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06.1.30 AERA
漫才師
水道橋博士
ルポ芸はたけしをこえるか 文=木村元彦
小野正芳は水道橋博士になっていった。
変貌の過程で、幾つかの通過儀礼があった。水道橋には「人を殺してしまったんじゃないか」
と思う記憶がある。
18年前、新宿で飲んでいた芸人仲間から泣きながら電話が入る。180センチを優に
超える大男と揉めて助けを求めてきたのだ。161センチの男は受話器をを置くや否や
部屋を飛び出した。店で相手を確認し、外に出て歩き出したところをマフラーで首を絞めて
引きずり倒した。仰向けにして顔面を石で殴り続け、動かなくなってその場を逃げた。
それは、終始穏和に周囲に接する今の水道橋からは想像もつかない狂気の時代だった。
「自分にとっては血の総入れ替えの時期でした。『芸人とはこうあるべきだ』と。あいつは
勉強のできる奴だ、真面目な奴だと仲間に思われたくなかった。あの頃は、喧嘩に対して
一番槍じゃないといけないという気持ちがあったんです。」
反作用であったとも言えるだろう。それまで喧嘩ひとつしたことがなかった男が何かに
取りつかれたように暴力沙汰を起こし続けた。酒場で揉めた女性を殴り重傷をおわせ、
舐めた態度を取った弟弟子には自宅まで乗り込んで顔が2倍に腫れるまでシバキまくった。