産経抄ファンクラブ第129集at MASS
産経抄ファンクラブ第129集 - 暇つぶし2ch591:文責・名無しさん
09/12/31 06:18:37 IiyQPPy10
【産経抄】12月31日
 作家の半村良は高校卒業後、さまざまな職業を遍歴した。そのひとつ、
連れ込み旅館の番頭時代のことをつづったのだろうか、『大みそかの客』と
題した随筆がある。ある年の大晦日(みそか)の昼前のこと、最寄りの駅で
40代半ばのサラリーマン風の男がしょんぼり立っていた。
 ▼その男に気がついたのは、目から涙が流れ落ちていたからだ。
夜8時ごろになって、その男が旅館にやってきた。部屋に案内した後、
母親に昼間見た男の様子を伝えると、母親はため息をついた。
「大変だねえ、みんな」。この言葉が、半村文学の原点かもしれない。
 ▼今年を振り返ってみると、心浮き立つ話題も少なくない。一方で、
むごたらしい殺人事件が相次いだ年でもある。東京都世田谷区で起きた、
一家4人殺害事件は、発生後9年が経過した。犯人が残した遺留品から、
いくつかの手がかりが浮上しているものの、解決には至っていない。
「懐かしさに頼らないと生きていけない」。遺族が漏らした悲痛な言葉が、
耳から離れない。
 ▼不況はますます深刻化している。ボーナスがなかった人、いや職さえ
失った多くの人が、寒風にさらされ、身を縮めている。何よりやりきれない
思いにとらわれたのは、年間の自殺者が、12年連続で3万人を超えたと
聞いたときだ。
 ▼「大変」な時代が続いている。それでも人は、生きていかなければ
ならない。半村の旅館に泊まった男は、そのまま三が日を過ごし、4日の朝、
きちんと支払いを済ませて出て行った。
 ▼部屋を掃除しながら、半村は考えずにはいられなかった。男がそこで
何と戦っていたのか、何に耐えていたのか。小欄もまた、読者のみなさんと
ともに、来年も戦っていきたい。よいお年を、お迎えください。


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