たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27at ENTRANCE2
たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27 - 暇つぶし2ch50:Classical名無しさん
08/11/27 16:53 IgqJCoD6
支援

51:Classical名無しさん
08/11/27 21:23 Op4ApIU.
マーリンちゃん
URLリンク(yamnov.hp.infoseek.co.jp)


52:Classical名無しさん
08/11/28 22:57 YByTKg.2
ついにコンタクトか

53:Classical名無しさん
08/11/29 20:59 fM.ip9nA
普通におもしろい

54:Classical名無しさん
08/12/01 23:45 0DqanOXc
続きが早く読みたいです

55:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:09 BD4UM7Wo
【7話】
すると、どこからともなく返事が帰ってくる。
『ま……ま、まさか!…ありえるわけがない。その声は………ヤムチャ…!』
マーリンは狭い宇宙船で思わず立ち上が…れなかったが、中腰になり、キョロキョロと周りを確認する。
声が聞こえたのは夢かと思ったが、はっきりと意識があるのは自分でも分かる。夢ではない。
とすると、これは現実なのだろうか?
俄かに信じられないことではあるが、確かに自分の耳にはヤムチャの声が聞こえたのだ。
一秒たりとも忘れたことのない、この安心できる声。
聞き間違えるはずがない。
マーリンはヤムチャが一言話しかけただけで、声の主はヤムチャであると確信していた。
『ああ、ヤムチャだ』
ヤムチャは目をつぶりながら、落ち着いてマーリンの問いに答える。
どうやらしっかり声は行き届いているようだ。
『ヤ…ムチャ……どうやら本当にヤムチャのようだな…。今どこにいる!何故わたしの声が聞こえているんだ!そもそも、わたしは宇宙船の中なのだがどうやって話しかけているんだ!答えろ!』
『そう一辺に質問されてもな…何から答えりゃいいのか』
マーリンは惑星キカリーマを後にし、宇宙船内で体を休めじっとしていたところだった。
そんな中、突然のヤムチャからの呼びかけ。
こんな宇宙の果てで、ヤムチャの声がいきなり聞こえるなど…一体何がどうなっているのか、当然ながら理解できるわけがない。
マーリンは急な出来事に焦ったのか、既にもう必要ないはずのスカウターをカチカチと操作し、ヤムチャの位置を探ろうとする。
当然ながらスカウターはシルフの微々たる戦闘力と、気を抑えた状態の自分の戦闘力しか感知せず、マーリンは軽く舌打ちをした。
一方、驚きを隠せない様子のマーリンの声が耳に入り、ヤムチャの顔には自然と笑みがこぼれていた。
『お前が地球にきた時は“ありえるわけがない”事ばかり起こっていただろ。いくら探してもそこには俺はいない、なんせ俺はその地球から話しかけてるからな。
それにしてもマジで久しぶりだなあ、マーリン!約束通り、ドラゴンボールを使って連絡したぞ!もう地球は平和なんだ!』
『……!…そうか、ドラゴンボール…!』

56:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:12 BD4UM7Wo
マーリンはハッとした。
ドラゴンボールという不思議な球があり、何でも願いをかなえてくれるという話をヤムチャから聞いたことがある。
そして、その球を使って連絡をくれるという約束も忘れたことがなかった。
だが、まさかこんな急に、何の前触れもなく連絡がくるとは思っても見なかったのだ。
『…ドラゴンボールとは、本当になんでも出来るのか…。それにしても…ふふ、ヤムチャ、久しいな…待たせすぎだぞ』
宇宙には不思議な出来事が多々転がっているが、無線機も何も使用していない状態で、ここから遥か彼方にある地球に住んでいる人間と会話できるという現象を中々受け入れられないマーリン。
しかし、どういった原理で会話が出来ているのかは分からないが、ヤムチャから話しかけられている事実は事実だし、マーリンにとっては嬉しい誤算であることは間違いない。
声の謎が解けた上に、ヤムチャから話しかけられているという事実を再確認すると、機嫌が良くなり思わずマーリンから笑みがこぼれた。
しかし、すぐに彼女は暗い表情になる。
『最初に…謝らなければならないことがあるんだ。…すまない、ヤムチャ……。残念なことに前の宇宙船はあれから故障してしまい、今のところこの辺りの宇宙で最先端のこの宇宙船でも、地球に向かうのに281年かかってしまう……。せっかく連絡をくれて嬉しいのだが……』
マーリンは一瞬だけ子供のように喜んでいたが、次第に声のトーンが落ちていった。
マーリンと地球は距離が遠すぎるのだ。
いくら強くなっても、決して手が届かないものだってある。
例えそれが宇宙最強クラスの戦士だったとしても。
マーリンが10年近く地球に出向かなかったわけは、ここにあった。
正解に言うと“出向けなかった”のだ。

57:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:14 BD4UM7Wo
孫悟空が取得している瞬間移動という技があれば別の話かもしれないが、そんな技術を身につけていないし、どこで身につければいいかも分からないマーリン

はどうしようもなかった。
それでもいつか、何かしらの方法を使って地球に出向こうとは思っていたのは言うまでもないが。
だがそんなことはお構いなしにヤムチャは続ける。
『まあそんなことは気にするな。それよりマーリン…今暇か?暇なのか?』
『?…まあ、船内だし暇と言えば暇だが…一応1週間後に仕事が入っている。わたしがいなくてもどうにかなりそうな星だがな…。しかし先ほども言ったよう

にこの宇宙船では……』
その言葉を聞いた瞬間、ヤムチャの表情が思わずにやける。
『なるほど…なるほど…281年ねえ…はははッ!そいつは好都合だぜっ!じゃあ決まりだな!』
『??…決まり?』
『そう、決まり』
『…ヤムチャ…前から思っていたが、わたしは常人より語学に関する知識は卓越している訳ではないので、分かりやすく言ってくれないと…。お前の言うこと

はたまにほとんど伝わらないときがあるぞ…まあ、その直後にいつもそれを無理矢理に理解させるあっと驚くことが起きるのだがな…ふふ』
昔のヤムチャの思い出を振りかえり、思わず笑いがこぼれるマーリン。
ヤムチャはそれを小バカにしたように軽く笑い飛ばすと、マーリンがムッとなってそれに突っかかる。
自然と“昔と変わらない”やりとりを取っていた二人は同時にそれに気づくと、再び大笑いするのだった。
そして自分はこの人を愛しているんだな、と心の中で静かに思う二人。
結局、マーリンはヤムチャがこれからしようとしていることはわからずじまいだったが、会話が一段落すするとヤムチャは目を見開いて、再び神龍に向き直った。

58:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:16 BD4UM7Wo
「神龍、2つ目の願いだ!今…今話していたマーリンが乗っている宇宙船を、宇宙船ごと地球に移動させてくれッッ!」
ヤムチャは2つ目の願いを大声で言いはなった。
「いいだろう…それではマーリンが乗っている宇宙船を地球に移動させる。中に乗っている人間も移動させることになる」
「ああ、頼む。間違えて宇宙船だけ移動させてマーリンを宇宙に忘れたりしないでくれよ!」
ヤムチャはよく分からないギャグを言ったが、神龍に無視されていた。
一方…目を開いている間は、ヤムチャの声はマーリンには届かないようで、彼女は宇宙船で突然途切れたヤムチャからの連絡にあたふたしていた。
「ヤムチャ……?どうしたのだ…黙らないでくれ…頼む……うう…」
たった1分ちょっと通信がとれなくなっただけで、マーリンの精神状態はここ数年で一番不安定になった。
泣きそうな小さな声でヤムチャと連絡が取れなくなることを怯え、恐れていた。
そもそもこんな離れた所で会話ができること自体細い細い糸をつかむようなものであって、いつ途切れるかも分からない…いや、もしかしたら今途切れてしま

ったかもしれないその糸を必死に彼女は探し求め、掴もうとしていた。
スヤスヤと眠る我が子の手を強く握りながら、マーリンは強く念じ続ける。

…その時、マーリンの乗っていた宇宙船が何かオーラのようなものに覆われ、ピカピカと光り始めた。
そして視界が次第に薄くなり、見えていた宇宙空間も一瞬で白い靄(モヤ)のようなものしか見えなくなった。
「!?…まずいな…故障か?それとも宇宙嵐にでも巻き込まれたか…どちらにせよさすがにこんな所で宇宙船が壊れたら死んでしまうな…」
マーリンは額に汗を浮かべながら緊急再作動ボタンの操作をし始めたが、ほんの数秒後に白い靄は消え、再び視界が戻った。
何がなんだか分からないマーリンは呆然としていたが、故障ではないのなら幸いだと思い、ほっと胸をなでおろした。
しかし…戻った視界に映し出されたものは、先ほどまで見ていた青く暗い宇宙空間ではなく…緑が生い茂る森の真上だった。

「…ッッ!…墜落する!」

ドゴオォォォォォォオン!!

59:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:21 BD4UM7Wo
【8話】
そのマーリンの声とほぼ同時か、少し早くか、宇宙船は森の中へと音を立てて墜落し、そこには直径100メートルほどのクレーターができた。
宇宙船が着陸体勢に入っていなかったため、マーリンの宇宙船は無造作に地面に墜落する形となったのだ。
「…いったあ…」
マーリンは無意識に我が子を抱きこむようにして庇ったため、墜落の際に頭を打ってしまった。
そのおかげか、シルフはいまだにスヤスヤと眠っている。
こんな衝撃だったのになんと無神経なんだと思いながらも、その寝起きの悪さは自分に似たことに気付いていなかった。
シルフに怪我もなさそうでほっとするマーリンだったが…異様な事態に気づく。
「ここは…どこだ?わたしが宇宙船で行き先を設定するときに、星を間違えたのか…?」
マーリンが拠点とする星は文明が発達し、自然など無縁の星だったため、こんな森などなかったのだ。
自分が拠点としている星ではないと即座に気づいたマーリンだったが、もう一つの異様な事態に気付く。
そしてそれは目に見える結果として現れた。

ピーッ ピーッ!!

スカウターが危険信号を発している。
ある一定以上の戦闘力を感知すると、自動的に音を立てるようになっているのだ。
マーリンは嫌な予感がしつつも、シルフをそっとシートに寝かせると、宇宙船から降り、スカウターを装着してボタンを操作し始めた。
「な…なんなんだ、この星は……」
戦闘力が10万を越す反応が一つや二つじゃない。
「1…2…3…5………10人以上…だと…!!」
マーリンはスカウターで正確にその数を数え始める。
どう考えてもこの星は異常だ。
「まさかここは地球…?いや、そんなはずはない…」
マーリンは首を振り、一瞬頭を過ぎった考えをすぐに引っ込めた。

60:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:23 BD4UM7Wo
ここ数年で宇宙で一番強かった敵を思い出しても、精々戦闘力2万前後がやっとだった。
戦闘力10万を越す反応が今ざっと確認しただけで10人はいるこの星が、どれだけ異常な星かは誰が見ても明らかだということになる。
かと言って、10万程度の戦闘力ではマーリンには遠く及ばないのだが、戦闘力10万クラスと言えばあのギニュー隊長レベルの猛者が何人もいるのと同じことだ

と思うと、少しぞっとしたが、すぐにニヤリと表情が変わった。
“こんな奴らと戦ってみたい”…自分では気付かなかったのかもしれないが、彼女の中のサイヤ人の本能はそう叫んでいた。
長く宇宙で戦いを続けてきた彼女だが、10万を越す反応にはほとんど出会ったことがない…ある一つの星を除いては。
そしてマーリンは無意識に気を高めてしまう。
まるでこの星にいる誰かに、自分に襲い掛かってこいと挑発するかのように…。
「はああああああ………!」
マーリンは自らの潜在パワーを体のエネルギーへと変えていく。
見る見るうちに彼女の気が上がっていった。
まだまだ本気じゃないにしろ、戦闘力に直したら100万は軽く超えている。
相手が戦闘力10万程度なら、ここまで力を引き上げる必要はないのだが…マーリンはこの戦闘力10万の集団に不気味さを感じていた。
普通、相手が気を込めれば戦闘力が1000だろうと2000だろうと、離れていてもその力を込めた気の“気迫”が伝わってくる。
だが…こいつらからそれは感じられなかった。
むしろナチュラルな気…まるで、最低限に抑えて行動しているかのような気のように感じたのだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオォォオオオ…

大地が激しく揺れる。
地球全体で地震が起きたかのような揺れだ。
しかし、その揺れは突然収まった。

それは、あまりにも衝撃的であまりにも懐かしく、そして…あまりにも信じられない出来事が彼女の目の前で起こったからだ。

61:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:24 BD4UM7Wo
スタッ!

彼女の目の前に、突然男が降り立った。

「…よっ!探したぜ。分かりやすく気を上げてくれて助かった」
黒髪に、頬の傷…見覚えのある胴着にこのどこか柔らかく、優しい声…。
もう戦闘力10万前後の集団のことなんてどうでもよくなっていた。
そして…彼女の全身の力が抜けた…。


「ヤ…ヤ…ヤム…チャ…………なのか……?」
マーリンの目には、既にあふれんばかりの涙が浮かんでいた。
男は一歩、また一歩とゆっくりマーリンに近づく。
「ああ…そうだ。顔も忘れちまったか?悲しいもんだな…ははっ…ってうわ!」

ドンッ!

