で、初めてヤムチャが自分の前で界王拳を使った時のそれと被った。
そして自然に握りこぶしに力が入り、無性に体がウズウズとしてくる自分にハッと気付く。
起きたばかりで、それに昨日までの戦闘で体の疲れはまだ残っているはずなのに、何故かマーリンは動きたくてしょうがない衝動に駆られる。
まるで何かに操られているかのように、自分の意識が戦闘態勢へと変わっていくのが分かったマーリンだったが、こればかりはサイヤ人の本能的なものであって、中々制御できない。
もちろん、それを促しているのは目の前から感じられるヤムチャの強さ…それだけだった。

99:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 00:48 oPl7hCEg
【24話】
界王拳を解いたところで、ヤムチャはマーリンの姿に気付く。
「よう、マーリン。今ので起こしちまったか?」
「お母さん、おはよう!」
ヤムチャは悪い悪いと言わんばかりに手で謝罪のジェスチャーをする。
「気にしなくていい。あんな地響きがしていたら起きない方が不自然だ。それよりヤムチャ、久々にわたしと組み手とやらをしてみないか?宇宙には強い者が

いなくて退屈していたのだよ…ふふ」
マーリンはそう言いながらサッと戦闘の構えを取った。
ヤムチャはマーリンの誘いに乗るか乗るまいか頭をかきながら迷っていたようだが、やがて決心をしたようだ。
「いいのか?…言っておくが、俺は腕をあげたぞ」
ヤムチャはニヤリと表情を変えた。
そして亀仙流の構えにアレンジを加えた独自の構えでマーリンの前に立ちふさがる。
対するマーリンもそれを見て笑い返す。
「ふふ…面白いっ!言っておくが手加減は無用だ、本気で来い!」
そう言いながら指をパキパキと鳴らすと、マーリンは気を解放し始めた。
「はあああああ…ッ!」
「ッ…さすがに凄い気だな…ていうか俺相手になるのか…?」
まるで地下から湧き出る水のようなその底知れない気に、さすがのヤムチャも表情が曇る。
「…シルフ、離れていろ。200…いや、400メートルぐらいな」
ヤムチャは姿勢を低くし、シルフに離れるように促す。
それに対しシルフは素直に頷き、急いで二人の間から離れていった。
マーリンとヤムチャの間に走る緊張感はシルフにもビリビリと伝わっていたようだ。

100:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:23 oPl7hCEg

【25話】
「いくぜマーリン!対人で使うのは久々だな…狼牙風風拳ッッ!」
「ふふ…その技は見切っている!狼牙風風拳によっていやと言うほど痣(アザ)ができたのでなっ!」
マーリンがそれを言い終わるや否や、ヤムチャは超スピードでマーリンに突っ込んでいった。
シルフの目では、その速さを捉えることが出来なかったが、ヤムチャがマーリンの方へ向かっていってることだけはかろうじて理解できた。
ヤムチャの移動によって、走った道には砂嵐が巻き起こる。
その様子をシルフは息を飲んで見つめていた。

超スピードな上に砂嵐までもが巻き起こり、ほとんど肉眼ではヤムチャの姿を捉えられないはずだがマーリンは焦りもせず、表情一つ変えずに集中していた。
「そりゃああああッ!!」
砂嵐の中から突然ヤムチャの姿が現れ、その直後にヤムチャの拳がマーリンの目の前までそれが迫る。
それと同時に、マーリンの目付きが変わった。
「受けてやろう…お前の狼牙風風拳を!」

ドガガガガガガガッッ!
バキッ!ドガッ!

激しい攻防のように見えるが、ヤムチャの狼牙風風拳を完璧に全てガードするマーリン。
次から次へと拳を繰り出すものの、全て直前でマーリンに防がれてしまい、思うように攻めれないヤムチャ。
「チィッ!!」
一度もクリーンヒットすることなく、ヤムチャは再びマーリンから距離をとった。
「さすがに隙がないな…今みたいな単調な攻めじゃ通用しなそうだ」
ヤムチャは顔に汗を浮かべながら言った。
「つまり、腕を上げたのはヤムチャ、お前だけではないということだ」
マーリンは腕でヤムチャの攻撃を全て受け止めたのにも関わらず、その腕には傷一つない。
それどころか、殴っていたヤムチャの拳の方が逆にヒリヒリと痛んでいた。
「へへ、そうかい。それじゃあこいつはどうだっ!」

