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【産経抄】11月2日
江夏豊、山本浩二、星野仙一、輪島、初代貴ノ花…。約30年前のスポーツ紙を
連日飾っていたヒーローたちには、ひとつの共通点があった。必ず「ワシ」という
一人称が、談話で使われていたことだ。
▼沢木耕太郎さんは、『奇妙なワシ』というエッセーで、彼らが実際には、
そんな言葉づかいをしていないことを確かめて、いう。「ワシ」とは、いかにも
一匹狼(おおかみ)の選手らしい、横綱らしい、「その『らしさ』を装う道具」だ、
と。「関西弁」もときに、同じような道具になる。
▼大阪で起きた「説教強盗」の犯人の言葉が、小紙大阪版の記事では
関西弁で表記されていた。弁護士や大学教授が関西弁で話しても、活字では
「関東風」になるというのに。数日前の紙面批評で、関西大学副学長、黒田勇
さんが、「関西弁」が、違法行為、無秩序といった「逸脱」した役割を表現する
ときに用いられていると、指摘していた。
▼なるほど、小欄にも思い当たる節がある。ただ、そうした安易な手法が
通用しない人物がいる。連日、新聞やテレビのワイドショーで取りざたされて
いる、東京都豊島区の無職の女(34)もその一人だ。結婚詐欺で起訴されて
いるが、かかわりのあった男性が相次いで、死亡していることが判明した。
▼男性らからだまし取った1億円近い金は、ほとんど使い切ってしまった
ようだ。高級外車を乗り回し、自分が食べた高価な料理をブログに掲載する
など、派手な生活を送る一方で、本人の印象は、「暗くて地味」という証言が多い。
▼「らしさ」を装う記事を書こうにも、もとになるイメージが浮かんでこないのだ。
警察は、女と男性の不審死との関連を懸命に調べている。メディアも腹をくくって
取り組む事件だ。