ヤムチャの体にずっしりと重い衝撃が走る。
彼女はヤムチャが全て言い終わる前に、ヤムチャに向かって全力で走り、体にギュッと抱きついたのだ。
さすがにマーリンの全速力を受け止めるのがなかなかの力がいるようで、ヤムチャも足にグッと力を込め、抱きついてきたマーリンをしっかりと受け止めた。
顔を見られないようにか、マーリンはヤムチャの胸に顔を押し付けるようにして決して離さなかった。
「マーリン…久しぶりだな……」
そんなマーリンを強く抱きしめ返し、優しく声をかけるヤムチャ。
いつしか、マーリンの涙は…止まらなくなっていた。
「ヤム…ううう……チャ……わ…わたしが…どれだけ待ったと…うう…思っているのだ…う…ヒック…」
マーリンはバンバンとヤムチャの胸を叩きながら、長年自分を待たせた事に対する不服を訴える。
それに対し、ヤムチャは申し訳なさそうに自分の頭に手をやる。
「いやあ…ははは…これには色々と訳があってだな…」
「??…その訳とやら…あとで詳しく聞かせてもらうぞヤムチャ…」
マーリンにこう言われると、少しギクリとしたヤムチャだったが、マーリンは何かに気付いたように再度口を開いた。
「そういえばヤムチャ…ここはどこなのだ…?地球なのか…?」

62:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:27 BD4UM7Wo
マーリンのぼけた質問に、ヤムチャは耳を疑った。
「何言ってんだ、ここは地球…俺とお前が数ヶ月過ごした星に決まっているじゃないか。宇宙船が着陸する際に頭でも打ったのか?」
確かに頭を打ったマーリンだが、こればかりは別にマーリンがぼけていた訳ではなく、むしろマーリンの記憶力を褒めるべきところであった。
「いや、そんなはずはない。ヤムチャ…ドラゴンボールとは1つだけ願いを叶えてくれるのだよな?先ほどわたしと会話をしたことによって、願い事を1つ叶

えたのではないのか…?だとしたら、わたしがここに居るのはおかしいという事になる…」
ヤムチャはマーリンの言っていることが最初はよく分からなかったが、ようやく意味を理解した。
「あー、そういうことか…。今神龍で叶えられる願いは1つじゃなくて、3つに増えたんだ。だから最初の願いでお前に話しかけ、次の願いでお前の宇宙船ご

と地球にワープさせた。それだけのことだ」
はぁぁと大きなため息をつくと、深刻そうな顔をしていたマーリンは再び笑顔に戻り、またヤムチャに抱きついた。
「そういうことは…早く言えッ!一度連絡が遮断され…もう話せないかと…思ったんだぞ…」
マーリンがむすっとした顔を見せたが、ヤムチャはそれを笑い飛ばす。
ヤムチャに笑われたマーリンだが、このやり取りに不快感はなかった。
それどころか、マーリンは既に昔ともに洞窟で過ごしたときのような感覚を思い出し、自分の胸が熱くなるのを感じていた。
戦闘力10万前後の反応の謎も、ヤムチャがいるこの星…地球ならそんなに驚くことでもない。

63:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:29 BD4UM7Wo
【9話】
「それよりマーリン…お前…ずいぶんとまあ……」
ヤムチャはそう言いかけて上から下までマーリンを見直した。
顔からは幼さが消え、体つきもよくなり、出るところは出て、髪の毛もしっかりと手入れが施してある。
最後に見た時より、全然女らしくなっているマーリンにヤムチャは正直驚いていた。
(こんな良い女になっているとは……にしてもなかなかのボディだ…)
ヤムチャの顔は自然とにやけていた。
そのヤムチャの何かやらしそうな顔を、マーリンは大きな目で不思議そうに見つめていた。
「??…なんだ?そんなにじろじろ見て…わたしの体に何かついているか?ふふ…それともわたしにパフパフとやらでもしてほしいのか?ふふふ…」
「ばっ…そんなんじゃねーよ!前より…ちょっと…あれだ。お前、背、伸びたよな?はは…」
マーリンは冗談交じりにヤムチャをからかうと、ヤムチャは顔を真っ赤にした。
その様子がよほどおかしかったのか、マーリンは腹を抱えて笑う。
(本当はちょっとしてほしいけど…)
ヤムチャは心の中でそう思っていたが、さすがに口には出せなかった。
「と、とりあえずどこか移動しないか?こんな森でいつまでも話し込むのもなんだしな」
照れ隠しにヤムチャはマーリンに移動するよう促した。
「そうか。わたしはどこでも構わないのだが、ヤムチャがそうしたいならそうしよう。それで、どこに行くのだ?」
「うーん、そうだな…都の喫茶店なんてどうだ?コーヒーが美味い店を知っているんだ」
得意げに語るヤムチャだったが、マーリンの顔には「?」マークが浮かぶ。
「キッサテン?こーひー?なんなんだ、それは」
マーリンはよく分からないことを言われ、話についていけないようだった。
宇宙ではあの不味いブロック状の食べ物と水しか口にしないマーリンにとって、ヤムチャの言っていることが理解できないのは無理もない話だ。
「ま…まあ、説明はその場でする。とりあえず案内するから俺についてきてくれないか?」
未知の世界への案内に、半分不安で半分楽しみなマーリンだったが、ヤムチャの言うことだしついていく事にした。

64:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:32 BD4UM7Wo
2人が30キロほど離れた所まで飛んでいくと、やがて街が見えた。
「よし、そろそろ降りるぞ。飛んでいると怪しまれるからな」
そういうとヤムチャは地面へと降り立った。
飛んでいるところを見られるだけで不都合がある事が不思議だったマーリンだが、あえて何も言わずに共に降りていった。
ここは西の都。
建物充実具合や人の量からして、世界一の都会と言っても過言ではないかもしれない。
かの有名な、カプセルコーポレーションがあるのもこの西の都なのだ。
まあ、ヤムチャにとっては余り良い思いがしない場所ではあるだろうが…。
「さて…と、とりあえずマーリン………喫茶店の前に服を何とかしようぜ」
ヤムチャはマーリンの戦闘服を見ながら言った。
「何故服を変える必要がある?この戦闘服は2週間前に変えたばかりで新しいのだが…」
…やっぱり何も分かっちゃいないな…とヤムチャは思った。
「戦闘服が新しいとか、古いとか、そういう問題じゃないんだ。お前の服は地球では余り適していない。周りを見渡してみろ」
マーリンはムッとしたがおとなしく周りの人だかりを見渡してみた。
…たしかに、自分と同じような服を着た人がいない。
しかし、マーリンには地球人の服装が理解できなかった。
ヒラヒラしたスカートを履いたり、生地の薄いノースリーブだったり、と…
自らの体の防御力を多少なりとあげるために服を着ていた彼女にとって、そんな服を着ても意味がないとしか思えなかったのだ。
「…地球人とはずいぶんと情けない服装をしているのだな。いや…もしかしたらあの服装は薄そうに見えて実はかなりの強度を誇っていたりするのか…?」
マーリンは興味ありげにヤムチャに質問する。
「なんつーか…服に対する概念がずれてるのかもな。地球人は基本的に服に強度なんて求めちゃいないよ。
いかにお洒落な服装でいられるかを念頭に置いているんだ。地球はもともと平和な星だしな…」
そのヤムチャの説明に対し、ふーんと軽くうなずくマーリンは、まだまだこの星の環境に慣れるには時間がかかりそうだと思いながらも、
地球の文化に興味を示していた。

65:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/02 01:35 BD4UM7Wo
長らく待たせてすいませんでした。
その代わりに沢山書いてみました。
残業やら休出やらでほとんど文章を書く時間がなかったのですが
待たせすぎては悪いと思い、今日は少し無理をしましたw

また明日も忙しくなりそうなので、今日のところはこれで寝ます。
おやすみなさい。

66:Classical名無しさん
08/12/02 22:35 s8WCij9I
乙です

67:Classical名無しさん
08/12/03 17:24 L2YB25ZU
オメシロイ

68:ダークオ
08/12/03 17:28 L2YB25ZU
最高にはまっダー

69:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:24 /ieIiF0.
それにしても、地球とは実に不思議な星だ、と彼女は思った。
孫悟空をはじめとする宇宙全体から見てもトップに君臨するであろう強さの人類が存在するのにも関わらず、
他の地球人の戦闘レベルが極端に低過ぎる。
マーリンが仕事を請け負った星に比べても、比べ物にならないほど地球人のパワーは弱い。
これは、マーリンが元々「余所者に侵略された星」を奪い返す依頼しか引き受けていなかったため、
必然的に気性が荒く力の強い民族ばかりが相手だったからとも言える事だが。
しかし、ここまでレベルの低い戦闘力で、よく平和にぬくぬくと暮らせたものだ。
いつどこから突然やってくるかも分からない侵略者に、恐怖心はないのだろうか?
ヤムチャたちがいなかったらとっくに地球人の文明など滅びていただろう。
マーリンはそんなことを考えているうちに、一人で段々と腹が立ってきた。
「ど、どうした…?そんな怖い顔して、具合でも悪いのか?」
ヤムチャはマーリンの顔を覗き込むと、恐る恐る額に自分の手を当てた。
どうやら熱はないようだ、と一人で悟る。
ヤムチャの手が額に触れ、マーリンはハッとわれに返る。
「…ヤムチャ、質問がある!」
「い、いきなりだな…なんだよ」
マーリンは我に返ると、いきなりヤムチャにつかみかかる様に攻寄りながら言った。

70:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:27 /ieIiF0.
「今こうやって地球人がヌクヌクと暮らせているのは、お前たち…ヤムチャたちの活躍があったからなのだろう?」
「…うーん、俺はあんまり活躍してないけど、まあそうなるな」
「お前は…お前にはプライドはないのか?地球人はもっとヤムチャたちを慕い、尊重すべきだ。それなのに、なんだこの有様は…」
「ありさま…?」
「誰一人として、お前に挨拶しようとしない。それどころかもはや他人同然だ。命をかけ、地球の運命を救ってきたのに…」
「まあ…言いたいことは分かった。とりあえず落ち着けよ。な?」
ヤムチャはマーリンの肩をポンポンと優しく叩く。
だが、彼女の勢いはそれでは治まらなかった。
「いいや、言わせて貰う!では訊こう…何故、感謝もされず、称えられもせず、誰からも知られもせず、それでもなお、お前は命をかけて戦い続けた?この恩

知らずな地球人どものために、お前は…ヤムチャは―」
「もうよせ!分かったから!!」

71:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:35 /ieIiF0.
【10話】
ヤムチャは辺り全体に響くような大声で怒鳴った。

ピキッ

ヤムチャの気合の影響で、近くにあったビルにちょっとしたヒビが入る。

だが、その怒鳴り声は怒りとは違うものだったのかもしれない。
周りにいた地球人はある者は立ち止まり、ある者は腰を抜かし、いっせいにヤムチャの方を見つめた。
「す…すまない。わたしはお前がこうも評価されていなかったのが悔しくて…つい」
「…分かってる。ありがとな。ささ、それよりとっとと服を買おうぜ」
するとマーリンは微妙な表情を浮かべる。
「別に要らないのだけど…戦闘服のほうが動きやすいし…」
確かに、防御力、耐熱性、柔軟性どれをとっても戦闘服のほうが優れた服と言えるだろう。
だが、その特性のほとんどは、平和な今の地球じゃ意味がないものなのだ。
「ダメ」
ヤムチャはニヤリと歯を見せながら断固否定した。
「…どうしても?」
「うん、どうしても」
「うう…」
「ほらほら、この店なんていいんじゃないか?」
するとヤムチャはある方向を指差してマーリンの背中を押し始めた。
軽く抵抗し、踏ん張ろうとするが、マーリンはずるずると店の前まで運ばれてしまう。
それからもしばらく渋っていたマーリンだが、結局再びヤムチャに引き摺られるように連れられ、服屋に入ることになった。

72:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:42 /ieIiF0.
【○話】の区切りが適当すぎるので、もう書き込むたびに入れておきますw

73:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:44 /ieIiF0.
【11話】
「いらっしゃいませ!本日はどういったお洋服をお探しでしょうか?」
店に入ると早速店員の女性が話しかけてきた。
「どんな服がいいのだろうな…わたしにはよく分からない。とりあえず、
お前が適当にわたしに合いそうな服を選んでくれると嬉しいのだが…なにぶん、地球での買い物は初めてなものでな」
地球での買い物が初めてと言われ、どれだけ田舎物なんだろう…とでも思ったのか、店員はしばらくポカーンとしてたがやがてビジネススマイルになった。
「…か、かしこまりました。それでは、中へどうぞ」
マーリンは店の奥へと案内された。
当然試着をするのだろうし、さすがにヤムチャは中まではついていけなかった。

10分後…店からマーリンは出てきた。
膝上20センチぐらいの、足がほとんど見えるデニムのショートパンツに、体のラインが際立つサイズが小さめのTシャツ。
ラフな服装だが、これがマーリンの体の美しさがもっとも強調されるファッションだろう。
予想以上のマーリンのプロポーションに、ヤムチャは思わずあいた口がふさがらなかった。
いや、戦闘服の上からよく見たのだが、やはりそれでは完全に把握できていなかったようで、
マーリンの胸やクビレのラインは一流モデルに引けをとらないほど素晴らしい。

74:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:51 /ieIiF0.
【12話】
「…やはり、違和感はあるが…意外と動きやすいし特に不快でもないな。どうだ…?ヤムチャ…こんな服装でいいのか…?」
マーリンは恥ずかしそうにヤムチャに尋ねる。
こんな戦士らしくないところを見られるのは、さすがの彼女も恥ずかしいのだろう。
女の子らしい…とは言えたものではないが、ぎこちなくもじもじしていた。
そのぎこちないところがまた、ヤムチャにとってはたまらなくツボなのだが…。
「か、かなりいいんじゃないかな…。よく似合っていると思うぜ」
ヤムチャの顔が再びやらしくニヤニヤするのを感じてか、マーリンは再びクスクスとヤムチャを笑うと同時に、不信そうな目付きになる。
「ところでヤムチャ、わたしの戦闘服はどうすればいい?捨てるわけにはいかないのだが、持ち運ぶのも手間がかかる」
「ああ、そうだろうな。これを使ってみろ」
ヤムチャは懐からカプセルのようなものを取り出し、マーリンに手渡す。
「なんなのだ…これは」
マーリンはそのカプセルをよく見回したが、ヤムチャがなんのためにこれを渡してきたのかが分からなかった。
「その中に戦闘服を入れるんだ」
「……は?」
「一回俺に貸してみろ」
ヤムチャはマーリンから再びカプセルを受け取ると、それのボタン状の部分を押下し、地面へと放り投げた。
するとそこには、砂煙と共に、カプセルではなく、大き目のアタッシュケースが現れたのだ。


75:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 01:52 /ieIiF0.
【13話】
「な…」
「これに戦闘服入れておけ。そこのボタンを押すともう一度カプセルに戻るから」
「や、やってみる…」
あんなに小さかったカプセルが、ここまで大きなアタッシュケースに化けるとは物理的に不可解な現象だったが、マーリンは驚くのを堪えて戦闘服をアタッシ

ュケースにつめこみ、再びボタンを押下した。
すると、再びアタッシュケースはカプセルへと戻った。
しかも重量はカプセルの重量のみで、アタッシュケースや戦闘服の重みが全く感じられない物理的にも、重力的にもありえないことが起きている。。
「それで持ち運びも便利だろ。さ、いこうぜ」
「…素晴らしい技術力だな…地球とは」
地球が生んだ、カプセルコーポレーションの奇跡の技術に、ただただ感心するしかないマーリンであった。

支払いを済ませると、ヤムチャたちは喫茶店へと向かう。
これで、とりあえず見た目は地球人と全く変わらなくなったマーリン。
道中を歩いていると、やたらと男からの視線を感じて不快になったマーリンだったが、ヤムチャと二人きりで街中を歩けた喜びのほうが断然に大きく、気にし