すると、ヤムチャは何かを閃いたのか、再びマーリンへと突進していった。

101:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:33 oPl7hCEg
【26話】
「ハイーーッ!」
マーリンは再びヤムチャの単純な突進に、怪訝そうな表情を見せたが、やがてその表情も不気味な笑みへと変わる。
「…というのは残像で、本物のお前は後ろだろう?…そこッ!」
ヤムチャの残像拳を見切り、マーリンは振り返らずに気を探り、後ろにいたヤムチャに肘打ちをくらわす。
が、ヤムチャはそれを顔面の直前で受け止めると、体勢を低くしてマーリンの足元目掛けて蹴りを入れる。
足元がお留守ではないマーリンは、最低限の跳躍でそれを避けると、クルリと体を回転させ、その遠心力を利用しフック気味のパンチを繰り出した。
「なっ…!!」
これは受け止めたらまずい。
変則的な動きで、こんな攻撃を予想できなかったヤムチャ。
恐らく、普通に受け止めても致命的ダメージを受けることになる。
単純にパワーだけなら確実にマーリンの方が上なのはヤムチャはよくわかっていた。
界王拳を本気の状態まで上げればどうにか受け止められそうだが、とてもそんな時間はない。
「チッ…!」
ヤムチャは脳内でとっさにこれを判断し、舌打ちすると空中へと飛び上がった。
「逃が…っ!」
逃がすか、と言いかけたマーリンの口が思わず止まる。
マーリンは空中にあがったヤムチャを追いかけようと、足にグッと力を込めたが、なんとヤムチャは2メートルほどしか宙に浮かんでなかった。
そう、ヤムチャが空中へ飛び上がったのは攻撃を回避するためもあったが、次なる攻撃に転じるためでもあったのだ。
「狼牙風風“脚”だ!」
「……!」
ズガガガガガガッ!
ヤムチャは武空術で空中に静止した状態で、凄まじい蹴りの連打を仕掛ける。
パワー、スピード共に以前のヤムチャからは想像がつかないほどの攻撃だ。
「ハイハイハイハイハイハイッ!ツリャアアアッッ!」
独特な掛け声と共に次から次へとヤムチャの蹴りがマーリンに向かって繰り出される。

102:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:47 oPl7hCEg
今日のところはこの辺で寝ます。
戦闘シーンは書くのが難しい…。
頭の中で描いた戦闘を、文章で読者様方にそのまま伝えるのは至難の技ですね。
◆Nt3ni7QiNwさんも、頑張ってください!

それでは。

103:Classical名無しさん
08/12/07 18:49 /TOnHu4U
これからどうストーリーが動くか楽しみ

104:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 01:06 HmL8Bl5A
【27話】
マーリンはその蹴りを全てガードしているが、攻撃が速すぎて反撃する隙がなかなかなかった。
距離を取って立て直してしまえばよかったのだが、彼女のプライドはそれを許さない。
意地でもこの場に留まろうとするマーリンに、ヤムチャは容赦せず蹴りを打ち込んでいく。
クリーンヒットもしてないし、ガードも全て間に合っているが、防戦一方では気分が悪いのか、段々と彼女の表情に余裕がなくなってくる。
「…っ!こ…の…ぐらいッ!!はぁあああッ!!」
勢いよく動いていたヤムチャの足が止まる…いや、止められたのだ。
もちろんマーリンの手によって。
「な…止めやがった…!」
マーリンはヤムチャの足をしっかりとつかみ、ジャイアントスイングのようにしてヤムチャをグルグルと回す。
遠心力の勢いでヤムチャは身動きができない。
そして数十回転させた後にマーリンは手を離す。
言うまでもなく、ヤムチャは無抵抗に数百メートル先まで吹っ飛んだ。
岩壁を貫通し、地面を数回バウンドしたところでようやく身動きがとれるようになったヤムチャ。
すぐに身構えるが、マーリンの姿が見えない。
「ここだ、ヤムチャ」
ヤムチャの真横からマーリンの声が耳に入った。
「は、速い…な」
吹っ飛ばされた直後に起き上がったつもりなのに、彼女は既に目の前に居た。
ヤムチャの体勢が整わない内にマーリンは攻撃を仕掛ける。
「さっきのお返しだ…今度はわたしの狼牙風風拳をくらうがよい」
マーリンはニヤりと笑い、高速でヤムチャに殴打のラッシュをかける。

ズドドドド…!ガキッ!バゴ!

