09/05/28 17:49:43 EFLca85h0
浮世絵というのは世界的に高い評価を得て、発祥地日本にその価値が逆輸入された芸術品です。
欧米に浮世絵が知られたきっかけは、作品としての輸出ではなく、陶器の輸出の際の
梱包材として詰め込まれていたものに価値が見いだされた、というのは割とよく知られた話ですよね。
それ以前の日本における浮世絵というのは、「見て消費して茶碗を包んで捨てる」という程度のものだったわけで、
芸術という認識はされていませんでした。(今、消費して捨てる紙を代替しているのは新聞紙ですがw)
現代における漫画というのは、この浮世絵と同じで、日本人自身は漫画やゲームというものに
芸術的価値、後世に遺す価値というものをまるで感じていません。俳句、短歌や浮世絵などにも
【ハズレ】は山のようにあったわけですが、その中でも特に秀でたものが世に出ることで、分野として
認知・評価された、という経緯があります。大多数がハズレだからといってその中のよいものが評価
されなければ、たぶん浮世絵は残らなかったはずです。
これは漫画も同様です。
漫画・アニメ・ゲームの価値というものについて、実は高い評価をしているのは日本以外です。
文化庁が漫画・アニメ・ゲームについて、日本発の文化的価値がある芸術と認識するようになったのは
欧米での漫画・アニメ・ゲームに対する芸術的評価が高まった後なんですが、そうしたものは未だ
「消費される下賎な娯楽」としか、日本国内では認知されていませんので、当然、「保存展示する」
ということが受け入れられないのかもしれません。
浮世絵の多くは海外に流出(茶碗事)したものしか遺されていなかったりしますが、その元になった
版木は二次大戦頃の窮乏期に、「薪」として燃やされてしまったそうで、多くは消失しています。
芸術品を燃やすなんて、という認識は浮世絵の価値が定まった後からの悔悛に過ぎず、
当時はそうした浮世絵の版木に芸術的価値を、当の日本人だけが認識していなかったわけです。
文化庁による漫画・アニメ・ゲームの保護というのは、そうした「欧米に言われるまで自分達の作ったもの
に対する理解が行き届かない日本人」向けのものではなく、どちらかというと浮世絵の版木保護と同様の
「海外からの日本文化に対する評価に答えるためのもの」と言えます。