07/04/28 14:34:25 8+DKe24a
『新作発表』
ニホンちゃんはマンガを描くのが得意です。みんなが読みたがるものだから、それに応えて週に50本もの
マンガを描いています。そんなに量産して、一体勉強や遊びの時間をどこから捻出しているのか、みんなは
不思議に思っているのです。
そんなニホンちゃんに放課後の教室でアサヒちゃんが何やら文句をつけていました。
「ねえ、ニホンちゃん。あなたたくさんマンガを描いてるけど、くだらないものばっかりね」
「……」
いきなり絡まれてとっさに言い返せずにいるニホンちゃんに、アサヒちゃんはたたみかけます。
「描きすぎてアイデアが枯れたのか、前に描いたのの作り直しが多いようね。主人公が2人の女の子だった
のを5人にしたり、猫の妖怪のキャラデザインを萌え絵にするなんてあざといわね」
アサヒちゃん、くだらないと言ってる割にはずいぶんよく読み込んでいるようです。
「魔法少女だのロボットだのじゃなくて、例えば歴史を題材にしたマンガなんて描けないのかしら」
「歴史……ね」
「そう、かつて日ノ本家がアジア町でどんなことをしたのか直視するような内容のね」
「ああ、それならいま準備してる」
「え、そうなの」
ニホンちゃんが歴史に無関心だと非難しようとしていたアサヒちゃんは、意外な答えにびっくりしました。
「もう大体内容が固まったから発表しちゃおうかな」
ニホンちゃんは黒板に『制作発表記者会見』と書くと、教室の隅で帰り支度をしていたタイワンちゃんに
声をかけました。
「ねえ、タイワンちゃんもおいでよ」
ニホンちゃんは、タイワンちゃんとアサヒちゃんを前に説明を始めました。
「えっとね、今度の新作は、昔日ノ本家の土地だったタイワンちゃんのおうちで、日ノ本家の人がみんなの
ために大変な苦労をして井戸を掘ったり溜池を作ったというお話よ」
するとタイワンちゃんが声をあげました。
「ああ、その人のこと知ってる。うちのおじいちゃんが昔の日ノ本家の人は偉かったって言ってたわ」
一方アサヒちゃんは、話を聞くうちにだんだんふくれっ面になってきました。そして話の途中で、もうがまん
できないといったようすで席を蹴ってその場から立ち去ってしまいました。
どうやらニホンちゃんの新作の話題が学級新聞に載ることはなさそうです。