08/12/31 17:49:50 gMfC7ARA0
現場から
ネットカフェ 社会の寂りょう感 ／神奈川
女はトイレの中でたった今産んだ男児をポリ袋に入れ、流し台の下の棚に押し込んだ。４０分後、トイレ掃除をした女性従業員が
男児を発見し１１０番した。現場に駆けつけた警官に女は答えた。「自分がやった。お金がなく、育てる自信がなかったから」
▼横浜市神奈川区のネットカフェで９月にあった事件。神奈川署は１０月上旬、住所不定で無職の女（３０）を保護責任者遺棄容疑で
逮捕した。男児は命に別条はないが、ポリ袋に入れられたため酸欠になり脳に障害を負う可能性が高いという。その後の調べで、
３年前にも東京都内のホテルで毛布に包んで新生児を遺棄し死なせていたことが発覚、女は殺人容疑で警視庁に逮捕された
▼１１月初旬、売春婦をホテルなどに派遣していたとして県警が無職の男（６２）ら男女４人を売春防止法違反（周旋）容疑で逮捕した。
４人と組んで売春していた２人の台湾人の女（３５、４７）が待機場所として利用していたのも、同じネットカフェだった。売春婦の
待機場所はマンションの一室を借りるのが一般的だが、このグループは家賃節約のためネットカフェを使っていた
▼彼女らはこの店で何を考え行動したのか。店を訪ねてみた。横浜駅西口の繁華街の一角。５００～６００平方メートルほどに約７０席。
１５分で約１００円。どこにでもある普通のネットカフェだ。客層はサラリーマン、学生、主婦までさまざま。事件について、
客の男子大学生（２１）は「『ネットカフェ難民』なんて騒がれている時代だし、いろんな人が来ても不思議じゃない」と素っ気ない表情を
浮かべた
▼「金がなく」子どもを捨てた女と、「金を稼ぐ」ために性を売った女。皮肉なことに同じネットカフェで、両極端な境遇が交錯した。
「経済的理由」に追いやられただけだと切って捨てるのは安直だろう。ましてや彼女たちの心の奥底を察することもできない。仕切り板を
越えて耳に届く乾いたキーボード音は、社会が抱える寂りょう感を象徴しているようにも感じた。【吉住遊】
毎日新聞 2008年12月27日 地方版
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