07/08/04 14:54:18 RHH4X/fw
『友だちなのに』
「みんな読んでね!アメリー君の家でも、ニッテイさんが昔、カンコ家のナヌムおばあさんにひどいことを
したのを謝れって言ってるのよ」
アサヒちゃんが満面に満足そうな笑顔を浮かべて、高揚した声で新聞を配っています。
ニホンちゃんはその光景を憂鬱そうに眺めながら思いました。
「カンコ家の人の言ってることはでたらめだって言ったのに、アメリー君の家ではみんな信じちゃったの
かな。お互い助け合ってる友だちだと思ってたのに、少しも私たちの言い分を聞こうとしないなんて」
落ち込み気味のニホンちゃんは、慰めてほしくてそばにいたタイワンちゃんに話しかけました。
「ねえ、アメリー君は友だちだったはずなのに、なんで耳を傾けようとしないんだろう」
するとタイワンちゃんは、ちょっと意外なことを言うのです。
「落ち込むのも分かるわ。でもねニホンちゃん。私たちも同じ思いをしてきたことを少しだけ思い出してね」
「ん、何のこと?」
いぶかしがるニホンちゃんに、タイワンちゃんは配られた新聞の隅のほうを指して言いました。
「ここを見て」
その小さな記事の見出しにはこう書いてありました。
─日ノ本家もタイワン家の町内会加盟を支持せず─
「あ……」
ニホンちゃんは絶句しました。そして家でパパが言っていたことを思い出しながら、しばらくうつむいて
考え込んでいました。
「そういえば、聞いたことがあるわ。なんか色々といきさつがあって、うちはおおっぴらにはタイワン家が
チューゴ家とは別の独立した家だと言うことはできないんだって。でも、こんなことがあるたびにタイワン
ちゃんたちはいつもくやしかったんだろうな」
ニホンちゃんは、やがて目をあげると、タイワンちゃんに向って言いました。
「パパたちには大人の事情ってものがあるんだろうけど、だけど分かって。絶対タイワンちゃんとは友だち
なんだから」
そしてニホンちゃんは思いました。
「友だちだと思っていても、変な考えを吹き込まれて変な方向に走り出す子もいる。親友だと思って甘えて
いたら、知らずにくやしい思いや悲しい思いをさせてた子もいる。友情って放りっぱなしじゃなくていつも
注意して育てていかないといけないのね。