08/09/28 22:12 4RzPMprg
彼は、ジッと拳を握り締めてある一点を見つめていたのだ。
店の奥、食材コーナー。
そこで楽しげに買い物をしている一組のカップルを、彼は睨んでいた。
まったく。
なんて根暗なヤツだ、と思いもしたが、必死に歯を食いしばるこのバカが愛しくも思う。
どうせなら、邪魔してやればいいのに。
もちろん、全力で止めるがね。
そのぐらいの度胸を見せろってことだよ。
それで豪快に玉砕して、私を頼れよ。
私の胸は無駄にでかいんじゃない。泣いてる君を抱きとめてやるぐらいの度量はあるんだよ。
「おい」
「! な、なんだよ絃子。買い物終わったのか」
「いーや、買い物追加だ。次のかご持って来い」
「ハァ? 無理だろ!」
いいや、決めた。今夜は飲む。
いいか、普段の量なんて飲んだうちに入らない私達が、飲むと宣言したんだ。
半端な量だと思うなよ?
決めた。お姉さんは決めたんだよ。コイツは今日の晩餐だ。
たっぷりと、私と葉子の酒の肴になってもらう。
それに、飲むのは私と葉子だけじゃないしな。どうせ君も飲みたい気分なんだろう?
とことんまで弄り倒してやろう。
私はそう思いながら、渋る拳児君の背中を小突いてやるのだった。
おわり
>>198とかぶり気味でゴメン