08/04/30 20:12:58
817 名前:zin ◆qZKKO9ORxw [sage] 投稿日:2008/04/23(水) 17:10:44
舞踊とは、観衆があって初めて成立するものである。いわもとは、舞踊家の中でも特に、観衆との信頼関係を大切にしていた。
グランディーバとの競演は大成功であったが、観衆に違和感を覚えたいわもとは、つづくトロカデロ・デ・モンテカルロからの競演依頼を辞退した。
もともとブリーフダンスは、アタック隊がベースキャンプを出発するときに、士気を鼓舞するためにサポート隊が始めたものである。その後、登山家の宴会芸となったが、それを芸術の域まで高めたのが、いわもとの師・ホクTである。
いわもとはスタジオでダンスを教え、ステージで公演しつつも、ブリーフダンスの原点を非常に大事にしていた。各地の裸祭りにゲスト出演することも多いが、一番のお気に入りのようだ。
現地シェルパを加えた一行は、標高5400mに到着した。
ここにきてzinの存在が邪魔になり始めた。
いわもとは彼をクレバスに突き落とすことなど、露ほどの罪悪感も持たないが、問題は彼の後見人である。ここに現れたのは、後見人のアゲヒバリから連絡が入ったに違いない。zinがいなくなったでは、帰国後に問題化するのは明らかだ。
そこで、いわもとは、熱しやすく冷めやすいzinの性格を利用することにした。急遽、テレマーク道具を手配し、親友でもあるプロスキーヤー・川本凛を呼び寄せた。ドギースタイルのレッスンを始めたところ、zinはたちまちのめりこんだ。
ブリーフダンスを習い始めたころは、このように熱心に練習していたものだ。いわもとらが出発したことに気づかず、ドギーを習得して帰国するころには、サウスコルが目的で来たことなど、すっかり忘れていた。
いわもとと6人の弟子たちがサウスコルに到着した時、すでに総勢30名がいた。
夜間、綿密な打ち合わせがおこなわれ、夜明けとともにいわもとによる渾身の演技が始まった。(つづく)