ないようにしていた。
当然ヤムチャもその視線に気付いていた。
(やっぱり地球人目線から見ても可愛いのかな…マーリンって)
マーリンの美しさに、段々マーリンと二人で居る自分が気恥ずかしくなってきていたヤムチャであった。
いや、もちろんヤムチャも十分に格好いいと言える容姿なのだが…。
それに、マーリンは容姿以外にも何か惹かれるものがあった。
独特のオーラというか、雰囲気というか、地球人から見れば「宇宙人」であるマーリンは、少し地球人とは違ったものが感じられた。
それがなんなのかはよく分からないが、一言で言うと「不思議な感じ」がするといったところだろうか。
「ヤムチャ、もう少しこっちを見てくれても…いいのではないか」
マーリンはヤムチャが自分の方を余り向いてくれないせいか、不機嫌になりかけてた。
「あ、ああ…すまんな、考え事をしていた。ここが喫茶店だぞ、マーリン」
ヤムチャは喫茶店に着くと立ち止まって、それを指差した。

76:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:11 /ieIiF0.
【14話】
「なるほど…これがキッサテンとやらか」
人ごみが多いせいか、街に入ってからずっと警戒心を張り巡らせていたマーリンは習慣からなのか、スカウターを操作して中の人間の戦闘力を探った。
「…中の人間の戦闘力は最高で4。きっと気を抑えているのだな」
「それから…スカウなんとかは外したほうがいい。ここでは必要ない」
あえてヤムチャは戦闘力の話に突っ込まずに、マーリンに次なる指摘をした。
するとマーリンは再びキョロキョロと周りを見渡す。
「ふむ…スカウターのような物をつけている地球人もたまに見かけるが…あれは違うのか?」
「あれはサングラスって言って、服と同じさ。自分を着飾るためにつけている人がほとんどで、別に機能とかはついていない」
意味のない事が好きだな…地球人は、と思いつつもヤムチャに言われた通りスカウターを外す。
ここ数年で前より少し素直になったようで、ヤムチャは感心した。
「ほら、それ付けてない方が可愛いぜ」
「カワイイ?わたしが?それはバカにしているのか?」
「……一応、褒めてるつもりなんだけど」
話がかみ合わないまま、二人は喫茶店へと入った。

店内に入ると、早速二人は窓際の席へと座る。
この喫茶店は地上から高いところにあり、窓からは色々な景色が見えた。
スカイカーで走り回っている人や、下の方でワイワイと楽しそうに日常生活を送る人たち。
建物が隙無くびっしりと立ち並び、西の都の都会具合が伺える。
そして、更に遠くの待ちの外れには、空気が美味しそうな森が見えた。
ヤムチャたちがさっきまでいた場所だ。
「いい景色だろ。西の都じゃ、一番この景色を見ると落ち着くんだ」
「どう落ち着くんだ?」
「うまく言えないけど…『ああ、俺って地球で生きてるんだな』って感じる」
「やはり、お前は変わっている。地球上で地球人であるお前が生きていても、別に普通というやつではないのか…?」
「ま、わからないならいいさ。いつか分かる時がくると思うぜ」
「ふぅん…」
ヤムチャは窓の外の景色を見ながら、マーリンに言った。
その目は、どこか寂しそうな目のようにもマーリンは感じた。

77:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:23 /ieIiF0.
【15話】
ヤムチャは視線を店内に戻す。
全体的に地味で暗いお店だが、落ち着いた雰囲気があり、心を和ませるクラシック音楽が流れている。
育った文化は違えども、そこはマーリンにとっても悪くない空間であった。
「お客様。ご注文はお決まりでしょうか?」
ウェイトレスの若い店員がヤムチャに尋ねる。
「コーヒー2つ。片方はブラックで頼む」
ヤムチャは慣れた口調で頼むと、チラッとマーリンに視線をやる。
それまで店内を興味深そうに見回していたマーリンだったが、ヤムチャの視線に気付くとヤムチャを見つめ返した。
「ここは…いい場所だな。なんだか、心が落ち着く…」
マーリンは感心したように言った。
宇宙で戦いばかりしてきたマーリンにとってこれほどの“癒し”を感じたのは久しぶりなのだろう。
それまで地球人を警戒してきたマーリンだが、いつの間にかその警戒心は消えていた。
「だろー!修行が疲れたらたまにここで心を落ち着かせに着たりするんだ。生きていて楽しいことばかりじゃないからな、少しは精神を休めてあげないと」
「なるほど…」
戦いにおいて、もっとも大事なのは体と心のバランス…かつてヤムチャが言っていた台詞を忠実に守っていたヤムチャ自身に納得したマーリンだった。

78:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:25 /ieIiF0.
【16話】
「失礼します、お待たせ致しました」
ヤムチャが喋り終わるころにコーヒーが届き、先ほどの店員がテーブルにそれを並べる。
ヤムチャはそれをズズズと一口だけ飲む。
マーリンもそれを見て、対抗心からか、負けじと一気に飲み干そうとする。
「…!!っつぅ…!」
マーリンは絶叫すると、ヒリヒリした舌を出しながら飛び上がりそうになった。
「ははっ、そんな一気に口に入れたら熱いに決まっているだろ。これはこうやって少しずつ飲むんだ」
そう言ってヤムチャは二口目のコーヒーを口にする。
「……!」
マーリンは半分涙目になりながら、無言でヤムチャに目で訴える。
「わ、悪い悪い…怒るなよ」
勝手に飲みだしたくせに…と思いつつもヤムチャはマーリンに謝った。
「熱いのが嫌ならお子様向けのアイスコーヒーもあるんだけど、どうする?」
ヤムチャの馬鹿にしたような態度にマーリンはムッときたのか、首をぶんぶんと横に振り、再びコーヒーにチャレンジする。

ズズズ…

そしてやっと一口飲み干したところで、マーリンは神妙な顔をしながらヤムチャに問いかけた。
「……ヤムチャ、…この液体は口の中に痺れるような味が残るというかなんというか…不思議な味がするぞ…」
マーリンは生まれて初めて飲んだコーヒーの不思議な味に、興味津々のようだ。
「ああ、ブラックだしお前にとっては苦いだろうな。俺はその苦味が好きなんだけど…。とりあえずこいつを入れてみろ」
ヤムチャは二つの不思議な液体を差し出した。
マーリンはそれを受けとると、不器用に蓋を開けてコーヒーに入れる。
飲んでみろと促すように、ヤムチャが手でジェスチャーをする。
マーリンは慎重にそれを一口飲む。
するとマーリンは驚いたように目を見開き、ヤムチャを見つめる。
「どうだ…?結構味が変わるだろ。暖まるし。ガムシロとミルクを足しただけだけどな…」
「……これは中々いいな…」
マーリンは目を瞑り首をコクコクと頷かせると、猫舌ながら一口ず一口ずつつコーヒーを口にする。
そして全て飲み干すと、ふう…と至福の溜め息が漏れた。

79:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:33 /ieIiF0.
【17話】
「…地球人が温厚なのが、何故なのかわかった気がする…」
マーリンはヤムチャに聞こえないように呟いた。
そのうっとりとしたマーリンの様子に満足そうな表現を浮かべるヤムチャ。
「気に入ったようだな、良かった良かった。まあ俺が作ったコーヒーのほうが数段美味いんだけどな!」
逆にマーリンも、ヤムチャが楽しそうに話す様子を見て嬉しくなる。


それから―
ヤムチャたちはしばらくこの数年間、何があったかお互いの報告をしあった。

とはいっても、マーリンはほとんど星々を行き来して戦ってばかりの毎日だったため、話のネタとしてはやはりヤムチャのほうが豊富だった。
最初は交互に互いの話をしていた二人だが、いつの間にかヤムチャが話し手、マーリンが聞き手という形になっていた。
「…というわけで、ミスターサタンとか言う地球人が今や2度も地球を救った空前絶後の大ヒーローになってるってわけ。笑えるだろ?」
マーリンはヤムチャの話にすっかり聞き入っていた。
まさに驚きの連続。
ヤムチャが言うには、あのフリーザなんて、もはや比較するのが馬鹿らしいレベルの戦闘の連続だったらしい。
次元が高すぎる話に、マーリンは中々現実を飲み込めないでいたが、次から次へと出てくるヤムチャの話にうんうんと聞き入る。
その話の中で、ヤムチャが一度死んだという話を聞いたときはさすがに驚いたが、
笑いながら話すヤムチャに呆れながらも今ヤムチャが生きている現実に安心したというかなんというか、よく分からない気持ちになった。

80:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:38 /ieIiF0.
【18話】
そして、話は更に遡り、ちょうどセルを倒したあとの話になっていた。
「…で、俺の修行仲間のクリリンがなんとそのおっそろしい人造人間と結婚しちゃうんだぜ!
当時は信じられなかった話だけど、今はあいつも幸せそうで何よりなんだ…って…………そういえば…」
ヤムチャはここまで話すと、マーリンを少し怪しい目で睨み始めた。
「な、なんだ…?」
ヤムチャの声のトーンが急に落ちて、マーリンは何もしてないのに何か悪いことをしてしまったかのような焦りを感じた。
「マーリン…お前この数年の間に…恋人とかは出来たの?…ていうか、結婚とかしてないよな?子供とかいたりしないよな…?」
ヤムチャが疑いの目で問いかけてくる。
最初は中々意味が飲み込めないでいたが、ようやくマーリンがヤムチャの言っている意味を理解する。
そして、元々大きくてキラキラしていた目が更に見開いた。
「……あ」
そして、はっとしたのかマーリンはその場で急に立ち上がった。
「……………忘れていた。ヤムチャ、急いでさっきの宇宙船に戻るぞ!」
「おいおい、ずいぶんと急だな。しかも何焦ってんだ?まさか……」
「いいから来い!」
マーリンはオドオドしているヤムチャの手を引っ張り、店を出ると猛スピードでマーリンは先ほどの宇宙船がある場所へと戻っていった。
かなり飛ばしたため、数分もしないで元の場所についた。
無言でヤムチャを引っ張ってきたマーリンに、ヤムチャはどう反応したらいいか迷っていた。
「なあ…そんな焦ってどうしたんだ。宇宙船に大事な忘れ物でもしたのか?」
「……ヤムチャ、先ほどの話で思い出した。お前に言わなければならないことがある…」
マーリンはヤムチャと顔を合わせないようにして言った。

81:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/05 02:43 /ieIiF0.
今日はこの辺でやめておきます。
SaiyanKiller1から読んでくれている方にとっては、結構気になるところだと思います。

それではおやすみなさい。
ってあれ…この板私しか小説投稿してない…?w

82:Classical名無しさん
08/12/05 07:10 .OyAtq7Q
いいと思います。

83:Classical名無しさん
08/12/05 07:12 .OyAtq7Q
これ読むのが楽しみです

84: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 13:27 k2bqoOiM
俺は最強への道を読んだでかなり爆笑した。
でも人造人間編がない、なら俺が書きたいと思いました。
なので書こうと思います。だが最強への道や最強の道Zとは違って
ヤムチャが1000人になったのは人造人間編前でなったということです。



85: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 14:18 k2bqoOiM

第一話「ヤムチャが1000人!そこにいるのは仙人」

人造人間との戦いまで、あと一年。
Z戦士達は人造人間との戦いに備え日々、修行をしていた。
そんな中、一人の男がドラゴンボールを集めていた。
「へへっ、この願いが叶えば、人造人間が来ようと恐れることはないぜ!」
そうヤムチャである。彼はカプセルコーポレーションからドラゴンレーダーを持ち出し
気を消しながらドラゴンボールを探しているのである。
そして八個のドラゴンボールを集め終えた。
「いでよ、神龍。そして願いをかなえたまえ!」
バリバリバリ!ヤムチャが合言葉を言うと辺りが真っ暗になり
巨大な竜が現れた。この竜が神龍である。
神龍が願いはなんだと聞く。
「俺をあと、999人増やしてくれ!」
「了解した」
そして、ヤムチャが1000人になった。
神龍がいなくなりドラゴンボールが八個それぞれ別の場所に飛んでいった
「はっはっはー!もう誰も俺に敵う者はいない!」
笑うヤムチャ達、しかし、すぐに気を消して隠れ家に戻った
「皆を驚かせるのは一年後だ・・・」







86: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 14:41 k2bqoOiM

第二話「悟空もビックリ!ヤムチャ達1000人」

ヤムチャが1000人になってから一年後、人造人間襲来の日
悟空、悟飯、ピッコロ、クリリンが島の待ち合わせ場所に向かう
「な、なんだありゃ?」
「や、ヤムチャさんだ!」
ビックリしながら待ち合わせ場所におりる悟空達。ヤムチャは事情を説明した。
ちなみにヤムチャ達は皆に会う時は一人だけ会っていたのである。
なにも言わないピッコロ、頭を拭いている天津飯。ブルマは怒り狂っている。
「ヤムチャさん達を他の場所に誘いださないと島の人達が見たらショック死するかも知れませんよ・・・」
「そうだな・・・」悟飯がこっそりと悟空に言う。
クリリンは話を変えようとブルマが抱いている物体に注目した。
「そ、そんなことより俺はブルマさんが抱いている物体に驚いた・・・」
ヤムチャ達よりも!?悟空達のほとんどがそう思った。
「父ちゃんはベジ―タだよな、トランクス」
「な、なんでそんなこと知ってんのよー?ビックリさせようと思って
誰にも言わないでおいたのに・・・」会話がブルマの赤ちゃんの話題になりはじめ
しだいに無視されはじめたヤムチャ達。仕方ないのでヤムチャ達は「UNO」をやりはじめた。
次話「現れた人造人間。UNOをやり続けるヤムチャ達1000人に続く

87: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/05 15:07 k2bqoOiM

第三話「現れた人造人間。UNOをやり続けるヤムチャ達(1000人)」

悟空達の前にスカイカ―に乗ったヤジロベーが現れた。
ヤジロベーは仙豆を渡すとスカイカ―に乗りすぐに帰って行った。
だがヤムチャ達の攻撃によりスカイカ―ごとヤジロベーが打ち落とされた。
「けっ、きたねぇ花火だ」
不快そうな顔をしながらヤムチャが言った。
「なにやってんですか!ヤジロベー、せっかく仙豆届けてくれたのに!」
ヤムチャに向かってクリリンが言う。
「だって人数分ないんだぜ?俺達の分が足りねえぞ」
「そんなに仙豆ありませんって!普通に考えてくださいよ」
ヤムチャがヤジロベーを攻撃したのは仙豆を人数分届けなかったからかと思う悟空。
「全部、俺達の分だとしても全然足りねえし・・・」
「貴様らで全部食べるきか。それよりもヤジロベーを助けに行ってこい」
しぶしぶ、ピッコロの言う通りに助けにいこうとする一人のヤムチャ。
しかしヤムチャが空を飛んだ時、何者かのエネルギー波が向かってきた!
あわてて攻撃するヤムチャ。
「ふう驚かせやがって・・・」
そう言いながらヤムチャは死んでいった。




