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【産経抄】12月26日
最近はあまり使われないが「天網恢恢(かいかい)疎にして漏らさず」という
言葉がある。古代中国の『老子』が出典だそうだ。天の網は大きいから目が
粗いようでも、悪人を逃すことはない。悪事はいつか必ず明らかになり、
罰せられるといった意味である。
▼鳩山首相への偽装献金問題で起訴された元秘書2人は、この言葉を
お忘れだったようだ。ひょっとしたら首相自身もそうだったかもしれない。
何億円にも上る政治資金の虚偽記載をやりながら「バレやしない」と高を
くくっていた。そんなふうに感じられるからだ。
▼偽装献金が行われていたころ、鳩山氏は野党にいた。政治家の言動
に関する捜査当局やマスコミのチェックは、権力を握る政府や与党に厳しく
なりがちだ。秘書らが「野党だから網にかかることもあるまい」と甘い考えを
抱いたとしても、おかしくないだろう。
▼首相の発言にしてもそうだ。かつて「鳩山由紀夫の秘書が同じこと
(犯罪)をしたら国会議員のバッジをはずす」と述べたことが今、追及の
的になっている。これも野党の「気楽さ」から出た軽い言葉で「誰もそんな
こと覚えていない」ぐらいに思っていた気がする。
▼だがおあいにくというか、政権交代で与党、しかも首相となれば、世間の
目はとたんに変わってくる。インターネットの時代に、不審な政治資金があぶり
出される。過去の発言と今のそれとの齟齬(そご)もたちまち明るみに出る。
まさに「天網恢恢」の世界と言える。
▼にもかかわらず、首相の軽さは今も変わらない。特に米軍普天間飛行場の
移設問題では、社民党との連立と天秤(てんびん)にかけるような言動で、
日本の安全の基本といえる日米同盟を危うくした。野党時代の無責任さから
一歩も抜け出せていないのである。