10/04/24 12:51:16 QxFgDPB50
この世の中には「陰謀」が存在する。
しかし、他人の口からまことしやかに語られる陰謀は、九十九パーセント以上の確率で、ただの妄想、もしくは
意図的な大嘘にすぎない。
本屋に行けばよく目にする「日本経済をダメにしたユダヤの大陰謀!」「宇宙人との密約を隠すCIAの超陰
謀!」などという本も、すべてはつまらない単なる妄想である。
だが─
それでも我々人類は「陰謀」が大好きだ。
陰謀。
その甘くせつない響きに、我々はどうしようもなく魅了されてしまうのである。
たとえば、「ユダヤ陰謀論」が作り出される過程を例にとって考えてみよう。
ユダヤ陰謀論を書こうとしている人間は「どうして俺は貧乏なんだ?」「どうして生活が楽にならないんだ?」
「どうして俺には彼女ができないんだ?」等々の、ひどいコンプレックスとルサンチマンを抱えている。彼の精神
と肉体は、絶えず外部と内部からの圧迫に晒されている。
そして鬱積する怨念、尽きることのない社会への憎悪。怒り。
しかしそれらの怒りは、そのほとんどが自分自身のふがいなさに由来している。
貧乏なのは、自分に金を稼ぐ能力が無いためだし、彼女がいないのは、自分に魅力が無いからだ。だが、そ
の事実を認めて自らの無能さを自覚する作業には、かなりの勇気を必要とする。人間ならば誰しも、自分の汚
点を見つめたくはない。
そこで陰謀論者は、自らのふがいなさを外部に投影する。
自らの外に、架空の「敵」を作り出してしまう。
敵。 僕らの敵。社会の敵。
敵がどこかで悪い陰謀を繰り広げているおかげで、俺は幸福になれない。
陰謀のおかげで、俺に彼女ができない。そう! 悪いのは全部ユダヤ人だったのだ!
ユダヤ人がどこかで悪だくみしているから、俺は幸せになれないのだ!
くそっ、ユダヤ人め! 許さないぞ!
……まったく、ユダヤ人もいい迷惑である。
すべての陰謀論者は、もっと現実を見つめるべきなのだ。
「敵」は外部に存在しない。「悪」は外部に存在しない。あなたがダメ人間なのは、すべてあなたにその責任があ
る。決してユダヤ人の陰謀ではないし、CIAの陰謀でもないし、当然の事ながら、宇宙人の陰謀でもない。
まずはそのことを、しっかりと肝に銘じて生きていくべきだろう。