88:Classical名無しさん
08/12/06 03:54 f34AC9Ow
盛り上がってきたねぇ
続き楽しみにしてるよ

89: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/06 12:49 Tu9pnu5E
>>85の八個のドラゴンボールというのは入力ミスです。
ドラゴンボール七個の間違いです。

90:ヤムチャ最強への道3
08/12/06 13:13 Tu9pnu5E

第四話「恐怖!怯えるヤムチャ達320人+(679人)」

「あっ、ヤムチャが!」
「ついに出やがったな。人造人間!」
急いで島にある町へおりる悟空達。悟飯は打ち落とされたヤジロベーを助けにいった。
ヤムチャ達679人が悟空達についていった。他の320人のヤムチャ達は残った。
ブルマは残っているヤムチャ達を見ながら聞いた。
「あんた達は行かないの?」
その質問にすかさずヤムチャ達は答えた。
「あたり前だ。行かん!」
「い、行かんって、こういうときは一人でも多い方が・・・仲間も地球もピンチよ」
「だろうな・・・」
「だろうなですって!あんた達なんとも思わないの!サイテ―よ!」
「恐いんだよ、俺達は・・・」
「ど、どうも・・・」ブルマが申し訳なさそうに言った。
次話「襲いかかる人造人間。ヤムチャ達679人+(320人)」

91:ヤムチャ最強への道3
08/12/06 13:42 Tu9pnu5E

第五話「襲いかかる人造人間。ヤムチャ達679人+(320人)」

町へ降りた悟空達。クリリンは近くにいた男に怪しい奴を見なかったか聞いた。
「おいっ、怪しい奴見なかったか!?」
「み、見た。あそこに・・・」男は指をさしながらいった。
「きゃー、誰か助けてー!」
「へへへ、今からお茶しなーい?」
その方向には3人のヤムチャが女性をナンパしていた。
クリリンは見なかったことにして人造人間の捜索を続けた。
一方、他のヤムチャ達は真剣に人造人間を探していた。
「くそっ、どこだ?」そこにキャーと女性の悲鳴が聞こえる。
ヤムチャ達がそこの場所に向かう。
それに気づいた人造人間達。だがとりみだすことはなかった。
「エネルギー値が異常に高い人間が何百人も近づいてくる。サーチシステムの故障か?」
「故障ではありません。私も同じ反応をとらえました」
ヤムチャ達がそこにかけつけた時には3人の人間が殺されていた。
そこで人造人間達はヤムチャ達に襲いかかった。
次話「かけつける悟空達。余裕のヤムチャ達679人+(320人)」

92:ヤムチャ最強への道3
08/12/06 14:09 Tu9pnu5E

第六話「かけつける悟空達。余裕のヤムチャ達679人+(320人)」

人造人間達は二人ヤムチャの首を掴み腹に手をつきさした。
いきなり現れた人造人間達を前にあっけにとられるヤムチャ達。
ここで七人のヤムチャが逃げ出した。老人の姿をしている人造人間は
それを逃すまいとエネルギー波を放った。七人の全てのヤムチャが爆死した。
そこに一人のヤムチャが動いた。「特大繰気弾!とうっ」
巨大な繰気弾を人造人間に向けてなげる。だが片手で跳ね返されてしまった。
跳ね返った繰気弾がヤムチャにせまりくる。
「くっ、こうなったら天津飯!技を借りるぜ!排球拳いくわよー!」
数人のヤムチャが協力し排球拳を使った。
「ワン!」
「ツー!」
「アタ―ック!」
空中に投げられた繰気弾を最後のヤムチャが人造人間に向けて叩き落とす。
だが運悪くそこにかけつけててきた悟空達もまきぞえになってしまった。
「ゆ、許さん・・・絶対に許さんぞ虫けら共!」
怒った天津飯が気功砲を放つ。ここで20名のヤムチャが命を落とした。
次話「悟空対人造人間。ヤムチャ達652人+(320人)」

93: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/06 14:12 Tu9pnu5E
今日はここで終わりです。
ちなみに>>87のあわてて攻撃するといのは防御の間違いです。
マジでごめん・・・

94:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/06 23:40 2MGc1fDM
>>80の続き

【19話】
「先ほどの話…?ああ、子供とか結婚とかの話か。……って………え?」
ヤムチャは嫌な予感がした。
これだけは絶対にないと思っていた。
しかし、マーリンの言葉はヤムチャの予感を確信させる。
「あの…その…ヤムチャ…。わたし…さ、実は…子供が、いるんだ」
「………なんだってえええええええええええ?!?!!!!!!」
マーリンは恥ずかしそうに下を向いていた。
森中の野生動物が、ヤムチャの大声に驚いてほとんど逃げ出した。
「そ、そんなに大声をあげなくてもいいじゃないか…」
「………」
さっきまで暖かかった風が少し肌寒く感じられる。
ヤムチャはしばらく硬直し、それに対しマーリンは落ち着かない様子だ。
しかし、ヤムチャはこの言葉の意味を大きく勘違いしていたことにまだ気付いていない。
「……俺はこの数年間、ずっとお前を信じて待っていたんだぜ?女も作らずに、いや、遊んだりぐらいはしたけど…。…それなのにマーリン、お前ってやつは…その辺の男と……」
ヤムチャの気がどんどん上がっている。
どうやらかなり怒っているようだ。
それを見て何に怒っているか分からず、ポカンとしていたマーリンだったが、やっとヤムチャが勘違いしていることに気付いた。
「えっと…ヤムチャ……何か勘違いしていないか?」
「か、勘違い…?勘違いもクソもあるかよ!どう言い訳してくれるか楽しみだぜ、他の男との子供が出来た言い訳をな!」
ヤムチャが大声で怒鳴りつけると、マーリンはやっぱり…と言った表情をし、苦笑いをしながらやれやれと首を横に振る。
「どうやら言い方が悪かったらしい…。ヤムチャ……子供というのは……わたしと、…お前……ヤムチャの子だ」

「…………………………は?」

95:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/06 23:55 2MGc1fDM
【20話】
空気が凍りついた。

ヤムチャは、微動だにせず、目の焦点もどこにあっているか分からないような方向を見つめ、そのまま30秒ほどが過ぎた。
「…ヤムチャ?」
全く動かなくなったヤムチャを心配し、マーリンが肩をちょんちょんと指で触ると、ヤムチャの目の焦点が彼女に戻る。
「あ…マーリンか。悪い悪い、今立ちながら寝ていたみたいで夢を見ていたんだ。なんかその夢の話だと俺とマーリンの間に子供がいるとかいう話でよ…あははっ」
ヤムチャはいつもの陽気なヤムチャに戻ったようだ。
「ふふ、信じられないようだな。それは夢ではないぞ。わたしは出産した……お前との子をな」
なかなか現実を受け入れられないヤムチャに、マーリンは笑いながら言った。
「………マジで?」
ヤムチャは耳を疑う。
自分に子供がいるだなんて、実感がまるで沸かないのだろう。
「だって……だってマーリンと俺は…その……一回しか………ねえ?」
「…と、言われてもな……わたしはどう答えたらいいのか……結果こうなってしまったのだから、そういうことなのだろう」
「…本当に、俺の子なのか?」
「間違いないと言って良い。そもそも、わたしの性格上、他の男に体を許すわけがないのはヤムチャが一番よく分かっていそうなものだが…」
確かにヤムチャとマーリンが交わったのは精神と時の部屋での一回のみだ。
しかし…偶然にもマーリンはその一回でヤムチャとの子を胎内に宿していた。
「なんで…そういう大事な事をもっと早く言わないんだよ!」
ヤムチャは半笑い半怒りのような良く分からない表情でマーリンを問い詰める。
「その点はすまない…ヤムチャが急に現れたせいで、すっかり忘れてしまっていたのだ」
マーリンは指で頭をかきながらヤムチャに謝る。
「……で、まさか、お前が宇宙戦に忘れたものって………」
ヤムチャはそっと宇宙船に目をやる。
「ああ、わたしの子…シルフだ。当然ヤムチャ、お前の子でもある」
ヤムチャは目を白黒させながら、恐る恐る宇宙船の中を覗いてみた。

そこには……スヤスヤと眠るかわいらしい男の子が眠っていた。

その顔はマーリンのような気品ある感じもするが、ヤムチャにあるような野心も纏っているように見える。

96:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/06 23:59 2MGc1fDM
【21話】
ヤムチャはシルフの顔を見た瞬間、これは自分の子だとすぐに分かった。
「これが…俺の…いや、俺とマーリンの……子…」
「そうだ。こう改まってみると、少し照れくさいものだな…ふふふ」
眠る我が子を片目に、宇宙船を覗き込むヤムチャの横にマーリンもやってきた。
すると、タイミングがいい事にシルフは目をパチパチやりながら起き上がった。
「お母さん……?あれ?ここどこ?」
寝ぼけているのか、シルフはフラフラしながら立ち上がり、宇宙船を降りる際に転びそうになる。
「シルフ、ここは地球だ。今日はお前にとって最高の日になるだろう。父さんに会えるぞ」
マーリンははっきりした口調でシルフに言うと、シルフの細かった目が急に見開いた。
「…えっ!地球…?父さんに…会える?」
我が子の質問に対し、マーリンはうんうんと頷くと、シルフはキョロキョロあたりを見渡した。
そして、すぐ近くに立っていた男の姿が目に入る。
その男とシルフはしばらく目が合った。
「……え?」
シルフは、まさか…まさか…と思い、呆然とする。
照れたような顔でその男はしゃべりだした。

「よ、よう…シルフ…大きくなったな…!いや、小さい頃のお前は知らないけどさ…はは」
ヤムチャが子供には通用しなそうなギャグを言っていたが、シルフの耳には入っていなかった。
「―なの?―さん…なの?お父さん…なの?」
少年は既に泣きそうな顔をしている。
ヤムチャはその少年を優しく抱きかかえると、顔を近づけて言った。
「ああ…そうだ、俺がヤムチャだ。…今まで長い間会えなくてすまなかったな、シルフ」
そのガッチリとした腕に抱かれたシルフは、この人がヤムチャであるということを疑うことすらしなかった。
「お父さぁぁああぁぁんッ!!!」
そして、今まで抑えてきた気持ちが全て開放され、それは少年の大量の涙へと形を変えた。
ヤムチャは少し驚いたような顔をしたが、抱き上げているシルフの頭を強く、優しく撫で、長い間抱きしめていた。
その様子を、マーリンはニヤニヤしながら見つめていた。

97:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 00:12 oPl7hCEg

【22話】
―数時間後。
辺りは薄暗くなったが、とある荒野の洞窟だけはいまだに明るさに満ちている。
ゴウゴウと焚き火が燃える中、3人の人影がそこにはあった。
狭い場所だったが、その狭さがあえてちょうどよかったのか、そこにいる3人は仲良さそうに鍋を小さく囲むように座っていた。
「どうだ、シルフ。その料理は地球でマーリン…いや、母さんが最初に食べたものと同じものだ」
ヤムチャは喋りながら鍋の中身を皿によそい、それをシルフに手渡す。
「最高だよ!お父さんは料理も上手いんだね!」
「このぐらい普通さ。地球にはまだまだ美味い食い物があるんだぜ」
「本当に!?これより美味しいもの食べたら気絶しちゃいそうだ」
「はは…大袈裟な奴だなー」
シルフはがっつくようにスプーンを口に運び、口の中のものが飲み込み終わるとヤムチャに話しかけていた。
食べては話し、食べては話しを繰り返し、忙しそうにしている。
たまに動作を急ぎすぎたせいか、変なところに詰まらせ、むせかえる姿を見てヤムチャとマーリンは大笑いをする。
お互い違う環境で何年も暮らしていたので、いくらでも会話は弾む。
尽きることのない雑談にすっかり時間を忘れ込んで話し込んでしまい、気付くとシルフは眠り、マーリンも少しウトウトしていた。
「眠いか?マーリン」
「いや……平気だ。地球時間にしてあと二時間は大…丈……」
と言いながらヤムチャにもたれかかり、眠りに落ちてしまう。
ヤムチャはマーリンが眠ったのを確認すると、彼女の肩を優しく抱えながら毛布をかけ、
生まれてから初めて感じるこの温もりと、本当の幸せを噛み締めながら共に眠りに落ちるのだった。

98:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 00:35 oPl7hCEg
【23話】

ゴゴゴゴゴゴ…

「…ん…」
マーリンは地響きによって目を覚ます。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
マーリンは昨日まで惑星制圧の任務をぶっ続けでやっていた疲れが溜まっていたせいか、二人よりだいぶ遅れての起床となってしまった。
体には暖かい毛布がかかっており、それにはまだわずかだがヤムチャの温もりが残っていたように感じる。
目をゴシゴシやりながら周りを見渡すと、ヤムチャとシルフがいない。

初めてあの洞窟で迎えた朝に似ているこのシチュエーションがとても懐かしく、思わず修行に明け暮れた日々を思い出した。
ふと外で大きな気を感じる。
この気の感じはヤムチャのものだろう。
マーリンはヤムチャが何をしているのか大体想像がついた。

「お父さんすごいや!それはなんて技なの?」
シルフの大声は、洞窟内にいたマーリンの耳にも入る。
マーリンはフラフラとした足取りで洞窟の入り口まで歩いていった。
自分の真上にある太陽がやたら眩しく感じる。
そしてその光が、彼女の目を優しく覚ましてくれた。
少し遠くからヤムチャの声が聞こえる。
「界王拳2倍、って技だ。無理をすれば30倍以上まで上げられるけど、1、2分持つのがやっとってところだな。それに使い終わったら反動でしばらく動けない。使いこなせるのはせいぜい20倍ってところか」
シルフはヤムチャが何を言っているかはよく解らなかったものの、この男はスゴイということは、近くにいるだけで痺れるぐらいその肌で感じていた。
もちろんマーリンも。
その赤いオーラを纏うヤムチャの姿は、マーリンの記憶の中で、初めてヤムチャが自分の前で界王拳を使った時のそれと被った。
そして自然に握りこぶしに力が入り、無性に体がウズウズとしてくる自分にハッと気付く。
起きたばかりで、それに昨日までの戦闘で体の疲れはまだ残っているはずなのに、何故かマーリンは動きたくてしょうがない衝動に駆られる。
まるで何かに操られているかのように、自分の意識が戦闘態勢へと変わっていくのが分かったマーリンだったが、こればかりはサイヤ人の本能的なものであって、中々制御できない。
もちろん、それを促しているのは目の前から感じられるヤムチャの強さ…それだけだった。

99:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 00:48 oPl7hCEg
【24話】
界王拳を解いたところで、ヤムチャはマーリンの姿に気付く。
「よう、マーリン。今ので起こしちまったか?」
「お母さん、おはよう!」
ヤムチャは悪い悪いと言わんばかりに手で謝罪のジェスチャーをする。
「気にしなくていい。あんな地響きがしていたら起きない方が不自然だ。それよりヤムチャ、久々にわたしと組み手とやらをしてみないか?宇宙には強い者が

いなくて退屈していたのだよ…ふふ」
マーリンはそう言いながらサッと戦闘の構えを取った。
ヤムチャはマーリンの誘いに乗るか乗るまいか頭をかきながら迷っていたようだが、やがて決心をしたようだ。
「いいのか?…言っておくが、俺は腕をあげたぞ」
ヤムチャはニヤリと表情を変えた。
そして亀仙流の構えにアレンジを加えた独自の構えでマーリンの前に立ちふさがる。
対するマーリンもそれを見て笑い返す。
「ふふ…面白いっ!言っておくが手加減は無用だ、本気で来い!」
そう言いながら指をパキパキと鳴らすと、マーリンは気を解放し始めた。
「はあああああ…ッ!」
「ッ…さすがに凄い気だな…ていうか俺相手になるのか…?」
まるで地下から湧き出る水のようなその底知れない気に、さすがのヤムチャも表情が曇る。
「…シルフ、離れていろ。200…いや、400メートルぐらいな」
ヤムチャは姿勢を低くし、シルフに離れるように促す。
それに対しシルフは素直に頷き、急いで二人の間から離れていった。
マーリンとヤムチャの間に走る緊張感はシルフにもビリビリと伝わっていたようだ。

100:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:23 oPl7hCEg

【25話】
「いくぜマーリン!対人で使うのは久々だな…狼牙風風拳ッッ!」
「ふふ…その技は見切っている!狼牙風風拳によっていやと言うほど痣(アザ)ができたのでなっ!」
マーリンがそれを言い終わるや否や、ヤムチャは超スピードでマーリンに突っ込んでいった。
シルフの目では、その速さを捉えることが出来なかったが、ヤムチャがマーリンの方へ向かっていってることだけはかろうじて理解できた。
ヤムチャの移動によって、走った道には砂嵐が巻き起こる。
その様子をシルフは息を飲んで見つめていた。

超スピードな上に砂嵐までもが巻き起こり、ほとんど肉眼ではヤムチャの姿を捉えられないはずだがマーリンは焦りもせず、表情一つ変えずに集中していた。
「そりゃああああッ!!」
砂嵐の中から突然ヤムチャの姿が現れ、その直後にヤムチャの拳がマーリンの目の前までそれが迫る。
それと同時に、マーリンの目付きが変わった。
「受けてやろう…お前の狼牙風風拳を!」

ドガガガガガガガッッ!
バキッ!ドガッ!

激しい攻防のように見えるが、ヤムチャの狼牙風風拳を完璧に全てガードするマーリン。
次から次へと拳を繰り出すものの、全て直前でマーリンに防がれてしまい、思うように攻めれないヤムチャ。
「チィッ!!」
一度もクリーンヒットすることなく、ヤムチャは再びマーリンから距離をとった。
「さすがに隙がないな…今みたいな単調な攻めじゃ通用しなそうだ」
ヤムチャは顔に汗を浮かべながら言った。
「つまり、腕を上げたのはヤムチャ、お前だけではないということだ」
マーリンは腕でヤムチャの攻撃を全て受け止めたのにも関わらず、その腕には傷一つない。
それどころか、殴っていたヤムチャの拳の方が逆にヒリヒリと痛んでいた。
「へへ、そうかい。それじゃあこいつはどうだっ!」

すると、ヤムチャは何かを閃いたのか、再びマーリンへと突進していった。

101:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:33 oPl7hCEg
【26話】
「ハイーーッ!」
マーリンは再びヤムチャの単純な突進に、怪訝そうな表情を見せたが、やがてその表情も不気味な笑みへと変わる。
「…というのは残像で、本物のお前は後ろだろう?…そこッ!」
ヤムチャの残像拳を見切り、マーリンは振り返らずに気を探り、後ろにいたヤムチャに肘打ちをくらわす。
が、ヤムチャはそれを顔面の直前で受け止めると、体勢を低くしてマーリンの足元目掛けて蹴りを入れる。
足元がお留守ではないマーリンは、最低限の跳躍でそれを避けると、クルリと体を回転させ、その遠心力を利用しフック気味のパンチを繰り出した。
「なっ…!!」
これは受け止めたらまずい。
変則的な動きで、こんな攻撃を予想できなかったヤムチャ。
恐らく、普通に受け止めても致命的ダメージを受けることになる。
単純にパワーだけなら確実にマーリンの方が上なのはヤムチャはよくわかっていた。
界王拳を本気の状態まで上げればどうにか受け止められそうだが、とてもそんな時間はない。
「チッ…!」
ヤムチャは脳内でとっさにこれを判断し、舌打ちすると空中へと飛び上がった。
「逃が…っ!」
逃がすか、と言いかけたマーリンの口が思わず止まる。
マーリンは空中にあがったヤムチャを追いかけようと、足にグッと力を込めたが、なんとヤムチャは2メートルほどしか宙に浮かんでなかった。
そう、ヤムチャが空中へ飛び上がったのは攻撃を回避するためもあったが、次なる攻撃に転じるためでもあったのだ。
「狼牙風風“脚”だ!」
「……!」
ズガガガガガガッ!
ヤムチャは武空術で空中に静止した状態で、凄まじい蹴りの連打を仕掛ける。
パワー、スピード共に以前のヤムチャからは想像がつかないほどの攻撃だ。
「ハイハイハイハイハイハイッ!ツリャアアアッッ!」
独特な掛け声と共に次から次へとヤムチャの蹴りがマーリンに向かって繰り出される。

102:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/07 01:47 oPl7hCEg
今日のところはこの辺で寝ます。
戦闘シーンは書くのが難しい…。
頭の中で描いた戦闘を、文章で読者様方にそのまま伝えるのは至難の技ですね。
◆Nt3ni7QiNwさんも、頑張ってください!

それでは。

103:Classical名無しさん
08/12/07 18:49 /TOnHu4U
これからどうストーリーが動くか楽しみ

104:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 01:06 HmL8Bl5A
【27話】
マーリンはその蹴りを全てガードしているが、攻撃が速すぎて反撃する隙がなかなかなかった。
距離を取って立て直してしまえばよかったのだが、彼女のプライドはそれを許さない。
意地でもこの場に留まろうとするマーリンに、ヤムチャは容赦せず蹴りを打ち込んでいく。
クリーンヒットもしてないし、ガードも全て間に合っているが、防戦一方では気分が悪いのか、段々と彼女の表情に余裕がなくなってくる。
「…っ!こ…の…ぐらいッ!!はぁあああッ!!」
勢いよく動いていたヤムチャの足が止まる…いや、止められたのだ。
もちろんマーリンの手によって。
「な…止めやがった…!」
マーリンはヤムチャの足をしっかりとつかみ、ジャイアントスイングのようにしてヤムチャをグルグルと回す。
遠心力の勢いでヤムチャは身動きができない。
そして数十回転させた後にマーリンは手を離す。
言うまでもなく、ヤムチャは無抵抗に数百メートル先まで吹っ飛んだ。
岩壁を貫通し、地面を数回バウンドしたところでようやく身動きがとれるようになったヤムチャ。
すぐに身構えるが、マーリンの姿が見えない。
「ここだ、ヤムチャ」
ヤムチャの真横からマーリンの声が耳に入った。
「は、速い…な」
吹っ飛ばされた直後に起き上がったつもりなのに、彼女は既に目の前に居た。
ヤムチャの体勢が整わない内にマーリンは攻撃を仕掛ける。
「さっきのお返しだ…今度はわたしの狼牙風風拳をくらうがよい」
マーリンはニヤりと笑い、高速でヤムチャに殴打のラッシュをかける。

ズドドドド…!ガキッ!バゴ!

対するヤムチャも最初は避け切れなかったが、体勢が整うと本場の狼牙風風拳で応戦する。
目では捉えられない超高速な攻防が続く。
そしてお互いに結局1発もクリーンヒットしないまま、両者は再び距離をとった。

105:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 02:37 HmL8Bl5A
【28話】
「準備運動はこれぐらいでいいか?ヤムチャ」
マーリンは息一つ切らさずにヤムチャに向かっていった。
「ああ、そうだな」
ヤムチャも負けてはおらず、余裕の表情を浮かべる。
「そろそろ本格的にこいよ。あくびが出ちまうぜ」
ヤムチャは人差し指をマーリンに向けると、クイクイっとやり挑発する。
「……」
その挑発にムキになって突っ込んでくると思ったヤムチャだったが、マーリンはその挑発に乗らずに、ただジッと身構えていた。
この数年で突っ込み癖は直ったか…と少し感心させられたヤムチャ。
しかし…それは…彼女は…マーリンはただ構えていただけではなかった。
「っはぁあ!!!」
唐突だった。
ヤムチャが気づいた頃には目の前に自分に向かって迫ってくるエネルギーの塊があった。
なんの前触れもなくマーリンの手の平からヤムチャに向かってエネルギー波が放たれたのだ。
そこまで威力はなかったが、ヤムチャは驚いていた。
「っ……今の…どうやって…!」
エネルギー波が予想できなかったヤムチャは、咄嗟に上に避けるしかなかった。

ドゴォオーンッッッ!

真下で爆発が起きる。
威力がないとはいえ、直撃したらヤムチャとは言えどただでは済まない体になっていただろう。
空中でうまく避けれたとホッとしたヤムチャだったが、マーリンの狙いはそのエネルギー波の不意打ちではなかった。
遥か下の地面に出来た影に、自分の物と、もう一つ自分のものではない人影が存在するのを確認し、ヤムチャは全てを悟った。
飛び上がった先…ヤムチャの背後はマーリンが待ち構えていたのだ。

106:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 02:41 HmL8Bl5A
【29話】
「な…後ろ……!」
ヤムチャがそれに気づいた頃にはマーリンの蹴りがヤムチャの背中を完璧に捉えていた。

メキッ!

「そーりゃああ!!」
鈍い音と共に、マーリンの足はヤムチャの背中にめり込むと、彼女はそのまま掛け声と共に、地面にむかって足を振り抜いた。
何かが壊れるような音が聞こえたのと同時に、背中に激痛が走る。
「グ…ハッ…アア…!」
声にならない声をあげることが今の彼に出来る精一杯だった。
ヤムチャは蹴られた瞬間に意識が遠退き、自分が今下に落ちていると言う状況を理解できずにいた。
上手く呼吸が出来ない。
ヤムチャが時速数百キロはあろうかという勢いで地面へと落ちていく。
「……だあああああ…ッ…まだだ!」
だが、地面寸前でヤムチャの意識と体が一致した。
そして墜落ではなく着陸という形で再び地面に足をつけるヤムチャ。
長年の武術経験からか、ヤムチャはマーリンに蹴られる寸前に無意識のうちに瞬間的に背部の気を高めていたため、致命傷だけは避けていたのだ。
かといってかなりのダメージを受けたことに変わりはないが。
数秒後にマーリンもゆっくりと着地してきた。
「さすがだな…エネルギー波を避けるのはわかっていたが、あの蹴りをくらって持ちこたえるとは…。だがダメージは大きいようだな、ヤムチャ。ふふ…早くも勝負あったか?」
腕を組ながら笑みを浮かべるマーリン。
ヤムチャはそれを見て口から血の混じった唾をペッと吐き出す。
「今のエネルギー波……普通じゃなかったな?」
かなりのダメージを負い、今後の戦闘に支障がないと言えば嘘になるヤムチャだったが、不適にも笑い返した。

107:ジュウ
08/12/08 06:40 TSsCU3GI
おもしろ杉~

108:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:24 HmL8Bl5A
【30話】
「…さあな」
マーリンはとぼけたように首をかしげる。
だがヤムチャは続けた。
「俺はお前がエネルギー波を打つなら、打つ前に手に宿った気を感じとり、あの程度ならもっと余裕でかわせたはず…というか打つ前に分かったはずだ。
だがお前からはその気の『溜め』を感じられなかった」
余裕を見せていたマーリンだったが、ヤムチャが喋り出すと表情が強張ってきた。
押し黙っているマーリンに、ヤムチャはなおも続ける。
「お前はもしかして、外見の気を変化させずに…内面的な気を高めることができるのか?エネルギー波のあとの蹴りにしてもそうだ。
後ろから気配は感じなかった…。
お前は高速で俺が動く方向を予想し、そこで気を消して俺の背後で待ち構えた。そして体の内側に溜めていた気を一瞬で体に宿らすとし、俺がお前の気を察知する前に俺を蹴った。
つまり、お前が気を入れたのは、蹴りが俺の体に触れる直前ってことだ。察知されたら避けられたりガードされたりしちまうからな。どうだ?違うか?」
単純に、気のコントロールならヤムチャとて達人レベルだ。
だが…ヤムチャとマーリンの違いはそのコントロールの『速度』だった。
普通、エネルギー波を打つにはヤムチャの言うように気の溜めが要る。
その溜めの動作をいくら短くしても、気を探れる能力があるものなら、相手がエネルギー波を打つ前からそれを察知できる。
だが、今のマーリンの攻撃はその次元の域にはいなかった。
体の内側…つまり相手に悟られないように気を体内で上昇、凝縮させ、外見の気を変化させずに、内面的な気を高める。
そして、凝縮されたその気を瞬時に外…つまり、体の一部、あるいは全体の強化や、エネルギー波やらへと変化させ、放出させるという技術だ。
その気のコントロールにより、蟻のようなレベルまで気を消したかと思えば、次の瞬間にはスーパーサイヤ人並のパワーでの攻撃を繰り出す…。
当然のことながら、気を察知しながら戦うヤムチャを初めとする地球人たちでは気を読むことが出来ず、相手の場所も非常に分かりづらい有効な手段だ。
ヤムチャがマーリンの攻撃が読めなかった答えは、この変則的なマーリンの気のコントロールだった。

109:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:25 HmL8Bl5A
【31話】
「ふっふっふ……あははははっ!」
ヤムチャの説明が終わると、マーリンは甲高い声で笑い出した。
「何がおかしい?俺の考えは間違っていたか?」
「ヤムチャ、お前は本当に凄い男だ…わたしがお前対策に長い時間かかけて編み出したこの技を…たった数秒のこの手合わせで見抜くとはな…」
言葉では自分の技が見抜かれたことを褒めているが、それでもマーリンの表情には再び余裕が戻っていた。
ヤムチャはそのマーリンの表情を見て自分の目を細めると、再び戦闘の構えを取る。
「だがな、ヤムチャ……わたしはお前のことをよく知っている。わたしがこんな小細工をしたところで、一瞬で見抜かれるだろうと思っていた…」
マーリンもヤムチャが構えたのを確認すると、同じく戦闘態勢に入る。
「しかし…この技は“見抜けても避けれない”技なのだよ…ふふ、残念だったな」
「………」
たしかにマーリンが同じような攻撃をしようと、相手を『気』で感じて動いていては、分かっていても今のヤムチャに攻撃をかわすことは難しいだろう。
いわゆる「詰み」の状態にさせたつもりだった…だが。
だが、次に起こった展開は彼女の予想とは違っていた。
ヤムチャの焦ったような表情を見られると思っていたマーリンだったが、ヤムチャはそんな様子もなくただただ自分に向かって真っ直ぐと構えている。
「…もうその攻めは俺には通用しない。やってみれば分かる」
静かにヤムチャが言葉を発する。
今度ははっきりと分かる、余裕の表情を浮かべて。
「…では、そうしてみよう」
予想外の展開にマーリンは面白くなかったが、気を取り直して再びヤムチャに攻撃を繰り出そうとしていた。
ヤムチャに悟られないように、静かに体の奥でエネルギーを溜める。
じわりじわりと体の芯にエネルギーが充満してくるのを感じる。
それと同時にヤムチャを見つめ、彼の気を察知する…全身に気が張り巡らせているようだが、足の方にパワーを集中しているみたいだ。
最初の攻撃をまず避けて、その後自分から一本取ろうというところなのだろうと解釈すると、マーリンは頭の中でどうヤムチャの不意をうとうか作戦を練っていた。

110:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:31 HmL8Bl5A
【32話】
だが、ヤムチャへの意識が疎かになったほんの一瞬…目を放した隙に、ヤムチャの気配が自分のすぐ近くにいることを感じた。
「油断したなっ!」
「…っ…!」
ガードしようとするが、気のコントロールが間に合わなかった。

ドス…!

