09/11/05 03:43:17 cv63I5xg0
【産経抄】11月5日
東京・渋谷のスクランブル交差点を見下ろすコーヒーショップには、外国人観光客の姿が目立つ。数千人が
整然と四方八方に行き交う光景が、「クール(かっこいい)」という。
▼ロンドンの中心地、オックスフォード・サーカスの交差点でも、斜めに横断できる“渋谷方式”が採用
された。今月2日には、オープニングセレモニーが行われたという。日本人にとってなんでもない事柄が、
外国人の目に魅力的に映る例は枚挙にいとまがない。
▼101歳の誕生日を目前にして世を去った、フランスの文化人類学者、クロード・レビストロース氏も、
日本を再発見した一人だ。名著『悲しき熱帯』で世界の思想界に衝撃を与え、「構造主義」の父と呼ばれた。
浮世絵の収集家でもあり、日本についての発言や講演録に目を通すと、その知識の豊富さに驚かされる。
▼氏は、1977(昭和52)年から88年まで5回、日本を訪れた。滞在中は、金沢、輪島、飛騨、京都
など各地の伝統職人を訪ね歩き、霧島や高千穂では、神話文化を調査した。古代から現代まで日本文学を
読み込んだ上で、伝統的な職人芸と最先端の科学技術、神話と歴史が共存する文化に興味を引かれたようだ。
▼取材にほとんど応じないことでも知られるが、外国人叙勲で勲二等旭日重光章を授与された93(平成5)年、
山口昌子パリ特派員が単独会見に成功した。氏は日本に学ぶべき点として、「外国の影響に対し自国を定期的
に開放すると同時に、独自の価値や伝統的精神に対しても忠実な『二重規格』だ」と語っている。
▼グローバル化がますます加速するなか、日本人の多くは、何を開放して、何を守ったらいいのか途方に
くれている。今こそ、氏の考えを聞きたかった。