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【産経抄】9月15日
「本塁打が大好きな女性には、魅力を感じない」。マリナーズのイチロー外野手(35)は、先月、
米ニューヨーク・タイムズ紙の取材に、ジョークで返した。「私は、テクニックが求められる内野安打こそ、
セクシーだと思う」。
▼イチローはきのう、その内野安打で、大リーグ史上初となる9シーズン連続200安打の偉業を達成した。
今年3月のWBC決勝で、日本を2連覇に導いたタイムリーに続いて、日本のファンに、再び大きな喜びを
与えてくれた。
▼ただ現地では、快挙が日本ほど話題にはなっていない。俊足と繊細な技でヒットを量産するだけではない。
レーザービームに代表される華麗な守備もある。そのプレー自体が、正当な評価を受けているとは言い難い。
▼ニューヨーク・タイムズ紙が指摘するように、大リーグでは、本塁打が何より尊重されるからだ。
イチローの内野安打を、「チープ(価値が低い)」と、軽視する声さえある。そんな風潮は、ベーブ・ルースが
ヤンキースに移って、本塁打を打ちまくった、1920年ごろから続いている。
▼イチローはこれまで、新人年間最多安打や年間最多安打の記録を塗り替えることで、ジョー・ジャクソンと
ジョージ・シスラーという、ルース以前の名選手の活躍を蘇(よみがえ)らせてきた。1894年から
1901年まで8年連続200安打したウィリー・キーラーもその一人だ。
▼身長163センチと小柄ながら、短いバットをさらに短く持ち、地面にたたきつける打法で、2度の
首位打者に輝いた。「目を見開いて、人のいない所へ打て」。キーラーの残した言葉こそ、野球の原点
ではないか。イチローのもうひとつの偉大さは、プレーを通じて本場のファンに、そう問い続けていることだ。