気付けば腹に、ヤムチャの拳がヒットしていた。

「………ッッ!」
胃液が口から出そうになるほどの激痛。
毎日鍛えているとはいえ、久しぶりにまとものパンチをくらったマーリンは苦しそうに顔を歪める。
「誰がこっちから攻撃しないって言った?」
先程とはまるで逆の展開。
自分の頭上からヤムチャの声が聞こえる。
「チィイ!」
腹を殴られたマーリンだったが、苦し紛れにヤムチャに向かって手刀を繰り出した。
だが、いとも簡単に受け止められてしまう。
怯まずに逆の手でアッパーを狙うが、これも紙一重で空を切る。
腹へのダメージが大きく、いつものように技に切れが出ない。

だが、マーリンは接近戦となるのを密かに狙っていたのだ。
「…はぁあっ!!」
ヤムチャとマーリンの間は1メートルもない。
その至近距離でマーリンは先ほどと同じ要領で、溜まっていた内面的エネルギーで、エネルギー波を放つ。
ヤムチャは避けれるはずもない。
そのエネルギー派はヤムチャを吹っ飛ばし、はるか遠くへと飛んでいった…かのように見えた。

111:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:33 HmL8Bl5A
【33話】
だがそれは違う。
当たったにしてはまるで手ごたえがない。
「あいにく心理戦は得意でね。あのタイミングでエネルギー波がくるのは分かっていた」
「!!」
今度は左からヤムチャの声が聞こえた。
声が聞こえた方向を向くと、ヤムチャはすぐ隣に腕を組みながら待ち構えていた。
「それにしても残像拳に引っかかるとは、さすがに焦りすぎじゃないか?」
分が悪いと思ったマーリンは、足で地面を蹴り、大きく後ろへとジャンプするように下がり、ヤムチャとの距離をとった。
「何故避けられたのだ……」
マーリンはヤムチャに聞こえないよう、独り言をつぶやく。
そして、そこで腹を押さえながらがっくりと膝をついた。
マーリンは歯を食い縛りながら悔しそうにヤムチャを睨む。
「結構効いたみたいだな。気を全く変化させずに気を溜めるという発想まではよかった…俺には思いつかなかったぜ。
気を察知して戦う俺たちにとっては、目を瞑って戦うよりやりにくいぐらいだ」
ヤムチャはあえて攻撃の手を止めて続ける。
「だがな…この技の弱点は、内面的な気を溜めている間は、外見の気を自由に変化させれないことだ。
つまり、内面の気を溜めている時にピンチの局面が突然訪れたら…頭では分かっていても対処ができない。
さっきみたいにお前が気を下げた状態で、気を入れた状態の俺に殴られたらどうなるかわかるよな。絶対的なパワーの差があってもこの通りだ」
ヤムチャの指摘に対し、びっくりしたような顔でマーリンがヤムチャを見つめる。
「なん…だと?そんなはずは……」
「じゃあなんで、戦闘力がお前より低いはずの俺の攻撃で、そこまでダメージを受けている?」
「……!」
口では強がってみるものの、冷静になって考えてみると確かにそうだった。
ヤムチャの気配を感じてから、防御に移るまでに時間がかかり、その時受けたダメージも大きい。
マーリンは言いかけた言葉を言うのをやめ、下へと俯く。

112:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:40 HmL8Bl5A
34話】
「それに意識が内面エネルギーの方へと偏りすぎてしまって、相手の気を完全に把握しようとしても意識がついていかない。
普通にやって相手の気を100%読めるなら、今のお前は40%ぐらいか。残像拳に引っかかったのもそのせいだろう」
ヤムチャはマーリンの方へ近づきながらなおも続ける。
「もっとも…俺が挑発して、お前がその技を確実に使ってくるって分かっていたから、今はたまたま回避できただけで、
戦闘中に上手くコンビネーションとして織り交ぜる分にはカナリありだと思うぜ…」
「……そうか…ふふ、そうか…」
「…俺の言ってることはおかしいか?」
マーリンの不気味な笑いにヤムチャは質問する。
「おかしいのではない…嬉しいのだ。わたしはこの技をよく考えて編み出したつもりだった。だがお前はその技の隙を一瞬で見つけ、実際に破って見せた。
確かに気のコントロールに集中しすぎて、ヤムチャへの意識が薄れたのは事実だ。わたしに隙があったとは言え、それを読むお前のブジュツの腕は凄まじい…
わたしが認めただけの男だ…」
「…おだてても何も出ないぞ」
「やはり、わたしにはこういった小手先の技を使って戦うのは性に合っていないらしいな…っ!できれば…できれば武術の腕だけでお前に勝ちたかった……!」

ボウッッ……!

マーリンの周りに赤いオーラが漂う。
そして、先程とは比べ物にならないぐらいにマーリンの気が膨れ上がり、ヤムチャはその気迫で一歩下がりそうになった。
「…勝たせてもらうぞ、ヤムチャ」

113:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/08 23:42 HmL8Bl5A
【35話】
「あれは界王拳…。なるほど…とことんやりたいってわけか…」
さっきまでのはお遊びだったとでも言わんばかりの凄まじい気に、ヤムチャの足は震えかけていた。
だが、武道家として、戦士として、ここは退くわけには行かない。
仮にも相手は自分の弟子だ。
マーリンは先ほどまでのような小細工は使っておらず、既に身体中の気を解放している。
解放しているはずなのに…なおも彼女の気は変化し続ける。
増えているのか…?はたまた減っているのか…?
激しい気の変化にマーリンの気の状態がよくつかめない。

「今のわたしの攻撃についてこれるかな?ふふ…」

「面白い…こちらも界王拳にかけるしかないようだ…!」
ボウ…と、ヤムチャの方も真っ赤な気のオーラが包む…!
砂嵐が巻き起こり、お互いの視界はほとんど遮られている。

だが、そんなことはお構いなしなのか、既にマーリンはヤムチャの目の前まで迫っていた。

「かああああああっっっっ!」
マーリンの拳が刺さるような勢いで、ヤムチャの顔面目掛けて飛んでくる。
「っく…!」
ヤムチャはそれを辛うじてかわした。
だが次の瞬間にはマーリンの逆の拳が目の前にあった。
それもギリギリでかわすヤムチャだったが、マーリンの手は止まらない。
次から次へと迫る拳に、ヤムチャは必死に避けることしかできなかった。
最初からヤムチャの回避力をマーリンのスピードが上回っている…このままでは時間の問題だった。

114:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 00:43 .50R71JU
【36話】
これは避け続けられないと思ったヤムチャは、手のひらに気を集中し、マーリンの拳を受け止める決心をする。

バシイイイ!

受け止めた反動で5メートルぐらい体が後ろに下がったヤムチャ。
「ッ…!受け止めた…だと!?」
マーリンは信じられない表情を見せる。
以前は孫悟空をも捉えた拳を、受け止められるなど考えもしなかった。
マーリンの戦闘力はあの時より格段にパワーもスピードも増しているはず。
ましてや、元からヤムチャの力は超えており、更にこの数年の修行で差をつけたつもりだった。
だが…自分の拳はヤムチャの掌の中にあるという事実。
マーリンは予想外のできごとに、思わず手を止めてしまう。
……この時彼女は、このパンチを自分自身の理性で威力を制御していたことに、まだ気付かなかった。
「……やっぱり、これだけ力の差があるといてえな。あの世に行った時大界王様のもとで修行してなかったら、手首から上がふっとんでいたところだぜ…」
あの世…?ダイカイオウ…?
ヤムチャが何を言っているか分からなかったが、自分の拳が受け止められた事実はなんら変わりない。
マーリンは焦りを感じていた。
…焦りを感じていたのだが、この気持ちはなんなのだろうと自問自答し、意識が葛藤しているのが分かった。
心の中でモヤモヤしたものがあり、それが中々姿を現さない。
「何を言っているんだ…?」
マーリンはヤムチャに自分が動揺していることをばれないよう、冷静に聞き返す。
「前にちょこっと話した界王様っていたろ。それより更に偉い人の元で修行したんだ」
ヤムチャは自慢げな様子もなく、淡々とあの世で修行した時のことを語る。
「おしゃべりタイムはこの辺で良いか?続けるぞ、マーリン!」
「…望むところだ」

ドスンッ!
バゴッ!
ガキィィ!

まるで金属と金属が物凄い勢いでぶつかり合っているような爆音が荒野に響き渡る。

115:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 00:44 .50R71JU
【37話】
「そりゃーッ!!ハイハイハイハイーッ!!」
ヤムチャはこれまでにないほどの、怒涛の進撃を見せる。
自らの限界である界王拳を30倍にあげてマーリンに猛打を浴びせていた。
常人なら、手の動きどころかヤムチャとマーリンの体の形すら見えないだろう。
だが、静かに勝負は付きつつあった。
「………」
この時、マーリンは心の中にあったモヤモヤをようやく理解したが、それを口には出せずにいた。
言ってはいけないことだと悟ったからだ。
必死のヤムチャの攻めに対し、マーリンは神妙な面持ちでそれを防御し続ける。
マーリンは防御の合間にコンマ数秒とない隙をヤムチャに見つけると、空かさずジャブ気味のパンチでカウンターをとっていた。
ほんの数十秒の攻防なのだが、手数が一瞬で数百回という次元なので、カウンターを受けた数もそれだけ多い。
ダメージを受けながらも、無理してマーリンを攻め続けるヤムチャ。
界王拳はなんとか維持しているものの、既に体力が限界を迎えつつある。
「はあ…はあ……」
ヤムチャは殴打を止めると、攻め続けては分が悪いと見たのか、“受け”の構えになる。
「ヤムチャがこないのなら、わたしからいかせてもらうぞ!」
それを見たマーリンはすぐにヤムチャの懐へ入り込み、ヤムチャに攻撃のラッシュを浴びせる。

ガガガガッ!ドガガガドガッッ!!!

今度はマーリンが攻め、ヤムチャが守りといった形になった。
マーリンの攻撃に、ヤムチャは何とか付いていき、防御することができていた。
そして、マーリンのときのように攻撃に隙を見つけるとカウンターを返す。
だが…彼の目にはもう燃え滾る闘志のような輝きは感じられなかった。

116:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:31 .50R71JU
【38話】
互角の攻防をしているように見えるが、ヤムチャの表情には余裕がなく、マーリンは笑いを見せる余裕すらあるように感じられる。
そんな中、攻防戦をしながらヤムチャの表情はどんどんと曇っていった。
すると、何を思ったか、ヤムチャは後ろに大きく跳躍し、攻防に見切りをつけたかのように、フッと界王拳を解いた。
ヤムチャを覆っていた真っ赤なオーラが、徐々に薄くなっていき、普通の状態に戻る。
マーリンはヤムチャのよく分からない行動に呆然とし、何を言って良いのか分からなかった。
体力の限界が近かったとはいえ、スタミナ切れではないはずだ。
あと1分ほどは持ったはず。
ということは…?
ヤムチャも無言でマーリンの方を見つめていた。
言葉を交わさずにただただ目と目を合わせる二人だったが、ようやくヤムチャの口が動く。
「…やめだ。もうこれ以上戦っても意味が無い」
「何!…それはどういう……」
「分かりやすく言ってやろうか?今までの攻防で悟った。これ以上続けても、俺はお前に勝てない。そうだろ?」
突然のヤムチャのギブアップ宣言。
マーリンは驚きを隠せず、すぐにヤムチャに突っかかる。
「何を言っているんだ、ヤムチャ。わたしとお前はほぼ互角の戦いを…………」
そこまで言いかけたマーリンだったが、ただならぬ視線を感じ、口が止まる。
ヤムチャが睨むようにして、マーリンを凝視していたからだ。
「…薄々勘付いてはいたが…お前、途中から俺の気に合わせて自分の気を調整していたな?…わざわざ“互角”になるように…。故意的かはわからねーけど」
「…!それは……」
答えを聞くまでもなく、マーリンの反応が全てを物語っていた。
ヤムチャはそれを確認すると、大きくため息をつき、下を向いて独り言のようなことをはじめた。

117:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:33 .50R71JU
【39話】
「…はは…あはははは!見ただろ?マーリン!」
「…なにをだ?」
独り言のようにそっぽを向きながら喋っているヤムチャだが、話の矛先はマーリンに向いているようだ
「毎日毎日、人生の大半を修行に注ぎ込んでも、俺はこの程度なんだよ!よーく分かったろ?お前が慕っているこの男は、この程度なんだってな」
「……ヤムチャ…違う…違うぞ、わたしはそんな風にお前を見ていない…」
マーリンも界王拳を解くと、話しながらゆっくりとヤムチャの元まで歩み寄っていった。
「…みんなの前ではヘラヘラしていた俺だけど、毎日のトレーニングを欠かしたことがない。もちろん、地球が平和になってからもな」
マーリンがヤムチャの傍までたどり着くと、ようやくヤムチャの視線がマーリンに戻る。
「…続けろ」
マーリンは何か言いたそうだったが、ヤムチャに話を続けるよう促した。
「お前に再会しても、恥ずかしくないように…堂々と胸を張れるように……必死に修行した。でも、これが結果だ。俺はお前に本気すら出させることが出来なかった…それどころか手加減されちまうとはな…情けない話だぜ」
「ヤムチャ…わたしはそういうつもりでやった訳では……」
「いや、いいんだ。お前がマジになったら、俺が相手にならないのは分かっているからな」
マーリンはヤムチャの開き直りに、励ましの言葉さえ思いつかず、何も言えなかった。
彼女自身、経験したことのあるこの“絶対的力の差”。
絶対に超えられない壁を目の当たりにしたとき、己の強さに一気に自信がなくなり、発狂した経験がある彼女だから、ヤムチャの気持ちはよく分かるのだ。
「マーリン…俺が何故、十年近くもお前に連絡をしなかったか…今教えてやろうか?……もう分かると思うけど…」
「……話してくれ、ヤムチャ」
すると、ヤムチャは大きく息を吸い込み、溜まっていたものを吐き出すかのように喋り始めた。

118:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:34 .50R71JU
【40話】
「俺は…俺は弱すぎるんだよ!いくら修行しても、悟空たちのように強くはなれなかった…。いや、悟空たちどころじゃない。あいつらがあっさり倒しちまうような敵にさえ、俺は勝つことが出来なかった。
そんな俺が、何事も諦めずに戦い続けるお前と…再び会う資格があるのか?…俺はずっと自問自答を重ねていた。だから連絡がこんなに遅くなったんだ」
「……」
拳を震わせながら喋るヤムチャを、マーリンは黙ってジッと見つめていた。
「…今の俺はそれなりの自信があった。今ならお前に勝てる…とまでは行かなくても、いい勝負が出来る…そんな甘い考えを抱きつつ、お前を地球へと移動させたんだ。…甘かったよ、俺は」
「もういい、ヤムチャ。分かった。それ以上自暴自棄になるな…」
「そりゃそうだよな…すぐにこーやって諦めるような男が、マーリンといい勝負になるわけがないよな…はは…」
ヤムチャはマーリンの足元に倒れるように座り込むと、無念そうな表情を浮かべ、青い空を見つめていた。
マーリンはどう言葉をかけて良いかしばらく考え込んでいたが、やがて口を開く。
「…ヤムチャ、これは励ましとか同情とかそういった類に聞こえてしまうかもしれないが…少し言わせてくれ」
「なんだよ」
「前にも言ったと思うが、お前は宇宙でも指折りの最強クラスの戦士だ。間違いない」
「仮にそうだとしても、仲間内じゃ強いとはお世辞でも言えな―」
「本当にそうか?」
全て言い終わる前にマーリンはヤムチャを制した。
「そりゃ…悟空やベジータには勝てないだろうし、悟飯は今や宇宙最強の戦士だし…ていうかサイヤ人は全部無理だろうな。ピッコロも勝てそうにない。
天津飯も修行しまくってそうだしな…やっぱりチャオズとヤジロベー…それから結婚して修行を怠けてるクリリンぐらいか、俺が勝てそうなのって」
「実際、最近そいつらとは戦ってはいないんだろう?なら分からないのではないか?」
「無理。絶対勝てねーよ、やるまでもない」
ヤムチャの投げやりな態度に、思わずこめかみと拳がピクリと反応したマーリンだったが、気持ちを抑えて話を続けた。

119:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:35 .50R71JU
【41話】
「ヤムチャ…お前は自分が思っている以上に強い力をもっている。その気になれば孫悟空にも勝てるぐらいのな…わたしはそう思う。本気で、だ」
「ありがとな。でも無理だ…あいつらは次元が違うんだよ、もはや」

パシン!!

ヤムチャはそれまでマーリンの顔を見ていたのだが、何故か視界から突然それが消えた。
マーリンにビンタされたのだ。
「い…いってーな!…なにすんだよ!」
ヤムチャは赤くはれ上がった頬を押さえながらマーリンに向かって叫んだ。
「諦めないって言ったのは嘘だったのか?わたしと同じように、諦めず戦うんじゃなかったのか?」
マーリンの目付きは厳しいものになっていた。
自分が尊敬するヤムチャを…こういう形で説教するとは少し残念なものだが、ここはびしっと言うしかないと判断したのだ。
ヤムチャもようやく目が覚めたのか、先ほどとは打って変わって真面目な顔つきになる。
「…たしかに前のレベルなら追い付こうと言う気になれた。だから俺も修行したさ…死に物狂いでな。けどあいつらも強くなっていく。俺の何倍ものペースで。
気が付いたら、この歴然たる差。お前は見てないから分からないだろうけど、もはや俺なんてお荷物状態だ。
だからもう、あいつらを目指すのはやめた。俺は自分の限界を越えて越えて、越えられなくなる日がくるまで修行を重ねることにしたんだよ…。これが俺なりの結論だ」
ヤムチャは立ち上がると、マーリンの目をしっかりと見ながら喋った。
「その修行の先には何があるというのだ…」
「さあな…たまに考えちまうんだよ。なんで俺修行してるのかなって…こんな頑張ってなんの意味があるんだろうってな。でも、そんな弱音にぶち当たったと

きに、そこで浮かぶのはいつもお前の顔だった…マーリン…」
「……ヤムチャ…」
「まっ、しょせん目標のない修行だ。狼の一人旅で終わっちまうかもな…」

120:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:36 .50R71JU
【42話】
自らの限界…いや、言い換えるのなら地球人の限界。
地球人の中では抜群の格闘センスを誇るヤムチャ。
そして一般人では想像を絶するような、血の滲むようなと努力と、神様や界王様の元での修行。
ヤムチャはマーリンの言うとおり、既に宇宙から見ても指折りの達人と言われても良いレベルの強さを持っていた。
だがその強さにも限界がある。
元々ぬくぬく平和な星の元産まれた地球人と、常に死と隣り合わせで毎日が戦いの日々…更に死にかけから全快すると強さがいくらでも増す戦闘民族サイヤ人

では、
体質や潜在能力…その他に“スーパーサイヤ人”などという界王拳を遥かに凌ぐパワーアップの技なども考慮すると、はじめから条件が違いすぎた。
だが、ヤムチャはそれでも諦めずに修行を続けていた。
しかし、待っていたのは悲惨な結果。
異常なまでに強くなっていく敵の出現と、それを相手に、手も足も出ないままやられるだけの自分。
そしてその敵を更に凌ぐような力をつけていく悟空をはじめとするサイヤ人たち。
現実の壁はヤムチャにとって、余りにも高すぎた。
ヤムチャは自分が敵に通用しないという現実より、その強い敵より更に強くなっていく仲間たちに対してのショックの方が大きかった。
なぜならそれは間接的に、ヤムチャと悟空たちの圧倒的な力の差をヤムチャに突きつけていたからだ。
恐らく、今悟空とヤムチャが戦ったら小指一本でもやられるだろう。
のし掛かる無言の重圧と、無意識のうちに確立された孤立感。
今じゃ一緒に稽古しようとすら言われなくなった。

そんな嫉妬心や蟠りを、ヤムチャはずっと胸に秘めながらも、一人で修行をしていたのだ。
いつか…いつか、この差が縮まって、悟空を倒せなくとも、せめて一泡吹かせることができるぐらいの強さを求めて。
悟空は全く意識してなかったが、ヤムチャの中の悟空へのライバル心は消えないままだった。

121:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:44 .50R71JU
【43話】
いつしか、ヤムチャの目には涙すら浮かんでいた。
「誰よりも強くありたい…俺は…俺はそんなことを願うことすら許されないのか……?」
誰かに問いかけたわけでもなく、ヤムチャは空を見ながら自問自答する。
「そんなことは…ない。一人旅では終わらせない」
そのヤムチャの様子を見て、ようやくマーリンはヤムチャに優しい声をかける。
「お前は…ヤムチャは…わたしの師匠だぞ?ソンゴクウを一度とはいえ破ったこのわたしの…な。
だから…それだけの悔しい気持ちがあるなら…諦めないでほしい…その気持ちがあれば、絶対に結果として現れるはずなんだ…」
マーリンはヤムチャに視線を合わせずに言った。
「……」
ヤムチャは何も言わない。
マーリンは続ける。
「そもそも…わたしたちがやろうとしてることは間違いだらけだ。違うか?」
「…!その台詞は…」
心に覚えのある発言にヤムチャは顔を見上げる。
「ああ、お前の言葉だ。地球人が最強のサイヤ人に挑もうとするのはたしかに間違っているかもしれない。でも、それがなんだ?
間違っていようといまいと、そんなことはどうだっていい…しかし、これだけは言える」
マーリンは少し考えてから言った。
「サイヤ人だろうと地球人だろうと、最終的に諦めなかったものが勝つんだ。わたしのように、そしてヤムチャ、お前のようにな…」
「…マーリン………」
その言葉は、体より心が苦しい修行を続けていたヤムチャにとって、物凄い支えとなり、心に響いた。
実際は、悟空に勝つのなんて不可能かもしれない。
しかし、ここにこうやって自分をきっちりと見つめ、真剣に考えてくれる人がいる。
例え勝てなくても、この言葉を励みにいくらでも修行に打ち込める気さえヤムチャは沸いてきた。
こうやって、人に認められたのは久々なのだろう。
ヤムチャの心はいつの間にか満たされていた。

122:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/09 01:48 .50R71JU
今日のところは寝ます。
また今週も忙しく、書くペースが中々上げられそうにありません。
いつもコメントくれる方は同じ人でしょうか?
ご丁寧にありがとうございます。

そろそろマーリン、ヤムチャ、シルフ以外のキャラも出していく予定です。

123:ジュン
08/12/09 17:37 iIqAYb6k
楽しみにして待ってます。

124:Classical名無しさん
08/12/09 22:44 YXkpOx7Y
たまに感想書くけど同一人物ではありませんよ


125:Classical名無しさん
08/12/10 21:43 dv8poS0w
ペース早くなってきていいね

126:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/11 01:04 ty0bixrc
【44話】
ヤムチャは黙ってマーリンをその場で抱き締める。
大きなヤムチャの肩幅が、一回り小さいマーリンの肩をすっぽりと覆う。
突然の抱擁にも、マーリンは抵抗すらしなかった。
そしてヤムチャは彼女の耳元でそっと囁く。
「…愛してる。やっぱり最高だ、マーリンは」
「…わ、わたしも……、その…同じ気持ちだ」
マーリンも恥ずかしそうに、ヤムチャに聞こえないぐらいの声で言葉を返す。
既にヤムチャの目から涙は消えていた。
黙っていても、二人が次にすることは客観的に見て想像が付く。
二人は目を瞑り、顔を近づけ、濃厚なキスを……

「お母さあああああん!お父さあああああああん!!今のどっちが勝ったの!?」

出来なかった。
シルフが大声で叫びながらこちらへ走ってきたのだ。
焦って体を離し、ヤムチャとマーリンはお互いに背を向ける。
「遠くてよく見えなかったけど、二人とも動いてなかったし組み手は終わったんだよね?どっちが勝ったの?」
シルフはそんなことを知るよしもなく、目をキラキラさせながら子供特有の残酷なまでに空気を読めない発言をする。
「え……あ、ああ…?ど…どっちが勝ったっけ、マーリン」
ヤムチャは赤面しているのがばれないように、顔をシルフの後ろに向けて、話をマーリンに振った。
「わ、わたしが答えるのか…?そ、そうだな…うーん…双方痛み分けってところだろうか…」
マーリンの頬も心なしか赤く見える。
「ソウホウイタミワケ?新しい技の名前?強いの?」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせて、やれやれという顔をする。

127:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/11 01:14 ty0bixrc
【45話】
「技の名前じゃない。引き分け、ってことさ…母さん曰く、な」
ヤムチャはシルフの頭を大きな手で撫でながら答えた。
「へへ…やっぱりお父さんもお母さんも、めちゃくちゃ強いんだね!」
「…いや、まだだ。俺はまだまだ強くなるぜ、シルフ」
ヤムチャはガッツポーズを取りながら、我が子に対し強気な発言をする。
絶望の淵から這い上がり、今ではその顔に希望の色が見えていた。
マーリンはそのヤムチャの様子を見て、とりあえず一安心といったところなのか、安堵のため息をつく。
先ほどの落ち込みようが嘘のように、今のヤムチャはやる気に満ち溢れていた。

その時!
大きな気を近くに感じ、マーリンの目付きが鋭くなる。
「この気…!」
そして、大きな気の主は、マーリンの真後ろに立っていた。
即座にマーリンは後ろを振り向く。
ヤムチャもほぼ同時に同じ方向を振り向いた。
そこには…ヤムチャにとってもマーリンにとっても、見覚えのある男が立っていた。
「オッス!久しぶりだなあ、ヤムチャ」
背後からのほほんとした声が聞こえた。
どこか気が抜けているが暖かい声が。
「ヤムチャの気がずっと乱れてたから瞬間移動で見に来たけど…やっぱりただの修行じゃなかったみてぇだな」
「ご、悟空…!はは…やっぱりこれだけ激しく戦ったらばれちまうか」
ヤムチャは恥ずかしそうに笑い飛ばした。
「お前は…ソンゴクウ…!」
マーリンは睨むようにして悟空を見ながら言った。
悟空がヤムチャと全く同じ胴着を着ていることが気に食わないようだ。
「あれ…おめぇオラのこと知ってんのか?そういや…どっかで見たことあるような顔だな…」
悟空はあごに手をあてながら考え込む。
「んー……あ!…あーーー!!おめぇは…あの時の…!?」
悟空はびっくりした様にマーリンを指差した。

128:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/11 01:17 ty0bixrc
【46話】
その声に一番びっくりしたのは何故かヤムチャだったわけだが。
ずっと記憶の片隅にあった、かつての敗戦の様子が悟空の脳裏に再現される。
悟空の中でちょっとしたトラウマでもあるこの女を目の前にし、思わず声を荒げてしまった。
マーリンは悟空のあまりの驚きようにも動じず、冷静な口調で言葉を返す。
「…。久しぶりだな、ソンゴクウ。気のせいかもしれないが、余り見た目が変わってないな…」
「ああ、オラは純粋なサイヤ人だから、わけぇ時間が長いんだ。…ってベジータが前に言ってたっけな…確か」
悟空はどうでもよさそうに笑いながら答えると、空かさず続ける。
「いやー、にしてもすんげぇ懐かしいな!そういえばオラまだおめぇの名前しらねぇや!なんつーんだ?」
「…マーリンだ」
「へぇ…マーリン、か」
悟空が自分から名前を聞くとは珍しい…と、ヤムチャは思った。
かつて勝負に負けたこともあり、マーリンにはただならぬ思い入れがあるのだろう。
それにしても、マーリンの悟空に対する接し方はずいぶんと冷たいように見える。
「で、なんでおめぇがここにいるんだ?ずいぶんめぇ(前)に宇宙に帰ったって聞いたけど」
悟空は不思議そうにマーリンに尋ねる。
「そこは俺から説明しよう、悟空」
マーリンと悟空の間にヤムチャが待ってましたとばかりに割ってはいった。
10年ほど前、悟空との勝負のあと、別れ際にヤムチャとマーリンは再び会おうという約束をしていたということ。
そして昨日、ドラゴンボールを使い、宇宙から地球に呼び寄せたということ。
事実をありのまま悟空に伝えるヤムチャ。
「なるほどなー…ドラゴンボールかぁ。それなら納得だ。ま、オラもおめぇに会いたかったしちょうどいいや」
悟空は本当に嬉しそうにしていた。
かつて自分を破ったほどの強敵と、再び会えたという事実が彼をワクワクさせているのだろう。
それはマーリンも同じで、あのギリギリの勝負を、もう一度味わいたいと思っていた。
だが、それよりマーリンは悟空に聞きたいことがあった。
「ところで、ソンゴクウ。…お前はヤムチャを、どう思っている?」

129:ジュン
08/12/11 17:18 YSHnUj2A
おもしろい。早く続きが読みたいっす!

130:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/12 02:50 rLw6IaXg
【47話】
マーリンは唐突に悟空に訪ねた。
予想だにしなかったマーリンの発言に、思わずヤムチャがまた首を突っ込む。
「お、おい。マーリン何言ってるんだ…そんなこと聞いてどうするんだよ」
質問を投げかけるヤムチャをほんの一瞬横目で見ると、再びマーリンは悟空へと視線を戻した。
「ヤ、ヤムチャをどう思っているか…って?言ってる意味がよくわかんねぇよ。…まあ、普通にイイ奴じゃねぇかな」
悟空はマーリンの突拍子もない質問に、たじたじと答える。
言ってる意味がわからないってことはないだろう…と、心なしか悲しい発言にヤムチャは苦笑いする。
「そうじゃない。わたしが聞いているのは、戦士としてのヤムチャだ」
「戦士と…しての?」
「そう。お前たちと共に戦ってきたヤムチャを、お前はどう思っているのかと聞いている」
マーリンは悟空を見つめる。
その目に迷いはない。
マーリンの目をしばらく見つめたあと、悟空は真剣に考えはじめた。
「改まって言われんとうまく言葉が出てこねぇけど…おめぇが聞きたいのは、オラがヤムチャを強いと思ってんのか、それとも弱いと思ってんのかってことか?」
「まあ、簡単に言うとそうだな。もう少し、捻った回答が欲しいものだが」
「そうか。じゃあ正直に話すぞ、普通にヤムチャはめちゃくちゃつえぇと思う。ただ、オラの仲間たちが強すぎてあまり目立てねぇけどな…」
悟空は自分なりの素直な答えを出した。
ヤムチャは弱いと言われなくてよかったとホッとするが、マーリンは納得していない。
数秒黙っていたが、再びマーリンの口が動く。
「最後の一言は余計だな。その言い方だと、ヤムチャがお前を含めお前の仲間たちと比べたら、弱い方に入ると言う風に聞こえるが、ソンゴクウはそう思っているのか?」
マーリンは少しだけ、声を震わせながら言った。
ヤムチャが弱いという扱いを間接的に下した悟空に対して、自分では気付かないほど自然に怒りがこみ上げてきている。

131:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/12 02:53 rLw6IaXg
今日は2時くらいに家に戻れました。
ちょっと体力的にきついので、1話だけで勘弁してください。

132:ジュン
08/12/12 06:40 f6EMH402
無理しないで頑張って下さい。お疲れ様でした。m(__)m

133:ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 15:14 U01cwzu2
書き込めるかテストです。

134:ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 15:39 U01cwzu2

第七話「悟空対人造人間。ヤムチャ達652人+(320人)」

色々あったが人造人間の所に一斉に着いた悟空達。
天津飯はヤムチャ達に近づき頭を拭かせ始めた。

ピッコロは腹を貫かれた2人のヤムチャに近づいた。
「ヤムチャ・・・」「ぐっ・・・助けてくれ・・・ハゲ・・・」「ずあっ!」
ピッコロにより放たれた大量の気により
瀕死だった2人のヤムチャは死亡した。細胞一つ残さずに・・・・

悟空は人造人間に場所を変えるから付いて来いと言う。
だが人造人間達は場所を変える必要はないと言い目から出した光線で
辺りをメチャクチャにしだした。
ドババババババ。破壊されていく町。人々もたくさん殺された。

ちなみにこの攻撃によりナンパしていた3人のヤムチャのうち2人が死亡した。
「おい!汚いから片付けておけよそのボロクズを!」
ナンパされていた女性は生き残ったヤムチャに吐いた。
次話「ヤムチャという名のヤムチャ!648人+(320人)」に続く

135:ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 16:06 U01cwzu2

第八話「ヤムチャという名のヤムチャ648人+(320人)」

「やめろー!」
バキッ、町を破壊していた人造人間に悟空の一撃があたる。
「ついてこい!2人ともぶっ壊してやる!」
「誰もいない場所を作ってやろうと思ったのだが、仕方ない」
悟空は町から別の場所に行こうとする。
その隙にヤムチャ達は逃げ出そうとしたが悟空は見逃さなかった。
「ヤムチャ達。おめえ達もついてこい!」
それに1人のヤムチャが答えた。
「悟空君。僕達見たいテレビがあるから帰るよ」
「ぶつぞ」
「行きます」
悟空は飛んでいき町から離れた。
それに人造人間、ピッコロと天津飯、嫌々ながらヤムチャ達がついていく。
一方ここはブルマ、悟飯、ヤジロベー、残りのヤムチャ達のいる所。
クリリンも仙豆を取りにここに戻っている。
破壊された町を見た悟飯達は悟空達のいる所に行こうとしている。
だがヤムチャ達は行こうとしない。それに悟飯は強い口調で言った。
「ヤムチャさん達も行きますよ!お父さんの所にいるヤムチャさん達もピンチですよ!」
それにヤムチャ達はフッと微笑しながら言い返す。
「ヤムチャは役立たずじゃない。多分、作戦があるんだよ」
「ねえよ、んなもん!」悟飯が怒鳴った。
次話「役立たずのヤムチャ達648人+(320人)」に続く

136: ◆Nt3ni7QiNw
08/12/12 16:10 U01cwzu2
少なくてすみません。
>>102
ありがとうございます。あなたの話はかなり面白いです。君も頑張れよ!

137:Classical名無しさん
08/12/13 21:03 KO9FDwR6
こいつwwwwwww

138:Classical名無しさん
08/12/13 21:32 jtJ3Aki6
ここのSSはみんなレベルが高いので楽しみだ。

139:Classical名無しさん
08/12/14 20:47 f2VdT3p2
「ぶつぞ」「行きます」が秀逸w

140:Classical名無しさん
08/12/15 21:13 Al01H4Q.
◆Nt3ni7QiNwという人間が面白い

141:ジュン
08/12/19 06:34 cfWzoCPU
早く続きが読みたいです。

142:Classical名無しさん
08/12/19 20:14 pfx.pz0A
保守

143:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:23 qM74Xf0A

【48話】
「いや…まあ、順序付けしちまえばそうなるかもしんねぇけど…どうでもいいじゃねぇか、そんなこと」
「順序付けをすればそうなるだと…?」
マーリンはそれまで少し距離を置いていた悟空にジリジリと詰め寄る。
今にも悟空と一戦おっぱじめようかという空気になりかけたところを、ヤムチャがマーリンの肩をグイとつかんで止めた。
「…そろそろやめとけよ、マーリン。はは…悪いな悟空…こいつは結構無駄に熱くなるところがあって……。…な?マーリン」
言われてみれば、確かに地球にきてからというもの、ちょっとしたことですぐ怒りの感情が滲み出ていた自分に気付く。
ヤムチャのこととなると、いてもたってもいられない自分が少し大人気ないように思えてきて、ちょっと恥ずかしくなるマーリン。
ヤムチャは笑いながらいつもの明るさを纏い、マーリンの背中をぽんぽんと叩いて、怒りを宥めた。
だが、マーリンは知っていた。
このヤムチャの笑いが作り笑いであり、実際は先ほど打ち明けたような悔しい気持ちで胸がいっぱいなんだと。
その事実を再度確認すると、いくら悟空が強いからと言えど、悟空のさきほどの発言が余計頭にくる。
もちろんながら悟空には悪気など全くなく、ヤムチャを見下していたりはしていないわけだが。

「っっりゃああああ!ロウガフウフウケンッッ!」

その突然の掛け声と同時に、悟空は背後に殺気染みた気配を感じとる。
何かが後ろにいて、自分に向かって攻撃しようとしているという状況を振り向かずに理解すると、その気を瞬時に探り、相手の位置を正確に把握した。
そしてヒョイと数十センチ横に体を避けると、後ろから突っ込んできた犯人が前のめりにバタンと倒れこむ。
見たところ、まだ小さな子供みたいだ。
トランクスや悟天と同じぐらいだろう。
なんでこんなところに子供が…?
そう思った悟空だったが、その子供の顔を確認すると、誰かに似ている。
だが中々誰だか思い出せない。
うーん、と悟空は長考をはじめた。

144:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:32 qM74Xf0A
【49話】
「今の攻撃をかわすとは…運だけは強いようだな!オマエは!」
その子供は攻撃を避けられると予想すらしてなかったのか、驚いた様子で呆気に取られていたが、やがて起き上がり再び自分に向かって構えを取っていた。
「中々の不意打ちと言いてぇところだけど、その程度の攻撃じゃオラのかすりもしないと思うぞ」
「さ…さっきから聞いていれば偉そうな事を言いやがって…オマエ何も知らないみたいだな!ここにいるぼくのお父さんとお母さんは宇宙最強の戦士なんだぞ?」
子供は宇宙だとか最強だとかスケールの大きいことを自慢気に語るが、悟空の耳にはある一言しか耳に入らなかった。
「お父さんとお母さん……?おめぇ…何言ってんだ?ここにはオラとヤムチャとそこにいるマーリンって娘しか………って……えええ?まさか、ヤムチャ……?」
悟空は苦笑いしながらも、現実を必死に確認しようとする。
「いやあ…ははは……ばれちゃ仕方ないか。そいつは俺の子だ。母親はそこにいるマ―」
「ぎょえええええええええええええええええ!!ほんとかぁぁあ!?」
ヤムチャの言葉を全て聞き終わる前に、悟空は後ろにすっころんでいた。
まるで、未来から来たトランクスがベジータとブルマの子ですと告白した時に近い驚きようだ。
「お、おめぇら…結婚してたのかぁ…ヤムチャ全然教えてくれねぇんだもんなぁ…」
悟空は倒れながらヤムチャとマーリンの顔を見渡す。
そうとう驚いたのだろう。
悟空は腰を抜かしたかのように身動きをとれずにいた。
「結婚と言うか…子供はいた…みたいだ。まあこれには色々とあってだな……って悟空、大丈夫か?…立てる?」
「あ、ああ…よっこらせ…っと」
悟空は転んだことによって服についてしまった砂をパンパンと払い落とすと、ヤムチャの後ろに隠れているいまだに警戒心を解かない子供が視界に入った。
「そう力むなって、オラは別に喧嘩しにきたわけじゃねぇんだ」
「フン…じゃあお父さんやお母さんより弱いのに偉そうな態度を取るのはやめてもらおうか!」
「はは、わかったわかった」
悟空は参ったような顔をすると、らちが明かないと思ったのか、ヤムチャの方を再び見直す。
そして何かを思い出したかのように話を始めた。
「あ、ところでヤムチャ、マーリン。おめぇら天下一武道会に出てみねぇか?」

145:SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2
08/12/20 18:34 qM74Xf0A
【50話】
「テンカイチブドウカイ?」
黙っていたマーリンが理解できない単語に反応する。
「ああ、2週間後に地球の武道会があるんだ。組み手形式で相手を倒していって、最後まで勝ち進んだヤツが優勝する大会だ」
悟空は人差し指を立てながらマーリンに説明を始める。
「…ほう。それは面白そうだな」
マーリンは興味の沸いた大会にニヤリと笑うと、ヤムチャの様子を伺う。
すると、ヤムチャは何故か険しい表情になっていた。
「…誰が出るんだ?」
ヤムチャは恐る恐る悟空にたずねる。
「んーと…多分、オラ、悟飯、ベジータ、トランクス、悟天、ピッコロ…はわかんねぇな。あとクリリンも出るって言ってたと思う。18号とかも出そうだな…」
ずらずらと仲間の名前をあげていく悟空に対し、ヤムチャは名前を一人挙げられるたびに表情が暗くなる。
「ほ、ほとんど出るわけか、俺らの仲間は…」
マーリンは悟空の仲間の名前を挙げられても、ほとんど分からなかったが、ヤムチャの反応からして今挙げられた者たちの方がヤムチャより強いのだろうと把握する。
…今のところは。
「ああ、みんなで久しぶりに出ようぜって事になったんだ。ヤムチャも出ようぜ」
「悟空…それって俺が出ても……」
「ヤムチャ」
弱音が出そうになったヤムチャを、マーリンが制する。
そしてマーリンは悟空に歩み寄り、顔を悟空に近づけると、不適な笑いを見せながら言った。
「ソンゴクウ、わたしとヤムチャはその大会に出る。そして、お前たちを倒す」
「ちょ…お前何勝手なことを…」
ヤムチャはマーリンの勝手な発言に肝を抜かす。
それもそのはず、ヤムチャはあの大会では全くいい思いをしたことがない。
初参戦はジャッキー・チュンとかいう老人にさわやかな風をプレゼントされ、場外負け。
2回目は天津飯と激しい攻防をするものの、最後は失神し、足を折られてKO負け。
3回目は神様が相手で、繰気弾をヒットさせるも直後に手刀をもろにくらい場外負け。
いわばヤムチャのトラウマだ。
だが、そんなヤムチャも関係なしに、悟空とマーリンの間にピーンとした空気が張りつめる。


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