08/01/31 23:44:08 QUSNlXP30
「晩飯作っかぁ」
スーツを脱ぎ捨てると、縦じわでよれよれのエプロンに着替えた。シンクの前に立ち股を開く。
既に唇を濡らし、俺の胃袋は俺の調理を待つ。
身体を横にして炊飯器を開けると、蒸気を持ち上げて、銀シャリがそこにあった。
「俺の越中一本の晩飯だぜ」声に出していう。
「男はやっぱ自炊」
やおら冷凍室の中から、ズルムケ状態の冷凍餃子を取り出す、フライパンにオイルをたっぷり取り、逆手でフライ返しをこね回す、
「ジュッ、ジュッ」音が俺の食欲中枢を更に刺激する。
「餃子たまんねぇ」扱きに合わせて、身体を上下させる。
「男の自炊にゃあこれだよ」ラッシュを吸い込む。
「スッ、スッ、スッ、スッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。
「ギョウザ、ギョウザ」「JTの冷凍食品」
頃合いをみてゴマ酢醤油を作る。俺はのこの香りが好きだ。
白いメシだけが炊飯器に残り、ぶらぶらのエプロンのバックに、サラダ油垂らして、腰を振り、
左手でフライパン引っ張り、右手でカシャカシャとフライ返しを扱く。
キッチンの中の俺は、日本一の中華の鉄人になっていた。
「ちきしょう誰かに喰わせてやりテェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。ラッシュをもう一度効かせ、
水溶き片栗粉を追加すると、ハネつき餃子へ向かってまっしぐらだ。
「メシを喰ってやる」「エプロン一本のほんまもんの男」
「うりゃ、そりゃ」「ジュッ、ジュッ」湯気を飛ばしながら、クライマックスをめざす。
「たまんねぇよ」餃子の裏から、香ばしい焦げ目が起こった。やがてキツネ色となり、俺を悩ます。
―早く喰いてぇ―もっと焼きてぇ―相反する気持ちがせめぎあい、俺は崖っ淵に立つ。
「きたっ」俺は膝を直角に曲げ、それに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「男一匹 ! 」「サクサクっ」
鈴口を押し分けて、白いメシを掻き込む。
真っ白い時間が過ぎ、病院で意識を取り戻す。