09/08/09 05:13:58 AULnsWta0
【産経抄】8月9日
小山慶太氏の『漱石が見た物理学』(中公新書)によれば、夏目漱石の東京大学予備門予科生時代の
成績表が残っている。17歳で今の高校生ぐらいだ。一番良いのは幾何学の八六・五で、
次いで代数学の七八・九である。体操や修身の成績も良い。
▼これに対し得意のはずの英文解釈は六六と低く、和漢文にいたっては六○にも満たない。
明らかに「理数系」だったことがわかる。漱石自身が建築家志望だったことを認めていたという。
理系に進んでいたら、歴史に名を残すような科学者になっていたかもしれない。
▼文学者になった後も、自然科学への関心を失わず、小説にもよく物理学者らを登場させている。
漱石に限らず、時代をさかのぼれば「理系」と「文系」の区別はつきにくくなる。
アリストテレスをはじめ、自然科学や哲学、文学などあらゆる部門に通じた学者が多かった。
▼しかし今の日本では、中高生のころから「理系」と「文系」とに色分けされるうえ、
「理数離れ」が指摘されている。理科や数学が高度化してついていけない者が増えた。
それに「理系の人間は融通がきかない」という社会の誤った見方も影響しているらしい。
▼そんな時代に朗報がある。小紙報道によれば世界の高校生が数学、物理、生物学などの
「実力」を競う「国際科学五輪」で今年は10個もの金メダルを獲得したという。
国内予選への参加者が増えた、つまり底辺が広くなったことが躍進の要因のようだ。
▼昨年のノーベル賞につぎ数学や理科に興味を示す者が多くなるきっかけになればいい。
むろん国語や歴史も大切で、みんな科学者を目指せというのではない。
漱石のように「科学に強い」文学者や人文学者が増えることは、心強い気がするのである。