08/11/10 01:15 q8r2KhK2
「おかしくれー」
「くれー」
どこかユーモラスな顔をしたカボチャの被り物が、わらわらと自分の方
に駆け寄ってくるのを見て、塚本八雲は心の中で呟いた。
お菓子、持ってきてよかった。
遊びに来るなら絶対忘れちゃダメだからね、といささか大袈裟な様子で
すごんで見せた友人―サラ・アディエマスの忠告は、どうやら完全に
冗談だったわけでもないらしい。
教会にやってくる子供たちが、やんちゃざかりなのは彼女もよく知る
ところだったとはいえ、今日の騒ぎはいつものそれを何倍かにしたような
騒がしさ、まさしくお祭り騒ぎ、という言葉に相応しい様相を呈している。
「来てくれたんだ」
お菓子を受け取るや否や、さっそく次のターゲットを探しに駆け出して
しまった小さなお化けたちと入れ替えに、サラが姿を見せる。
「ありがと、八雲」
これは補給物資ね、と笑いながら差し出したかごの中には、お菓子が
ぎっしりと敷き詰められている。
「油断してたらすぐ戻ってくるからね」
切らしたら負けなんだよ、と冗談めかしてぐっと拳を握りしめる姿に、
思わず八雲も微笑んでしまう。
「すごいね、本当に」
「でしょ? あの被り物だって、みんな自分たちで作っちゃったんだから。
もう準備のときから大騒ぎ」
その分こっちも張り合いがあるけどね、そう言って笑ってから、でも、
とサラは続ける。
「本当にすごいのは、この国かな、って思ったりもするんだけどね」