08/08/07 13:48:03 OuRI/3kS
「こぶし」というのは、大まかに言うと「メリスマ」という音楽技法の日本的特化スタイルと
言える。メリスマは1音節に対して複数の音が当てはめられることで、グレゴリオ聖歌や
スイスのヨーデル等々、世界中に存在する。
日本の伝統音階は前述のように5音階なので、音と音との間隔が広く、その間に音程を
揺らすメリスマがやりやすいという特徴があった。民謡の江差追分や鹿児島おはら節を
聞くと、日本人のDNAに響く(笑)音の揺らし方がよく分かる。これが「こぶし」の原型。
江戸時代になると、小唄や新内節、あるいは特に定型のメロディーを持たない都々逸などに
おいて、より洗練された、縦横無尽のメリスマが使われるようになる。これがまあ、
「こぶし」の直接的なルーツと言えよう。
もちろん上記のように、メリスマは世界各地で(特にアジアでは)使われる技法なので、
朝鮮に於いても類似のものがあったことは想像できる。ただそれが、演歌のこぶしの
ダイレクトな祖先であるとは考えがたい。