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【産経抄】8月28日
2009.8.28 03:07
階級社会のイギリスに自由社会のアメリカ。両国には、今もそんなイメージがある。生
まれによってある程度社会的地位が決まってしまう社会と、能力と努力次第で立身出世が
可能な社会、ハッピーエンドがふさわしいのは、後者のように思える。
▼ところが歴史家の萩原延壽(のぶとし)は、皮肉な見方とことわっていう。「そのイ
ギリスにおいて『マイ・フェア・レディ』のような幸福なメロドラマが書かれ、そのアメ
リカにおいて、『ウエストサイド物語』のような残酷な悲劇が発生する」(『自由の精神』
みすず書房)。
▼ケネディ家の最後の大物といわれた、エドワード・ケネディ米上院議員(77)が2
5日、亡くなった。アイルランド移民として出発し、実業界で成功を収め、やがて大統領
まで出すに至る。自由社会であったからこそ、一家は名門になり得た。ではなぜ、エドワ
ード氏の兄、ジョン・F・ケネディ元大統領とロバート元司法長官は、凶弾に倒れなけれ
ばならなかったのか。
▼萩原は、「競争や対立が支配する自由社会においては、言葉ではなくて、行為だけが
意味をもってくる」という。『マイ・フェア・レディ』のヒロインは、階級社会の秩序を
受け入れ、上品な言葉を習得して、幸せをつかんだ。
▼『ウエストサイド物語』では、言葉はもはや力をもたない。非行少年グループの「ジ
ェット団」と「シャーク団」にとって、ナイフで決着をつけるしか道はなかった。ケネデ
ィ家に反発する勢力もまた、言論ではなく、暗殺という行為を選んだ。一家の栄光と悲劇
は、アメリカ社会の明暗を象徴している。
▼先日紹介した『学校の先生が国を潰す』を読みたい、との問い合わせを多数いただい
た。今秋、産経新聞出版から刊行されます。