対するヤムチャも最初は避け切れなかったが、体勢が整うと本場の狼牙風風拳で応戦する。
目では捉えられない超高速な攻防が続く。
そしてお互いに結局1発もクリーンヒットしないまま、両者は再び距離をとった。

105:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 02:37 HmL8Bl5A
【28話】
「準備運動はこれぐらいでいいか?ヤムチャ」
マーリンは息一つ切らさずにヤムチャに向かっていった。
「ああ、そうだな」
ヤムチャも負けてはおらず、余裕の表情を浮かべる。
「そろそろ本格的にこいよ。あくびが出ちまうぜ」
ヤムチャは人差し指をマーリンに向けると、クイクイっとやり挑発する。
「……」
その挑発にムキになって突っ込んでくると思ったヤムチャだったが、マーリンはその挑発に乗らずに、ただジッと身構えていた。
この数年で突っ込み癖は直ったか…と少し感心させられたヤムチャ。
しかし…それは…彼女は…マーリンはただ構えていただけではなかった。
「っはぁあ!!!」
唐突だった。
ヤムチャが気づいた頃には目の前に自分に向かって迫ってくるエネルギーの塊があった。
なんの前触れもなくマーリンの手の平からヤムチャに向かってエネルギー波が放たれたのだ。
そこまで威力はなかったが、ヤムチャは驚いていた。
「っ……今の…どうやって…!」
エネルギー波が予想できなかったヤムチャは、咄嗟に上に避けるしかなかった。

ドゴォオーンッッッ!

真下で爆発が起きる。
威力がないとはいえ、直撃したらヤムチャとは言えどただでは済まない体になっていただろう。
空中でうまく避けれたとホッとしたヤムチャだったが、マーリンの狙いはそのエネルギー波の不意打ちではなかった。
遥か下の地面に出来た影に、自分の物と、もう一つ自分のものではない人影が存在するのを確認し、ヤムチャは全てを悟った。
飛び上がった先…ヤムチャの背後はマーリンが待ち構えていたのだ。

106:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 02:41 HmL8Bl5A
【29話】
「な…後ろ……!」
ヤムチャがそれに気づいた頃にはマーリンの蹴りがヤムチャの背中を完璧に捉えていた。

メキッ!

「そーりゃああ!!」
鈍い音と共に、マーリンの足はヤムチャの背中にめり込むと、彼女はそのまま掛け声と共に、地面にむかって足を振り抜いた。
何かが壊れるような音が聞こえたのと同時に、背中に激痛が走る。
「グ…ハッ…アア…!」
声にならない声をあげることが今の彼に出来る精一杯だった。
ヤムチャは蹴られた瞬間に意識が遠退き、自分が今下に落ちていると言う状況を理解できずにいた。
上手く呼吸が出来ない。
ヤムチャが時速数百キロはあろうかという勢いで地面へと落ちていく。
「……だあああああ…ッ…まだだ!」
だが、地面寸前でヤムチャの意識と体が一致した。
そして墜落ではなく着陸という形で再び地面に足をつけるヤムチャ。
長年の武術経験からか、ヤムチャはマーリンに蹴られる寸前に無意識のうちに瞬間的に背部の気を高めていたため、致命傷だけは避けていたのだ。
かといってかなりのダメージを受けたことに変わりはないが。
数秒後にマーリンもゆっくりと着地してきた。
「さすがだな…エネルギー波を避けるのはわかっていたが、あの蹴りをくらって持ちこたえるとは…。だがダメージは大きいようだな、ヤムチャ。ふふ…早くも勝負あったか?」
腕を組ながら笑みを浮かべるマーリン。
ヤムチャはそれを見て口から血の混じった唾をペッと吐き出す。
「今のエネルギー波……普通じゃなかったな?」
かなりのダメージを負い、今後の戦闘に支障がないと言えば嘘になるヤムチャだったが、不適にも笑い返した。

