07/11/22 10:09:30 Yo5/duQr0
続き
気にかかることをもうひとつ。彼の器用さである。外角球をチョンと右へ打つ。
私は、ホームランの量産は意外に少ないのではないか、とみる。器用さに流れ
てしまうことは弱点に通じるといっていい。不器用族と起用族、どちらが強い
のか結論ははっきりしている。「オレは不器用だ」という自覚が「どうすれば
いいか?」という質の向上につながっていく。私の出会った一流選手の多くは
不器用族だった。あの金田は、はじめはストライクを満足に投げられなかった。
王については二十二年間の三振の多さ、千三百十九個という記録を指摘すれば
足りる。
清原の遅れているところは、スイングのスピードだ。いまのスイングでは速い
球についていけない。内角球に苦しむ、となると一流の打者の資格がないこと
になる。救いは、清原の体がまだ少年のそれであることだ。スイングのスピー
ドは、下半身の強化と、ムダな力を抜くことで改善できる。スピードの根源は、
下半身からの瞬発力にある。三、四年たったあとの清原が楽しみだ。この一年
目、清原はそこそこに打つだろう。合格点である打率二割五分にはたぶん達す
ると思う。いまのパ・リーグにはほんとうに速いピッチャーはいない。清原の
いまのスピードでも、とりあえずついていける。これは強運のひとつともいえ
ようが、将来の大成を考えれば、危険な落とし穴と紙一重でもある
週刊朝日『プロ野球・野村克也の目』(1986年4月4日号)