08/06/16 18:47:00 vGOCRYM3
『緑の恐怖』
今日も今日とて、いつものスーパーの鮮魚コーナー。
お夕食のおかずを求めるお母さん達の群れに隠れ、辺りを見回し、
ようやく思い切ったニホンちゃんは売り場の人に声をかけました。
「ねえ、おじさん。
あれ有るよね、あの、くじ……」
「くじゃくの羽がキレイなのは、実はオスの方ダスよ?」
おじさんが素早く渡す“あの”お魚を、
ひったくるようにかごに入れるのと、
耳元に吹きかける熱い吐息が、聞いても居ない無駄知識を囁くのがほぼ同時。
見れば見慣れた全身タイツ。
ニホンちゃんはため息をつきながら、頭を左右に振りました。
「……ねえ、オージー君。それ、止めようよ」
「何を言うダスか!
お、おらの名前はグリーン……」
「グリーン仮面だっけ? 鮮魚コーナーの平和を守る正義の味方の」
「……微妙に違うダス。正義の戦隊グリーンマスク、ダスよ」
「戦隊って、いつそんなに仲間が……」
増えたの? とニホンちゃんは聞こうとしましたが、答えは目の前。
買い物籠の脇にしゃがみこみ、中に手を突っ込んでは
せっかく確保した”あの”おさかなの試食に熱中していました。
「くちゃくちゃくちゃ、ああ、この歯ごたえ。
口の中一杯に広がる芳醇なうまみ。
間違いなく、あの、くじ……」
「とぉりゃあ!」
ニホンちゃんは、迷わず
全身緑のタイツを着たアサヒちゃんの後頭部をはたきました。