107:ジュウ
08/12/08 06:40 TSsCU3GI
おもしろ杉~

108:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:24 HmL8Bl5A
【30話】
「…さあな」
マーリンはとぼけたように首をかしげる。
だがヤムチャは続けた。
「俺はお前がエネルギー波を打つなら、打つ前に手に宿った気を感じとり、あの程度ならもっと余裕でかわせたはず…というか打つ前に分かったはずだ。
だがお前からはその気の『溜め』を感じられなかった」
余裕を見せていたマーリンだったが、ヤムチャが喋り出すと表情が強張ってきた。
押し黙っているマーリンに、ヤムチャはなおも続ける。
「お前はもしかして、外見の気を変化させずに…内面的な気を高めることができるのか?エネルギー波のあとの蹴りにしてもそうだ。
後ろから気配は感じなかった…。
お前は高速で俺が動く方向を予想し、そこで気を消して俺の背後で待ち構えた。そして体の内側に溜めていた気を一瞬で体に宿らすとし、俺がお前の気を察知する前に俺を蹴った。
つまり、お前が気を入れたのは、蹴りが俺の体に触れる直前ってことだ。察知されたら避けられたりガードされたりしちまうからな。どうだ?違うか?」
単純に、気のコントロールならヤムチャとて達人レベルだ。
だが…ヤムチャとマーリンの違いはそのコントロールの『速度』だった。
普通、エネルギー波を打つにはヤムチャの言うように気の溜めが要る。
その溜めの動作をいくら短くしても、気を探れる能力があるものなら、相手がエネルギー波を打つ前からそれを察知できる。
だが、今のマーリンの攻撃はその次元の域にはいなかった。
体の内側…つまり相手に悟られないように気を体内で上昇、凝縮させ、外見の気を変化させずに、内面的な気を高める。
そして、凝縮されたその気を瞬時に外…つまり、体の一部、あるいは全体の強化や、エネルギー波やらへと変化させ、放出させるという技術だ。
その気のコントロールにより、蟻のようなレベルまで気を消したかと思えば、次の瞬間にはスーパーサイヤ人並のパワーでの攻撃を繰り出す…。
当然のことながら、気を察知しながら戦うヤムチャを初めとする地球人たちでは気を読むことが出来ず、相手の場所も非常に分かりづらい有効な手段だ。
ヤムチャがマーリンの攻撃が読めなかった答えは、この変則的なマーリンの気のコントロールだった。

109:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:25 HmL8Bl5A
【31話】
「ふっふっふ……あははははっ!」
ヤムチャの説明が終わると、マーリンは甲高い声で笑い出した。
「何がおかしい?俺の考えは間違っていたか?」
「ヤムチャ、お前は本当に凄い男だ…わたしがお前対策に長い時間かかけて編み出したこの技を…たった数秒のこの手合わせで見抜くとはな…」
言葉では自分の技が見抜かれたことを褒めているが、それでもマーリンの表情には再び余裕が戻っていた。
ヤムチャはそのマーリンの表情を見て自分の目を細めると、再び戦闘の構えを取る。
「だがな、ヤムチャ……わたしはお前のことをよく知っている。わたしがこんな小細工をしたところで、一瞬で見抜かれるだろうと思っていた…」
マーリンもヤムチャが構えたのを確認すると、同じく戦闘態勢に入る。
「しかし…この技は“見抜けても避けれない”技なのだよ…ふふ、残念だったな」
「………」
たしかにマーリンが同じような攻撃をしようと、相手を『気』で感じて動いていては、分かっていても今のヤムチャに攻撃をかわすことは難しいだろう。
いわゆる「詰み」の状態にさせたつもりだった…だが。
だが、次に起こった展開は彼女の予想とは違っていた。
ヤムチャの焦ったような表情を見られると思っていたマーリンだったが、ヤムチャはそんな様子もなくただただ自分に向かって真っ直ぐと構えている。
「…もうその攻めは俺には通用しない。やってみれば分かる」
静かにヤムチャが言葉を発する。
今度ははっきりと分かる、余裕の表情を浮かべて。
「…では、そうしてみよう」
予想外の展開にマーリンは面白くなかったが、気を取り直して再びヤムチャに攻撃を繰り出そうとしていた。
ヤムチャに悟られないように、静かに体の奥でエネルギーを溜める。
じわりじわりと体の芯にエネルギーが充満してくるのを感じる。
それと同時にヤムチャを見つめ、彼の気を察知する…全身に気が張り巡らせているようだが、足の方にパワーを集中しているみたいだ。
最初の攻撃をまず避けて、その後自分から一本取ろうというところなのだろうと解釈すると、マーリンは頭の中でどうヤムチャの不意をうとうか作戦を練っていた。

110:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:31 HmL8Bl5A
【32話】
だが、ヤムチャへの意識が疎かになったほんの一瞬…目を放した隙に、ヤムチャの気配が自分のすぐ近くにいることを感じた。
「油断したなっ!」
「…っ…!」
ガードしようとするが、気のコントロールが間に合わなかった。

ドス…!

