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【産経抄】8月27日
2009.8.27 02:53
宝くじに当たった知り合いのふところに、大金がころがり込んだとする。平静を装って
も、人間の心に潜むねたみを抑えることは難しい。そのとき脳はどんな反応を示すのか。
▼半年ほど前、放射線医学総合研究所などのチームが、米科学誌サイエンスに発表した
研究で、明らかにした。人が他人にねたみを感じるとき、肉体的な痛みを感じる部位と同
じ、前頭葉の「前部帯状回」の活動が活発になるという。
▼イタリア中部の町バニョーネで、約2000人の住民の脳ものぞいてみたいものだ。
なにしろ、欧州で過去最高の賞金額の当たりくじが、この町から出た。たった2ユーロ
(約270円)で買ったくじで、1億4780万ユーロ(約200億円)を手にした当せ
ん者探しで、町は大騒ぎだという。
▼もっとも、宝くじの高額賞金が、幸せをもたらすとは限らない。落語の「水屋の富」
では、富くじで千両を当てた水屋が、金を奪われるのが怖くて夜も寝られなくなる。作家
の佐藤正午さんは、最新作『身の上話』(光文社)で、宝くじに当たったばかりに、とん
でもない運命に翻弄(ほんろう)されることになる23歳のヒロインを描いた。
▼実際、宝くじで2億円を当てた42歳の女性が、平成17年に殺される事件も起きて
いる。40代後半の独身男性とうわさされているイタリアの宝くじ長者も、正体が明らか
になれば、もはや平穏な人生に戻るすべはあるまい。持ち慣れない大金が転がり込むと、
ろくなことはない。
▼「他人の不幸」を喜ぶような気持ちになったとき、今度は脳の「線条体」という部位
が活性化するそうだ。もちろん、人によって反応の強さは違う。自分はどちらだろう。ジ
ャンボ宝くじのはずれ券をデスクの引き出しから取り出して、思う。