08/02/05 17:09:56
確かに今や日本の穀物自給率は28%にすぎません。「日本の食料自給率を向上させる」や「完全自給をめ
ざす」という言説に、私はずっと異を唱えてきました。もちろん本当は、両者(自給率の向上と自給)は違うの
ですが、では何%なら満足するのか、という程度問題に行き着かざるをえません。55%くらいをめざすのか。
それとも、100%をめざすのか。
各国の食料自給率を見渡せば、オーストラリアなんて270%もあるのですよ。いくらなんでもやりすぎだろ、
と思いませんか。そもそも、北朝鮮の食料自給率とオーストラリアの食料自給率と日本の食料自給率では、
分母の捉え方(何をもって「充足」と捉えるか)が異なっています。また確かに、日本の自給率はカロリー換算
すると39%ですが、金額に換算すると69%です。自給率69%のどこがいけないのですか?
石油資源が豊富で教育費無料や高福祉を誇るブルネイや、観光客がじゃんじゃんお金を落としてくれるモー
リシャスは、いずれも穀物自給率は0%。対照的に例えば、独裁国家ビルマ(ミャンマー)は131%、ウズベキ
スタンは104%です。
日本国内に限っても、一概には言えません。北海道の食料自給率(カロリー)は192%で、東京都のそれは
1%(同)にすぎません。なのに、なぜ人々は大都市に集まるのですか?
私自身、上記した幾つかの論点が、やや暴論ぎみであることは承知しているつもりです。ただ同時に、「食料
自給率を向上させよ」とか「自給せよ」と叫ぶイデオロギーも暴論ではないかと疑っているのです。
私の周囲には、農業関係者が大勢います。私も稲作にかかわってみたり、野菜をつくったりしてきました。
子どものうち2人が農業高校と農学部に進学しています。評論家や政治家は、これだけ農業分野を軽視して
おいて何が「基幹産業」だ、何が「自給率向上」だ、と思うことがあります。
食料自給率を向上させる(増産する)と、農産物の単価が確実に下がるのです。ふざけんな、と思いませんか。
穀物自給率は北海道が192%で東京が1%だという現実について、少し真面目に考えてみましょうよ。
東京都区内で米や果物をつくって自給を果たす、ということは現実的ですか? 愉楽を都市生活者が独占し、
田舎者にだけ農産を強いるのですか?