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【産経抄】8月22日
産経新聞には毎週1回、「紙面批評」という欄が掲載される。外部の識者に依頼して、弊紙の
内容について、他紙と比較しながら客観的評価をしてもらうのである。昨年4月に社会学者、
木村洋二さんの批評が初めて載ったとき、その斬新さに驚かされた。
▼1カ月ほど前に起きたチベット暴動に関するものだった。木村さんは大阪発行全国紙の記事の
見出しに出てくる「チベット」という文字の回数を数えた。さらにその文字の面積まで測ってみた。
すると回数、面積ともに産経新聞がトップだったという。
▼木村さんは「見出しの大きさは、人間の声の大きさに近い働きをしている」と言う。だから
「チベット暴動にいちばん大きな声を出したのは産経である」と評していただいた。常々チベット
問題を重視し、報道に当たっている弊紙としては核心をついてもらった気がした。
▼新聞を数値化して比べるというのは、何ともユニークである。もっとも数値化と言っても、
コンピューターを使ってというわけではない。研究室の学生といっしょに物差しで測って
調べたのだという。ヒゲ面で知られる木村さんのそんな姿を想像しただけで楽しかった。
▼その木村さんが61歳で亡くなった。最近では「笑い」の数値化をめざし、測定する装置まで
「発明」した。そのことを聞くと「アホな機械でしょ」と笑い飛ばした。木村さんにとって
「声」も「笑い」も社会を診断する貴重なデータだったのだろう。
▼学生時代を知る人は、学者になって見違えるほど明るくなったという。それだけに、
訃報(ふほう)に悲しんでばかりいては「よしてくれよ」と言われそうだ。しかし、あの明快な
紙面批評はもう読めない。豪快な笑いも聞けないと思うと、限りなくさびしい。