気付けば腹に、ヤムチャの拳がヒットしていた。

「………ッッ!」
胃液が口から出そうになるほどの激痛。
毎日鍛えているとはいえ、久しぶりにまとものパンチをくらったマーリンは苦しそうに顔を歪める。
「誰がこっちから攻撃しないって言った?」
先程とはまるで逆の展開。
自分の頭上からヤムチャの声が聞こえる。
「チィイ!」
腹を殴られたマーリンだったが、苦し紛れにヤムチャに向かって手刀を繰り出した。
だが、いとも簡単に受け止められてしまう。
怯まずに逆の手でアッパーを狙うが、これも紙一重で空を切る。
腹へのダメージが大きく、いつものように技に切れが出ない。

だが、マーリンは接近戦となるのを密かに狙っていたのだ。
「…はぁあっ!!」
ヤムチャとマーリンの間は1メートルもない。
その至近距離でマーリンは先ほどと同じ要領で、溜まっていた内面的エネルギーで、エネルギー波を放つ。
ヤムチャは避けれるはずもない。
そのエネルギー派はヤムチャを吹っ飛ばし、はるか遠くへと飛んでいった…かのように見えた。

111:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:33 HmL8Bl5A
【33話】
だがそれは違う。
当たったにしてはまるで手ごたえがない。
「あいにく心理戦は得意でね。あのタイミングでエネルギー波がくるのは分かっていた」
「!!」
今度は左からヤムチャの声が聞こえた。
声が聞こえた方向を向くと、ヤムチャはすぐ隣に腕を組みながら待ち構えていた。
「それにしても残像拳に引っかかるとは、さすがに焦りすぎじゃないか?」
分が悪いと思ったマーリンは、足で地面を蹴り、大きく後ろへとジャンプするように下がり、ヤムチャとの距離をとった。
「何故避けられたのだ……」
マーリンはヤムチャに聞こえないよう、独り言をつぶやく。
そして、そこで腹を押さえながらがっくりと膝をついた。
マーリンは歯を食い縛りながら悔しそうにヤムチャを睨む。
「結構効いたみたいだな。気を全く変化させずに気を溜めるという発想まではよかった…俺には思いつかなかったぜ。
気を察知して戦う俺たちにとっては、目を瞑って戦うよりやりにくいぐらいだ」
ヤムチャはあえて攻撃の手を止めて続ける。
「だがな…この技の弱点は、内面的な気を溜めている間は、外見の気を自由に変化させれないことだ。
つまり、内面の気を溜めている時にピンチの局面が突然訪れたら…頭では分かっていても対処ができない。
さっきみたいにお前が気を下げた状態で、気を入れた状態の俺に殴られたらどうなるかわかるよな。絶対的なパワーの差があってもこの通りだ」
ヤムチャの指摘に対し、びっくりしたような顔でマーリンがヤムチャを見つめる。
「なん…だと?そんなはずは……」
「じゃあなんで、戦闘力がお前より低いはずの俺の攻撃で、そこまでダメージを受けている?」
「……!」
口では強がってみるものの、冷静になって考えてみると確かにそうだった。
ヤムチャの気配を感じてから、防御に移るまでに時間がかかり、その時受けたダメージも大きい。
マーリンは言いかけた言葉を言うのをやめ、下へと俯く。

112:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:40 HmL8Bl5A
34話】
「それに意識が内面エネルギーの方へと偏りすぎてしまって、相手の気を完全に把握しようとしても意識がついていかない。
普通にやって相手の気を100%読めるなら、今のお前は40%ぐらいか。残像拳に引っかかったのもそのせいだろう」
ヤムチャはマーリンの方へ近づきながらなおも続ける。
「もっとも…俺が挑発して、お前がその技を確実に使ってくるって分かっていたから、今はたまたま回避できただけで、
戦闘中に上手くコンビネーションとして織り交ぜる分にはカナリありだと思うぜ…」
「……そうか…ふふ、そうか…」
「…俺の言ってることはおかしいか?」
マーリンの不気味な笑いにヤムチャは質問する。
「おかしいのではない…嬉しいのだ。わたしはこの技をよく考えて編み出したつもりだった。だがお前はその技の隙を一瞬で見つけ、実際に破って見せた。
確かに気のコントロールに集中しすぎて、ヤムチャへの意識が薄れたのは事実だ。わたしに隙があったとは言え、それを読むお前のブジュツの腕は凄まじい…
わたしが認めただけの男だ…」
「…おだてても何も出ないぞ」
「やはり、わたしにはこういった小手先の技を使って戦うのは性に合っていないらしいな…っ!できれば…できれば武術の腕だけでお前に勝ちたかった……!」

ボウッッ……!

マーリンの周りに赤いオーラが漂う。
そして、先程とは比べ物にならないぐらいにマーリンの気が膨れ上がり、ヤムチャはその気迫で一歩下がりそうになった。
「…勝たせてもらうぞ、ヤムチャ」


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch