08/06/05 22:21:03
KGは去年の冬から一匹の子犬を飼い出した、彼はその犬に「チャンピオン」という
名前をつけて大変可愛がった、もちろんその名前はファイナル制覇を念頭に置いて
のものだった、愛犬「チャンピオン」が彼に念願のリングをもたらしてくれる天使で
あってくれたらいいが、などと思うと、犬小屋の掃除や朝晩の散歩も苦にならなかった
ファイナルを二日後に控えたある日のこと、KGはチーム練習を終えて帰宅した
KG「ただいま」
KG母「あら、ケビン、お帰りなさい、遅かったわね」
KG「そうでもないだろ、ちょっとミーティングが長引いたけど」
KG母「さっきまでコービー君が来てたのよ」
KG[え？なんでコービーが・・・・で、あいつは？」
KG母「何かあなたに大事な話があるみたいでずいぶん長い間待ってたわよ
一時間以上はいたわね」
KG「（なんであいつ、そんなに長時間待ってたんだろう・・・暇なわけないだろうに）」
KG母「コービー君とはちょっとコーヒーを飲みながら話したんだけど、感じのいい子ね
十分ぐらい話した後で庭に出てチャンプと遊び始めたわ、そのまま一時間ぐらい
でもあなたがあんまり遅いんで、今日は失礼しますと言って帰っていったのよ」
KG「・・・そう・・・あいつ、犬好きだったっけな・・」
KG母「それより、早く手を洗ってらっしゃい、もうすぐ夕飯の用意が出来るから」
手と顔を洗ったKGは居間に入り、テレビでも見ようとしたが、ふと愛犬チャンプの
顔を見ようと思い立った、ガラス戸を開けて呼んでみた
「チャンプ、いるかい」
だが返事はなかった、いつもは名前を呼べば短く吠えて大喜びで駆け寄ってくるのに
KGが首を傾げていると、チャンピオンが庭の奥の方からやってきた、尻尾を振って嬉しそうに
している、KGは思わず顔をほころばせた
「元気だったか、チャンプ」
チャンピオンはそのままKGの足元まできて顔をこすりつける、KGはふと違和感を感じた
「チャンピオン、おい、なんで返事をしないんだ」
KGと犬はこれまでKGが名前を呼べば犬が一声吠える形でコミュニケーションを取ってきたのだ
それは主人と飼い犬の約束事、だが、なぜか今日のチャンピオンは返事をしない
KGに親しげに尻尾を振って、体をこすりつけてくるが、いつものようには返事をしないのだ
KG「チャンプ、どうした、お前の名前を呼んでいるんだよ」
だが彼の愛犬は嬉しげにKGを見上げるだけでやはり返事をしない
KGの胸に不安の黒雲が広がった・・・なぜ急に返事をしなくなったのか・・・
その時、ダイニングでKGが来るのを待っていた母が居間にやってきた
KG母「ケビン、何をやってるんだい、もう食事の用意ができたのよ」
KG[母さん、なんかチャンプのやつの様子が変なんだが」
KG母「別に元気そうじゃないの」
KG「いや、そうじゃなくて、なんかいつものこいつと様子が違うような」
KG母「気のせいでしょ、さあ早くいらっしゃい、せっかく焼いたチキンが（ワン！）冷めちゃうわよ」
KGはいきなり吠えた愛犬に面食らった、意味もなく吠えないようにきちんと
しつけられた犬なのだ、なぜさっき自分が呼んだ時には吠えずに、今吠えたのか・・・
KG「おかしいなあ、こいつ・・・まあいいや、ところで母さん、俺、今日はあんまり
チキンを（ワン！）食べたい気分じゃ・・・・あれ・・・・」
KGはまじまじと愛犬の顔を見た、心からの愛情と信頼に満ちた顔で尻尾を振っている
「チャンピオン？」吠えない
「チキン？」「ワン！」
「チャンプ？」黙ってる
「チキン！」「ワン！」「チキンガーネット！」「ワン！ワン！」
KG「うわあああああ！」