08/05/30 01:41:53 9iftHCSq
『屋台村クライシス』
帰りのホームルームが終って、タイランド君はここ数日空席の隣を見ました。
「ベトナちゃんどうしたんだろう。ここの所ずっと休みなんて」
「腹痛で何日も休むとは…食中毒にでもなったのかな」
かつての天敵とはいえ、アメリー君も心配そうです。
「それがさ、昼休みにホーチミンさんに偶然あったんだけど、お腹を壊したのってベトナちゃんだけなんだって。
同じ物を食べたはずの他の家族は平気なのに、何でベトナちゃんだけ体調崩したのかって、不思議がってたよ。」
「ふふん、タイランドの目は節穴ニダ!」
そこに、無駄にエラを偉そうに張ったカンコ君がやってきました。
「何だよバカンコ」
「ウリは知っているニダ。最近ベトナは給食の余りを集めてよく持って帰っていたニダ!
きっとそれを食べて当たったニダ。まったく意地汚いにも…」
「節穴はお前の方。」
いつもの事とは言え、タイランド君はうんざりしてカンコ君の台詞を遮りました。
「あれは餌。『野良狐』の」
「え、狐?」
教室から出て行こうとしていたスオミちゃんが引き返してきて話の輪に入ってきました。スオミちゃんは割と動物好きで、狐もお気に入りの一つなのです。
「こないだベトナちゃんに聞いたんだけど、近所の屋台村の近くに狐が出没するようになったんだって。」
「へぇー、こんな市街地に狐が? わー見たい見たい☆」
「ただ、あまりその辺りをウロウロしていると保健所の人に捕まっちゃうだろうから、屋台村に行かないように餌付けするんだって言ってた。」
「ソレだ!」
唐突にアリー君が叫びました。
「何がさ?」
「その狐、きっとそいつがキャリアだったんだよ、食中毒を起すような病原菌の。『野良』なら不衛生だからな。で、ベトナは感染して、下痢とかの症状を起したんじゃないか?」
「狐からベトナちゃんに移った?病気が?」
タイランド君は半信半疑です。
「手洗いとかをきちんして清潔にしてれば、動物から人へ病気が移る事はあまり無いんだけどね。でも例えば……その狐が弱っていて、ベトナがアレコレ世話を焼いたら…接触する機会が多けりゃ、感染のリスクは高いな。」
「その狐、どうなるのかしら…」
「そりゃ保健所に狩り立てられて処分、かな。」